アメリカでは90%の人々が結婚し、その半数の45%が離婚しています。
日本でもこのような社会になるのでしょうか?そのための準備はしたほうが良いのでしょうか?
仲が悪くなったら冷却期間をおいて離婚だけは避けたほうが良いものです。しかしどうしても離婚しなければならない場合もあります。 その場合は離婚の多いアメリカの実態を知り、経済的そして心理的にも準備をした方が良いと思います。アメリカで体験したことを少し書いてみます。
◎アメリカの離婚の実態の一例
オハイオ州コロンバス市で私共の結婚式の世話をしてくれた友人夫妻と恩師の先生夫妻がしばらくして、ともに離婚しました。自由・平等の国アメリカでは離婚の数が日本より断然多いのです。しかし、離婚で生ずる子供への犠牲、悲劇への友人の巻き込み、経済的損害などを考えると、離婚の代償は日本の場合と同じと思います。
友人のジャックと奥さんの金髪美人ナンシーが、私共の結婚式の全てを世話してくれました。1961年のことです。そのナンシーは料理上手で、服も自分で縫い上げる優雅な才媛でした。
4、5年後、東京に住んでいた我々にナンシーから突然の航空便が来ます。夫が浮気をしたので離婚した。いま子供二人を連れて行商のような仕事をしながらアメリカ中をさすらっている。田舎町の行商旅の悲しさ。夫のいない三人だけのわびしいホテルでの夕食の様子などが細かに書いてあります。何度もそのような悲しい手紙が来ました。そのたびに家内が勇気付ける手紙を出していました。
そのうちナンシーから手紙が来なくなりました。美人である彼女が再婚できないはずがないと安心しました。一方、あんなに親切だった夫のジャックからは手紙が来ません。夫にも言い分があったはずですが、沈黙です。アメリカでは離婚が起きたら他人は勝手に慰めたりしてはいけないことになっています。見て見ぬ振りをする。それが一番の親切であり社会的礼儀と聞きました。
@社会は離婚を受け入れ差別しない ―離婚後の社会的ルール
離婚は個人的な悲劇にとどめよう―それがアメリカ社会の約束です。
恩師夫妻も離婚しました。後にオハイオを訪問したときアメリカの友人に聞きました、「あす大学に行くが、恩師に会った時、何って言えばよいの?」「何も言うな。一切知らなかったことにするのがよい」「恩師の前の奥さんには大変お世話になったので、家内からのお土産を持って来たが?」「彼女はA 教授と再婚した。今晩、その家へ連れて行ってあげる。でも離婚のことは話題にするな」その夜、前に世話になった奥さんを訪問したところ非常に喜んでくれました。離婚のことは先方も説明しないし、こちらも話題にしませんでした。
夫婦が別れた後は顔も見たくないというのが洋の東西にかかわらず本音でしょう。しかし離婚の多いアメリカでは「離婚の自由」が「離婚後はお互い友人として付き合い、社会生活では離婚による差別はしない」という規範に支えられています。これは決して偽善ではないのです。社会的平和を守るためのルールなのです。
離婚した恩師はその後、学科主任になりました。学科主任は毎年二回ぐらい教授や学生を自宅へ招くのが普通です。同じ学科のA教授と再婚した前の奥さんも招待しなければいけないのです。招待を受けたら出席するのが義務です。パーテイーでは前の夫の学科主任が明るく歓迎の言葉をかけていました。
親しい教授に「前の奥さんがかわいそうだ。帰る時そば行って慰めてやりたいが」「やめなさい。帰るのに気が付かない振りをするのが親切というもの。それがアメリカの社会のルールなのです」
過去は水に流す。過去の悪いことは一切忘れる。一番大切なのは将来だけです。「未来指向のアメリカ」という意味の一部には離婚後の社会的ルールも含まれているのです。
日本でも離婚が多くなりました。理不尽な夫婦生活を続けより離婚したほうが良い場合があります。その場合の離婚後の社会的ルールを日本は独自に作って行くべきと思います。
不幸にして離婚した人々の悲しさをすこしでも少なくし、社会生活を快適にするためにも重要なことではないでしょうか? 皆様はどのようにお考えでしょうか?
今日は、夫婦おそろいの方々のためにお祈りいたします、夫婦円満に一日を過ごされますように。 藤山杜人