「たぬきせんべい」の山ある記

ニフティの「山のフォーラム」が消滅したのでブログを始めてみました

【北アルプス】高瀬ダムから野口五郎、水晶、鷲羽、新穂高温泉へ

2008-07-24 12:00:28 | 山小屋泊
                 鷲羽岳山頂からの鷲羽池と槍ヶ岳

家族4人で北アルプス裏銀座コースを行き、双六小屋から槍へは行かず、鏡平経由で新穂高温泉へ下りました。初日は時々小雨も降り、ガスもかかって烏帽子岳をあきらめましたが、二日目、三日目と好天に恵まれ、大展望とお花畑を堪能しました。小屋でも混雑には遭いませんでした。烏帽子小屋では一部屋貰い、水晶小屋も定員に満たなく、また鏡平山荘では離れの新館で一部屋貰うなど優雅な小屋泊まりができました。

【日 程】2008年7月19日(土)夜~23日(水)夜行バス3泊
【山 域】北アルプス
【山 名】野口五郎岳、水晶岳、鷲羽岳、三俣蓮華岳
【メンバ】本人、妻、長女、次女
【天 候】20日曇り一時小雨、21日晴れ、22日晴れ後曇り、23日曇り
【コース】
20日:高瀬ダム(7:30)→烏帽子小屋(13:40)→前烏帽子→烏帽子小屋(泊)
21日:烏帽子小屋(6:00)→野口五郎岳(10:40)→水晶小屋(15:15)→水晶岳→水晶小屋(泊)
22日:水晶小屋(5:30)→鷲羽岳(7:30)→三俣蓮華岳(11:15)→双六小屋(14:15)→鏡平山荘(16:30)泊
23日:鏡平山荘(6:30)→ワサビ平小屋(9:30)→新穂高温泉(11:00)

新宿都庁前から19日夜10時半発の白馬方面に向かう「さわやか信州号」に乗車し、20日早朝5時に信濃大町駅前で下車した。ここで下車したのは私たちだけで、他の人たちは扇沢や白馬へ向かうようだった。7年前にここに来た時は駅前にタクシー待ちの登山者がかなりいたという記憶があるが、この日は閑散としていた。あらかじめ予約していたタクシーに乗車し、高瀬ダムへ向かう。(料金は8千円弱)ダムの上で下車した時にも他に登山者の姿は見えなかったが、お湯を沸かして簡単な朝食をとっているうちにツアーの一団などがやってきた。曇りで山のほうはガスがかかって肌寒く次女は少しお腹が痛むと言い出して、どうしよう戻ろうか?と心配した。薬を飲んでしばらく休むうちに体調が回復して、次女も行きたいということなので荷を軽くしてゆっくり出発した。

トンネルを通り、つり橋を渡り、ダム湖に注ぐ沢の河原を少し歩いてからブナ立尾根に取り付く。階段が続く急登を無理せずゆっくり行く。所々に番号の付けられたポイントがあって、始まりは気が付かなかったが、烏帽子小屋がゼロになっているようだ。次女の体調が心配なのでポイントごとにゆっくり休憩しながら、減っていく数字を励みに登る。天気の方は小雨が降ってきたかと思うと、また日が差してきたりと不安定で、雨具を着けたり脱いだりした。幸い、本格的な雨にはならず、烏帽子小屋に到着した。ブナ立尾根の下部ではゴゼンタチバナ、マイヅルソウなど地味な花が多かったが、登り切ると、イワカガミ、ショウジョウバカマ、チングルマ、ミヤマキンポウゲ、アオノツガザクラなどのお花畑が出迎えてくれた。

烏帽子小屋で前で昼食とし、空身で烏帽子岳に向かった。途中の砂礫地帯にはコマクサとチシマギキヨウが多い。雨は降ってこなかったが、前烏帽子に着いたときガスがかかって烏帽子岳方面が全く見えなくなった。何も見えない中を無理して登っても仕方ないし、烏帽子岳頂上付近は岩場になっているので、危険を冒すことは無いとここで引き返した。烏帽子小屋の食事は天ぷらも出て美味しかった。北アルプスの山小屋の食事はたいてい美味しいようだ。夜行バスはあまり眠れなかったし、個室を貰えたのでぐっすり眠れた。

21日朝は周囲の山々には雲がかかっているが、小屋の付近はガスが晴れていた。昨日、登りで出会ったアルバイトの青年と小屋のご主人とともに烏帽子小屋の前で記念写真を撮ってから出発した。三ッ岳手前の砂礫地にかかるとコマクサの群落で一面ピンクに染まっていた。長女と次女は元気に先を行き、すれ違う人に「ヤマケイのモデルになれるね」などと言われて気をよくしている。時間が経つに連れて青空が広がり、日焼けが心配になる。やがて左手に槍ヶ岳の姿が見えた。いま槍ヶ岳に登っている人は最高だろう。途中、お湯を沸かしてインスタントのみそ汁と小屋で作ってもらったおにぎりで朝食とした。雲に隠れていた赤牛岳から水晶岳、鷲羽岳まで次々と姿を現してくる。昨日登れなかった烏帽子岳は低く貧弱に見える。遠く薬師岳、立山、剣、さらに鹿島槍まで展望できる。

まだ残雪が非常に多くて緑と白のコントラストが美しい。チングルマやキバナノコマノツメなどのお花畑を見て、布団がたくさん干されている野口五郎小屋に着いた。泊まってもいないのに小屋の前で記念写真を撮って貰い、野口五郎岳へ向かう。頂上では若い女性2人組と出会った。折立から薬師、黒部五郎などを経由して来て、今日下ってしまうという、なかなかの健脚ぶり。今日のコースは始めのうち赤牛岳の姿が良く、野口五郎岳あたりでは水晶岳の姿が素晴らしい。次に鷲羽岳が近づくと鷲羽岳に目が移って行き、槍が姿を現すと槍へと飽きることがない。そして小ピークを越えたとき、鷲羽岳を背景に思わず声を上げるほど素晴らしいお花畑が広がっていた。・・とここまでは楽しく来たのだが、その先に岩場と大岩の重なる難所が待っていた。逆方向から来るツアーの一団の最後尾にガイドに荷を持って貰って辛そうにやってくる人もいて心配になる。

東沢乗越手前で昼食休憩。水晶小屋直下の赤茶けた岩の急な登りをこなして小屋にたどり着いた。小屋はかなり前から見えているのになかなか遠く苦労させられた。小屋の前でお茶を沸かして飲んでから水晶岳を空身で往復する。梯子もかかる岩場の多い道だった。頂上に着いたときはガスがかなり広がって十分な展望が得られなくて残念。赤牛岳から登ってきたグループがちょうど下るところだった。雪渓の雪で冷やしたビールを買って回し飲みで喉を潤す。水晶小屋の食事はカレーがすばらしく美味しかった。外に出ると野口五郎岳方面に発達した積乱雲に夕日が映える。夜にまた出てみると雷で積乱雲の中が何度も強く光った。水晶小屋は昨年7月に改築されたばかりで、まだ木の香もする。部屋は定員に少し欠けるぐらいでスペースには余裕があったが、大部屋なので鼾が聞こえて眠りを妨げられた。

22日の早朝は天気が良く、夜明け前から槍ヶ岳や遠くには富士山のシルエットも見られ、野口五郎岳あたりから昇る朝日を見てから出発した。ところが、これから向かう西の方からガスが上がってきてしばらくガスの中を歩く。水晶小屋からいったん下ったお花畑にはこれまで無かったキバナシャクナゲが見られた。ワリモ岳を越えるあたりからだんだんガスが晴れてきて、鷲羽岳頂上に着いたときには槍ヶ岳を背景に鷲羽池が見下ろせる素晴らしい景色が見られた。この景色を見ながらお弁当を広げてゆっくりした。

鷲羽岳からの下りは快晴の空の青に、三俣蓮華岳から双六岳に続く穏やかな稜線の緑と残雪の白、その真ん中下方に赤い屋根の三俣山荘が見下ろせて、娘たちはハイジのアルプスもこんな感じかなと喜んでいた。しかし天気が良くなりすぎて三俣山荘に下りつくと暑くてたまらない。三俣山荘の前の日当たりの良いベンチには人は刺さないようだがアブが大量にいた。烏帽子小屋への登りや水晶小屋への登りあたりではブユの類にまとわりつかれ、その時顔を刺されたようでこのあたりで腫れてきたのに気付いた。今年は特に虫の発生が多いようで、今回の登山では唯一のマイナス材料だった。

三俣山荘から残雪の上も歩いて三俣蓮華岳に向かう。三俣蓮華岳の向こうからガスが上がってきて頂上に着いた時はだいぶ展望が悪くなっていた。それでも雲ノ平の小屋や雲のかかった黒部五郎も見えた。ちょうど高校生と引率の先生のグループと一緒になり写真を撮ったり撮って貰ったりした。三俣蓮華岳からは稜線を行くがガスで展望が全く無くなった。しかしチングルマ、ハクサンイチゲ、コバイケイソウ、タテヤマリンドウ、シナノキンバイなどのお花畑が続く素晴らしい道だ。雷鳥の親子も見かけた。双六岳あたりは残雪が多いと聞いていたのでパスして下った。クロユリの多いお花畑があり、再び雷鳥の親と雛5羽を見ることができた。

双六小屋に下り、時間が遅くなりそうなので鏡平山荘に予約を入れて貰った。双六小屋からいったん緩い登りになる。振り返ると今日登ったばかりの鷲羽岳がずいぶん遠くに見える。尾根を越えると槍ヶ岳から穂高へと続く稜線が眼前に見えるはずだが、すでにガスの中だった。途中、「花見平」の看板もあり、ハクサンフウロ、ヨツバシオガマ、ハクサンチドリ、ニッコウキスゲなどここまで見かけなかった花が咲いている道を歩く。やがて池のそばに立つ赤い屋根の鏡平山荘が見下ろせる。しかし、疲れて重くなった足取りでの下りは長かった。それでも池に渡した橋の向こうに立つ鏡平山荘のロケーションには娘たちも「メルヘンの世界」と喜ぶ。鏡平山荘ではまだ新しく木の香もする別館の個室にしてくれた。他の団体さんも来るという話だったが、結局、別館に泊まったのは私たちだけで、実に静かな一夜だった。他の客がいないので気兼ねすることなく、夜中に外へ出て星空を眺めたりした。

翌朝は、槍穂の方にはガスがかかっていて、残念ながら池に映った山々を写真に撮ることはできなかった。しかし下るには涼しくて良かった。快調に下ったが、林道に出てからが長くてうんざりする。新穂高温泉バス停前の町営の無料温泉に入って汗を流してから、平湯温泉にバスで出て、さらに新宿行きの高速バスに乗り換えて帰路に就いた。


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