大学院を修了して4月にベンチャー企業に就職したばかりの男性(24)が、電話応対のミスなどを理由に退職を強要されたとして、社員の地位確認と3年分の給与支払いを同社に求める労働審判を東京地裁に申し立てた。男性は試用期間中の入社9日目に退職届を書かされたという。
申し立ては4月26日付。申立書などによると、男性は大学院在学中の昨年5月、神戸市に本店を置くITコンサルタント会社に内定。4月に入社し東京本社に配属されたが、社内試験の成績や電話応対の仕方を理由に「落ちこぼれ」などと大声で叱責(しっせき)され、反省文を連日書かされた。
9日夕、男性を個室に呼び出した上司は約2時間にわたって「給料だけもらって居座るのか」と迫り、自己都合を理由とする退職届を書くよう指示した。
男性は「反省文を突き返されたり怒鳴られたりの毎日で身も心もぼろぼろだった。反論しても聞き入れてもらえず、あきらめて従うしかなかった」と話す。今後は福岡県の実家に戻って就職活動を再開する予定だが「入社直後の退職が採用に悪影響を及ぼすのでは」と不安を漏らす。
代理人の吉原政幸弁護士も「密室で圧力をかける行為などは明らかに違法。男性は新卒という就職機会を逸することになった」と批判する。これに対し同社は「コメントすることはない」としている。
まぁ、ベンチャーだったらこんなものですよね。ITコンサルなんていったら、いかにもブラック臭の漂う業界でもありますし。私にしたところでITベンチャーではありませんが新入社員の半分は1ヶ月以内に辞めていくような会社で働いていた時期もありますので、9日で辞めたというのが際だって早いとは思いません。ただ自分から嫌気がさして辞めた、見切りをつけて辞めたというのではなく、会社側が9日で退職を強要した、実質的に辞めさせたというのなら、わざわざ記事にする程度の珍しさはあるでしょうか。
たしかに、いくら面接を重ねたところで実際に働かせてみないと判断しかねる部分はあるものです。だからいったんは採用しておいて、それから実際の働きぶりを見て会社に残すかどうかを決めるみたいなケースも少なくないのかも知れません。私もバイトでしたら、そうした職場に当たったことがあります。応募者はほぼ全員採用する一方で、店長のお眼鏡に適わなければ1週間もしないうちにクビ、そういう職場もありました。
今日の引用記事で取り上げられたベンチャー企業も、その類なのでしょうか。ただ採用活動にもそれなりのコストはかかっているはずです。わざわざコストをかけて採用した人間をわずか9日で退職候補とするとしたら、随分と無駄の多い話です。せっかく採用したのなら、なんとかして使える人材に育てようというのが「普通の」会社というものですよね。それでも9日で退職に追い込む、採用にかかったコストを回収するまでもなく会社から追い出すとしたら、いったい何があったのでしょう。急に業績でも悪化したのでしょうか、それよりも採用担当者と配属先の部課長との仲が悪かったのではないかという気もします。採用担当者は「見込みのある人材」として推したけれど、現場の部課長は「こんな奴はいらん!」と突き返したみたいな……
電話応対に関しては、初めてのオフィスワークだと躓く人も多いと思います。まぁ最初の頃さえ目をつぶれば誰でもできるようになるものですが、その「最初の頃」の失敗を大きく咎め立てされたようです。どうなんでしょう、ブラック企業だと中途採用が多いですから採用時点でオフィスワーク経験のある人が多い、すなわち電話応対くらいは慣れている人が多いとも考えられます。だから「電話応対くらいは初めからできて当たり前」という感覚が現場の部課長にはあったのかも知れません。ところが柄にもなく新卒採用に踏み切ったところ、新人が「電話応対もロクにできない」ことに驚愕した――そんな可能性もありそうです。誰でも最初はそんなものなんですけれどね。
もう一つの問題とされている「社内試験の成績」はどうなのでしょう。これが業務に関係する知識を問うようなものであるのかどうかも、何かと怪しいところです(新人に仕事も教えず反省文を書かせているような会社ですから)。まさか社訓を覚えているかどうかを問うようなものではないですよね? あるいは「時間外労働について、雇用主は25%以上の割増賃金を支払う義務がある、○か×か」みたいな設問で「○」を選ぶと不正解になるとか。残業代を支払う義務なんてないんだ、と嘯くような会社であれば、そういう社内教育をしていたところで不思議はありません。経営コンサルタントの世界ならその程度の嘘は日常茶飯事です、ITコンサルの会社が似たようなことをやっていたところで今さら驚くこともないでしょう。
ちなみに退職を強要された男性は裁判に訴えたとか。何ともしっかりした人です。この辺、普通の人にはなかなか真似のできないところでしょう。しかるに裁判に訴えるようなしっかりした人だからこそ、会社からは嫌われたのだろうという気がします。会社から手酷い取り扱いを受けても泣き寝入りしてしまうような人でないと、会社としては扱いにくいですから。彼が気弱で上司の言うがままになるような人間であったなら、会社としても「生かさず殺さず」で雇い続けたことと思われます。しかしそういう人間ではなかったからこそ、会社としては速やかに切り捨てることを選んだのかも知れません。
自己退職に
契約の時に!
夜勤出来ないと稼げないし回りも仕事負担
育てる気持ちがない
ちなみに夜勤出来ないと
いろいろな手当が付かないのです。
これって、やろうと思えばなんにでも、いくらでもケチを付けられるんですよね。
「電話への反応が遅い」とも「落ち着きがない」とも・・・
「声が小さい」とも「声が耳障り」とも
「相槌が少ないし不明瞭。無言は相手に失礼」とも「相槌が多すぎて、ちゃんと聞いてるのか分からず不快」とも・・・
敬語のミスなんて、正直私も100%完璧にこなす自身はありません。
こういうのは、実際に新人や後輩をいじめる手口としてもよくあります。
おそらく、この新入社員の人の仕事ぶりになんら関係なく、とにかく辞めさせたかったんでしょうね。
「内定取り消し」の責任追及を避けるためだったとか、裏事情を勘ぐりたくなります。
最初から何もかも上手く行くはずがない、そこを何とか教えて上手くできるようにするのも会社側の役目だと思うのですが、その辺が完全に放棄されていますよね。気に入らなければ即チェンジ、雇用主はわがままな子どもみたいなものです。
>おおいけさん
自分で判断すれば「何で相談しなかったんだ!」と咎められ、上司に相談すれば「これぐらい自分で決めろ」と詰られる世界ですからね。会社側、管理者側がその気になればどうにでもできる、それだからこそ会社側権力の不当な濫用には厳しく制限が課されるべきなのでしょうけれど……
しかし、このようなことを続けていると、働ける人間はもう即ベテラン並に仕事をこなせる完璧超人しかいなくなってしまうのではないのでしょうか。そうしたら、そのうち働き手はいなくなると思うのですが、雇用側はそこまで考えているのか疑問です。そうなってもせめて「必ず働いていなければならない。」という固定概念がなくなってくれれば、多少は気が楽なんですが…。
隣の花は赤い、ってことが理解できない「子ども」の雇用主が増えているような気もします。雇用側は何でもできるベテラン並の逸材を求める、だから未熟な新人は速やかに切り捨てられ、新しい人が募集されるわけですけれど、いざ働かせてみたら新しい人もベテランのようには働けない、それで雇用側はまた新しい人に交換したがる……そんなことの繰り返しなのかも知れません。
おおいけ様が書かれたことは、全て経験しました。今にしてみれば、徹底的に反論すればよかったと思います。「みんなに気に入られるように生きられることはあり得ない」と達観していた部分がありましたので。
件のベンチャー企業だけでなく、採用活動を行う企業は、誰に対しても即戦力で働くことを求めずに「何かしらできないことがあって当たり前」と考えて採用と教育を考えて欲しいのですが。
「何かしらできないことがあって当たり前」と考えるべきなのでしょうけれど、それがわからない人が決定権を握っているのでしょう。新たに雇った人は色々とできないことが多くて困る、別の人を雇えばそんなことはないのではないか――そう考えている人が多いのだと思います。
注目度が高い分だけ体面を気にする大企業より、なりふり構わぬ中小企業の方が労働環境は劣悪な傾向にありますよね。メディアを賑わすのは有名企業ばかりですけれど、より深刻なのは無名の中小の方のはず、しかし中小には左派政党も同情的で批判の舌鋒も鈍る、結局は大企業ばかりが問題視されていたり……