共著、文庫なども加えると第12詩集。84頁に13編を収める。
ほとんどの作品では改行に独特の工夫が施されている。意図的に一文字、あるいは数文字を次の行に送り込むのだ。
乱れてけさは黒髪のと風雅に辱められては
と
まだひっそりと後朝を染めた人がそこにい
て
見る人がかぜをはだけてあるツユクサなので
す
どくろの目に涙がたまる 憑き草なのです
よ
ここで染めてと二泊三日の遺言でしたから
ね
ひらひらと草葉の陰をとびかっているので
す
(「蛍草」より)
この形態の意図が奈辺にあるかは不明だが、詩句を読み進める際に妙な苛立ちを覚えるのは確かである。書かれた言葉が各行で完結しないために、孕んでいる内容がぎすぎすときしんでいるようだ。
それでいながら口調は丁寧に優しげで、常に誰かに語りかけている。独白では届かないものを求めているのだろう。語りかけた相手の受け入れ、あるいは反発を想うことによって、言葉の行方を確かめようとしているのだろうか。それだけ言葉を発する不安のようなものが切羽詰まっているのかも知れない。
雨もくれ そこにしずかに 座った なごりのひとの 翳も心
を
風鈴のようにと くれぐれもねがった ああ 魂よ すべらか
に
凛々とした寂しおりの 身寄りのない 花の敷布を たいらか
な
風にはだけては 愛染のよう 白い雲と 流れてゆく 鈴の日
は
こんなにも 私を浮かべて きょう 心の肌が とても冷たい
私は草 花 鳥 空への化身 私自身への 空の最中でしたよ
(「空の風鈴」より)
言葉を発する不安と書いたが、それはそのまま生きていることへの不安なのだろう。
ほとんどの作品では改行に独特の工夫が施されている。意図的に一文字、あるいは数文字を次の行に送り込むのだ。
乱れてけさは黒髪のと風雅に辱められては
と
まだひっそりと後朝を染めた人がそこにい
て
見る人がかぜをはだけてあるツユクサなので
す
どくろの目に涙がたまる 憑き草なのです
よ
ここで染めてと二泊三日の遺言でしたから
ね
ひらひらと草葉の陰をとびかっているので
す
(「蛍草」より)
この形態の意図が奈辺にあるかは不明だが、詩句を読み進める際に妙な苛立ちを覚えるのは確かである。書かれた言葉が各行で完結しないために、孕んでいる内容がぎすぎすときしんでいるようだ。
それでいながら口調は丁寧に優しげで、常に誰かに語りかけている。独白では届かないものを求めているのだろう。語りかけた相手の受け入れ、あるいは反発を想うことによって、言葉の行方を確かめようとしているのだろうか。それだけ言葉を発する不安のようなものが切羽詰まっているのかも知れない。
雨もくれ そこにしずかに 座った なごりのひとの 翳も心
を
風鈴のようにと くれぐれもねがった ああ 魂よ すべらか
に
凛々とした寂しおりの 身寄りのない 花の敷布を たいらか
な
風にはだけては 愛染のよう 白い雲と 流れてゆく 鈴の日
は
こんなにも 私を浮かべて きょう 心の肌が とても冷たい
私は草 花 鳥 空への化身 私自身への 空の最中でしたよ
(「空の風鈴」より)
言葉を発する不安と書いたが、それはそのまま生きていることへの不安なのだろう。