先月、滋賀県の大津地方裁判所で画期的な判決があった。
以前から注目していた裁判。
判決文がインターネットに出たので読んでみたけど、とてもすっきりしていい判決。
こういう判決は覆りにくい。
全国オンブズ が掲載した判決の全文
⇒ 「行政委員の月額報酬違法」の大津地裁判決
47ページのうち、本文は37ページほど。
15ページから最後までが「第4. 当裁判所の判断」としての核心部。
そのうち、15ページからの「1.常勤の職員と非常勤の職員の給与等に関する法令の規定」
18ページからの「2.国家公務員及び地方公務員に関する法令の関係規定の変遷」
28ページから32ページまでの「3.法203条の2の2項の趣旨」、
これらが、重要なところ。
「議会の制定した条例が、上記のような法203条の2第2項の趣旨に反するときには、当該条例は、法令に違反するものとして、その効力を有しない」(31ページ中段)
そもそも、地方自治法の規定は次のよう。
第二百三条の二 普通地方公共団体は、その委員会の委員、非常勤の・・に対し、報酬を支給しなければならない。
○2 前項の職員に対する報酬は、その勤務日数に応じてこれを支給する。ただし、条例で特別の定めをした場合は、この限りでない。
○3 第一項の職員は、職務を行うため要する費用の弁償を受けることができる。
○4 報酬及び費用弁償の額並びにその支給方法は、条例でこれを定めなければならない。 |
判決は、この第2項の定めに反している滋賀県の条例は無効、というもの。
同様の裁判を起こしていたオンブズ もあるし、この判決を受けて住民監査請求したところもある。
こちらはどうするかな・・・
実は、私は、上記の第4項の定めに反している例が少なくないと思っている。
議員の勉強会でも、時々、そういう指摘をしてきた。
一度調べようと思っていたけど、まだ調べていないので、そろそろ、県のデータを集めて対応しようと思っている。
(追記/岐阜県での住民監査請求、住民訴訟の提訴のデータにリンク)
⇒2010年4月29日ブログ ⇒ ◆行政委員の高額な月額報酬の返還と差止め訴訟。大阪高裁判決。岐阜県知事は日額方向に見直しか
人気ブログランキング→→←←ワン・クリック10点
ここのところ5位、6位あたり
●行政委員の月額報酬違法 大津地裁が差し止め命令 中日 2009年1月23日
選挙管理委員ら非常勤の行政委員の報酬が、月に数回だけの勤務なのに条例で月額20万円と定めているのは地方自治法に反するとして、大津市の弁護士が滋賀県に支出差し止めを求めた訴訟で、大津地裁は22日、県の条例を違法と認め、支出差し止めを命じた。
自治体が定める月額報酬が違法と認められたのは全国で初めてという。原告の吉原稔弁護士(68)は「ほとんどの都道府県や市町村が同じ制度のため、各地で是正すれば100億円規模の経費削減ができる」と話している。
問題とされたのは選管と、労使トラブルを仲裁する「労働」、土地の強制取得を協議する「収用」の3委員会。訴状によると、いずれも毎月1、2回の会議を開くのみだが、1953年施行の「特別職の給与等に関する条例」に基づき、各委員には月額約20万円が支払われている。
判決理由で石原稚也裁判長は、地方自治法を基に「非常勤職員の報酬は勤務日数に応じるとの規定があり、3委員会も例外ではない。条例は同法の趣旨に反しており、効力がない」と指摘した。
県は条例が法律の例外規定に当たるため合法だと主張。
嘉田由紀子知事は「認められず残念。判決内容を詳細に検討する」とのコメントを出した。
<五十嵐敬喜・法政大教授(公共事業論)の話> 問題なのは、本来なら中立であるはずの委員会が、高額報酬を受け取り行政寄りになっていること。仕事内容も知られていない。判決をきっかけに、国民全体で議論していくべきだ。
●行政委員の報酬、「月額制」ダメ 滋賀県に差し止め命令 朝日
2009年1月22日13時41分
滋賀県が労働、収用、選挙管理の各行政委員会の委員に支払う報酬をめぐり、毎月定額を支給するのは地方自治法に違反するとして、滋賀弁護士会の吉原稔弁護士(68)が、県に報酬を支払わないように求めた訴訟の判決が22日、大津地裁であった。石原稚也(ちがや)裁判長は「勤務実態を前提とする限り、月額報酬を支給する規定は法の趣旨に反し、効力を有しない。支出は違法だ」として、県が委員に報酬を支出しないよう命じた。
報酬は地方自治法が「勤務日数に応じて支給する」と定めるが「条例で特別の定め」ができるというただし書きもある。滋賀県によると、労働委と選挙管理委はすべての都道府県が条例による月額制で、収用委でも日額制を採用する4県をのぞいて月額制。吉原弁護士は判決後、「是正すれば全国の地方自治体で約100億円の経費削減になる。すべての自治体が判決確定を待たずに日額制にし、違法で無駄な支出をやめるべきだ」と述べた。
吉原弁護士は地方自治法のただし書きについて「非常勤の報酬をむやみに月額にしてよいとは規定していない」と主張した。
一方、県は「条例化に特段の制限は課されていない」と反論。委員の仕事についても「単なる会議出席で報酬を定めるべきものではない」と主張していた。
●会議数回で月20万、滋賀の行政委報酬の違法性認定…大津地裁 2009年1月23日00時21分 読売新聞
滋賀県の行政委員(非常勤特別職)が月1、2回の会議への出席などで月額約22万~19万円の報酬を得ているのは、地方自治法違反として、吉原稔弁護士(滋賀弁護士会)が、嘉田由紀子知事に報酬の支払い差し止めを求めた訴訟の判決が22日、大津地裁であった。
石原稚也裁判長は原告の主張を認め、差し止めを命じた。行政委員の月額報酬について違法性を認定する司法判断は初めて。
訴状などによると、労働委員は15人いるが、1997~2007年の不当労働行為申し立ては、年平均2件。選管委員は4人が月1回、半日程度の会議に出席している。土地取得などを担当する収用委員は7人で、00~07年に年平均3件の裁決しか行っていない。
地方自治法は、非常勤職員の報酬について「条例で特別に定めた以外は、勤務日数に応じて支給する」と規定。訴訟では、報酬額が勤務実態に見合っているかや、月額報酬制を定めた条例が法の趣旨に反していないかが争点となっていた。
判決で、石原裁判長は「(月額報酬制は)勤務実態が常勤職員と異ならない場合に限られる。滋賀県の場合、勤務実態は常勤職員と異ならないとは到底言えず、支出は違法というほかはない」と指摘した。
●行政委員の月額報酬は違法=滋賀県の公金支出差し止め-大津地裁 2009/01/22-21:10 時事
滋賀県の労働、収用、選挙管理の各行政委員(非常勤)が月数回程度の会議出席で多額の月額報酬を得ているのは違法として、県内の弁護士が知事を相手に公金支出差し止めを求めた訴訟の判決で、大津地裁は22日、各委員に対する月額報酬を支払わないよう知事に命じた。
石原稚也裁判長は、地方自治法の規定で、非常勤職員の報酬は原則勤務日数で支給し、常勤職員と勤務実態が異ならない場合、例外として条例を定めて月額報酬の支給が可能と指摘した。
その上で、滋賀県の各行政委員の勤務実態は近年、おおむね月1回から数回と認定。「常勤職員と異ならないとは到底いえない」とし、非常勤の各行政委員に月額報酬を認めた県条例は効力を持たないとした。
●見直し論議活発化か 行政委員「月額報酬」違法判決 2009年01月24日 日本海新聞
行政委員の月額報酬制は、勤務実態に見合わず「地方自治法の趣旨に反する」とした大津地裁(滋賀県)の違法判決。各種行政委員の日常的な仕事や勤務状況などは県民にあまり知られていないのが実態で、鳥取県の有識者会議では「仕事に見合う報酬なのか」と見直しの声も出ている。県市町村を問わず各種行政委員の報酬の在り方をめぐって論議を呼びそうだ。
・・・・・・・・・・・
県に比べて市町村の行政委員報酬は格段に低いが、四市の反応はどうか。
中村勝治境港市長は「各委員は住民福祉のために行政と一緒に取り組んでおり、見識を持った方を拘束するのだから報酬は当然」と指摘する。月額制か日当制の是非については「大事なのは金額が適正かどうか。本市は四市で最低であり、見直すことは全く考えていない」とし、報酬額の適正さを強調した。
大津地裁判決を「月額報酬制度自体への問題提起として関心を持って今後見守りたい」と受け止める長谷川稔倉吉市長。行政委員報酬は市の審議会で検討されており、「諮問の時期が来れば今回の指摘(地裁判決)などを加味して判断することになる」とした。
米子市の角博明副市長は大津地裁判決を「一つの問題提起と受け止めている」と話し、行政委員報酬について「委員ごとに勤務実態が違い一概には言えないが、市民の視点と照らし合わせて理解が得られるかどうか、報酬の妥当性の検討は必要だ」と考える。
竹内功鳥取市長は「条例で定めている事柄でもあり、判決を機会に必要な検討はしたい」とコメントした。
●県9委員会の勤務調査 2009年1月24日 読売新聞
滋賀県の行政委員(非常勤特別職)への月額報酬支払いが大津地裁で違法との判決が出されたことを受け、県は23日、同じく月額で報酬を払っている県の9行政委員会が、どのような勤務実態かの調査を始めた。尾崎知事は「実態に合わせて支給されるべきと言うのが大原則。勤務日数だけでなく、業務にどれだけ拘束されているかも調べるべき」との考えを示した。
県の行政委員会は、判決で挙げられた選挙管理、収用、労働のほか、教育、公安、監査、高知海区漁業調整、内水面漁場管理の9委員会。一律の報酬カット率が適用されているが、2万~20万円程度(常勤の代表監査委員は約56万円)の報酬がある。
●県の月額報酬も「厚遇」 オンブズ提訴 行政委員、月2回18万円も 2009年1月24日 読売新聞
滋賀県が県の行政委員に報酬を月額で支給しているのは違法として支払い差し止めを命じた22日の大津地裁判決が、県内の関係者に注目されている。市民オンブズマン「見張り番とくしま」の会員は、県の労働、収用、選挙管理、人事の各行政委員について同様に徳島地裁に提訴しており、「妥当な判決。日額で十分だ」と意を強くしている。
会員や県によると、徳島県の場合、各行政委員の報酬は月額19万~18万円。労働委員は15人いるが、2003~07年度の不当労働行為申し立ては年平均2件しかなく、07年度には申し立てを審議しなかった委員もいた。土地取得などを担当する収用委員は7人で、03~07年度の審議件数は年平均7件。また、選挙管理委員4人は07年度、毎月平均2日間勤務し、1人1日当たり9万円の報酬を受け取った計算。人事委員は3人で、定例会は毎月2回あっただけという。
行政委員など非常勤職員の報酬について地方自治法は「勤務日数に応じて支給」「条例で特別の定めをした場合はこの限りでない」と規定。県は条例で「月額」と定めている。
会員らは08年11月、各行政委員に損害賠償請求するよう知事に求めて住民監査請求したが却下され、支払い済みの2007年度分約6300万円などの損害賠償請求と、月額報酬の差し止めを求め、1月8日に提訴した。同法の解釈を巡って行政委員の月額報酬の違法性を争う訴訟は、大津地裁に次いで2例目という。
訴えた会員は大津地裁の判決を踏まえ、「月額で支給するほど厚遇する必要はない」と主張。県人事課は「委員には調査や情報収集をお願いしており、勤務日数だけで報酬は決められない」とコメントしている。
●「月数回会議で額多すぎ」 行政委員の月額報酬 有識者会議でも意見 2009年1月24日 読売新聞
滋賀県の選挙管理、労働、収用の各行政委員(非常勤特別職)が月数回の会議出席などで得ている月額報酬を違法と認め、同県知事に支払い差し止めを命じた22日の大津地裁判決が、県内にも波紋を広げている。県の3委員会も同様に月額報酬制。関係者は「出勤日以外にも準備作業があり、職責も重い」と強調するが、県の有識者会議でも「報酬が多すぎる」との意見が出ているといい、今後、論議を呼びそうだ。
「厳しい判決で非常に驚いた」と話すのは、桐林正彦・県選管事務局長。委員は2007年度、臨時を含む委員会に15回、街頭啓発に2回、研修に7回出勤。月平均では3、4日だが、桐林事務局長は「選挙結果への異議申し立ての裁決など重い職責を担っており、会議以外にも議案の読み込みや情報収集がある。日額報酬制では、なり手がいなくなる」と憂慮する。
労使の代表や学識経験者ら15人で構成される労働委は、定例の総会は月2回程度だが、昨年は調停などの申し立てを22件受理し、必要に応じて協議。弁護士や不動産鑑定士などの委員7人がいる収用委は今年度、12月までに3件を受理し、委員会14回、審理6回、現地調査4回をこなした。
足田晃・県労働委事務局長は「委員はほかに弁護士などの仕事を持っており、多忙な中を縫って職務にあたっている。勤務が常勤職員並みでないと月額報酬が認められないというのは、どうかと思う」と話す。
一方、県によると、学識経験者ら10人で知事ら特別職の報酬を検討する県の有識者会議では、複数の委員から「月数回の会議出席などで月額報酬は多すぎる」との意見が出ているという。担当の県給与室は「今後の検討課題にしたい」。
市民オンブズ鳥取代表の高橋敬幸弁護士は「今まで気がつかなかった問題で、全国の自治体や委員に自覚を促す判決だ。オンブズとしても(監査請求などの)対応を検討したい」と話している。
●橋下徹大阪府知事 日当制「一考の価値はある」 2009年1月22日 朝日
大阪府の橋下徹知事は「府として直ちに報酬の見直しをするわけではない」と断ったうえで「府民感覚からすれば、行政委員も業種によって、月額制が適当でないと思われるものがあるかもしれない。日当制もありうるか、考えてみる価値は十分ある」と判決を評価した。
●道収用委:委員報酬、日額制へ 他の行政委に拡大も /北海道 毎日新聞 2009年1月31日
高橋はるみ知事は30日の記者会見で、道の行政委員会のうち収用委員会の委員報酬を4月以降、従来の月額制から勤務日数に応じた日額制に改める考えを示した。行政委員の報酬をめぐっては今月22日、大津地裁が滋賀県に対し「(報酬を月額制とする)県条例は地方自治法に違反」として公金支出の差し止めを命じる判決を言い渡しており、月額制をとっている他の42都府県にも見直しの動きが広がるかが注目される。
道収用委員会は会長を含めて7委員。報酬は道条例で会長が月34万5000円、委員は30万円と決められ、07年度は10%、08年度は9%縮減されている。収用委員会の07年度の審議実態は定例会議21回、現地調査6回。道は日額制に変更する理由として(1)他府県と比較して事案件数が少ない(2)年や月ごとに業務量が異なる--などを挙げた。
高橋知事は「ずっと以前から検討していたこと」と大津地裁判決を受けた措置ではないとの認識を示す一方、「今後も必要な検討を進める」と述べ、ほかの行政委員会に日額制を広げる可能性に含みを持たせた。
収用委員会のほか教育、選挙管理、労働などの行政委員会も同様に約20万~30万円の月額報酬となっており、高額批判を受け道は08年11月、「個々の業務実態に応じた報酬のあり方を検討する」との方針を決めていた。【鈴木勝一】
==============
◇行政委員会委員(非常勤)の月額報酬
(略)
●行政委員の月額報酬違法判決 備後6市町戸惑い隠せず 「支出は適切」「見直し検討も」 2009年1月28日 読売新聞
滋賀県の選挙管理、労働、収用の各行政委員の月額報酬を違法と認め、同県知事に支払い差し止めを求めた22日の大津地裁判決は、教育や監査などの各行政委員で同様の月額報酬制を導入している備後地方の6市町(福山、尾道、三原、府中、世羅、神石高原)にも波紋を広げている。各市町の担当者は「勤務実態に即した適切な支出を行っている」としながらも、「月額報酬そのものが違法となれば見直しも検討しなければ」と、判決内容の確認を急ぐなど戸惑いを隠さない。(石原敦之、諏訪智史)
・・・
<クリップ>
行政委員 地方自治法は、自治体に教育、選挙管理、人事(公平)、監査の各委員の設置を義務付け、都道府県には公安、収用、労働、海区漁業調整、内水面漁場管理、市町村には農業、固定資産評価審査の各委員が加わる。組織は、中立性を確保するため、自治体の首長部局から独立した執行機関とされている。同法は、非常勤の行政委員の報酬について「条例で特別に定めた以外は勤務日数に応じて支給する」と定めているが、多くの自治体で月額報酬制が導入されている。
●行政委員の月額報酬差し止め訴訟、滋賀県が控訴へ 朝日 2009年2月3日
滋賀県の行政委員が勤務日数によらず月額で報酬を得るのは地方自治法違反として県に報酬支出の差し止めを命じた大津地裁判決について、嘉田由紀子知事は3日の記者会見で「地方自治体の裁量権を狭くとらえており、疑義がある」と語り、大阪高裁に控訴する方針を明らかにした。控訴期限は5日。
県は裁判で「行政委員は常に研鑽(けんさん)を求められている。単なる会議出席で報酬を定めるべきものではない」と主張。判決は「法がこうした委員らに対し、勤務日数によらず報酬を支給することを許しているとは解されない」とした。
| Trackback ( )
|