Laboratory ARA MASA のLab Note

植物観察、読んだ論文に関しての備忘録
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学会参加)日本植物分類学会第9回大会(愛知) 1日目

2010-03-26 22:31:51 | 学会参加

日本植物分類学会第9回大会が3月26日~27日に愛知教育大学で開催された(28日にもエクスカーションと一般公開シンポジウムあり)。この中で、東北大学の牧研究室の菊池さんが「核マイクロサテライトマーカーを用いたバイケイソウの系統地理学的解析」というタイトルで、国内のバイケイソウは中部地方を境として南北2つの系統に分けられること報告していた(詳細は私のHPの「バイケイソウプロジェクト」で報告します)。

その他、私の個人的関心で興味深かった発表に以下のものがあった。

侵略的外来種アメリカハマグルマの種子生産と海流散布の可能性について(琉球大・島袋ら)
沖縄本島、石垣島、西表島などで野生化している要注意外来種アメリカハマグルマは、これまで種子繁殖はしないとされていたが、稔性のある果実を生産し、海流散布も起こりうる(海水浮遊能力と海水接触後の発芽能力がある)ことがわかった。

琉球列島におけるAinsliaea (キク科モミジハグマ属)近縁種の系統進化(京大・三井ら)
琉球列島のモミジハグマ属近縁4種(ホソバハグマ、キッコウハグマ、ナガバハグマ、オキナワハグマ)の系統関係を核SSR領域12遺伝子座を用いて遺伝構造解析したところ、沖縄本島と八重山・宮古のオキナワハグマは60万年前に分断して殆ど交流がないことがわかった。しかし、両者には形態的に識別できる点がない。

琉球列島とオーストラリア東南部に隔離分布するコケタンポポ属Solenogyne Cass.(キク科シオン連)の分子系統地理(台湾中央研究院・中村ら)
コケタンポポは奄美大島、徳之島、沖縄本島、西表島の渓流に生育する植物で、本属植物はオーストラリアから琉球へと渡ってきたと考えられている。しかし、オーストラリアのコケタンポポ属植物は乾燥した環境に生育し、熱帯には分布していない大陸間隔離分布する植物である。本属が南半球から北半球へ分布を広げる際、熱帯では生き残ることが出来ず、琉球列島で渓流というハビタットで西表-沖縄本島-奄美・徳之島と分布域を広げていったと考えられる。

海岸と琵琶湖岸に生息するハマエンドウの分子系統地理(京大・大槻ら)
ハマエンドウは日本全国の海浜に生育しているが、琵琶湖岸にも生育する。琵琶湖の集団と日本全国の海岸の集団との葉緑体DNAの解析から3つのハプロタイプが同定され、琵琶湖集団は古代琵琶湖が現在の位置に移動した際に海岸集団から隔離され陸封されたものであることが示唆される。


殺風景ですが、お約束の大会看板




大会ロゴは周伊勢湾要素のシデコブシ(Magnolia tomentosa

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