(前回からの続き)
6月1日、ブルームバーグは、元日銀金融研究所長の翁邦雄氏が、黒田東彦総裁が「異次元緩和」の「出口論」を避け続けていることで、日銀は出口について「完全に思考停止」に陥っており、将来のスムーズな退出の余地を狭めているとの見方を示した、と伝えました。黒田氏らが出口論は時期尚早と繰り返す中、翁氏は先月29日の会見で「出口論で必要なのは、具体的な金利引き下げ時期や幅を巡る議論ではなく、日銀の財務が毀損したらどうするのか、毀損を食い止めるためにはどうすればよいかという議論だ」と主張されたそうです。
・・・まさに100%正論であり、本稿そして以前から訴えていることでもあります。前回までに書いたように、そして本ブログでシツコク反復するとおり、日銀の異次元緩和(つまりほとんどアベノミクス)は株や一部不動産の空虚なバブルをもたらしただけで、実体経済には何らのプラス貢献をしてはいません。むしろその逆で、わが国の経済規模や国富や国民生活などなどはアベノミクス前から激しく落ち込んでしまったわけです・・・。しかも、これほどネガティブな政策の幕引きには、前記「高値掴み」にともなう巨大な評価損・売却損が発生、日銀の純資産が損なわれるリスクという余計極まる(?)「おまけ」までつく始末・・・。もちろんいまの瞬間も、このリスクの危険度はどんどん増している・・・
上の記事には具体的な出口論が紹介されていますが、端的にいうとそれらは、日銀が債務超過に転落しないように長年にわたって少しずつ損を償却していく、といったたぐいのものです。上記損失額のバカでかいスケールからすれば、実際にはそれくらいしかないのは分かります・・・が、その前にするべきことがあるはずです。それこそ上述、つまり巨額の損害を国家国民に食らわせる政策であることが分かっていながら行ってきた黒田氏、岩田・中曽両氏(副総裁)そして異次元緩和、なかでもマイナス金利政策の実行に賛成票を投じてきた他の日銀審議委員に対して金銭的な責任を取らせること。トータルで兆円単位に達するであろう金額を払えるのかどうかは別にして、日銀役員各位がこの種の責任を全うすることなく、増税や通貨読み替えや損失先送りのような安易な国民負担策が実行されることがあってはならない、と強く思う次第です。
異次元緩和の縮小・停止を表現するときは「出口戦略」とか「テーパリング」などと、カッコイイ(?)言葉があてられることが多いように思えます。でもこれ、ちっともカッコよくなんて、ない。というのも、その本質は単純に上記各位の「尻拭い」を意味するに過ぎないためです。今回冒頭に記したように、黒田氏はその出口を語らない―――ご自身の尻拭いの仕方を口にしない―――わけです。ま、まさか黒田氏は国民に・・・いや、黒田氏に限ってそんな無責任な終わり方をしようとするはずはありませんね。なぜって・・・「立つ鳥跡を濁さず」のごとく潔い引き際こそ、「クロダの男気」なのだから・・・
(「あふれる円貨は日銀政策の機能不全を映す」おわり)
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