◇
山の前で、囁くほどの小声で喋っただけなのに、
バカでかい声になって木霊が返って来た。
あの山にはいったい、どんな化け物が棲んでいるのだろう。
僕は弟を連れて、探検に行くことになった。
寝ている弟を起こし、乾パンなどの入った、非常用のナップザックを
背負って、二人で山へ向かって行った。途中で、散歩から帰って来た
隣のおばさんに会った。
「二人して、どこへ行くの?」
とおばさんが訊いた。
「あの山に化け物がいるから、探検に」
と僕が言った。おばさんは変な顔をして行ってしまい、
僕と弟はまた歩き出した。
しばらく行くと、後ろから母の声がして、追いかけて来た。
母は二人ともおかしいと思って、持って来た目覚まし時計を、
けたたましく鳴らした。僕と弟はパチッと目が開いて、
全部夢だったと分った。弟まで夢を見ながら、夢の中を歩いて来たのだ。
このとき、前の山で、バーンと銃声がした。
「ほら、化け物が鉄砲撃ちに撃たれた」
と僕が言った。弟が頷いた。
おわり
山の前で、囁くほどの小声で喋っただけなのに、
バカでかい声になって木霊が返って来た。
あの山にはいったい、どんな化け物が棲んでいるのだろう。
僕は弟を連れて、探検に行くことになった。
寝ている弟を起こし、乾パンなどの入った、非常用のナップザックを
背負って、二人で山へ向かって行った。途中で、散歩から帰って来た
隣のおばさんに会った。
「二人して、どこへ行くの?」
とおばさんが訊いた。
「あの山に化け物がいるから、探検に」
と僕が言った。おばさんは変な顔をして行ってしまい、
僕と弟はまた歩き出した。
しばらく行くと、後ろから母の声がして、追いかけて来た。
母は二人ともおかしいと思って、持って来た目覚まし時計を、
けたたましく鳴らした。僕と弟はパチッと目が開いて、
全部夢だったと分った。弟まで夢を見ながら、夢の中を歩いて来たのだ。
このとき、前の山で、バーンと銃声がした。
「ほら、化け物が鉄砲撃ちに撃たれた」
と僕が言った。弟が頷いた。
おわり