伊東良徳の超乱読読書日記

雑食・雑読宣言:専門書からHな小説まで、手当たり次第。目標は年間300冊。2022年に続き2023年も目標達成!

労働法実務解説4 人事

2016-04-29 19:26:23 | 実用書・ビジネス書
 日本労働弁護団の中心メンバーによる労働法・労働事件の実務解説書シリーズの人事関係の部分。
 2008年に刊行された「問題解決労働法」シリーズの改訂版です。
 配置転換、出向・転籍、昇進昇格(差別)、降格、教育訓練(労働者の権利と受忍義務)、休業・休職、懲戒を扱っています。「人事」というタイトルからは配転、出向・転籍、降格を予想しましたが、全体の項目立てで他に入りにくいものが集められたということがあるのでしょう。しかし、昇進昇格差別と教育訓練の差別(労働者の権利)、休業(産休・育休)による不利益取扱は性差別(このシリーズでは第6巻の「女性労働・パート労働・派遣労働」)で扱うのが通例ですし、休職の中心となる傷病休職は労災、パワハラと重なり、懲戒の記述も現実には懲戒解雇が中心となって、解雇関係の記述と重なっています。性差別指針(労働者に対する性別を理由とする差別の禁止等に関する規定に定める事項に関し、事業主が適切に対処するための指針:2006年厚労省指針614号)の文言を長々と引用する部分が多く(このパートを書くと誰が書いてもそうなってしまうのですが。しかし読んでると退屈)他のパート(巻)でも書かれていることを考えれば、そういうところをカットして、この巻の特徴といえる判例紹介をさらに増やしてもらえれば、と思いました。
 まえがきで2ページで3回も、本書では多数の裁判例を紹介していると謳っているように、このシリーズの他の巻と比較しても多数の裁判例が紹介されています。降格関係は、これまでに読んだどの本でも、今ひとつその分類説明がスッキリしません(これは私が編集責任者の第二東京弁護士会労働問題検討委員会編の労働事件ハンドブックでもそうです。あれこれ考えてみましたがなかなかうまく整理できません)。この本もそれを解決できているとはいえませんが、類型分けと対応する裁判例の紹介が比較的思考の整理によさそうに思えました。配転と降格及びそれに伴う賃金切り下げについては、労働事件を扱っている弁護士ユーザーにも買いかなと思います。
 このシリーズについて、誤植が非常に多いと文句を付けてきましたが、この巻では目につきませんでした。208ページ、209ページで紹介している始末書不提出を理由としたさらなる懲戒についての「豊橋土木事件」は、「豊橋木工事件」の誤りですが。


井上幸夫 旬報社 2016年4月11日発行

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