晴れの日でも薄暗く、どことなく怪しげな雰囲気の繊維ビル。数多くあった飲食店の中でも異彩を放っていたのが串かつ屋「てんぐ」である。一見客が入るのを躊躇するような店構えだったが、千円札一枚で飲み食いできる穴場だった。
ベタベタした丸イスに座り甘いどて焼きをアテにビールを飲み何本か揚げてもらったものだ。無口な店主の笑顔を一度も見たことはない。注文が入らない時は小型テレビをぼんやり眺めている姿が今でもまぶたに焼き付いている。
冷たいビールを飲むと尿意を催すので勘定を済ませて狭い共同便所に駆け込むのがここでの決まり事だった。昭和の匂いが残る建物はどんどん市の中心部から消えてゆく。街の発展のためには仕方のないことだが、やはり一抹のさみしさを覚える。
ベタベタした丸イスに座り甘いどて焼きをアテにビールを飲み何本か揚げてもらったものだ。無口な店主の笑顔を一度も見たことはない。注文が入らない時は小型テレビをぼんやり眺めている姿が今でもまぶたに焼き付いている。
冷たいビールを飲むと尿意を催すので勘定を済ませて狭い共同便所に駆け込むのがここでの決まり事だった。昭和の匂いが残る建物はどんどん市の中心部から消えてゆく。街の発展のためには仕方のないことだが、やはり一抹のさみしさを覚える。