不適切な表現に該当する恐れがある内容を一部非表示にしています

非国民通信

ノーモア・コイズミ

人気者は、大体が地雷

2021-09-26 21:48:33 | 政治・国際

立憲が外交・安保政策を発表 日米同盟を軸、辺野古新基地建設は中止(朝日新聞)

 立憲民主党の枝野幸男代表は24日、次期衆院選の公約第5弾となる外交・安全保障政策について発表した。「平和を守るための現実的外交」と題し、日米同盟を基軸とした外交・安保を掲げた。沖縄県名護市辺野古での米軍の新基地建設は中止し、沖縄における基地のあり方を見直すため、米国との交渉を開始することを盛り込んだ。

 

 かつて民主党は沖縄の米軍基地を「最低でも県外」に移設させると主張して政権を奪取したことがあります。もっとも与党の座についた後は早々に県外移設案を放棄、辺野古移設が進められることとなったわけです。そんな民主党政権の残党が集う立憲民主党では公約第5弾として辺野古での新基地建設は中止などと掲げるそうですが、いかがなものでしょうか。

 消費税率10%への引き上げは民主党政権で決定され、安倍内閣時代も覆されることはありませんでした。普天間基地の辺野古移設は自民党政権下で決定され、民主党政権時代も結局は覆ることがなかったわけです。そして今、立憲民主党は消費税率の一時引き下げや辺野古移設の中止を訴えています。

 「決定した」政権と「覆さなかった」政権のどちらが非難に値するのか、いずれにせよ民主党政権の中核メンバーであった枝野に当時の責任がないとは言えないでしょう。消費税の問題にせよ辺野古移設の問題にせよ、立憲民主党の所属議員たちが与党の一員であった当時に何をしてきたかは、無視されるべきではないはずです。しかるに、委細構わず立憲民主党を支持してしまうような人もいるわけで、それはまた民主党以上に問題の根が深いと感じますね……

 

河野太郎の「まるで野党」な政策を支える軍師2人 「異色・経産官僚」と「内閣府の政策参与」(デイリー新潮)

 自民党総裁選を有利に進めるとされる河野太郎行政・規制改革担当相(58)。脱原発などのエネルギー政策、年金改革など、目玉政策を後押しする2人の参謀がいる。経産省をはじめとする霞ヶ関の省庁幹部は、その存在に警戒を強めているという。

 参謀の1人めが、内閣府の政策参与でシンクタンク「構想日本」の伊藤伸・統括ディレクター(43)。河野氏の出馬会見にも顔を見せていた。昨年10月から河野氏に請われ、内閣府政策参与となった。

(中略)

 伊藤氏は毎日新聞(2020.12.17)の「ひと」欄に登場し、こう紹介されている。

〈大学卒業後、国会議員秘書をしながら構想日本の事業仕分けを手伝ううちに、住民や有識者が地方自治体の個々の事業を点検し、無駄や改善を議論する手法に魅力を感じた。構想日本の常勤スタッフに転じ、民主党政権で内閣府参事官に起用された〉

〈手がけた事業仕分けは、丁々発止の公開議論が注目を集めた。当時野党議員として視察した河野太郎氏は「うらやましい」と感想を語った〉

 18日に行われた総裁選の公開討論会では河野氏の持論である「全額税方式による最低保障年金の創設案」をめぐって、財源や、そのために必要となる消費増税アップ率を問う声が相次いだ。

「最低保障年金創設を中心とする改革案については河野さんの持論で、民主党政権時代に枝野さん(幸男・現民主党代表)などと共に発表したものです。民主党政権時代といえば事業仕分け、つまり伊藤さんの存在とつながってくるので、霞ヶ関の省庁幹部は警戒を強めていると聞きます」(同)

 

 さて人気では他の総裁候補を圧倒する河野太郎ですが、元は民主党政権の内閣府参事官であった人を参謀役にしているそうです。この民主党の事業仕分けを指した「うらやましい」発言については私も過去に取り上げたことがありますが、もとより事業仕分けは河野太郎が始めて、それを民主党が引き継いだものでもあります。河野太郎が民主党寄りであるよりも先に、民主党が河野太郎寄りであったのかも知れません。

参考、河野太郎と小池百合子のカイカク観

 「小泉構造改革路線を忠実にやっているのは民主党だ」と、小泉純一郎は語りました。安倍晋三に言わせれば民主党政権は「悪夢」とのことでしたが、自民党内にも民主党の理解者がいなかったわけではないことが分かります。河野太郎に小泉純一郎、議員票では弱いけれど党員票には強く、国民からの人気も高い両者がともに民主党政治に肯定的であったのは興味深いところです。

 

河野氏、同性婚と選択的夫婦別姓に賛成(日本経済新聞)

年金制度の改革に言及し「年金に最低保障が必要だ」と表明した。財源は「消費税がいいのではないか」と語り、保険料ではなく税方式で最低保障年金を検討すべきだと主張した。

河野氏はいまの年金制度について「全世代ベーシックインカムというところまでいっていない。年金の部分で最低保障がやはり必要だ」と強調した。財源について「消費税であれば応分に能力のある人が負担していただける」と説明した。

 

 そして年金の最低保証が必要なのは今に始まったことではありませんけれど、財源として河野太郎は消費税を挙げています。もとより消費税増税の口実は一貫して社会保障目的(実際に使われるものではないのはさておき)でしたので、この辺は今までと変わらないとも言えます。しかし「消費税であれば応分に能力のある人が負担していただける」との行はどうでしょう?

 逆進性の強い消費税は、社会保障とは最も相性が悪いものでもあります。一応は消費に回す額の多い人が多くを納税することになりますけれど、それが「応分に能力のある人」に該当するかは疑わしいところです。金持ちでも蓄財が趣味で消費は最低限、納税額の少なくなる人もいれば、低所得世帯でも家庭の事情で出費がかさみ納税額も大きくなる人もいますし、所得に占める納税額の割合ともなればなおさら逆進性は強まりますから。

 他にも河野太郎は、企業が社員の賃金を上げれば法人税の減税をするとも語っているそうです。賃上げにインセンティブを持たせること自体は悪くありませんが、法人税課税の対象は大半が黒字部分です。そして国税庁によると赤字法人は2019年時点で65.4%だそうで、およそ3分の2の法人は減税の影響を受けません。法人税減税を梃子にした賃上げは、影響範囲があまりに小さすぎます。

 率直に言って河野太郎には税の知識が致命的に不足しているようにも見えますが、支持者にとってはどうなのでしょうか。小泉純一郎に民主党、河野太郎と、「自民党をぶっ壊す」とばかりに改革の旗を掲げておけば、それを讃える人は少なくないわけです。結局のところ中身はあまり関係なくて、それらしい雰囲気を作って世の中を盛り上げることさえ出来れば、地位を得るには十分なのかも知れませんね。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

民主党の辞書に反省の文字はない

2021-09-19 22:50:27 | 政治・国際

 さて事実上の次期総理大臣を決める自民党総裁選が始まったわけですが、私の会社の御用組合でも選挙期間中だったりします。もっとも組合の選挙はいつも定員数=立候補者数ですので政策?論争も何もありません。労使協調・反共・民主党支持という永遠に不変の三本柱の下、誰もが同じ方向を向いている連合ワールドは今日も平和です。

 

立憲、アベノミクスの検証開始 負の側面への指摘で総裁選に対抗(朝日新聞)

 会合には、アベノミクスに批判的な経済学者の金子勝・慶大名誉教授が出席。約1時間にわたり議論を交わした。会合後、記者団の取材に応じた江田憲司代表代行は「先進国では日本だけ賃金が下がっている。だから消費も伸びないし成長もしない。そこにメスを入れる」と話した。

 自民党の総裁選が注目を集めるなか、アベノミクスを検証し、負の側面を指摘することで対抗する狙いがある。枝野氏は12日のインターネット番組で、「総裁候補は安倍政権と本当に違うことができるのか、アベノミクスの『罪の部分』を否定できるのか」と牽制(けんせい)した。

 

 そして一応の野党第一党である立憲民主党界隈でも、この機に存在感をアピールすべく色々と取り組んでいることが伝えられています。しかるに検証と称しつつ、朝日新聞すらも「負の側面を指摘することで対抗する狙い」と伝えるなど、初めから結論ありきの検証であろうことは誰の目にも明らかです。頭の中ではとっくに結論が出ているのに考慮するふりをする、そういう人には嫌悪感を抱くばかりなのですけれど、政府与党への支持が薄らいでも野党への支持には必ずしも繋がっていない理由を、民主党幹部はどう受け止めているのでしょうか。

 

立憲が公約第2弾発表 夫婦別姓・LGBTなど自民との対立鮮明に(朝日新聞)

 第2弾として発表した政策には、多様性や人権に重点を置いた5項目を盛り込んだ。選択的夫婦別姓制度を早期に実現▽LGBT平等法の制定/同性婚を可能とする法制度の実現を目指す▽DV対策や性暴力被害者支援など、困難を抱える女性への支援を充実▽インターネット上の誹謗(ひぼう)中傷を含む、性別・・民族・障がい・国籍、あらゆる差別の解消と国内人権機関の設置▽入国管理制度を抜本的に見直し、多文化共生の取り組みを進める。

 

 自身の党の価値を訴えるつもりがあるのなら、むしろ民主党政権時代の政策を検証した方が良いような気がします。2009年から2012年まで与党であった民主党からは看板を掛け替えたので過去の総括は不要と民主党支持層は考えているのかも知れませんが、本物の無党派層はもう少し昔のことを覚えている、それが今の支持率に表れているわけです。

 確かに旧民主党は夫婦別姓を含む民法改正案を国会に提出し、否決された過去があります。しかし政権交代が現実的となった2009年、突如として選択的夫婦別姓導入をマニフェストから削除、自民党を追い落として政権交代を成し遂げた後は夫婦別姓に触れることはなく、何ら進展を見せないまま自民党への禅譲で終わりました。なぜ民主党は与党時代に夫婦別姓を避けたのか、その検証こそ求められるべきでしょう。

 あるいは民族や国籍などあらゆる差別の解消をも訴えているそうですが、では民主党政権時代に高等教育無償化の対象から朝鮮学校を除外したことは、どう説明するのでしょうか。どうせ政権に返り咲くことはないのだから考える必要はないと、そう党内では扱われているのかも知れません。重要なのは、自民と対立するポーズを取ることですから!

 

野党4党、市民連合と政策合意 「コロナ禍に乗じた憲法改悪に反対」(朝日新聞)

 政策の柱は、①憲法②コロナ対策③格差是正④エネルギー⑤ジェンダー平等⑥行政の透明化の6項目。具体的には、安保法制、特定秘密保護法、共謀罪法などの違憲部分を廃止し、コロナ禍に乗じた憲法改悪に反対する。消費税減税や富裕層の負担強化など公平な税制を実現する。また、原発のない脱炭素社会や選択的夫婦別姓の実現、森友・加計問題、桜を見る会など疑惑の真相解明などが盛り込まれた。衆院選で4党が掲げる政策の土台となる。

 

 挙げ句の果てには、これです。故・民主党政権は女性閣僚の少ない内閣でもありましたが、ジェンダー平等とはどう折り合いを付けるのでしょうか。そして消費税増税を決めたのも民主党政権でしたが、自分たちが引き上げた消費税の減税に政策合意するとは、いったいどういう神経をしているのか首を傾げるほかありません。民主党議員と支持者の間では、何もかも安倍が悪いで済む話なのでしょうか……

 もし公約として、消費税増税を決めた当時の首相と経産相を国会に証人喚問し、誤った判断を下した責任を徹底追求することを掲げるなら、多少は本気も感じられるところです。しかるに消費税増税を決めた当時の主要メンバーが中核に居座っているのが立憲民主党という看板を変えただけの民主党なわけで、何も反省していないことがよく分かります。結局、悪いものは全て安倍のせい、自民のせい、それで証明完了なのかも知れません。

 「先進国では日本だけ賃金が下がっている。だから消費も伸びないし成長もしない。」と、江田憲司代表代行が述べたと伝えられています。それ自体は正しいですが、民主党政権時代の賃金の伸びは、安倍内閣時代のそれを下回るものでした。アベノミクスが良いものであったとは言いませんけれど、民主党政権の経済政策に比べればマシというのが客観的評価でしょう。そういう結論に至れるのなら、民主党の「検証」にも価値はありますが、そうでないならば民主党は自画自賛と自民党批判だけの非生産的な存在としか呼べませんね。

コメント (1)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

評価と実績は別問題

2021-09-12 22:27:52 | 政治・国際

甘利氏「ワクチン迷走といわれた担当相の評価が上がるとは」 総裁選で河野氏に皮肉(産経新聞)

 自民党の甘利明税調会長は6日、国会内で講演し、党総裁選(29日投開票)への出馬の意向を示している河野太郎ワクチン担当相について、「菅義偉(すが・よしひで)首相がダメだとたたかれた一番の原因が新型コロナウイルスワクチンの迷走と言われ、それでワクチン担当相の評価が上がるってどういう構図になっているのか良く分からない。半分くらいは菅首相に分けてやったら」と皮肉混じりに語った。

 

 日本国内のワクチン接種ですが、実際のところどうなのでしょうか。動き出しは遅くオリンピック期間には完全に間に合いませんでしたが、公表されるデータを見る限り摂取率自体は順調に伸びていることになっています。ただ自分は9月に入って自衛隊の集団接種が40歳以上を締め切った後も予約受付すら始まらないハズレの自治体に住んでいますので、どうにも上手くいっていないような印象を拭うことが出来ません。

 まぁ真っ当な自治体に住んでいれば、事情は違うのでしょう。ワクチン接種の地域格差にはもう少し注目されて欲しい気もするところですが、あまり話題にはなっていないような気がします。隣接する自治体の全てにワクチン接種の予約受付開始で後れを取ったとあらば、議会で市長が槍玉に挙げられていたとしても不思議ではないですけれど、どうにも自民と民主双方の会派との関係は悪くないようで……

 それはさておき、このワクチン接種の進捗あるいは遅れは、誰の責となるのでしょうか。ワクチン接種を巡る混乱は政府の支持率低下の一因ともなっているわけですが、それでいて河野ワクチン担当相の評価だけが上がっているとすれば、それは理不尽な話に違いありません。でもまぁ、そういう人っていますよね。複数の社員で対応したのに、一人だけ賞賛される人、評価される人は皆様の職場にもいると思います。

 いわゆる「プロ経営者」の類には行く先々で業績を悪化させてきた負の実績の持ち主も少なくありません。それでも別の会社から請われて社長に就任する等々、自らの評価を高めることには成功している人も多いわけです。往々にして業務遂行能力と評価を得るための能力は一致しないと言いますか、組織の足を引っ張って昇進する人もいれば組織を支えてきたのにリストラの標的にされる人もいる、世の中そういうものなのでしょう。

 いずれにせよ河野ワクチン担当相は菅内閣の一員として仕事をしてきたのであって何もかも一人で担当してきたのでもなければ、菅内閣とは異なる独自路線でやってきたのでもありません。ならばワクチン接種を巡る評価は菅も河野も同程度であって良さそうな気はします。そうならずに一方だけが評価を高めるなれば、それは他人の手柄を自分のものにする能力に長けた人間であることを証明するものなんだろうな、と思いますね。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

野党共闘

2021-09-12 22:21:53 | 政治・国際

三重県知事選 一見勝之氏が当選確実(毎日新聞)

 衆院選への立候補を表明した鈴木英敬知事の辞職に伴う三重県知事選は12日投開票され、無所属新人で元国土交通省自動車局長の一見勝之氏(58)=自民、立憲、公明、国民推薦=が、元県議の岡野恵美氏(69)=共産推薦=と建設会社社長の石川剛氏(47)の無所属新人2氏を破って当選を確実にした。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

変わる価値観、変わらぬ価値観

2021-09-05 23:10:57 | 社会

 さて先週より自衛隊の集団接種会場でのワクチン接種は18歳から39歳が対象に限定され、40歳以上は応募することが出来なくなりました。しかるに私の住む自治体では今もなお、40代の市民は予約受付の対象にすらなっていません。50歳以上はようやく市の受付が始まりましたし、30歳未満は集団接種で優先的に予約が取れるようになりましたが――いわゆる氷河期世代がどういう扱いなのか、よく理解できます。

 まぁ隣接する市区町村ではいずれも40代を含むワクチン接種予約受付が始まっており、近隣でいまだに予約の機会さえ与えられないのは私の住んでいる市だけです。普通の自治体では、望めば40代でも予約が取れる状況なのでしょうか。とりあえず私の住んでいるのが、「ハズレ」の自治体なのだろうなとは思います。

 そんな「ハズレ」の自治体でも一つだけ良いところがあって、それは「東京の通勤圏である」ということです。都内への通勤が可能な範囲に位置しているという、唯一の長所のおかげで人口は増加の一途、商業施設は歯医者と保育園とパチンコ屋しかありませんが、それでも我が市に移り住んでくる人は後を絶ちません。

 新型コロナウィルスの感染拡大で一時はリモートワークも普及して会社に通勤する機会も減少した、ならば「東京の通勤圏である」ことの価値も下がるかと思ったのですが、男性を中心に人口は異例の微減を記録したものの世帯数は増加が続いています(家を建てて転勤になる人が多いのでしょうか)。都内に通勤できる距離に位置している限り、住宅需要が減ることはなさそうです。

 

オンライン授業は「出席停止」? 割れる対応、受験への影響懸念も(朝日新聞)

 新型コロナ感染への不安や分散登校でオンライン授業を自宅で受けた子は、「出席」か、忌引などと同じ「出席停止」扱いか――。学校が各地で再開するなか、自治体によって判断が異なっている。文部科学省は「出席停止」扱いとする立場だが、特例的に「出席」とする自治体も。出席停止の日数が「受験に影響しないか」と心配する保護者もいる。

 

 なおリモートワークに従事する人との対比で、会社に出勤することそのものに意義を見いだしている人や、出社しただけで仕事をしたつもりになっている人の存在が取り沙汰されることもありました。結局は後者の方が幅を利かせているように見えますけれど、学校もまた会社と似たような感覚で捉えられているようにも思います。

 つまり、通学することにこそ意義がある、学校に足を運んでこそ出席である、そういう考えが根底にあるからこそ文部科学省という「公式」の見解に沿えばオンライン授業は「出席停止」という扱いになってしまうのでしょう。会社に来れば何もしなくても出勤扱いであるように、教室まで来れば何も聞いていなくても出席扱い、世の中そういうものなのです。

 仕事をする場所(オフィスか自宅か)に関わらず純粋に成果を問う、勉強する場所(学校の教室か自宅か)に関わらず実際に勉強したかを問う、そうした領域に我々の社会が到達する日はいつか訪れるのでしょうか。働かなくてもとりあえず出社すればヨシ、勉強しなくても教室に座っていればヨシ、そういう従来通りの価値観が維持されることに疑問が持たれないなら、我々の社会が前に進むことはないと言えます。

 就職人気ランキングは諸々のメディアから発表されていますけれど、概ねどこでも1位に選ばれているのは伊藤忠商事です。この伊藤忠商事、第一回緊急事態宣言の解除後は即日「通常出社」への回帰を行ったほか、「伊藤忠にはテレワークをするための体制や機器が整っているからといって、自分たちだけ在宅勤務をしていいのだろうか」などと社長が豪語する、まさにアンシャン・レジームの雄と言うべき存在でもあります。

 こうした社風こそが就活生からの人気を確たるものにしているのかな、と思わないでもありません。新型コロナウィルスの感染拡大を機に変わろうとするものもあれば、「コロナ前」に戻ろうとする復古派もまた根強いわけです。通勤・通学を前提にして条件とする体制に復することを目指すのか、あるいは通勤・通学の有無ではなく内容を問う体制に進むのか、それが今問われています。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする