第3詩集か。93頁に2文字熟語のタイトルの作品30編を収める。
万華鏡の世界を形づくるように言葉が散りばめられている。覗き込んだ世界は完全に閉じられていて、作品を読む者の視線以外の介入を拒んでいるようだ。そして頁を繰ると、カタリと万華鏡が回されたように言葉が動いてまた新たな世界を形づくる。
「屋上」。そこは「少数の象徴」である二人が対峙する場所なのだろう。世界はただ一人の相手と戦うことの繰り返しでなり立っているのかもしれない。自分であるためには対決の場としての”屋上”に立たなければならないのだ。少し長いが、とても格好いいので最終2連をそのまま紹介する。
誰にも知られず
骨が
屋上でがたごとと
ひくくこすれあうのを
聞いている午後
口をあけた男たちが
耳をつぶされて
土まじりの
階段を駆け上がってくる
詩集タイトルに密接しているような作品「暗号」には、十二支が呪文のようにあらわれる(作品「先表」にも再度あらわれる)。暗号は特定の者だけとの意思疎通を目的として発せられるが、その秘密性ゆえにどこか陰鬱である。この詩集の作品も、頁を繰った者に、お前だけに伝える、という気魄で迫ってくる。
「晩月」では、「深い沼の淵で/北域の地図の話」をしている。それはもう懐旧のことなのだろう。ここへたどりつくまでの道程が意味のあるものだったからこそ、今はこのひとときだけで満ち足りているのだろう。
もう 血は見たくない
凍る冬の沼を
水鳥を
固い椅子に座って感じていると
体に馴染むまことの夕陽と
会えるような気がする
こうして作品を読んでいると、いつのまにか、万華鏡の中に閉じこめられていてカタリと回されているような自分に気づく。
万華鏡の世界を形づくるように言葉が散りばめられている。覗き込んだ世界は完全に閉じられていて、作品を読む者の視線以外の介入を拒んでいるようだ。そして頁を繰ると、カタリと万華鏡が回されたように言葉が動いてまた新たな世界を形づくる。
「屋上」。そこは「少数の象徴」である二人が対峙する場所なのだろう。世界はただ一人の相手と戦うことの繰り返しでなり立っているのかもしれない。自分であるためには対決の場としての”屋上”に立たなければならないのだ。少し長いが、とても格好いいので最終2連をそのまま紹介する。
誰にも知られず
骨が
屋上でがたごとと
ひくくこすれあうのを
聞いている午後
口をあけた男たちが
耳をつぶされて
土まじりの
階段を駆け上がってくる
詩集タイトルに密接しているような作品「暗号」には、十二支が呪文のようにあらわれる(作品「先表」にも再度あらわれる)。暗号は特定の者だけとの意思疎通を目的として発せられるが、その秘密性ゆえにどこか陰鬱である。この詩集の作品も、頁を繰った者に、お前だけに伝える、という気魄で迫ってくる。
「晩月」では、「深い沼の淵で/北域の地図の話」をしている。それはもう懐旧のことなのだろう。ここへたどりつくまでの道程が意味のあるものだったからこそ、今はこのひとときだけで満ち足りているのだろう。
もう 血は見たくない
凍る冬の沼を
水鳥を
固い椅子に座って感じていると
体に馴染むまことの夕陽と
会えるような気がする
こうして作品を読んでいると、いつのまにか、万華鏡の中に閉じこめられていてカタリと回されているような自分に気づく。