Sightsong

自縄自縛日記

纐纈雅代+佐藤允彦+豊住芳三郎@新宿ピットイン

2020-10-29 07:03:38 | アヴァンギャルド・ジャズ

新宿ピットイン(2020/10/28)。

Masayo Koketsu 纐纈雅代 (as, ts)
Masahiko Sato 佐藤允彦 (p)
Sabu Toyozumi 豊住芳三郎 (ds, 二胡)

ファーストセット。豊住さんは促されると瞬時にシンバルを叩き始める(これが豊住さんである)。佐藤さんは戦略的に入っていかず眺めている。豊住さんは本質的に分裂の人であり、飽くことなく断片を四方八方に放つ。その中には<Salt Peanuts>的なリズムもある。リスタートも頻繁だ。纐纈さんはアルトで循環呼吸も使い、また前傾したり顎を出したりして音色を幅広く持たせている。

佐藤さんが準備態勢に入り、その両手をずっと眺めていたのだが、特別なこともなくすっと和音を重ねてきた。サウンド全体を構成をもつジャズ的に包もうとする佐藤さんの理知と、その瞬間がすべてだと言わんばかりに身体を斜めにしてまでバスドラを連打する豊住さんの偏った強さが対照的。間に挟まれた纐纈さんのアルトもまた強い。

セカンドセット。豊住さんの二胡はアジア的でもダクソフォン的でもあり、そのようなうたで包むなら佐藤さんはお手のものだと言わんばかりに色付けしている。纐纈さんはテナー、最初は片手で不穏な音、豊住さんがドラムに切り替えると循環呼吸でやはり迫力の濁流をみせる。それはよれていき、また奔流から断片になったりもして振れ幅が驚くほど大きい。テナーの断片化は、シンバルとピアノとがそれぞれ音を散らす動きとシンクロした。

やがて纐纈さんはテナーとアルトの2本吹き、それは勢いで向こう受けをねらうものというより、ゆっくりと音の変化を聴かせるものに思えてとても良かった。佐藤さんがやはり理知的にドラマチックに和音で収束を目指し、纐纈さんはアルトで応じる。<My Favorite Things>やコルトレーンの<Dear Load>を思わせる流れもある。しかし一方の豊住さんは収束をねらうなんてことはせず、いつまでもヒョードル的なエネルギーで叩き続けた。

アンコールでは纐纈さんはテナーでアイラーメロディも引き寄せつつ、最後まで強さを維持した。横のふたりのキャラもまた変わらない。

●纐纈雅代
酒井俊+纐纈雅代+永武幹子@本八幡cooljojo(2020年)
纐纈雅代+松丸契+落合康介+林頼我@荻窪ベルベットサン(2019年)
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●佐藤允彦
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佐藤允彦+豊住芳三郎『The Aiki 合気』(1997年)
『ASIAN SPIRITS』(1995年)
TON-KLAMI『Prophecy of Nue』(JazzTokyo)(1995年)
『老人と海』 与那国島の映像(1990年)
翠川敬基『完全版・緑色革命』(1976年)
アンソニー・ブラクストン『捧げものとしての4つの作品』(1971年)

●豊住芳三郎
豊住芳三郎+照内央晴@山猫軒(2020年)
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豊住芳三郎インタビュー(JazzTokyo)(2019年)
豊住芳三郎+庄子勝治+照内央晴@山猫軒(2019年)
豊住芳三郎+老丹+照内央晴@アケタの店(2019年)
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ジョン・ラッセル+豊住芳三郎@稲毛Candy(2018年)
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ブロッツ&サブ@新宿ピットイン(2015年)
豊住芳三郎+ジョン・ラッセル『無為自然』(2013年)
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