(前回からの続き)
前回、日銀が、ジャパンマネーによる「リスク資産」(株や外債などのように、高いリターンが見込めるが、いっぽうで元本割れのリスクもある資産)投資を活発化させる目的で「マイナス金利」政策を導入したにもかかわらず、日本国民が肝心の株や外債を買わずに大挙して「金」(ゴールド)買いに走ったら、それは日銀にとって意図せざる投資行動であり、その意味で国民の自らに対する反逆行為に映るだろう、なんて見方を綴りました。
本ブログでたびたび指摘していることの繰り返しですが、エネルギーや食料品を狙い撃ちにした通貨安インフレをさらに煽り立てたい黒田日銀と安倍政権は国民にリスク資産、とりわけドル建て資産への投資を増やしてもらいたいはずです。ドル買いはすなわち円売り―――これによってドル建てで取引される原油や小麦などの円建て価格が押し上げられ、ふたたび円安インフレがもたらされるからです。ところが日本人の多くが円を売ってドル・・・ではなく金を買ったら円建て金価格こそ上がるものの、ドル/円の上昇にはつながらない・・・(それどころか、世界一の純資産国・日本の人々が金の「爆買い」に動き出した、となればドル/円は急落必至でしょう・・・?)
「反逆」―――そう中銀の目に映る本質的な理由を述べると・・・金を買うことは中銀が発行する通貨に対して不信任票を投ずることだということ。国民が自国通貨を売って一斉に金に買い向かうということは、当該国の通貨の信頼が失われたことを意味するからです。以前こちらの記事でご紹介したように、金には中銀の政策に対する通信簿としての側面があります。マイナス金利みたいな通貨の自傷行為を中銀がやったら当然、その成績はガタ落ち(金に対して価格が急落)することになるわけです。
もっとも、通貨の不等式「金>円>ドル>その他通貨」に基づけば、どれほど円が貶められても、円に蓄えられた価値は円より上位の金に向かう以外になく、反対に円より下位のドル等に大量に流れる事態は考えにくいため、金価格は高騰するものの真の国家的危機:円の対ドル等暴落は起きないだろうと思われます(と考えたいが・・・「通貨の番人」の本分を忘れ、世界の中銀で唯一、自国通貨(&金融システム・財政)の「破壊者」になり果てた?日銀のスタンスを見ていると油断はできなくなってきた・・・?)。
そうしたこともあって、実際には金ブームがこの国で起きる可能性は(あくまで)現時点では低い感じです。というのは、スイスなどと違ってそもそもわが国には金を持つという習慣が一般的ではないうえ、世界的な原油安に加えて為替基調が円高ドル安となっているなか、幸いインフレの脅威が身近ではないため(だからこそ安倍政権・黒田日銀は「デフレ脱却」≒エネルギー&食料品の価格引き上げに躍起なのだけれど・・・)。したがって結果的に日銀が国民の反逆―――国民がドルなどのリスク資産ではなく金を大量に買うこと―――に遭うリスクはそれほどはなさそうです、いまのところは・・・。
むしろ金買いのムーブメントは海の向こうからやってくる可能性のほうがはるかに高いでしょう(?)。