南の海のワナビ

小説家を目指す「南野海」の野望ははたして達成されるのか?

姫川亜弓の悲劇

2007-05-08 18:46:16 | マンガ
 前に書いた「ガラスの仮面」の記事へ、検索で入ってくる人がけっこういるので、第二弾を。
 今回はマヤのライバルの姫川亜弓にスポットを浴びせてみましょう。
 有名女優と映画監督の娘であり、お屋敷でお金持ちのお嬢様としてなに不自由なくくらしてきた姫川亜弓。しかもその七光りを利用し、子供のころから演劇界で大活躍。しかも七光りに甘えるだけでなく(というか、成長してからはむしろそれを毛嫌いして)、自らの努力で道を切り開いた負けず嫌いとプライドのかたまり。そして華やかな美女。
 まさしく主人公北島マヤのアンチテーゼです。
 最初はただのわがままお嬢様として登場したのですが、話が進むにつれて、彼女のプライドが高いのは、七光り女優と言われないために、陰で死にものぐるいの努力をしてきたからだということがわかってきます。
 亜弓はおそらく目標を明確に定め、それに向かっていくには自分になにが足りないかを正確に理解し、それを克服するための努力を惜しまないタイプなのでしょう。
 それはある意味、とてつもない才能であり、それができる人はどんな分野でも成功するでしょう。
 だからこそ、彼女は演劇会で人気実力を兼ね備えたスターになったわけです。
 そんな姫川亜弓の前に、北島マヤが現れます。
 一見なにも考えていないようで、見た目も平凡、おまけに普段はドジっこで、才能の片鱗も見せないくせに、いざとなればその天才をまざまざと見せつける女。
 心中察します。
 きっと北島マヤの存在を認めたくはなかったでしょう。
 なにしろ、自分が長年築き上げてきたものを根底からぶちこわすような存在です。
 もし姫川亜弓が性悪女だったら、どんな手段を使ってでもマヤをつぶそうとしたはずです。
 しかし彼女はそれをやらず、ライバルとして認めてしまった。
 それどころか、マヤを罠にはめて追い落とした汚い女(乙部のりえ)を計画的に追いつめて破滅させる徹底ぶり。そしてマヤが落ちぶれて、誰もが復活は無理だと信じたとき、ただひとり(除く、月影先生)「復活を信じて待つ」と宣言。
 うう、なんていい子なんだ、姫川亜弓。
 っていうか、こんないい人現実にはいません。
 演劇と関係ない人とか、初めからマヤには敵わないと思ってる人ならば、そういう人もいるでしょう。
 しかし亜弓にとってマヤは「紅天女」を競う最大のライバルであり、しかも亜弓は異常に勝ち負けにこだわる人なのです。普通ならば、これぞチャンスとばかりに自分がのし上がることを考えるはずです。
 しかし、亜弓は正々堂々と戦い、実力でマヤを負かして「紅天女」をつかみ取らなければ気がすまなかったのでしょう。
 あなたのまわりにいますか、そんな人?
 そこまで気高い精神を持った人が。

 ただし、それが姫川亜弓の悲劇なのです。
 そんなことにこだわらず、「紅天女」を奪い取れればラッキーと思えるような人だったら、きっと幸せになれたはずなのに。
 地獄の底から這い上がったマヤは、「ふたりの王女」で亜弓と共演します。
 そのさい、亜弓は生まれてはじめて「役と一体になる感覚と、その感動」に打ち震えます。
 ところマヤはあっさり、
 「どうして亜弓さんがそんなことをいうかわからない。だってそれって普通のことでしょ?」っていうような意味のことを言うわけです。
 それも、なんの悪意もなく、無邪気に。
 ああ、なんてかわいそうなんだ、姫川亜弓。
 きっと彼女はこう思ったことでしょう。
 「なぜ神はわたしに彼女の才能を理解できる程度の才能しか与えなかったのか?」
 そう、「アマデウス」でモーツアルトに出会ったサリエリ状態です。
 どう考えても、マンガでの主人公とライバルの立場が逆です。
 たいした才能もなく、日々必死に努力して一生懸命生きている一般人は、思わず亜弓の方を応援したくなってしまいます。

 このへんも「ガラスの仮面」の人気の秘密なんでしょう。
 主人公のキャラだけが立ってもしょうがないですから。

 物語はそんなふたりが「紅天女」の役を争うところでとまっています。
 今後どうなるのかわかりませんが、物語の流れからいけば、マヤが勝つしかありません。マヤが負けて、「紅天女」を演じれないエンディングなど、これだけ長い物語の結末としてあり得ないからです。
 しょせん、姫川亜弓は作者にとっても、月影先生にとってもマヤの噛ませ犬でしかないのですから。

 両者引き分けってことで、ダブルキャストにしてやれよ、月影先生。

BSマンガ夜話 ガラスの仮面 -美内すずえ-

ハピネット

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