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論文)BRANCHED1による腋芽成長制御

2017-02-05 17:52:01 | 読んだ論文備忘録

Abscisic acid signaling is controlled by a BRANCHED1/HD-ZIP I cascade in Arabidopsis axillary buds
Gonzalez-Grandio et al. PNAS (2017) 114:E245-E254.

doi: 10.1073/pnas.1613199114

シロイヌナズナのクラスⅡ TEOSINTE BRANCHED1, CYCLOIDEA, PCF(TCP)のBRANCHED1(BRC1)は、腋芽の成長を抑制しているが、その機構については明らかとなっていない。しかし、休眠芽ではアブシジン酸(ABA)関連遺伝子の発現が誘導されており、BRC1 は芽においてABAマーカー遺伝子の発現を促進することが知られている。スペイン 国立バイオテクノロジーセンターCubas らは、BRC1 とABAシグナルとの関連を調査し、ABA関連遺伝子のうち26遺伝子はBRC1 に発現が依存しており、このうち12遺伝子は転写因子をコードしていることがわかった。そこで、BRC1 に発現が依存している転写因子遺伝子のうち、HD-ZIPタンパク質をコードするHOMEOBOX PROTEIN 21HB21 )、HB40HB53 に着目して解析を行なった。これらの遺伝子の転写産物量は、BRC1 の発現量や腋芽成長の抑制の程度と正の相関があった。タンパク質結合マイクロアレイ(PBM)によってBRC1のDNA結合モチーフとしてGGgcCCmcが見出され、このモチーフはHB21HB40HB53 遺伝子のプロモーター領域、イントロンおよび幾つかのエクソンに含まれていることがわかった。そして、BRC1がこれらの領域に直接結合することがChIPアッセイによって確認された。HB21HB40HB53 遺伝子のプロモーター制御下でGUS を発現するコンストラクトを導入した形質転換体でGUS の発現パターンを調査したところ、いずれも若い腋芽で発現しており、BRC1 の発現部位と重複していた。HB21HB40HB53 遺伝子のT-DNA挿入変異体のロゼット葉からの分枝形成を野生型と比較したところ、通常の白色(W)光照射条件下では分枝数に差は見られなかったが、W光と遠赤色(FR)光をを照射して分枝形成を抑制した条件では二重変異体、三重変異体で抑制の程度が野生型よりも低下していた。また、三重変異体ではbrc1 変異体よりもW+FR光照射による分枝形成抑制の程度が低くなっていた。短日条件で育成した三重変異体の腋芽から成長した葉は、brc1 変異体と同様に、野生型のものよりも成長が良くなっていた。hb21 hb40 hb53 brc1 四重変異体の分枝の表現型は、W+FR光照射も短日条件も三重変異体やbrc1 変異体を超えることはなかった。したがって、HB21/40/53BRC1 は同一経路で機能していると考えられる。これらの結果から、HB21HB40HB53 は、腋芽の発達と分枝の成長をBRC1 と同じ経路で遅延させるように冗長的に作用しており、この機能は低R:FR光条件や短日条件で発揮されることが示唆される。BRC1 に発現が依存している他の遺伝子としてNCED3 (At3g14440)がある。NCED3 はABA生合成の鍵酵素をコードしており、分枝の成長にも関与している。nced3 変異体は、W+FR光に応答した分枝形成抑制の程度が野生型よりも低く、短日条件での腋芽の成長が促進され、三重変異体と類似した表現型を示す。野生型植物においてNCED3 の発現はW+FR光照射によって誘導されるが、三重変異体では、brc1 変異体と同様に、誘導の程度が減少していた。また、W光照射下の基底状態のNCED3 の発現量も三重変異体では野生型よりも低くなっていた。したがって、HB21、HB40、HB53(そしてBRC1)は腋芽でのNCED3 の発現に必要であると考えられる。エストラジオール発現誘導系によってBRC1HB21HB40HB53 をシロイヌナズナ芽生えで発現させたところ、NCED3 転写産物量が大きく増加し、ABA量も増加した。また、BRC1、HB21、HB40、HB53がNCED3 遺伝子プロモーター領域に直接結合することが確認された。したがって、BRC1HB21HB40HB53NCED3 の発現誘導とABAの蓄積に必要であり、BRC1 によるHB21HB40HB53 の転写活性化は腋芽での局所的なABAシグナル伝達や応答を押し上げていると考えられる。W+FR光照射した三重変異体での分枝形成は、ABAを添加することによって野生型同程度に抑制された。よって、三重変異体の低R:FR光条件での分枝形成は腋芽でABAが蓄積されないことが原因であると考えられる。ABAのシグナル伝達や応答に関与しているタンパク質をコードしている4つの遺伝子ABA RESPONSIVE ELEMENTS-BINDING FACTOR 3ABF3 )、ABI FIVE BINDING PROTEIN 3AFP3 )、G-BOX BINDING FACTOR 3GBF3 )、NAC-LIKE, ACTIVATED BY AP3/PINAP )は、W+FR光照射によって発現誘導されるが、三重変異体では誘導の程度が減少しており、これはbrc1 変異体での結果と類似していた。これらの4遺伝子の発現誘導はnced3 変異体では低下しており、野生型植物をABA処理することで発現量が増加した。よって、4遺伝子の発現誘導はNCED3 によって誘導されるABAの蓄積が関与している。エストラジオール発現誘導系による解析から、4遺伝子はBRC1 およびHB53 の発現誘導によって発現量が増加し、ABF3NAPHB21 およびHB40 の発現誘導によって発現量が増加した。以上の結果から、BRC1はHD-ZIP型転写因子の発現を直接制御し、腋芽においてNCED3 の発現やABAの生合成を局所的に高めて低R:FR光条件や短日条件での腋芽の成長を抑制していると考えらる。

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