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Sixteen Tones

音律と音階・ヴァイブ・ジャズ・ガラス絵・ミステリ.....

シューマンの指

2012-10-28 08:20:48 | 読書
奥泉 光「シューマンの指」講談社文庫 (2012/10)

講談社100周年 (2010年) 書き下ろしの文庫化.

帯には「純文学にして傑作ミステリ」とある.前半の,シューマンに憑かれた天才美少年ピアニスト・永嶺修人の口を借りた著者のシューマン談義は「純文学」らしい.これに感心するか,うんざりするかは読者次第.

ここの,楽譜があれば演奏は不要という主張はおもしろい.耳が聞こえないベートーベンや,指が動かないシューマンが引き合いに出されると,なんだか説得力が生まれる.
もともと話し言葉だったものがブンガクという芸術になると,紙に印刷されたもので評価される.これを思えば,音楽も楽譜さえあれば良いとなっても不思議はないのかも...というのはボク的展開.

しかし,ミステリとしては駄作.真ん中あたりでやっと殺人が出てくるが,その後の展開はありきたり.天才美少年修人(シューマン)の魅力も急激に色あせてしまった.
最後のどんでん返しを狙ったらしい 10 ページほども蛇足.

純文学っぽい鎧に身を固めたミステリというのは,読み終わって「なんだかなぁ」という気分になることが多い.中井英夫の短編にもそうした例がある.

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