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てらまち・ねっと



 昨日1月13日、最高裁は、「期限守れなければ一括返済」という特約をした(普通は全てこの契約)場合の超過利息は違法と初めて判決しました。
 消費者金融や商工ローンなど貸金業者の大半は「分割返済の期限を守らない時には、一括返済しなければならない」とする特約を結んだ上で、利息制限法の上限金利(年15~20%)を超える利息を徴収してきました。

 利息制限法の上限を超える利息は本来無効ですが、出資法で刑事罰が科せられるのは年29.2%を超える高金利です。この中間の金利について、貸金業規制法は(1)返済期間や回数などを明示する(2)弁済の都度ただちに受領証を出す(3)任意の支払いであるという3要件を満たした場合に限り、「みなし弁済」として例外的に超過利息の徴収を認めています。

 最高裁は、ローン契約で一般的な「分割返済の期日までに利息を支払わなければ、直ちに一括返済を求める」との特約について、「期日通りに約束した利息を支払わないと残った元本をすぐ一括して支払わなければならないうえ、遅延損害金も支払う義務を負うことになるという誤解を与え、上限を超える利息の支払いを事実上強制している」としました。

 また、返済の度に債務者に渡さなければならない受領証について、貸金業規制法が債務者がどの借金を返しているのか分かるように、「契約日や金額を書くこと」を求めているのに対し、内閣府令が契約番号だけでいいとしていることについても、「内閣府令を無効」とする初判断を示しました。

 この訴訟は、消費者金融大手「アイフル」傘下の商工ローン会社「シティズ」(京都市)が、鳥取県内の債務者と連帯保証人に、年利29%で貸し付けた300万円のうち、未返済の約190万円の支払いを求めたものです。

 最高裁第二小法廷は、業者側勝訴とした1、2審判決を破棄し、超過利息の額などを審理するため、広島高裁に差し戻しました。
 今回の判決で、特約を結んだケースでの超過利息の徴収は原則違法となるため、業者側は既に受け取った超過利息の返還など厳しい対応を迫られます。波及効果はきわめて大きいと見られます。
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   岐阜県は多重債務110番を開設
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 1月13日の判決の要点は以下のようです。

要旨:
1 貸金業法施行規則15条2項は法に適合せず無効
2 債務者が利息制限法所定の制限を超える約定利息の支払を遅滞したときには当然に期限の利益を喪失する旨の特約は無効
3 前記特約の下での制限超過部分の支払は任意とはいえない

内容:
 件名 貸金請求事件 (最高裁判所 平成16年(受)第1518号 平成18年01月13日 第二小法廷判決 破棄差戻し)
 原審 広島高等裁判所松江支部 (平成16年(ネ)第30号)

主    文
原判決を破棄する。
本件を広島高等裁判所に差し戻す。

         
理    由
第1 事案の概要
1 原審の確定した事実関係の概要は,次のとおりである。

(2) 被上告人は,平成12年7月6日,上告人Y1に対し,300万円を,次の約定で貸し付け,上告人Y2は,同日,被上告人に対し,上告人Y1の本件貸付けに係る債務について連帯保証をした。
 ア 利息 年29%(年365日の日割計算)
 イ 遅延損害金 年29.2%(年365日の日割計算)
 ウ 返済方法 平成12年8月から平成17年7月まで毎月20日に60回にわたって元金5万円ずつを経過利息と共に支払う。
 エ 特約 上告人Y1は,元金又は利息の支払を遅滞したときには,当然に期限の利益を失い,被上告人に対して直ちに元利金を一時に支払う(以下「本件期限の利益喪失特約」という。)。

 (3) 被上告人は,本件貸付けに係る契約を締結した際に,上告人Y1に対し,「貸付及び保証契約説明書」及び「償還表」と題する書面を交付した。
 貸付及び保証契約説明書には,利息の利率を利息制限法1条1項所定の制限利率を超える年29%とする約定が記載された後に,本件期限の利益喪失特約につき,「元金又は利息の支払いを遅滞したとき(中略)は催告の手続きを要せずして期限の利益を失い直ちに元利金を一時に支払います。」と記載され,期限後に支払うべき遅延損害金の利率を同法4条1項所定の制限利率を超える年29.2%とする約定が記載されていた。

 (4) 上告人Y1は,被上告人に対し,本件貸付けに係る債務の弁済として・・「入金額」欄記載の各金額を支払った。・・本件各受取証書には,貸金業の規制等に関する法律施行規則15条2項に基づき,法18条1項2号所定の契約年月日の記載に代えて,契約番号が記載されていた。

2 本件は,被上告人が,本件各弁済には法43条1項又は3項の規定が適用されるから,利息制限法1条1項又は4条1項に定める利息又は賠償額の予定の制限額を超える部分の支払も有効な債務の弁済とみなされるなどと主張して,上告人らに対し,本件貸付けの残元本189万4369円及び遅延損害金の支払を求める事案である。

3 原審は,本件各弁済には法43条1項又は3項の規定が適用されるとして,被上告人の請求を全部認容すべきものとした。

第3 上告受理申立て理由二(2)について
1 原審の判断は,次のとおりである。

 施行規則15条2項は,貸金業者は,法18条1項の規定により交付すべき書面を作成するときは,当該弁済を受けた債権に係る貸付けの契約を契約番号その他により明示することをもって,同項2号所定の契約年月日の記載に代えることができる旨規定しているのであり,契約年月日の記載がなくとも,契約番号の記載により,弁済を受けた債権に係る貸付けの契約を特定するのに不足することはないから,契約年月日の記載に代えて契約番号が記載された本件各受取証書は,法18条1項所定の事項の記載に欠けるところはない。

2 しかしながら,原審の上記判断は是認することができない。
 (1) 法18条1項が,貸金業者は,貸付けの契約に基づく債権の全部又は一部について弁済を受けたときは,同項各号に掲げる事項を記載した書面を当該弁済をした者に交付しなければならない旨を定めているのは,貸金業者の業務の適正な運営を確保し,資金需要者等の利益の保護を図るためであるから,同項の解釈にあたっては,文理を離れて緩やかな解釈をすることは許されないというべきである。・・同項6号に,「前各号に掲げるもののほか,内閣府令で定める事項」が掲げられている。・・同項は,交付すべき書面の記載事項は,同項1号から5号までに掲げる事項及び法定事項に追加して内閣府令で定める事項であることを規定するとともに,18条書面の交付方法の定めについて内閣府令に委任することを規定したものと解される。したがって,18条書面の記載事項について,内閣府令により他の事項の記載をもって法定事項の記載に代えることは許されないものというべきである。

 (2) 上記内閣府令に該当する施行規則15条2項の・・規定のうち,当該弁済を受けた債権に係る貸付けの契約を契約番号その他により明示することをもって,法18条1項1号から3号までに掲げる事項の記載に代えることができる旨定めた部分は,他の事項の記載をもって法定事項の一部の記載に代えることを定めたものであるから,内閣府令に対する法の委任の範囲を逸脱した違法な規定として無効と解すべきである。

 (3)法18条1項2号所定の契約年月日の記載に代えて契約番号が記載された本件各受取証書は,同項所定の事項の記載に欠けるところはないとした原審の判断には,判決に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反がある。

第4 上告受理申立て理由二(3)について
1 原審の判断は,次のとおりである。

 貸金業者において法43条1項の規定に基づき取得を容認され得る約定利息の支払を債務者が怠った場合に期限の利益を喪失する旨の合意は,何ら不合理なものとはいえず,また,債務者が,この合意により,約定利息の支払を強制されることになるということはできないから,上告人Y1のした利息の制限額を超える額の金銭の支払は,同項にいう「利息として任意に支払った」ものということができる。

2 しかしながら,原審の上記判断は是認することができない。
 (1) 法43条1項は,貸金業者が業として行う金銭消費貸借上の利息の契約に基づき,債務者が利息として支払った金銭の額が,利息の制限額を超える場合において,貸金業者が,貸金業に係る業務規制として定められた法17条1項及び18条1項所定の各要件を具備した各書面を交付する義務を遵守しているときには,その支払が任意に行われた場合に限って,例外的に,利息制限法1条1項の規定にかかわらず,制限超過部分の支払を有効な利息の債務の弁済とみなす旨を定めている。・・法の趣旨,目的(法1条)等にかんがみると・・適用要件は厳格に解釈すべきである。
 そうすると,法43条1項にいう「債務者が利息として任意に支払った」とは,債務者が利息の契約に基づく利息の支払に充当されることを認識した上,自己の自由な意思によってこれを支払ったことをいい,・・債務者が,事実上にせよ強制を受けて利息の制限額を超える額の金銭の支払をした場合には,制限超過部分を自己の自由な意思によって支払ったものということはできず,法43条1項の規定の適用要件を欠くというべきである。

 (2) ・・本件期限の利益喪失特約のうち,上告人Y1が支払期日に制限超過部分の支払を怠った場合に期限の利益を喪失するとする部分は,同項の趣旨に反して無効であり,上告人Y1は,支払期日に約定の元本及び利息の制限額を支払いさえすれば,制限超過部分の支払を怠ったとしても,期限の利益を喪失することはなく,支払期日に約定の元本又は利息の制限額の支払を怠った場合に限り,期限の利益を喪失するものと解するのが相当である。
 そして,本件期限の利益喪失特約は,法律上は,上記のように一部無効であって,・・この特約の存在は,通常,債務者に対し,支払期日に約定の元本と共に制限超過部分を含む約定利息を支払わない限り,期限の利益を喪失し,残元本全額を直ちに一括して支払い,これに対する遅延損害金を支払うべき義務を負うことになるとの誤解を与え,その結果,このような不利益を回避するために,制限超過部分を支払うことを債務者に事実上強制することになるものというべきである。
 したがって,本件期限の利益喪失特約の下で・・支払った場合には,・・上記特段の事情がない限り・・債務者が自己の自由な意思によって制限超過部分を支払ったものということはできない。

 そうすると,本件において上記特段の事情の存否につき審理判断することなく,上告人Y1が任意に制限超過部分を支払ったとした原審の判断には,判決に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反があり,原判決は破棄を免れない。

第5 結論
 以上のとおりであるから,原判決を破棄し,更に審理を尽くさせるため,本件を原審に差し戻すこととする。

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 念のため 判決の概要
事件番号 平成16(受)1518
事件名 貸金請求事件
裁判年月日 平成18年01月13日
法廷名 最高裁判所第二小法廷
裁判種別 判決
結果 破棄差戻し
判例集巻・号・頁 第60巻1号1頁

原審裁判所名 広島高等裁判所 松江支部
原審事件番号 平成16(ネ)30
原審裁判年月日 平成16年06月18日

判示事項 1 貸金業の規制等に関する法律施行規則15条2項の法適合性
2 債務者が利息制限法所定の制限を超える約定利息の支払を遅滞したときには当然に期限の利益を喪失する旨の特約の効力
3 債務者が利息制限法所定の制限を超える約定利息の支払を遅滞したときには当然に期限の利益を喪失する旨の特約の下での制限超過部分の支払の任意性の有無

裁判要旨 1 貸金業法施行規則15条2項の法適合性
2 債務者が利息制限法所定の制限を超える約定利息の支払を遅滞したときには当然に期限の利益を喪失する旨の特約の効力
3 債務者が利息制限法所定の制限を超える約定利息の支払を遅滞したときには当然に期限の利益を喪失する旨の特約の下での制限超過部分の支払の任意性の有無

参照法条 (1~3につき)利息制限法1条1項

最高裁判決全文はこちら


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コメント
 
 
 
裁判は世論で変わる。 (一人閑)
2006-01-15 16:26:20
黒にでも、白にでもなるといわれる裁判。

この判決は遅すぎましたね(まだ予断はできないでしょうが……)。

平成に入って債務の弁済めどがつかず死を選んだ方は50万人を越すとか?

この判決が、せめて10年早かったらと思うと、悩みながら死を選んだ人、家財を失い路頭に迷う不幸につながった家族の方たち。胸が痛みます。

換言すれば、裁判官が客観的な死刑執行人をつとめたとも言える。

弁護士のいいなり裁判官が多すぎますね。

多重債務の早急解決は行政問題でしょう。

 
 
 
解決 (●てらまち)
2006-01-16 07:38:26
★一人閑さん、おはようございます。



>・・この判決は遅すぎましたね(まだ予断はできないでしょうが……)。平成に入って債務の弁済めどがつかず死を選んだ方は50万人を越すとか?



⇒被害者は多いですね。



>この判決が、せめて10年早かったらと思うと、悩みながら死を選んだ人、家財を失い路頭に迷う不幸につながった家族の方たち。胸が痛みます。



⇒はい、自ら命を絶つという方法に追いやる社会は間違ってますね。



>換言すれば、裁判官が客観的な死刑執行人をつとめたとも言える。

・・多重債務の早急解決は行政問題でしょう。



⇒そういう自覚はないでしょうね。

 行政にできることはたくさんあると思います。





 
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