瀬崎祐の本棚

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イリプス 23号 (2017/10) 奈良

2017-11-18 00:17:36 | 「あ行」で始まる詩誌
 「斧」冨上芳秀。
 部屋には斧が置かれているのだが、その斧はおぞましい過去を持っているようなのだ。私はなぜかその斧を持って立ち尽くしているのだ。しかし、実はそれは夢の中の光景だったのだが、秀逸なのは最後の展開。映画を観ているようなあざやかなイメージが喚起される。

   毎晩、私はそんなおそろしい夢を繰り返し見るのだった。その時で
   あった。後ろのドアが静かに開いて誰かが入ってくる気配を私は感
   じた。

 「水族館はこわいところ」中塚鞠子。
 クラゲを観たくてわたしは水族館へ行ったのだ。そしてクラゲを観ながら死に方についてとりとめもないことを考える。しかし、そんなことを水族館でしてはいけなかったのだ。なぜなら、

   気がつくとわたしの入っている水槽は、丸い楕円形で小さな透明な
   傘のクラゲで混雑している。

 想念と肉体は容易に入れ代わってしまう。ついには「生存競争に敗れ更にストレスで、わたしはいずれ消えていなくなる」のだ。軽い口調の独白体なのに、読者もいつしか”こわいところ”へ連れて行かれている。

 「装幀ノ夜」3は、澪標や砂子屋書房の本の装幀などでお馴染みの倉本修のエッセイ。美大を卒業して版が学校へ入学した頃の、転機となる人たちとの出会い、”装幀修行”の始まりなどがつづられていて、楽しい読み物となっている。、
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