南の海のワナビ

小説家を目指す「南野海」の野望ははたして達成されるのか?

蘇部健一の最高傑作は「ふつうの学校」

2007-05-02 23:06:58 | 読書
 メフィスト賞作家に蘇部健一というお方がいます。
 この人のデビュー作「六枚のとんかつ」を読んだとき、その衝撃にひっくり返りそうになりました。
 え? ガッツ石松がどうしたって?
 短編集であるこの作品の第一作で、南野はとまどいました。
 そしてそのオチを読んだとき、爆笑し、数秒後にあきれかえりました。

 今度のメフィスト賞はこれできたのか?

 メフィスト賞二作目の「コズミック」のぶっ飛び具合は半端じゃありませんでしたが、三作目の「六枚のとんかつ」もある意味、負けていない怪作だったのです。

 「コズミック」の流水先生も、そうとう叩かれたようですが、蘇部先生もぼろくそに叩かれました。
 ある有名な作家兼評論家の方など、ゴミあつかいしたらしいです。

 でも南野は、密かにすごいおもしろいと思っていました。
 こういう爆笑できるショートギャグを連発できる人は貴重だと思ったんです。

 でもギャグが冴えを見せたのは、この一冊だけでした。
 ネタが尽きたのか、路線を変更しようとしたのかはわかりませんが、その後、どうも調子がよくありません。
 まあ、ギャグ作家というのは、マンガ家でも寿命が短いし、仕方がないのかなあと思っていると、この人、べつのジャンルでとんでもない怪作を生み出したのです。

 その名も「ふつうの学校」。三部作。講談社青い鳥文庫です。

 青い鳥文庫というのは、小学生を中心とした児童文学文庫。
 「六枚のとんかつ」が面白いと思った人でも、まず手は出さないジャンル。
 なぜ南野が読んだかというと、ちょうどそのころ児童文学を書き始めたので、今の児童文学とはどんなものなのか? との思いから、参考にしたかったのです。(まあ、他にもいろいろ買ったのですが、その中にこれが入ってたわけです)
 これを読んだとき、まず思ったこと。

 これって、ありなの?

 南野の子供のころの児童文学は、よい子が活躍したり、ひどい目にあったりするものが多かったような気がします。
 児童文学は親が子供に買い与えるもの。だから、あまりとんでもないものは親が顔をしかめるだろう。
 そういう約束事があったような気がします(江戸川乱歩とかは、かなりとんでもない気もしますが、それでもやっぱり小林少年はよい子です)
 最近はその風潮が壊れ、子供が喜ぶものが売れるらしいというのは知っていました(「かいけつゾロリ」とかもそうらしいですし)。

 で、でも、主人公の少年(小学五年生)がどスケベ、っていうのはいいのか?
 そして、担任の先生がむちゃくちゃというのもあり?
 さらに超美人の先生や、かわい子ちゃん(死語?)ぞろいのクラスメイトたち。

 なんか「ハレンチ学園」を思い出してしまいましたよ。
 いや、あそこまでははじけてないんですが、めちゃくちゃなのは変わりありません。
 主人公、アキラ(すけべ)の担任、稲妻先生は、児童相手からいかさま賭け麻雀(どんじゃら)で金を巻き上げるわ、読書なんてなんの役にも立たないと説教するわ、あげくに朝の読者の時間に、エロ小説をカバーだけ差し替えて児童に読ませるわと、大活躍。
 超美人にして超まじめのルイ先生とはがちバトルをして投げ飛ばされるわ(ルイ先生は強い)、ほんとうに愛すべき先生です。
 さらに学校で変な事件がしょっちゅう起き(例、ブラジャー盗難事件)、それを小学生のくせに妙にひねた六さんが快刀乱麻を断つかのごとく解決します。

 いやあ、南野、子供のころにこんな本読みたかったですね。

 と同時に、書くものが児童文学と言えど、しゃちほこばって考える必要もないんだなという、大事なことを学びました。
 子供のころの気持ちにもどって、書きたいことを書けばいいですよ、きっと。

 ただ、このシリーズ、重版のかかり具合を見る限り、ちっとも売れてないのが気がかりです。
 ひょっとして、親が「こんな本だめよ」と言って、買ってくれないんでしょうか?

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