伊東良徳の超乱読読書日記

雑食・雑読宣言:専門書からHな小説まで、手当たり次第。目標は年間300冊。2022年に続き2023年も目標達成!

悪党

2010-05-09 00:14:39 | 小説
 15歳の時に姉を3人の未成年にレイプされて殺された佐伯修一が、警察官となったがレイプ犯の口に拳銃を突っ込んで懲戒免職となり、元警察官の経営する探偵事務所に勤めて、所長の指示に従って出所後の犯罪者を捜索調査する業務を行いながら、姉を殺した犯人を捜し出すというストーリーの短編連作。
 第5章までは、佐伯の姉殺し犯人の追跡をフォローしながらも短編連作の形を取り続けていますが、第6章からは佐伯の復讐に話が絞られます。
 第5章で、かつて刑事事件を数多く取り扱っていたが娘を殺されてその裁判を傍聴していて「信念が音を立てて崩れていきました」という弁護士を登場させ、かつて自分が弁護した被告人の遺族から無責任だと詰られてその被告人の現在の調査を依頼させ、しかもその弁護士が佐伯の姉殺しの主犯の弁護人であったという設定になっています。元敏腕弁護士に刑事弁護の信念を失ったと述懐させた挙げ句に、反省の言葉を述べさせてさらに反省が足りないと追及する。これでは刑事裁判で弁護人などいない方がいい、刑事事件の弁護人というのは存在価値のない憎むべき存在と言っているようです。佐伯や木暮がなんとか人生に折り合いをつけて行く中で、刑事事件の弁護人は救われず仕事に誇りを持つことが誤りであるかのように描かれることには、弁護士としてはやりきれない思いを持ちます。


薬丸岳 角川書店 2009年7月31日発行
「野生時代」2007年11月号、2008年3月号、5月号、8月号、11月号、2009年3月号、5月号連載

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