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論文)COP1タンパク質量を制御するE3ユビキチンリガーゼ

2014-08-14 05:52:51 | 読んだ論文備忘録

The RING-Finger E3 Ubiquitin Ligase COP1 SUPPRESSOR1 Negatively Regulates COP1 Abundance in Maintaining COP1 Homeostasis in Dark-Grown Arabidopsis Seedlings
Xu et al.  The Plant Cell (2014) 26:1981-1991.

doi:10.1105/tpc.114.124024

E3ユビキチンリガーゼのCONSTITUTIVE PHOTOMORPHOGENIC1(COP1)は、光形態形成を促進する因子をターゲットとしており、シロイヌナズナcop1 変異体の芽生えは、暗所で育成しても胚軸が短く、子葉が展開し、恒常的な光形態形成を示す。よって、COP1は暗所での芽生えの光形態形成を抑制する中心的な因子として機能している。しかしながら、COP1自身がどのように制御されているかはあまり知られていない。米国 エール大学Deng らは、シロイヌナズナの弱いcop1 変異のcop1-6 変異体を変異原処理し、cop1-6 の表現型を抑制するcop1 suppressor1cus1 )を同定した。暗所で育成したcsu1 cop1-6 二重変異体芽生えは野生型に類似した表現型を示すが、明所もしくは各種波長の光条件で育成した場合は胚軸の長さが野生型とcop1-6 単独変異体の中間となり、長日条件下でcop1 変異体が示すわい化した表現型も部分的に回復した。よって、csu1 は暗所においてはcop1 変異を完全に抑制するが、明所での抑制は部分的である。cus1 変異は機能未知のRINGフィンガータンパク質をコードするAt1g61620の変異であった。LONG HYPOCOTYL5(HY5)はCOP1の下流で作用し、暗所においてCOP1によってユビキチン化される。よって、hy5 変異は暗所においてcsu1 変異と同様にcop1 変異を抑制して胚軸を伸長させる。明所でのcop1-6 変異による胚軸伸長抑制のcsu1 変異およびhy5 変異による回復は部分的であるが、csu1 変異とhy5 変異が同時に加わるとcop1-6 変異が完全に抑制された。明所で育成したcsu1 単独変異体芽生えの胚軸は野生型よりも短くなり、胚軸伸張が促進されるhy5 単独変異体とは逆の表現型を示した。よって、CSU1とHY5は胚軸伸張の明所での阻害に対して逆の作用を示すと考えられる。明所で育成したhy5 csu1 二重変異体芽生えの胚軸の長さはhy5 単独変異体と同等になることから、hy5 変異はcsu1 変異よりも上位にあり、明所におけるcsu1 変異体の胚軸が短くなる表現型はHY5に依存していると考えられる。CSU1タンパク質はCOP1タンパク質と同様に核内構造体(核スペックル)に局在していることが確認された。cop1-6 はアミノ酸が挿入された変異COP1タンパク質をコードしており、生体内のCOP1-6タンパク質量は非常に少ないが、csu1 cop1-6 二重変異体ではCOP1-6タンパク質が野生型植物のCOP1タンパク質と同程度に蓄積していた。COP1はPIF3タンパク質の蓄積を正に制御し、HY5タンパク質を分解のターゲットとしている。よって、cop1-6 変異体ではPIF3タンパク質が減少してHY5タンパク質が増加しているが、csu1 cop1-6 二重変異体ではPIF3タンパク質量が増加してHY5タンパク質量が減少していた。したがって、COP1-6タンパク質は機能を有しており、csu1 変異によるCOP1-6タンパク質量の回復がcop1-6 変異体の表現型を抑制する理由であると思われる。暗所で育成したcsu1 単独変異体芽生えは、COP1タンパク質が増加し、HY5タンパク質が減少していた。暗所において、2分子のCOP1タンパク質と2分子のSPAタンパク質はSPA-COP1複合体を形成し、SPAはCOP1のE3ユビキチンリガーゼ活性を促進している。csu1 変異体黄化芽生えのSPAタンパク質量を野生型と比較したところ、4種類のSPAタンパク質(SPA1-SPA4)のうち、SPA1タンパク質量が増加していた。よって、CSU1は暗所においてSPA1タンパク質量を負に制御していることが示唆される。また、明所においてCSU1はCOP1、HY5、phyA、phyB、PIF3の各種タンパク質量に変化をもたらさなかった。CSU1タンパク質はRING-フィンガードメインを有していることからE3ユビキチンリガーゼとして機能していることが推測される。ユビキチン化アッセイや免疫沈降アッセイから、CSU1がCOP1タンパク質をユビキチン化することが確認された。よって、CSU1は、暗所において、核内のCOP1をユビキチン化してプロテアソーム系による分解へと誘導し、COP1タンパク質量を適切な量に維持することで光形態形成の微調整を行なっていると考えられる。

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