伊東良徳の超乱読読書日記

雑食・雑読宣言:専門書からHな小説まで、手当たり次第。目標は年間300冊。2022年に続き2023年も目標達成!

アンフェアな月

2016-04-15 01:41:34 | 小説
 刑事雪平夏見シリーズ第2作。
 第1作の「推理小説」の連続殺人事件解決直後に発生した乳児誘拐事件に、錯乱した母親の事情聴取のために女性刑事が行く必要があるとして応援に投入された雪平が、特殊班の警部補林堂航、新人刑事の平岡朋子とチームを組み、第1作からコンビの安藤一之とともに4人組で型破りな捜査に取り組むという、その後のシリーズの枠組が作られます。
 犯人像・犯行動機の設定にやはり無理があり、終盤で捜査担当者にはその仮説が見え意見が一致していたというのだけれど、いやぁそういうふうに普通見ないでしょと思います。
 医者について、林堂の台詞「努力して努力して、とうとう医者になれた自分を、世界中に尊敬して欲しかったんだろう」「でも、現実は違う。病気を治して当たり前。患者が死ねば、自分に落ち度がなくても罵られる。」(290ページ)。う~ん…弁護士やってても、自分は正しいんだから勝つのは当たり前、負けたら弁護士が悪いって言いたがる依頼者いますもんね。弁護士会で苦情受付担当とか法テラスで不服審査の担当やってると、そういう感じの人を山ほど見ます。そういうの見る度、こういう人の依頼は受けたくないなぁ、自分が当たらなくてよかったと思います。もちろん、そうでない依頼者も多数いるから、弁護士やっていけると思うわけですが。
 第1作に比べると、文章の気負い・力みが少しほぐれて読みやすくなってきています。タイトルは、ストーリーにフィットしてきましたが、「アンフェアなのは、誰か」の栞で有名になったこのシリーズになぞらえれば、アンフェアなのは月ではなく、「ちびっ子のための理科クイズ」の問題文(225ページ)でしょう。


秦建日子 河出文庫 2008年5月20日発行(単行本は2006年9月)
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