自作をはじめたきっかけは、良い音を求めたとき、メーカーでは使えない最高のパーツを使えば最高の音になる。メーカーは製品に余計な保護回路を付けているので、自作はそれらを省ける、という考えだった。今でもそれは変わらない。しかし、なぜだろう、自作をすればするほど良い音とは離れていった。
最近思う。メーカー製は音が良い。保護回路もそんなものひっくるめて音をまとめる。それが私一個人とは全く実力が違う。インピーダンスって何?と言っている私とはレベルが違う。
パーツを替えて良かった悪かったを言ってるうちは楽しかった。回路の違うアンプを作って、手に入らないパーツを使いまとめたときの音の良さを知ってからだんだん横道にそれた。私の「良い」と思ったアンプはちょっと変わった音、だったんだ。いまま聞いたことが無い音が出ると「良い」と思ってしまう。その回路にのめりこむ。「もっと良くなるはずだ」と。それで失敗したのがパワーアンプEL34PPmonoとLCRフォノイコだ。
まず大前提のマッチングが取れていない。インピーダンスマッチングは、プリの出力抵抗を下げ、パワーのインピーダンスをいい所に合わせてやる。そう思っていた。入力側の、例えばLCRフォノイコの入力抵抗を可変抵抗器にして変えたりもした。結果は全く意味をなさなかった。
今思うのは、その入力抵抗を換えた場合次段真空管の動作点が変わってしまいおかしくなる。なのでそこまで調整してやらなければならないのではないか、だ。・・・勿論そうでは無いかも知れない、勝手な想像だ。・・・それを出来るのがメーカーとしてアンプ作成を生業としてる人たちなのではないか。
私のアンプ設計の知識は微々たるものだ。ようやくNFBをやろうかと思う。メーカーの人たちはそんなものはとっくに理解してるのだろう。私の場合、作ったアンプの回路の数(カズ)分の知識しかない。アンプを新しく作ると「こういうことか」と思われることができる。私がアンプ設計の知識を十分に得るためにはもっと作らなければならない。
私の考えの中に「やってみなければわからない。そうして理解できることがある」というのが有る。本を読んだだけでは全く分からず、アンプを作ってみて、そういうことか、と分かったことが多々ある。そうなると本を読んだだけで理解できる人は凄いと思う。
そして、今までとこれから勉強していくアンプ設計の知識は何の役に立つのか?と考えたときむなしくなる。これから真空管アンプなんて発達するべくも無く消えていく技術だ。それを一生懸命勉強している。死ぬ間際に思うような設計ができれば御の字。そのころ、「違うものに打ち込んでおけば・・・」なんて言わなければよいが。
今回のムラード型アンプを作って、殊にそう考えるようになった。
現実に帰って、今まで作ってきたアンプを思い出してみる。
プリ基準で、
上杉氏設計マツキントッシュ型イミテーション。
最初に作ったEL34singleとは相性の問題はなかった。
12AY7のPPパワーとは相性が良かったと思う。
三栄無線PR-300
これはどのアンプとも問題なかったが、これと言った良さも無かった。
12AY7のPPパワー
EL34single これはサイズ的にも相性は良かった。
EL34PPmono
そして現在のTAC-1 type 。こいつも好き嫌いが激しく、
12AY7のPPパワー可もなく不可も無く
EL34PPmonoいまいち。(入力トランスTF-3、A-8713)
TAC-1typeは試作と本作で2機有ったが、クオリティが違ったが基本は同じもの。
こう考えると、ろくなアンプを揃えてないな。845や、300Bとか言ったらカッコ付くのかな。
ま、懲りずにこれからも続けていく。