マルガリータのつぶやき

フォトジェニックな「趣味の記録」:マルガリータの庭、国内海外の旅、グルメ、美術・音楽・映画、自分勝手流読書、etc

『林芙美子の昭和』 川本三郎

2016-03-07 13:10:42 | 本 MEMO
映画から書評から、川本三郎の著作には、「大正」「昭和」が多い。
1944年、昭和19年生まれだから戦後派ということになるが、
川本自身、「あと5年早く生まれて、(ゲーリー・クーパーとか)映画の黄金期をリアルタイムで観たかった。」と以前から書いていたように、
昭和の戦中、戦後を、特に日本人の精神史として書かせたら、まさに独壇場だ。

「林芙美子の昭和」でも、時代の精神に絡め取られた作家論、作品論になっている。

  

特に十九章;『浮雲』おおう「暗さ」の考察には衝撃を受けた。
ゆき子を、戦争から戦後の混乱にどっぷり青春を沈ませるしかなかった時代の申し子ととらえて、
破天荒な行動、戦時中のダラットの思い出を理想化し、幻想に仕上げていくしかない心情も、解き明かしていく。

戦争で青春をうばわれた「ゆき子」と同年輩の女性の怨念、罪としての幻想に、林芙美子は思いを寄せて「浮雲」を書いたのだ。
なんという作家だろう。 
「明るい戦後」に背を向けて2年もの間、こんなに暗い小説を書き続ければ、心臓で早世したのも納得がいく。

林芙美子の作家精神から、戦中から戦後の時代精神の激動をあぶりだしてきて、
マルガリータの母親~「ゆき子」の2歳年下になる~の奇妙キテレツな言動の数々もやっとすっきり理解出来たのだった。

≪MEMO≫ 
マルガリータのつぶやき2011・5・25川本三郎「マイバックページ」

最新の画像もっと見る

コメントを投稿