子どもの頃、家には猫が一匹いました。多くの家でいたと思います。猫の役目は、ネズミ対策。もちろん、人の気持ちをなぐされる効果もありました。
そんな猫たちにとって、春と夏?は、繁殖の季節です。夏はそれほどでもなかったかもしれませんが、春になるとその鳴き声は独特なものになるのでした。子どもごころに、その異変が気になって家族に聞くと、大丈夫だからという答えが返ってきました。
いつの間にか、おなかが膨らんできて、子猫が入っていることが分かります。その様子は、いとおしく思えるものでした。
そして出産。数匹の子猫が生まれます。でも、それらを飼うことは無理な話でした。どこの家でもいるので、子猫を欲しがる家はいません。むしろその逆です。
生まれた子猫たちは、まだ目の開かないうちに、捨てられることになりました。子どもたち(自分たち)が、かわいそうだからダメと言っても、それは変わりませんでした。それは家族のだれが決めたのでもない、祖父の役目でした。祖父だって、好き好んでそんなことをしたのではないことだったでしょう。本当に損な役回りだったと思います。
おそらく、誰だって、損な役回りのひとつやふたつは抱えているに違いありません。そんな人こそ、人間臭くて魅力的に思えます。