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てらまち・ねっと



 先日、全国放送でたくさん報道された すばらしい判決。
 瀬戸内海の広島県福山市・浦鞆(とも)の浦の景観を守れという訴訟の第一審判決。

 かつては、行政や民間事業者は何でもやり放題、そんな時代だったけど、今は違う。
 そういう流れに拍車をかけること間違いない意義の大きな判決に喜んだ。

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 まず、裁判の弁護団の情報。
 ● 日本環境法律家連名(JELF) 
 日本環境法律家連盟(JapanEnvironmental Lawyers Federation, JELF)は、「環境は社会問題である」という考えのもとに、環境問題に法的視点から取り組み、また、会に所属する弁護士は、自然保護訴訟、公共事業問題、廃棄物汚染事件など全国各地で発生している環境事件など、環境問題に対する法的課題に総合的に取り組んでいます。現在は、世界各国の環境法律家と連係して国際的な環境事件にも力を注いでいます。 
● 【第1審勝訴判決に対する声明】/ 鞆の浦の世界遺産登録を実現する生活・歴史・景観保全訴訟


●鞆の浦景観訴訟:県に埋め立ての差し止め命じる 広島地裁
        毎日 2009.10.1
 埋め立ての差し止めが命じられた鞆の浦=2008年12月、本社機から撮影

 瀬戸内海国立公園の景勝地、鞆(とも)の浦(広島県福山市)の埋め立て・架橋計画に反対する住民が「歴史・文化的景観が失われる」として、広島県を相手取り埋め立て免許の差し止めを求めた訴訟の判決が1日、広島地裁であった。

能勢顕男裁判長(現広島地・家裁呉支部長)は、鞆の浦の景観を「国民の財産」と指摘、「埋め立てがされれば景観への影響は重大で、埋め立ては裁量権の逸脱」として原告の訴えを認め、県に差し止めを命じた。改正行政訴訟法に基づき、景観保全を理由に着工前の工事の差し止めを初めて命じた画期的判決。今後の開発行政に影響を与えるのは必至だ。

 公有水面埋立法(公水法)では、埋め立て工事の際には知事免許が必要。さらに今回の場合、知事は免許を出すにあたって国土交通相の認可を得る必要があり、公共事業見直しを掲げる民主党政権の対応も焦点となる。

 訴えたのは、埋め立て対象の海に排水権を持つ人など163人(提訴後に4人死亡)。良好な景観を享受する「景観利益」は法的保護の対象か▽計画は公水法や瀬戸内海環境保全特別措置法(瀬戸内法)の要件を満たしているか--などが争点だった。

 能勢裁判長はまず、景観利益について、最高裁判決などをもとに、「法律上保護に値するもの」と認定。鞆の浦の景観を「歴史的、文化的価値を有するもので、国民の財産」などと評価し、「工事が完成した後に復元することはまず不可能」と指摘した。

 そのうえで、公水法や関連法規は、個別の景観利益も保護していると認定。「計画は景観を侵害するもので、政策判断は慎重になされるべきだが、よりどころとなる調査・検討が不十分、不合理な場合は裁量権の逸脱にあたる」と判示した。
 鞆の浦は万葉集にも詠まれ、宮崎駿監督が映画「崖の上のポニョ」の構想を練ったことでも知られる。【寺岡俊、前本麻有】

 ▽藤田雄山・広島県知事の話 判決の詳細な内容については、まだ承知していませんが、当方の主張が認められなかったことは残念で、厳しい判決と受け止めております。今後については、判決を詳細に検討し対応したい。

 ▽羽田皓・福山市長の話 事業の早期実現という大多数の鞆町住民の悲願が受け止められず、非常に残念。事業は鞆町の課題解決と再生・活性化のため必要不可欠で、今後の対応については県と調整を図り検討したい。

 ◇鞆の浦埋め立て・架橋計画
 鞆の浦は広島県福山市の沼隈半島南東にある鞆港と周辺海域。古くから良港として栄え、万葉集にも詠まれた。日本近世の港を特徴づける雁木(がんぎ)など五つの要素が残る唯一の港とされる。計画は交通混雑の解消などを目的に1983年に策定。港湾西側の2ヘクタールを埋め立て、港を横切る約180メートルの橋を架ける。一時凍結されたが、04年に計画推進を公約にした羽田皓市長が当選。07年4月に反対派住民が提訴した。世界遺産候補地を調査するユネスコの諮問機関・国際記念物遺跡会議(イコモス)は05、08年に総会で中止を求める決議を採択した。


 【解説】公共事業に景観の配慮迫る
 これまで行政訴訟では、民事訴訟とは異なり、景観を法で保護すべき個人の利益とまで認めたケースはなかった。広島地裁判決は、鞆の浦の歴史的景観を享受する利益が法的保護に値すると明快に断じた。景観保全への関心の高まりを受けたもので、行政は今後、公共事業にあたり、景観への配慮を強く意識することを迫られる。

 景観を巡る行政訴訟では、行政の裁量の範囲が広く認められ、原告側の敗訴が相次いだ。
 和歌の浦の景観を巡る和歌山地裁判決(94年)、鞆の浦訴訟と同じ瀬戸内海の埋め立てを巡る織田が浜訴訟の高松高裁差し戻し控訴審判決(同年)などで、景観利益の法的保護は認められなかった。
初めて認めたのは、民事訴訟であるが、国立マンション訴訟の最高裁判決(06年)だ。

 今回の判決は、景観への損害と、公共事業によって得られる利益とを行政側が比較した上で、事業の可否を合理的に判断すべきだともしている。しかし、行政の判断の合理性を検証する仕組みは乏しい。また、歴史的な施設や町並みの保存には住民負担が大きいという問題もある。公共事業による利便性の向上と、景観保全とをいかに両立するか。今回の訴訟が投げかけた課題は大きい。
【前本麻有】

●景観の価値、最大限重視=鞆の浦訴訟
          時事 2009/10/01-12:05
 景勝地「鞆の浦」の埋め立て架橋計画をめぐり、広島地裁は1日、埋め立て免許の差し止めを認めた。景勝地の「景観価値」を最大限に重視、地域の生活環境改善を目的としていても、景観に大きな影響を与える場合は事業の必要性、公共性について厳格な調査、検討を求める画期的判断となった。

 訴訟で原告側は、鞆の浦について「極めて高い歴史的・文化的諸価値および自然的価値を有する」と指摘。「異質の工作物」ができることで、「歴史的に継承されてきた一体的な景観が失われる」と主張した。

 これに対し、県などは埋め立て規模を最小限にし、橋などのデザインも変更するなど「景観に対する配慮は十分」と反論。道路整備で混雑が解消されるだけでなく、下水道整備に必要な代替道路が確保でき、緊急車両も安全に通行できるとして事業の必要性を訴えた。

 国立マンション撤去訴訟で最高裁は2006年3月、良好な景観を享受する「景観利益」を「法的保護に値する」との初判断を示した。

 広島地裁は今回、さらに踏み込んだ形で、鞆の浦の景観を「国民の財産」と指摘。道路の混雑解消など被告側が計画の根拠とした点を細かに検討、これにより事業を認めることは不合理だと結論づけており、今後の公共事業の在り方にも大きな影響を与えそうだ。

●「勝った負けたでなく、双方が話を」=「ポニョ」構想の宮崎監督-鞆の浦訴訟
        時事 2009/10/01-17:24
  広島県福山市の「鞆の浦」埋め立て事業の差し止めを認めた広島地裁判決について、鞆の浦の光景をもとに映画「崖(がけ)の上のポニョ」の構想を練った宮崎駿監督(68)が1日午後、東京都小金井市で記者会見、「鞆の浦の問題だけではなく、今後の日本をどのようにしていくかを決める判決だ」と語った。

 判決言い渡し後、早速原告の一人から電話で報告を受けた監督は、エプロン姿で登場し、終始笑みを浮かべながら会見に臨んだ。

 鞆の浦には2004年11月に初めて訪れ、翌春2カ月間滞在したという。
 宮崎監督は「賛成派、反対派という立場は取るつもりはない」と前置きした上で、「いい一歩を踏み出したんじゃないか。公共工事で何か劇的に変わるというような、幻想とか錯覚とかを振り回すのはもうやめた方がいい」と語った。

 被告の県に対しては「何も言える立場にはないが、控訴は税金の無駄遣いになる」と述べ、「狭い町で、二つに分かれてけんかするのは、あらゆる意味でしこりを残してよくないと思う。勝ったとか負けたとかではなく、(双方が)話ができるようになることを願っている」と話した。

●画期的判決に県内外に波紋/鞆の浦訴訟
           朝日 2009年10月02日
 福山市の景勝地、鞆(とも)の浦の埋め立て・架橋計画に「待った」をかけた1日の広島地裁判決。文化的・歴史的景観を「公益」と言い切った画期的な司法判断に、県内外で大きな波紋が広がった。

 尾道市出身の映画監督、大林宣彦さんは、計画に反対する住民らを支援してきた。今春、尾道に住む小学生らを鞆の浦に連れて行った。「橋ができたら魚はどうなるの? 魚が元気にならないなら、僕たち食べる資格ないよね」。子どもたちは心配そうだった。夏に鞆の浦で泳いだ時も、子どもらはふるさとの海や町並みをずっと守りたいという思いを語ってくれた。

 「大人は、かつて美しい海で泳いだり、街角で遊んだりした楽しい思い出を子どもたちにも残してあげて欲しい。日本は伝統的にもったいないという精神で古いものを大切にしてきた。判決は、こうした日本人の古きよき心をもう一度見つめ直すきっかけになる」と期待を寄せる。

 「海から鞆港に入る際の景観は、万葉の時代にタイムスリップしたと思うほど美しい」。そう話すのは、建築史に詳しい法政大の陣内秀信教授だ。自然の円形港湾を上手に活用して形づくられ、木造建築の町並みなどの全体構造を今に伝える歴史的港湾都市は世界的にも例がないという。

 江戸期の商家や蔵の保存状態も良好で、国内の港で常夜灯や雁木(がん・ぎ)、船番所、波止、船の修理場だった焚場(たで・ば)の五つの近世の港湾施設がまとまって残っているのも鞆の浦だけだと指摘。「判決を受け、これらの歴史的遺産を守り、活用することこそ鞆の浦にふさわしいまちづくりだ」と訴えた。

 一方、県庁で記者会見を開いた空港港湾部の丸山隆英部長は「極めて残念な判決。到底承服できない」と反発した。控訴するかどうかは明言しなかったが、「事業を継続するための手続きを進めたい」と述べ、判決は受け入れられないとの考えを示した。

 判決が、事業の必要性や公共性を担保するための県の調査・検討を、「不十分で合理性を欠く」と指摘した点についても、「極めて客観性に乏しい判断だ」と批判。「事業は景観を侵すものではない。調査も十分にやったと思っている」と語気を強めた。

 金子一義・前国土交通相が認可に慎重な姿勢を示したことで、事業は事実上、止まっている。丸山部長は政権交代にも触れ、「民主党は地域主権と言っているので、(事業に賛成する)地元の多数派の判断が優先されるはず。町づくりのため、国交省にも協力してもらいたい」と話した。

●鞆の浦判決、広島県議会委で賛否の意見や疑問
         2009年10月3日 読売新聞
 広島県福山市鞆町、鞆の浦の埋め立て・架橋事業を巡る訴訟で、知事に埋めたて免許を交付しないよう命じた地裁判決に関連し、広島県議会建設委員会で2日、県に事業の見直しを求める意見や、判決への疑問などが出た。

 犬童英徳議員(民主県政会)は「判決を踏まえ、国民的な財産の価値を損なわないよう、(代替案の)トンネル案を含めて調査、検討するべきだ」と求めた。

 これに対し、大内千秋・港湾技術総括監は「最適の手法で検討を重ねた。県の妥当性を訴えていく」と答弁。丸山隆英・空港港湾部長は「快適な環境で生活しながら歴史的な町を守っていくことが重要。反対派とも議論を続ける」と述べた。

 一方、城戸常太議員(自民党広志会)は「地域すべてが『景観』である、と考えては、何も出来なくなる」と判決への疑念を呈した。

●鞆の浦埋め立て事業、当面認可出さず 前原国交相
          日経 10.1
 鞆の浦(広島県福山市)の埋め立て架橋事業について、広島地裁が広島県知事に免許差し止めを命じた判決を受け、前原誠司国土交通相は1日、記者会見で「県の対応を見守りたい。党としての動きは今後検討させてほしい」と発言、当面は事業開始に必要な国の認可を同県に出さない考えを示した。

 判決が同省の公共事業政策に与える影響については、「政策立案には最高裁の決定が重い意味を持つ」と話し、大きな方針転換を否定した。(01日 23:01)

 ●鞆の浦景観訴訟の判決要旨
          2009年10月2日00時28分 読売新聞
 広島県福山市の鞆(とも)の浦の埋め立て・架橋事業をめぐる訴訟で、広島地裁は1日、県知事に対し、埋め立て免許の交付を差し止める判決を言い渡した。判決の要旨は次の通り。

 ◆要旨◆
 鞆町に居住している者は、鞆の景観による恩恵を日常的に享受している者であると推認され、法律上の利益を有する者に当たる。埋め立て免許が交付されれば、鞆の浦の景観利益について重大な損害を生ずるおそれがあると認められ、これを避けるためにほかに適当な方法があるとも言えない。したがって、上記の景観利益を有する者の訴えは適法である。

 広島県や福山市(事業者)が予定している対策は、鞆の浦の景観侵害を補填(ほてん)するものとはなり得ない。鞆の浦の景観の価値は私法上保護されるべき利益であるだけでなく、瀬戸内海における美的景観を構成するものとして、また文化的、歴史的価値を有する景観として、国民の財産とも言うべき公益である。

 しかも、事業が完成した後に、復元することはまず不可能となる性質のものである。これらの点にかんがみれば、事業が鞆の景観に及ぼす影響は決して軽視できない重大なものである。

 また、瀬戸内法等が公益として保護しようとしている景観を侵害するものと言えるから、政策判断は慎重になされるべきである。

 鞆町の主要道路は通常の道路と比べ、かなり劣悪な交通状況にあると言えるから、その改善の必要性は認められ、公共性も高いと言える。しかし、コンサルタントの事前の調査は不十分なものと言わざるを得ない。

 (事業が)鞆の浦の景観の保全を犠牲にしてまでもしなければならないものであるかについては、大きな疑問が残り、さらなる調査、検討が必要である。以上を考慮すると、県知事がコンサルタントの推計結果のみに依拠して埋め立て・架橋事業の道路整備効果を判断することは、合理性を欠く。

 船だまりの整備は漁業者の活動を格段に効率的で安全なものにするし、フェリー桟橋の整備は住民の生活環境や産業の向上に資するものと言えるが、これらを理由として埋め立て免許を交付することも、不合理な判断と言わざるを得ない。

 以上の通り、事業者らが事業の必要性、公共性の根拠とする道路整備効果などの調査、検討は不十分である。また、一定の必要性、合理性はあっても、事業自体の必要性を肯定する合理性を欠く。

 したがって、広島県知事が埋め立て免許を交付することは、行訴法の裁量権の範囲を超えた場合に当たり、これを差し止めることとする。


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