2012年の「永田町の主役」に、財務省の存在を忘れることはできまい。6月26日、「社会保障と税の一体改革」関連法案の衆院可決で、財務省は悲願の消費税増税に大きく前進した。
この改革法案を先頭で牽引してきたのが、「10年に1度の大物次官」といわれ、7月で就任3年目に突入した財務省の勝栄二郎事務次官だ。通常次官は1年交代が多く、3年目は怪物級だ。
「野田佳彦首相の信頼が厚く、『事実上、官邸をコントロールしている』といわれている。野党は『陰の総理だ』と揶揄(やゆ)している」(霞が関関係者)
確かに、勝氏はここ数年、「財務省パワー」のシンボルとして、さまざまな風評が流布されてきた。民主党関係者がそのいくつかを明かす。
「菅直人前首相が就任直後、『消費税増税の必要性』を唱え始めたのは勝氏の説得のようだ。総理候補として亜流だった野田首相が登り詰めた背景にも、財務省の存在があるといわれている」
鳩山由紀夫政権時代、野田首相を財務副大臣に引き上げたのは、当時の藤井裕久財務相。藤井氏は、勝氏に対して「野田さんの面倒をみてほしい」と依頼したとされる。
「勝氏は、野田首相が持つ猪突猛進の素質をズバリ見抜いた。『この原石は磨けば光る』と、財務省マインドで寄り添い、協力してきた。昨年の民主党代表選挙でも、財務省は野田首相誕生のため裏選対として動いたともささやかれている」(民主党関係者)
さて、財務省が今年、もう1つの力を発揮したのが東京電力の問題だ。政府は一時、東電の完全国有化で突っ走ろうとした。これを阻止したのが「勝-勝ライン」といわれている。経産省幹部がこう解説する。
「勝-勝ラインとは、財務省の勝氏と、東電の勝俣恒久前会長のこと。勝俣氏は東電の完全国有化を避けるため、勝氏に民間存続を訴えた。勝氏も、国有化で国が賠償負担を無制限で負うことを避けたかった。ならば生かさず殺さずで、議決権の割合を引き上げて国が経営に口出しできるようにしながら、東電の利益は賠償金とし吐き出させるよう、調整に動いた」
民主党の「政治主導」が崩壊するなか、官邸から財界まで、財務省主導で進んでいるのか。自民党関係者は語る。
「大阪市の橋下徹市長率いる『大阪維新の会』は、維新八策で『統治機構改革=地方分権』『消費税の地方税化』などを打ち出している。これは中央集権体制の象徴である財務省にとって脅威。全国から集めた税金を分配する権限を奪われかねない。橋下維新を最大の『リスク要因』と受け止めているようだ」
次期衆院選は「既成政党vs橋下維新」といわれてきたが、実は「財務省vs橋下維新」という構図なのかもしれない。=おわり(ジャーナリスト・田村建雄)
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