公務員の違法な選挙運動や地位利用について/ 答弁者、総務課長兼選挙管理委員会書記長
選挙が公正に行われるべきことは当然である。役所内で職員に不信感を持たれることは最低であること、議会の議員が疑義をいだく状況も、市民から疑念を持たれることも同様だ。
そんな市長選びの過程はあってはならないので、今回の質問をする。
自治体の選挙のうち特に首長(市長)の選挙における自治体職員の関与が問題になることは少なくない。この実態を受けて、各種の警鐘が鳴らされている。
例えば、3年前つまり2011年2月の総務大臣の通知、「統一地方選挙における地方公務員の服務規律の確保」(※-1)には、公務員の「事前運動」や「地位利用」について次の旨が明記されている。
統一地方選挙に際しても、・・地方公務員の政治的中立性に対する疑惑を招き、住民の信頼を損なうことがないようにするとともに、万が一、服務規律違反等の行為があった場合は、厳正な措置をとられる等・・格段の配意をお願いします。・・・
3 特別職を含む全ての公務員は、公職選挙法第136条の2第1項の規定により、 その地位を利用して選挙運動をすることは厳に禁止されており、これに違反した場合は、同法第239条の2第2項の規定により処罰されること。
4 前記3の公務員が・・公職の候補者になろうとする者(公職にある者を含む。)を推薦し、支持・・する目的をもってする公職選挙法第136条の2第2項各号に掲げる行為は、前記3の禁止行為に該当するものとみなされ、これに違反した場合は、同法第239条の2第2項の規定により処罰されること。
以上のように、国から強く指摘されてきた。2007年通知も同旨(※-2)である。
岐阜県内においては、2001年1月28日投票の岐阜市長選挙に関して、同年2月13日以降、岐阜市の部課長らが、公職選挙法に定める公務員の地位利用に関して違反した等の疑いで相次いで逮捕、拘留、起訴され、裁判所で禁固1年や罰金刑の刑罰を受け、確定した。県庁所在地の岐阜市、しかも私たちの隣の自治体なので衝撃的な事実であった。
この事件の判決書には、「地位利用」としての公職選挙法136条の2第1項1号の違反、「事前運動」としての同法129条違反であることが明記されている。
地位利用した具体的な行為について、公職選挙法第136条の2第2項各号は次のようなことも規定し、禁止している。
2 選挙運動の企画に関与し、その企画の実施について指示し、指導し、又は他人をしてこれらの行為をさせること。
4 新聞その他の刊行物を発行し、文書図画を掲示し、頒布し、若しくはこれらの行為を援助し、又は他人をしてこれらの行為をさせること。
5 公職の候補者となろうとする者(公職にある者を含む。)を推薦し、支持・・申しいで、又は約束した者に対し、その代償として、その職務の執行に当たり、・・利益を供与・・すること。
これら行為を平たく言えば、選挙告示前の「政治活動」期間における具体的な政策やマニフェストの提案や作成、リーフレットなど印刷物の作成、選挙の専門家の紹介や仲介、印刷物の作成への関与なども該当するであろう。
地位利用について、前記行為の前提として、役所や職員が持っている情報や電磁データなどを候補者になろうとする者に提供することも含まるであろう。さらに、勤務時間内の行為の抵触は当然として、勤務時間外であろうと前記行為に協力することも該当するであろう。
また、選挙が終わってのちの格段の昇進など利益供与の典型である。例えば、新潟県加茂市選挙管理委員会のHPでは、「その見返りに職務上の利益を供与するといった行為は、地位を利用した選挙運動の類似行為として禁止される。」としている。
当山県市では、来年2015年の4月に統一地方選の一環として「市長選」が実施される予定である。
これらのことから、岐阜県から人事交流で来ている山県市選挙管理委員会書記長を兼務する総務課長に質問する。
1. 例示した総務省通知の3項にいう「特別職を含む全ての公務員」とは、他の選管の解説では、「すべての公務員(常勤、非常勤、一般職、特別職を問わずあらゆる公務員が対象」(新潟県加茂市選挙管理委員会のHP)」、「区長、民生委員、教育委員会委員、監査委員、農業委員会委員、消防団員などがこれに該当します。」(宮城県大和町選挙管理委員会のHP)等とされている。
通知の3項にいう「特別職を含む全ての公務員」とは、市長、副市長ほか市役所の常勤職員、非常勤職員のすべてと解してよいか。
市ではどの肩書きの職か。それはおおよそ何人か。
ところで、選挙管理委員会は個別事案については答えを濁すことが多いので、あとは法令の規定や一般論について問う。
2. 法第136条の2(公務員等の地位利用による選挙運動の禁止)に関して、同条2項の各行為を同条1項の地方公務員がなした場合にかかる罰則は、どのようか。
3. 過去の岐阜市長選の判決の通り、公務員の地位利用違反は、選挙告示前からなされている行為つまり「事前運動」も含めた違反として認定されることが多い。
法第129条 (選挙運動の期間)「選挙運動は・・公職の候補者の届出のあつた日から当該選挙の期日の前日まででなければ、することができない 」にかかる罰則は、どのようか。
4. 罰則に関しては、一定期間起訴されなかった場合は罪を問わない、俗にいう「時効」という制度がある。前記の2つの項目についての刑事訴訟法上の「公訴時効」は「何年」か。
5. 3年前の2011年、平成23年2月の総務省通知にいう2011年4月24日の全国の市町村の選挙において、先の「地位利用違反」「事前運動」があったと認定される場合の公訴時効の起算点は何年何月何日か。
その時効が完成(時効期間が満了)、つまり訴追されなくなるのは何年何月何日何時か。
6. 私は、20年以上いろいろな選挙にかかわってきて、「公選法違反はその行為者の意図するところを判断することが一つのポイントである」とは、県警捜査二課の職員から何度も説明を受けてきた。
ところで、多くの自治体の市長が、政策実現のため企業訪問などをするわけだが、それは公務といえる。
しかし、訪問先で、「今度、市長選がありまして・・」とか「・・選挙はよろしく」などの意図をもち、さらに実際に発言するとなれば、それは、「市長個人の政治活動」であることは明白で、場合によっては法律の「一線」を越えることだ。
そこで質問だが、自治体職員が、そんなことがあり得る企業訪問のスケジュール調整などをすることは地位利用や事前運動と見得るし、職員がそんな訪問に随行するなどもってのほかだと私は考える。
選管として、あって良いことだと考えるか。公選法及び地方公務員法の観点で説明されたい。
以上
※-1 総行公第9号/平成23年2月18日/総務大臣/「統一地方選挙における地方公務員の服務規律の確保について」
※-2 総行公第18号/平成19年2月22日/総務事務次官/「統一地方選挙における地方公務員の服務規律の確保について」
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