伊東良徳の超乱読読書日記

雑食・雑読宣言:専門書からHな小説まで、手当たり次第。目標は年間300冊。2022年に続き2023年も目標達成!

ピスタチオ

2011-04-11 22:14:02 | 小説
 井の頭公園の池の畔に住むライターがかつてケニアで知り合った死んだ民俗学者の足跡を追って呪術医をめぐるうちに神秘的な体験に巻き込まれていくというストーリーの小説。
 身の丈に合わせて仕事をしてそこそこの収入があればという生活をし、研究者の彼と結婚も同居もせずに交際を続ける、前線の通過を体感して頭痛に苦しむ環境への意識はあるが「環境保護運動」にも違和感を持ち自然を畏れ親しむ心性を尊ぶ(思い切り頭の重い修飾節・・・)ライターの棚が、飼い犬の腹部に現れた瘤を通じて動物への思いと西洋医学への嫌悪を募らせる前半は、緩めのエコ意識と緩めの人間関係を志向する市民感覚で読めます。これが、観光ガイドの執筆の仕事でウガンダに行くことになり、そこでかつて知り合った民俗学者の足跡を追うという展開に転じてゆく後半は、アフリカの部族の習俗から現代・都会人が失った感覚と先人の知恵を見いだしていくというレベルでは続いて読めるのですが、それを超えた呪術的な神秘体験に突っ込んでいくあたり、私にはちょっとついて行けない感じがしました。
 もちろん、エッセイと小説では使い分けられているのですが、著者の自然を感じ取り表現するエッセイのセンスに共感を持つ私としては、そっちへ行かれるとちょっと怖いなと思ってしまいます。


梨木香歩 筑摩書房 2010年10月10日発行
コメント
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