波乱の海をぶじ目的地へ

現世は激しく変動しています。何があるか判りませんが、どうあろうと、そんな日々を貧しい言葉でなりと綴っていけたらと思います

化け物探検

2016-11-26 14:25:24 | 童話


 山の前で、囁くほどの小声で喋っただけなのに、
バカでかい声になって木霊が返って来た。
 あの山にはいったい、どんな化け物が棲んでいるのだろう。
 僕は弟を連れて、探検に行くことになった。
 寝ている弟を起こし、乾パンなどの入った、非常用のナップザックを
背負って、二人で山へ向かって行った。途中で、散歩から帰って来た
隣のおばさんに会った。
「二人して、どこへ行くの?」
 とおばさんが訊いた。
「あの山に化け物がいるから、探検に」
 と僕が言った。おばさんは変な顔をして行ってしまい、
 僕と弟はまた歩き出した。
 しばらく行くと、後ろから母の声がして、追いかけて来た。
 母は二人ともおかしいと思って、持って来た目覚まし時計を、
けたたましく鳴らした。僕と弟はパチッと目が開いて、
全部夢だったと分った。弟まで夢を見ながら、夢の中を歩いて来たのだ。
 このとき、前の山で、バーンと銃声がした。
「ほら、化け物が鉄砲撃ちに撃たれた」
 と僕が言った。弟が頷いた。

  おわり