蓮池透さんの退会決議 拉致被害者家族会「方針に違い」(朝日新聞)
北朝鮮による拉致被害者家族会の飯塚繁雄代表は28日、拉致被害者で帰国した蓮池薫さんの兄透さん(55)を、家族会から退会させる決議をしたと表明した。家族会と支援団体「救う会」の合同会議後の記者会見で明らかにした。
増元照明事務局長は理由として、日本政府に求める北朝鮮への対応方針が異なると指摘。「透氏は(経済制裁などの)圧力より対話と主張しており、家族会の総意と違う。この4年ほど家族会の総会にも出ず、総意を無視する発言が続いており、国民に家族会の意思が変遷したと誤解を招くため」と述べた。27日の家族会総会で決議したという。
透さんは朝日新聞の取材に対し「まだ何も聞いていない。意見の多様性を認めない理由がわからないが、私を外すことで拉致問題の解決につながるなら甘んじて受け入れる」と話した。
あくまで圧力路線を掲げる拉致被害者家族会の中で蓮池氏は浮いた存在になりつつあったわけですが、とうとう追放処分が下されたようです。一応、家族会にしても目的は拉致問題の解決ということになっているはずですので、その点では蓮池氏と一致しているはずですが、圧力一辺倒の継続か対話も視野に入れるかで見解が分かれた結果、対話を考えるような人の在籍は認められないとの結論に達したのでしょう。どうも私には、家族会(&救う会)の目的が問題解決ではなく圧力そのものとなっているように見えます。
当初は諸々の社会問題を解決することが目的だったはずが、そのための手段として政権交代を掲げ、その政権交代の最短経路として民主党支持を打ち出しているうちに、やがては盲目的な民主党信者へと変貌していく人が(とりあえずブログ界では)よくいると、そう以前に書きました。その手の人々の中では民主党の勝利こそが至上命題となり、当初の目的など二の次になってしまう、当初の目的であった社会問題の解決を共に願った同士であっても、民主党を応援しない人であれば攻撃し出す、民主党に道を譲らない政党を敵と見なすようにもなるわけです。たぶん、家族会も似たようなものでしょう。当初は拉致問題の解決を願い、そのための手段として圧力を考えている内に、いつの間にか圧力そのものが目的化するようになったと。
拉致問題に関して、首相就任後の安倍晋三は何一つ事態を進展させることがありませんでしたが、それでも家族会からは最も信頼された政治家であり続けました。拉致問題の解決が目的であればダメ出しをされていてもおかしくないはずですが、そうならなかったのはやはり、すでに当時から問題解決よりも圧力の継続/強化に重点が置かれていたからでしょう。問題解決には結びつかなくとも圧力を強めさえすれば良し、とするなら家族会にとって安倍晋三は最も好ましい政治家であり、そして蓮池氏は疎ましい存在にならざるを得なかったようです。
まぁ、政治全般にも似たようなところがあると思います。家族会もある意味、社会の縮図です。つまり問題解決そのものよりも、自分たちにとって気にくわない何かに圧力を加えてくれることを、我々の社会は望みがちなのではないでしょうか。問題解決ではなく圧力によって支持を集めたのは安倍晋三だけではないはずです。小泉純一郎だって、当時の社会的な課題を解決するどころか悪化させるばかりでしたけれど、国民から嫌悪されていた「古い自民党」や族議員、官僚を攻撃することで拍手喝采を浴びてきたわけです。そして橋下徹、河村たかし、竹原信一、そして民主党もまた問題解決への期待ではなく公務員/官僚への圧力を期待されてこそ票を集めてきたのではないでしょうか。問題解決を優先して圧力を緩める、圧力以外の方法を考えようものなら、蓮池氏のように周囲から見限られる、そういうものですから。