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てらまち・ねっと



 村山談話の4つのキーワード【植民地支配】【侵略】【おわび】【反省】を入れるかどうか、もし入れるならどのようにか、などが注目されていた「安倍70年談話」。
 今朝の民放のニュースを見ていて、この4点の言葉が使われている部分の映像、読み上げる安倍氏を見ていて「入れるべき言葉は入れただけで、前後の文脈からは意味が違う」と思った。
 そこまで、正当化したいのかと安倍氏の強い執念を感じた。

 そこで、「首相官邸/戦後70年安倍首相談話の全文」を点検。
 ・・《百年以上前の世界には、西洋諸国を中心とした国々の広大な植民地が、広がっていました。圧倒的な技術優位を背景に、植民地支配の波は、十九世紀、アジアにも押し寄せました。その危機感が、日本にとって、近代化の原動力となったことは、間違いありません。アジアで最初に立憲政治を打ち立て、独立を守り抜きました。日露戦争は、植民地支配のもとにあった、多くのアジアやアフリカの人々を勇気づけました。

 《戦後七十年にあたり、国内外に斃たおれたすべての人々の命の前に、深く頭こうべを垂れ、痛惜の念を表すとともに、永劫えいごうの、哀悼の誠を捧ささげます。》

 《事変、侵略、戦争。いかなる武力の威嚇や行使も、国際紛争を解決する手段としては、もう二度と用いてはならない。植民地支配から永遠に訣別けつべつし、すべての民族の自決の権利が尊重される世界にしなければならない。》

 《私たちは、自らの行き詰まりを力によって打開しようとした過去を、この胸に刻み続けます。だからこそ、我が国は、いかなる紛争も、法の支配を尊重し、力の行使ではなく、平和的・外交的に解決すべきである。この原則を、これからも堅く守り、世界の国々にも働きかけてまいります。》

 以下は、産経(ソウル発)から。
 《韓国の聯合ニュースは「(わが国は)繰り返し、痛切な反省と心からのおわびの気持ちを表明してきました」とのくだりなどを取り上げ、「安倍談話“過去形謝罪”」との見出しで否定的に報道。「安倍晋三首相は談話で植民地支配と侵略に触れたものの、これらについて日本の行動と明示しなかった」とも不満を示した。》

 《戦後70年談話は、村山談話の4つのキーワード(植民地支配、侵略、おわび、反省)のすべてに言及しているとした上で、「しかし実際の内容は村山談話の歴史認識から大幅に後退したと評価される見通しだ」との見解を示した。》

 ブログには以下を記録。なお、7月のデータだけど「ドイツが許されて日本が許されない本当の理由(ビデオニュース・ドットコム)
」はすっきりしている。

●安倍談話「おわび」「侵略」言及 目立つ引用・間接表現/朝日 2015年8月14日 
●なぜ今、談話? 過去の談話に不満 /日経 2015/8/14
●村山元首相が安倍談話を問題視 「引き継がれた印象ない」/共同通信 2015/08/15
●村山氏「談話引き継がれず」/大分合同新聞 08/15
●「率直な謝罪でない」=村山元首相/ガジェット通信 2015年8月14日

●中国「直接のおわび回避」、韓国「誠意がない」/読売 2015年08月15日
●中国「誠実におわびすべき」 木寺大使呼び不満表明/TBS(15日02:29) 

●【戦後70年談話】中国外務省「いかなるごまかしもすべきではない」と批判 韓国メディアは「過去形謝罪」と報道/産経 2015.8.14

●ドイツが許されて日本が許されない本当の理由/ビデオニュース・ドットコム 2015年7月25日

●戦後70年安倍首相談話の全文/首相官邸 平成27年8月14日 

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●安倍談話「おわび」「侵略」言及 目立つ引用・間接表現
    朝日 2015年8月14日 円満亮太
 安倍内閣は14日、戦後70年の首相談話(安倍談話)を閣議決定した。戦後50年の村山談話、60年の小泉談話に盛り込まれた「植民地支配」「侵略」「痛切な反省」「心からのおわび」といった文言を使う一方で、歴代内閣の方針を引用するなど間接的な表現が目立ち、首相自身の歴史認識は見えにくい内容となった。

安倍首相の戦後70年談話全文
 安倍晋三首相は閣議後、首相官邸で記者会見して談話を発表した。談話では1931年の満州事変や33年の日本の国際連盟脱退に触れ、「(日本は)進むべき針路を誤り、戦争への道を進んでいった」と指摘。「事変、侵略、戦争。いかなる武力の威嚇や行使も、国際紛争を解決する手段としてはもう二度と用いてはならない。植民地支配から永遠に決別し、すべての民族の自決の権利が尊重される世界にしなければならない。先の大戦への深い悔悟の念とともに、我が国はそう誓った」と振り返った。

 また「我が国は先の大戦における行いについて、繰り返し、痛切な反省と心からのおわびの気持ちを表明してきた」と村山・小泉両談話にある表現を引用。その上で「こうした歴代内閣の立場は、今後も揺るぎないものである」とした。

●なぜ今、談話? 過去の談話に不満
        日経 2015/8/14
 安倍晋三首相が戦後70年談話を発表しようとしたのはなぜか。

 終戦記念日に合わせて歴史認識を示す首相談話は、戦後50年の1995年の村山富市首相と戦後60年の2005年の小泉純一郎首相が発表した。先の大戦に「おわび」を表明した2つの談話に安倍氏は不満を抱いてきた。

 首相は12年末に再登板すると、戦後70年談話をつくる考えを早々と表明。戦後70年の歴史の節目に自らの歴史認識を示した談話を出そうと考えた。

 従軍慰安婦問題に関する93年の河野洋平官房長官談話にも不満だった。12年の党総裁選では河野談話見直しに意欲を示した。14年6月に河野談話の作成検証結果をまとめ、旧日本軍による「強制性」については、韓国の要請に応じる形で「総じて本人たちの意思に反して」との表現を用いたとした。

●村山元首相が安倍談話を問題視 「引き継がれた印象ない」
         共同通信】2015/08/15
 村山富市元首相は14日、戦後70年の安倍晋三首相談話発表を受けて大分市で記者会見し、戦後50年の村山談話との整合性について「だいぶ中身が違うという印象を与える。引き継がれた印象はない」と問題視した。「新たな談話を出すことで国際的に持たれた疑念に答えるために、もっと明確な表現をすべきだった」と首相を批判した。

 村山氏は「美辞麗句を並べたが、何をおわびし、これからどうするのか説明していない。これからの日本が進む方向を明確に打ち出すべきだった」と主張した。

 焦点のキーワードに関しては、「植民地支配などの言葉をできるだけ普遍化した」と指摘した。

●村山氏「談話引き継がれず」
           大分合同新聞 08/15
 戦後70年の安倍首相談話を受け、村山富市元首相(91)が14日、大分市内で会見。戦後50年に自身が発表した村山談話が「引き継がれたという印象はない」との認識を示し、「美辞麗句を並べているが、何が焦点で、何をおわびしているのか不明確だ」と批判した。「国際的に持たれた疑問に答えるため、もっと明確な表現をすべきだった。出す必要のない談話だ」などと述べた。

 安倍談話には村山談話のキーワードとされる「植民地支配」「侵略」「おわび」が盛り込まれた。だが、村山氏はかつての西欧諸国の植民地支配に触れた部分を挙げ、「植民地支配や侵略という言葉をできるだけ普遍化している。率直に謝る文章になっていない」と指摘した。
 その上で「(安倍首相は)できるだけ薄めて触れたくない気持ちがあったのだろう。言葉に十分配慮した文章だが、本心をオブラートに包み、ぼかすことに苦労したと思う」と強調した。

 近隣諸国との外交上の影響について「(先の大戦で)アジアに大変な迷惑を掛けたことは、明確に、端的に述べた方がよかった。村山談話とはだいぶ中身が違うとの印象を与えるのではないか」と懸念した。

 安倍首相が掲げる「積極的平和主義」に関しても「中身について説明がない」とした上で、「集団的自衛権を認め、憲法解釈を勝手に変えて戦争ができる国にしようとしているのに、談話では一切触れていない。(国会で審議中の)安全保障関連法案に対する国民の疑念を深めると思う」と述べた。

●「率直な謝罪でない」=村山元首相
         ガジェット通信[時事通信社]2015 年 8 月 14 日
 村山富市元首相は14日、大分市で記者会見し、安倍晋三首相の戦後70年談話について「植民地支配や侵略をしたことが大変悪かったと率直に謝る印象の文になっていない」と批判した。その上で「焦点がぼけ、さっぱり何を言いたかったのか分からない。村山談話を継承すると言えば、その一言で済んだ」と語り、改めて首相談話を出す意義に疑問を呈した。

 村山氏は、自身が戦後50年談話に明記した「植民地支配と侵略」や「反省とおわび」の文言に関し、「村山談話のキーワードをできるだけ薄めて触れたくないという気持ちがあったのだろう」と首相の心境を推し量った。

●中国「直接のおわび回避」、韓国「誠意がない」
         読売 2015年08月15日
 【北京=五十嵐文、ソウル=宮崎健雄】中国外務省は14日、同省の張業遂ジャンイエスイ次官が木寺昌人中国大使に対し、安倍首相の談話に関して中国の「厳正な立場」を表明したとウェブサイトで発表した。

 同省の華春瑩フアチュンイン副報道局長は「日本は当然、被害国の国民に誠実におわびすべきだ」と主張、「実際の行動でアジアの隣国と国際社会の信頼を得るよう促す」と述べた。

 中国国営新華社通信は14日、安倍首相の談話は「直接のおわびを回避」と報じ、「首相は日本が今後おわびを続ける必要はないと表明した」と解説した。中国共産党機関紙・人民日報系の環球時報(電子版)も社説で「中日関係をさらに悪化させる導火線にはならないが、大きく改善させる動力にもならない」と論じた。

 習近平シージンピン指導部は、安倍首相が村山首相談話などに盛り込まれた「おわび」「反省」などを盛り込むよう求めていた。習指導部は、天津市の大爆発や中国経済の後退で社会不安が高まることを警戒しており、政権批判につながりかねない反日世論の広がりを避ける狙いもあった。

 「おわび」などが明記されたことで、習政権は日本との経済協力や民間交流は引き続き推進しながら、首相の歴史観にはなお不信が残るとして歴史をめぐる対日圧力は緩めない可能性が高い。

 一方、韓国の主要紙電子版やテレビは、安倍首相談話について、「誠意がない、過去形の謝罪」(公共放送KBSテレビ)などと一斉に批判した。聯合ニュースは、安倍首相が「我が国は繰り返し、痛切な反省と心からのおわびの気持ちを表明してきた」と発言したことについて、「自分の声で謝罪する代わりに、『過去形』で謝罪に言及するにとどまった」と指摘。その上で、「村山、小泉談話よりも大幅に後退した」と不満を示し、「歴史認識をめぐる日韓間の葛藤は相当の間続く見通しだ」と報じた。

●中国「誠実におわびすべき」 木寺大使呼び不満表明
          TBS(15日02:29) 
 安倍総理の戦後70年談話を受けて、中国外務省は14日夜、木寺駐中国大使を呼び、「日本は誠実におわびをすべきだ」などと伝えたことを明らかにしました。

 中国外務省の発表によりますと、14日午後午後10時すぎ、木寺昌人駐中国大使を外務省に呼び、張業遂筆頭外務次官から「日本は戦争責任について明確に釈明し、被害国の人々に真摯なる謝罪をすべきだ」などと中国の厳正な立場を表明したということです。談話の内容や表現に直接言及はしていないものの、一定の不満を示したものとみられます。

 北京の日本大使館によりますと、木寺大使は「中国の方々に総理の率直な気持ちをありのまま受け止めてほしい。一部だけを切り取って強調するよりも、談話全体のメッセージを受け取ってほしい」と応じたということです。

 「あまり誠意が見られない。本当に謝罪したとは思えない」
 「良かったと思う。少なくとも“おわび”としたので」
 「誰が安倍総理の謝罪を受け入れると思う?」(街の人)

 中国国営の新華社通信は、談話が「歴代内閣の歴史認識を引用する形で直接の反省とおわびを回避した」と報じています。

●【戦後70年談話】中国外務省「いかなるごまかしもすべきではない」と批判 韓国メディアは「過去形謝罪」と報道
          産経 2015.8.14
 【北京=川越一】中国外務省の華春瑩報道官は?日、安倍晋三首相の戦後?年談話について、「日本は当然、戦争責任を明確に引き継ぎ、被害国の人民に誠実に謝罪し、軍国主義の侵略の歴史を切断すべきだ。この重大な原則問題についていかなるごまかしもすべきではない」と批判する談話を出した。

 華報道官は談話の中で、張業遂筆頭外務次官が同日、木寺昌人駐中国大使に中国側の厳正な立場を伝えたと明らかにした。

 また、中国国営新華社通信(英語版)は同日、安倍首相が、日本の「侵略」「植民地支配」については直接触れず、一般論にとどめたことに不満を示し、「未来の世代は、大戦中の残虐行為について謝罪を続ける必要はないと付け加えた」と反発をにじませた。

 中国共産党系の国際情報紙、環球時報(電子版)は、安倍首相が侵略を受けた国・地域に対する「お詫び」に言及した中で、「中国」が最後に列挙されたことや、これとは別に「台湾」が個別に言及されたことにも、不快感を示した。

     ◇
 【ソウル=藤本欣也】韓国の聯合ニュースは14日、臨時閣議終了直後の午後5時半に「戦後70年談話を閣議決定」と速報、極めて高い関心を示した。同ニュースは、談話の中の「(わが国は)繰り返し、痛切な反省と心からのおわびの気持ちを表明してきました」とのくだりなどを取り上げ、「安倍談話“過去形謝罪”」との見出しで否定的に報道。「安倍晋三首相は談話で植民地支配と侵略に触れたものの、これらについて日本の行動と明示しなかった」とも不満を示した。

 さらに戦後70年談話は、村山談話の4つのキーワード(植民地支配、侵略、おわび、反省)のすべてに言及しているとした上で、「しかし実際の内容は村山談話の歴史認識から大幅に後退したと評価される見通しだ」との見解を示した。

 一方、与党セヌリ党の報道官は14日、「反省とおわびなどに言及したという点では意味のある談話だ」と評価した。

 韓国大統領府は戦後70年談話の発表を受けて、日本支配からの解放70周年を祝う15日の朴槿恵(パク・クネ)大統領の演説内容の最終調整を進めた。朴大統領が演説で日韓関係についてどのように言及するのか注目されている。

●ドイツが許されて日本が許されない本当の理由
        ビデオニュース・ドットコム マル激トーク・オン・ディマンド 第746回(2015年7月25日)石田勇治氏(東京大学大学院教授)
 戦後70年を迎えるにあたり、安倍首相は「戦後70年談話」を発表する意向を示しているが、そこでは相変わらず「謝罪の有無」や「反省の表現のあり方」などが問題となっている。一体、日本はいつまで謝り続けなければならないのだろうとの思いを持つ向きもあるだろう。

 談話の内容を検討している首相の私的諮問機関である21世紀構想懇談会からは、謝罪にこだわるよりも未来志向をなどといった考えが示されているようだが、やはり今度もまた「おわび」の有無をめぐる論争は避けて通れそうもない。

 一方、日本と同じ枢軸国として先の大戦を戦い、暴れるだけ大暴れした挙げ句に無条件降伏をしたドイツは、今年5月に一足早く戦後70年を迎えているが、そこでおわびや反省が問題になったという話はついぞ聞かない。日本とは比較にならないほどの規模で世界を大戦の惨禍に巻き込み、ナチスによるユダヤ人の大虐殺という人類史上類を見ない負の歴史を抱えるドイツは、この70年の間に見事にその過去を克服し、国際社会から信頼を勝ち取ることに成功しているように見える。

 ドイツに過去を克服することができて、なぜ日本にはできないのか。

 ドイツの近現代史やジェノサイド問題に詳しい東京大学教授の石田勇治氏は、ドイツの過去の克服の道程は、決して順風満帆にして平坦なものではなかったという。むしろドイツも日本と似たような、過去に対する反省と忘却や自己正当化の間を揺れ動きながら、様々な紆余曲折を経て、今日の信頼を勝ち得るまでに至ったのだという。そして、その信頼を勝ち得る上でポイントになったものは、ナチズムを全面的に否定するとともに、その被害を補償し、ナチの蛮行に加担した人物を徹底的に司法訴追することによって初めて達成されたものだった・・・・(略)・・・

・・・・(略)・・・ドイツが世界にメッセージを発する一方で、日本は何も発信していなかったのではなく、しっかりと誤ったメッセージを発していたと言わざるを得ない。

 頻発する政治家による過去の侵略や蛮行を正当化するような不規則発言は言うに及ばず、もっぱら東京裁判に戦争責任の追及を委ねることで、独自の戦争責任の追求を怠り、戦後補償についても国家間賠償に任せてそれ以外の補償については消極的な姿勢を続けてきた日本の「過去の克服」のための努力は、ドイツのそれと比べた時に大いに見劣りすることは否めない。ドイツと日本では戦争犯罪のスケールが違い過ぎるとの言い訳も聞かれるが、より大きな負の遺産を背負ったドイツがいかにして過去を克服したかからは、日本も学ぶところは多いはずだ。

 戦後70年を迎えるにあたり、国際的な信用と信頼を勝ち得るために今、日本は何をしなければならないか。ドイツが過去の克服のために経てきた紆余曲折の歴史と、そうした中で最終的に信頼を勝ち得ることができた原因や背景を検証しながら、ゲストの石田勇治氏とともにジャーナリストの神保哲生と社会学者の宮台真司が議論した。・・・・・

●戦後70年安倍首相談話の全文
  首相官邸トップ 総理大臣総理指示・談話など 平成27年8月14日 内閣総理大臣談話

       ◇
 終戦七十年を迎えるにあたり、先の大戦への道のり、戦後の歩み、二十世紀という時代を、私たちは、心静かに振り返り、その歴史の教訓の中から、未来への知恵を学ばなければならないと考えます。

 百年以上前の世界には、西洋諸国を中心とした国々の広大な植民地が、広がっていました。圧倒的な技術優位を背景に、植民地支配の波は、十九世紀、アジアにも押し寄せました。その危機感が、日本にとって、近代化の原動力となったことは、間違いありません。アジアで最初に立憲政治を打ち立て、独立を守り抜きました。日露戦争は、植民地支配のもとにあった、多くのアジアやアフリカの人々を勇気づけました。

 世界を巻き込んだ第一次世界大戦を経て、民族自決の動きが広がり、それまでの植民地化にブレーキがかかりました。この戦争は、一千万人もの戦死者を出す、悲惨な戦争でありました。人々は「平和」を強く願い、国際連盟を創設し、不戦条約を生み出しました。戦争自体を違法化する、新たな国際社会の潮流が生まれました。

 当初は、日本も足並みを揃そろえました。しかし、世界恐慌が発生し、欧米諸国が、植民地経済を巻き込んだ、経済のブロック化を進めると、日本経済は大きな打撃を受けました。その中で日本は、孤立感を深め、外交的、経済的な行き詰まりを、力の行使によって解決しようと試みました。国内の政治システムは、その歯止めたりえなかった。こうして、日本は、世界の大勢を見失っていきました。

 (◎1)満州事変、そして国際連盟からの脱退。日本は、次第に、国際社会が壮絶な犠牲の上に築こうとした「新しい国際秩序」への「挑戦者」となっていった。進むべき針路を誤り、戦争への道を進んで行きました。

 そして七十年前。日本は、敗戦しました。

 戦後七十年にあたり、国内外に斃たおれたすべての人々の命の前に、深く頭こうべを垂れ、痛惜の念を表すとともに、永劫えいごうの、哀悼の誠を捧ささげます。

 先の大戦では、三百万余の同胞の命が失われました。祖国の行く末を案じ、家族の幸せを願いながら、戦陣に散った方々。終戦後、酷寒の、あるいは灼熱しゃくねつの、遠い異郷の地にあって、飢えや病に苦しみ、亡くなられた方々。広島や長崎での原爆投下、東京をはじめ各都市での爆撃、沖縄における地上戦などによって、たくさんの市井の人々が、無残にも犠牲となりました。

 戦火を交えた国々でも、将来ある若者たちの命が、数知れず失われました。中国、東南アジア、太平洋の島々など、戦場となった地域では、戦闘のみならず、食糧難などにより、多くの無辜むこの民が苦しみ、犠牲となりました。戦場の陰には、深く名誉と尊厳を傷つけられた女性たちがいたことも、忘れてはなりません。

 何の罪もない人々に、計り知れない損害と苦痛を、我が国が与えた事実。歴史とは実に取り返しのつかない、苛烈なものです。一人ひとりに、それぞれの人生があり、夢があり、愛する家族があった。この当然の事実をかみしめる時、今なお、言葉を失い、ただただ、断腸の念を禁じ得ません。

 これほどまでの尊い犠牲の上に、現在の平和がある。これが、戦後日本の原点であります。

 (◎2)二度と戦争の惨禍を繰り返してはならない。

 事変、侵略、戦争。いかなる武力の威嚇や行使も、国際紛争を解決する手段としては、もう二度と用いてはならない。植民地支配から永遠に訣別けつべつし、すべての民族の自決の権利が尊重される世界にしなければならない。

 先の大戦への深い悔悟の念と共に、我が国は、そう誓いました。自由で民主的な国を創り上げ、法の支配を重んじ、ひたすら不戦の誓いを堅持してまいりました。七十年間に及ぶ平和国家としての歩みに、私たちは、静かな誇りを抱きながら、この不動の方針を、これからも貫いてまいります。

 (◎3)我が国は、先の大戦における行いについて、繰り返し、痛切な反省と心からのお詫わびの気持ちを表明してきました。その思いを実際の行動で示すため、インドネシア、フィリピンはじめ東南アジアの国々、台湾、韓国、中国など、隣人であるアジアの人々が歩んできた苦難の歴史を胸に刻み、戦後一貫して、その平和と繁栄のために力を尽くしてきました。

 こうした歴代内閣の立場は、今後も、揺るぎないものであります。

 ただ、私たちがいかなる努力を尽くそうとも、家族を失った方々の悲しみ、戦禍によって塗炭の苦しみを味わった人々の辛つらい記憶は、これからも、決して癒えることはないでしょう。

 ですから、私たちは、心に留めなければなりません。

 戦後、六百万人を超える引揚者が、アジア太平洋の各地から無事帰還でき、日本再建の原動力となった事実を。中国に置き去りにされた三千人近い日本人の子どもたちが、無事成長し、再び祖国の土を踏むことができた事実を。米国や英国、オランダ、豪州などの元捕虜の皆さんが、長年にわたり、日本を訪れ、互いの戦死者のために慰霊を続けてくれている事実を。

 戦争の苦痛を嘗なめ尽くした中国人の皆さんや、日本軍によって耐え難い苦痛を受けた元捕虜の皆さんが、それほど寛容であるためには、どれほどの心の葛藤があり、いかほどの努力が必要であったか。

 そのことに、私たちは、思いを致さなければなりません。

 (◎4)寛容の心によって、日本は、戦後、国際社会に復帰することができました。戦後七十年のこの機にあたり、我が国は、和解のために力を尽くしてくださった、すべての国々、すべての方々に、心からの感謝の気持ちを表したいと思います。

 日本では、戦後生まれの世代が、今や、人口の八割を超えています。(◎5)あの戦争には何ら関わりのない、私たちの子や孫、そしてその先の世代の子どもたちに、謝罪を続ける宿命を背負わせてはなりません。

 しかし、それでもなお、私たち日本人は、世代を超えて、過去の歴史に真正面から向き合わなければなりません。謙虚な気持ちで、過去を受け継ぎ、未来へと引き渡す責任があります。

 私たちの親、そのまた親の世代が、戦後の焼け野原、貧しさのどん底の中で、命をつなぐことができた。そして、現在の私たちの世代、さらに次の世代へと、未来をつないでいくことができる。それは、先人たちのたゆまぬ努力と共に、敵として熾烈しれつに戦った、米国、豪州、欧州諸国をはじめ、本当にたくさんの国々から、恩讐おんしゅうを越えて、善意と支援の手が差しのべられたおかげであります。

 そのことを、私たちは、未来へと語り継いでいかなければならない。歴史の教訓を深く胸に刻み、より良い未来を切り拓ひらいていく、アジア、そして世界の平和と繁栄に力を尽くす。その大きな責任があります。

 私たちは、自らの行き詰まりを力によって打開しようとした過去を、この胸に刻み続けます。だからこそ、我が国は、いかなる紛争も、法の支配を尊重し、力の行使ではなく、平和的・外交的に解決すべきである。この原則を、これからも堅く守り、世界の国々にも働きかけてまいります。唯一の戦争被爆国として、核兵器の不拡散と究極の廃絶を目指し、国際社会でその責任を果たしてまいります。

 (◎6)私たちは、二十世紀において、戦時下、多くの女性たちの尊厳や名誉が深く傷つけられた過去を、この胸に刻み続けます。だからこそ、我が国は、そうした女性たちの心に、常に寄り添う国でありたい。二十一世紀こそ、女性の人権が傷つけられることのない世紀とするため、世界をリードしてまいります。

 私たちは、経済のブロック化が紛争の芽を育てた過去を、この胸に刻み続けます。だからこそ、我が国は、いかなる国の恣意しいにも左右されない、自由で、公正で、開かれた国際経済システムを発展させ、途上国支援を強化し、世界の更なる繁栄を牽引けんいんしてまいります。繁栄こそ、平和の礎です。暴力の温床ともなる貧困に立ち向かい、世界のあらゆる人々に、医療と教育、自立の機会を提供するため、一層、力を尽くしてまいります。

 私たちは、国際秩序への挑戦者となってしまった過去を、この胸に刻み続けます。だからこそ、我が国は、自由、民主主義、人権といった基本的価値を揺るぎないものとして堅持し、その価値を共有する国々と手を携えて、「積極的平和主義」の旗を高く掲げ、世界の平和と繁栄にこれまで以上に貢献してまいります。

 終戦八十年、九十年、さらには百年に向けて、そのような日本を、国民の皆様と共に創り上げていく。その決意であります。

 平成二十七年八月十四日  内閣総理大臣 安倍晋三


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