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てらまち・ねっと



 私が昨日、注目しているといった判決。テレビや新聞で大きく報道された。
 率直にいって、岐阜県の裏金返還の住民訴訟の最たる争点の一つ、「5年時効」の大原則を超えて「20年分の裏金返還」につなげるための判示がないかと期待した。

 ま、素人だからそう思うわけだが、今度9日にある裏金事件住民訴訟の弁護団会議で弁護士の皆さんに聞いてみよう。
 「判示主要部分」と藤田裁判長の「補足意見」をまず紹介し、報道記事の後に判決全文のページにリンクしておく。  

 読売新聞の社説は「これまでのどの判決よりも、国や自治体の責任を厳しく問うものである。」としていた。

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 普通地方公共団体が,上記のような基本的な義務に反して,既に具体的な権利として発生している国民の重要な権利に関し,法令に違反してその行使を積極的に妨げるような一方的かつ統一的な取扱いをし,その行使を著しく困難にさせた結果,これを消滅時効にかからせたという極めて例外的な場合においては,上記のような便宜を与える基礎を欠くといわざるを得ず,また,当該普通地方公共団体による時効の主張を許さないこととしても,国民の平等的取扱いの理念に反するとは解されず,かつ,その事務処理に格別の支障を与えるとも考え難い。したがって,本件において,上告人が上記規定を根拠に消滅時効を主張することは許されないものというべきである。

 裁判官藤田宙靖の補足意見は,次のとおりである。
 私は,法廷意見に賛成するものであるが,地方自治法236条2項の規定にもかかわらず,本件において消滅時効の成立を認めない理論的根拠について,若干の補足をしておくこととしたい。
 信義誠実の原則は,法の一般原理であって,行政法規の解釈に当たってもその適用が必ずしも排除されるものではないことは,今日広く承認されているところである。地方自治法236条2項の解釈・適用に当たってもこのことは変わらないのであって,住民が権利行使を長期間行わなかったことの主たる原因が,行政主体が権利行使を妨げるような違法な行動を積極的に執っていたことに見出される場合にまで,消滅時効を理由に相手方の請求権を争うことを認めるような結果は,そもそも同条の想定しないところと考えるべきである。その意味において,本件のようなケースにおいては,同条2項ただし書にいう「法律に特別の定めがある場合」に準ずる事情があるものとして,なお時効援用の必要及びその信義則違反の有無につき論じる余地が認められるものというべきである。



● 在外被爆者勝訴が確定 最高裁判決  2月6日 東京新聞
 ブラジル在住の日本人被爆者三人が、時効を理由に被爆者援護法に基づく健康管理手当の一部が支払われないのは不当として、広島県に計二百九十万円の支払いを求めた訴訟の上告審判決が六日、最高裁第三小法廷であった。藤田宙靖裁判長は「県は違法な事務で、在外被爆者の手当請求を積極的に妨げた。時効の主張は信義則に反する」と述べ、未支給分全額の支払いを命じた二審広島高裁判決を支持、県側の上告を棄却した。被爆者側の勝訴が確定した。 
 訴訟では、在外被爆者に手当を支給する際、過去の未支給分について、地方自治法上の時効(五年)を適用した県の措置の妥当性が争われた。
 藤田裁判長はまず、「海外に移住すると手当の受給権を失う」と解釈されていた旧厚生省の一九七四年通達を「根拠はなく違法」と指摘した。
 その上で、県側の時効の主張について「違法な通達に従い、手当の申請が困難だった在外被爆者に対する支払い義務を免れようとするに等しい」と厳しく批判した。
 判決によると、三人は広島で被爆後、ブラジルに移住。
 九四-九五年、日本に一時帰国した際に手当の受給を認められたが、ブラジルに戻った後、通達を理由に支給を打ち切られた。
 二〇〇三年三月、在外被爆者に受給資格を認めた大阪高裁判決が確定。国は方針転換して在外被爆者への手当支給を始めたが、原告三人には、未支給分のうち提訴時を起点に五年前までの分しか支払わなかった。
 一審広島地裁は、県の主張を認めて被爆者側の請求を棄却。
 二審は「海外移住した被爆者に手当を支払わない国の方針は誤りだった。時効の主張は著しく正義に反する」として、被爆者側の逆転勝訴を言い渡したため、県側が上告していた。
 時効が争点になった在外被爆者訴訟では、福岡高裁が今年一月、「請求権は時効で消滅した」として在外被爆者の請求を退ける判断を示し、被爆者側が上告している。

● 在ブラジル被爆者訴訟、原告の勝訴確定   日経 2月6日
 広島で被爆し、ブラジルに移住した向井昭治さん(故人)ら3人が、被爆者援護法に基づく健康管理手当の一部を時効を理由に支給しないのは違法として、広島県に未払い分計約290万円の支払いを求めた訴訟の上告審判決が6日、最高裁第3小法廷(藤田宙靖裁判長)であった。同小法廷は「時効を主張して手当の支給義務を免れることはできない」との判断を示した。
 そのうえで請求全額の支払いを命じた二審・広島高裁判決を支持、県側の上告を棄却した。男性らの勝訴が確定した。
 在外被爆者の手当受給権は、同種訴訟を巡る2002年の大阪高裁判決で確定したが、過去の未払い分について各自治体は、地方自治法が規定する請求権の時効(5年)が適用されるとして、最高5年分しか支払っていない。適用の是非を巡り高裁段階では判断が分かれていたが、最高裁として、時効を適用しないとの初判断が示された。

● 2月7日付・読売社説(2)  2月7日 読売
 [在外被爆者訴訟]「最高裁が批判した行政の姿勢」
 在外被爆者の支援をめぐる行政当局の姿勢を厳しく問う判決である。
 国や自治体は地方自治法の時効(5年)を盾に、在外被爆者からの健康管理手当の支払い請求に応じてこなかった。その是非が争われた訴訟で、最高裁が行政側の主張を退ける判決を言い渡した。
 在外被爆者への行政の支援策は、司法の判断を後追いするばかりだった。
 国は当初、旧厚生省が1974年に出した局長通達(402号通達)に沿って「海外に暮らす被爆者は手当の支給を受けられない」としてきた。
 ところが、最高裁が78年に「国内にいる限り手当を受けられる」との判断を示したことから、今度は局長通知を出して、「日本滞在中は援護を受けられるが、出国すれば権利を失う」と改めた。
 さらに、大阪地裁と大阪高裁が2001年から02年にかけて「被爆者はどこにいても手当の受給権を失わない」との判断を示した。国は上告を断念し、03年3月には、402号通達自体を廃止して支給を開始した。だが、時効を理由に過去5年分しか支払わなかった。
 今回、最高裁はまず、402号通達について「被爆者援護法などの解釈を誤る違法なものだ」とした。過去に地裁や高裁では例があるが、最高裁がこうした判断を示したのは初めてだ。
 「時効」の主張については、「信義則に反して許されない」とした上で、行政側は「402号通達によって、在外被爆者の請求を積極的に妨げ、権利の行使を著しく困難にさせて時効にかからせた」と指摘した。
 これまでのどの判決よりも、国や自治体の責任を厳しく問うものである。
 時効適用の是非をめぐっては、過去の判決の見解が分かれていた。今回の訴訟でも、広島地裁は適用を認め、広島高裁は「信義則に反する」としていた。
 司法の判断も分かれていたことを考えれば、行政側の対応を頭から批判することはできない。だが、最高裁の判決は4人の裁判官全員一致の見解だった。行政当局は重く受け止めるべきだろう。
 今回の判決を受けて、厚生労働省は時効の適用をやめ、在外被爆者に未払い分を支払う方針だ。被爆者に対する「総合的な援護対策」を求めた被爆者援護法の趣旨を考えれば、当然の措置である。
 厚労省によると、海外で暮らす被爆者のうち、「時効の壁」に阻まれて、一部でも手当の支給を受けられなかった人は数百人に上るという。
 被爆者の平均年齢は74歳に達している。早急に対応しなければならない。
(2007年2月7日1時29分 読売新聞)

● 在外被爆者へ未払い分手当支給検討 最高裁判決で厚労省  2月6日 中国新聞
 在外被爆者訴訟で最高裁が行政側の時効主張を「信義則に反し許されない」と認めず原告側勝訴の判決が確定したのを受け、厚生労働省は六日、時効となり未払いになっている健康管理手当を在外被爆者に支給する方向で検討に入った。
 支給対象の在外被爆者は約三百人に上るとみられるが、厚労省は今後、都道府県を通じて情報収集し、対象人数を確定させる考え。「早急に(支払いなどの)手続きを開始できるようにしたい」としている。
 福岡高裁が時効の主張を認め、韓国の在外被爆者(故人)が敗訴した訴訟は、上告審では判決が見直される可能性が高まったが、厚労省は「この原告も支給検討の対象になる」としており、判決を待たずに解決に向かう道も出てきた。
 一方、この日の最高裁判決で勝訴が確定したブラジル在住の故向井昭治さんら原告を支えてきた「在ブラジル・在アメリカ被爆者裁判を支援する会」の豊永恵三郎世話人らが六日午後、厚労省を訪れ、未払い分手当の早期支給を要請した。


● 韓国人被爆者が逆転敗訴、手当受給「時効」めぐり・福岡高裁  1月22日 日経
 1980年代に離日したことを理由に被爆者援護法に基づく健康管理手当を打ち切られた韓国人被爆者の故崔ゲチョルさん(2004年死亡、遺族が訴訟継承)が、過去24年分の手当支給や慰謝料など計約960万円を国と長崎市に求めた訴訟の控訴審判決で、福岡高裁は22日、時効なしで一部を支払うべきとした一審長崎地裁判決を取り消し、請求を棄却した。

 崔さん側の逆転敗訴。牧弘二裁判長は「被爆者健康手帳を取得した80年から3年間は、当時の規定で受給権利はあると認められるが、その権利は既に時効で消滅した」と述べた。

 05年12月の一審判決は国と市の時効主張を退け、80年から約3年間の受給分計約82万円の支払いを市に命じた。国の援護制度から長く取り残された在外被爆者の手当受給権に時効を適用することの是非が、控訴審でも最大の争点だった。

 被爆者手当支給の時効をめぐっては、ブラジル在住被爆者が起こした訴訟で昨年2月、広島高裁判決が「時効適用は正義に反する」としており、高裁段階で判断が分かれたことになる。〔共同〕(14:15)


最高裁が6日言い渡した在外被爆者訴訟の上告審判決要旨は次の通り
 【消滅時効】
自らも通達に従い違法な事務処理をしていた地方公共団体自身が、受給権者による権利不行使を理由に支払い義務を免れようとするに等しい。

 県の消滅時効の主張は、特段の事情がない限り信義則に反し許されないと解するのが相当。本件に特段の事情を認めることはできず、県は消滅時効を主張して未支給の健康管理手当の支給義務を免れることはできない。

 地方自治法236条2項の規定が、消滅時効の援用を要しないとしたのは、法令に従い適正、画一的に処理することが事務処理上の便宜と住民の平等的取り扱いの理念に資するので、民法が定める時効援用の制度を適用する必要がないと判断されたことによる。

 しかし地方公共団体は法令に反して事務を処理してはならないとされ、これは事務処理に当たっての最も基本的な原則、指針であり、債務履行も信義に従い誠実に行う必要があることは言うまでもない。

 本件のように基本的な義務に反し、既に具体的な権利として発生している国民の重要な権利の行使を積極的に妨げるような一方的かつ統一的な取り扱いをし、行使を著しく困難にさせた結果、消滅時効にかからせたという極めて例外的な場合には便宜を与える基礎を欠くといわざるを得ない。

 時効の主張を許さないとしても平等的取り扱いの理念に反するとは解されず、事務処理に格別の支障を与えるとも考えがたい。県が地方自治法の規定を根拠に消滅時効を主張することは許されないというべきだ。

● 最高裁判決
 判例集平成18(行ヒ)136
事件名 在ブラジル被爆者健康管理手当等請求事件
裁判年月日 平成19年02月06日
法廷名 最高裁判所第三小法廷

判決全文

主文
本件上告を棄却する。
上告費用は上告人の負担とする。
理由
上告代理人大竹たかしほかの上告受理申立て理由について

1 原審の適法に確定した事実関係等の概要は,次のとおりである。
(1)~(5)(略)
(6) その後,被上告人らは,平成14年7月から12月にかけて,本件健康管理手当の支払を求めて本件訴えを提起した。同15年3月1日,402号通達は廃止され,原子爆弾被爆者に対する援護に関する法律施行令及び原子爆弾被爆者に対する援護に関する法律施行規則にも,被爆者健康手帳の交付を受けた者であって国内に居住地及び現在地を有しないものも健康管理手当の支給を受けることができることを前提とする規定が設けられるに至った。上告人は,これらの改正に伴い,被上告人らに健康管理手当を支給したが,本件健康管理手当のうち,本件各提訴時点で既に各支給月の末日から5年を経過していた分については,地方自治法236条所定の時効により受給権が消滅したとして,その支給をしなかった。

2 (略)

3(1) (略)
 以上のような事情の下においては,上告人が消滅時効を主張して未支給の本件健康管理手当の支給義務を免れようとすることは,違法な通達を定めて受給権者の権利行使を困難にしていた国から事務の委任を受け,又は事務を受託し,自らも上記通達に従い違法な事務処理をしていた普通地方公共団体ないしその機関自身が,受給権者によるその権利の不行使を理由として支払義務を免れようとするに等しいものといわざるを得ない。そうすると,上告人の消滅時効の主張は,402号通達が発出されているにもかかわらず,当該被爆者については同通達に基づく失権の取扱いに対し訴訟を提起するなどして自己の権利を行使することが合理的に期待できる事情があったなどの特段の事情のない限り,信義則に反し許されないものと解するのが相当である。本件において上記特段の事情を認めることはできないから,上告人は,消滅時効を主張して未支給の本件健康管理手当の支給義務を免れることはできないものと解される。

 (2) 論旨は,地方自治法236条2項所定の普通地方公共団体に対する権利で金銭の給付を目的とするものは,同項後段の規定により,法律に特別の定めがある場合を除くほか,時効の援用を要することなく,時効期間の満了により当然に消滅するから,その消滅時効の主張が信義則に反し許されないと解する余地はないというものである。
 ところで,同規定が上記権利の時効消滅につき当該普通地方公共団体による援用を要しないこととしたのは,上記権利については,その性質上,法令に従い適正かつ画一的にこれを処理することが,当該普通地方公共団体の事務処理上の便宜及び住民の平等的取扱いの理念(同法10条2項参照)に資することから,時効援用の制度(民法145条)を適用する必要がないと判断されたことによるものと解される。このような趣旨にかんがみると,普通地方公共団体に対する債権に関する消滅時効の主張が信義則に反し許されないとされる場合は,極めて限定されるものというべきである。
 しかしながら,地方公共団体は,法令に違反してその事務を処理してはならないものとされている(地方自治法2条16項)。この法令遵守義務は,地方公共団体の事務処理に当たっての最も基本的な原則ないし指針であり,普通地方公共団体の債務についても,その履行は,信義に従い,誠実に行う必要があることはいうまでもない。そうすると,本件のように,普通地方公共団体が,上記のような基本的な義務に反して,既に具体的な権利として発生している国民の重要な権利に関し,法令に違反してその行使を積極的に妨げるような一方的かつ統一的な取扱いをし,その行使を著しく困難にさせた結果,これを消滅時効にかからせたという極めて例外的な場合,上記のような便宜を与える基礎を欠くといわざるを得ず,また,当該普通地方公共団体による時効の主張を許さないこととしても,国民の平等的取扱いの理念に反するとは解されず,かつ,その事務処理に格別の支障を与えるとも考え難い。したがって,本件において,上告人が上記規定を根拠に消滅時効を主張することは許されないものというべきである。論旨の引用する判例(最高裁昭和59年(オ)第1477号平成元年12月21日第一小法廷判決・民集43巻12号2209頁)は,事案を異にし本件に適切でない。

4 原審の判断は,これと同旨をいうものとして是認することができる。論旨は採用することができない。
 よって,裁判官全員一致の意見で,主文のとおり判決する。なお,裁判官藤田宙靖の補足意見がある。
 裁判官藤田宙靖の補足意見は,次のとおりである。
 私は,法廷意見に賛成するものであるが,地方自治法236条2項の規定にもかかわらず,本件において消滅時効の成立を認めない理論的根拠について,若干の補足をしておくこととしたい。
 信義誠実の原則は,法の一般原理であって,行政法規の解釈に当たってもその適用が必ずしも排除されるものではないことは,今日広く承認されているところである。地方自治法236条2項の解釈・適用に当たってもこのことは変わらないのであって,住民が権利行使を長期間行わなかったことの主たる原因が,行政主体が権利行使を妨げるような違法な行動を積極的に執っていたことに見出される場合にまで,消滅時効を理由に相手方の請求権を争うことを認めるような結果は,そもそも同条の想定しないところと考えるべきである。その意味において,本件のようなケースにおいては,同条2項ただし書にいう「法律に特別の定めがある場合」に準ずる事情があるものとして,なお時効援用の必要及びその信義則違反の有無につき論じる余地が認められるものというべきである。
 (裁判長裁判官藤田宙靖 裁判官上田豊三 裁判官堀籠幸男 裁判官那須弘平)

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