非国民通信

ノーモア・コイズミ

アンシャン・レジーム

2020-12-27 22:29:49 | 雇用・経済

22年卒学生に聞いた「就職人気企業ランキング」 コロナ禍で明暗、トップは3年連続で……(ITmediaビジネス)

 就職情報サービスを手掛ける学情が12月21日、2022年に大学・大学院を卒業予定の学生を対象とした「就職人気企業ランキング」を発表した。トップは3年連続で伊藤忠商事だったが、上位の顔ぶれはコロナ禍の影響で変動。巣ごもり需要を取り込む食品メーカーなどの人気が高まった一方、航空・旅行業界は順位を下げた。

 

 新卒者の就職先人気№1は3年連続で伊藤忠商事なのだそうです。今年は新型コロナウィルスの影響で世の中が大きく動いた1年でしたけれど、伊藤忠商事の就職先としての人気には影響がなかったことが分かります。では伊藤忠商事がコロナとは無関係であったかと言えば、例えば社長の以下のような発言がありました。曰く「テレワークをするための体制や機器が整っているからといって、自分たちだけ在宅勤務をしていいのだろうか」と。

 実際に伊藤忠商事はリモート勤務から出社勤務を「通常」とする方向へ戻そうとする復古派の雄と言えますけれど、学生から見てそれは良いことなのでしょうか。コロナを契機に新しく効率的な働き方を目指す企業もあれば「今まで通り」の働き方に戻すことを願う企業もある、伊藤忠商事は社長の発言を聞く限り典型的な後者に含まれますが、それで就職先人気№1を維持したということは概ね学生からは復古の方針が受け入れられているのかも知れません。

 

有働由美子アナ 若手時代に作った汁物に恥ずかしい名称「言葉の意味を知らないというのは怖い」(スポニチ)

 「初任給が17万5000円くらいだった」というNHK入局当時は、飲み会の参加費用を捻出するために食費を削る日々。近所で売っていた野菜の切れ端を50円ほどで買い、角切りにして汁物を作っていた。「その汁のことを『我慢汁』と呼んでいて。飲み会に行くために我慢していたので。月末になると朝昼晩、我慢汁にしようと」。友達からの飲み会の誘いには、「大丈夫、大丈夫、我慢汁でしのぐから」と平気で使っていたそうで、「言葉の意味を知らないというのは怖いことだな」と振り返った。

 

 この恥ずかしい名称云々はどうでも良いのですが、NHKという超一流企業の正社員にして「飲み会の参加費用を捻出するために食費を削る日々」というのは注目されるべきと思っています。私の勤務先もそうですけれど、やはり偉くなる人は飲み会を大切にするもの、飲み会への参加を最も大切な仕事として捉えているものではないでしょうか。不要不急どころか、何を差し置いても参加すべきものとして飲み会を位置づけている企業は今でも少なくないはずです。

 ただ忘年会への参加が事実上の義務化していた前年度までと異なり、今年は感染拡大対策として自粛の機運も一定の高まりを見せ、忘年会へ参加せず済ませることが可能になった職場も増えたものと推測されます。この辺は新型コロナウィルスの感染が拡大して「良かった」ことの一つに挙げられますが、一方では悪あがきしている人もいる、飲み会が減る中でもなんとかして忘年会を開催しようと奮闘している人もいたりするので何とも言えません。

 この時代にテレワークが可能であるにも関わらず敢えて従業員を出社させようとする経営者や、あれやこれやと口実を積み重ねて飲み会の開催に固執する人々は公衆衛生に対する脅威でしかありません。しかしながら我々の社会に感染症のリスクを広めるこうした人々は、コロナ以前から幅を利かせてきた人でもあります。いわばアンシャン・レジームの担い手と言ったところですね。

・・・・・

 例年、冬は風邪をうつされやすい時期でした。今年はゲヘゲヘ言ってる人と机を並べずに済むので、少し安心していたりします。唾を飛ばしながらしゃべる人やタバコの匂いを吐きかけてくる人と自然に距離を取れるようになったので、この辺もありがたいなと感じているのですが――ここに来て新型コロナウィルスの感染者増が続いていることには、流石に不安を覚えないでもありません。

 コロナ以外の感染症でも死んでいく人は多い、むしろコロナ対策の副産物としてインフルエンザ感染は0に近い状況が続いているわけで、コロナで一定の死者が出てもコロナ「以外」の感染症による死者が減った分と釣り合いが取れるなら、まぁ我が国の感染症対策は及第点だろうとこれまでは考えていました。しかし今のペースですと、コロナ「以外」の感染症の減少をコロナによる犠牲者が上回ること必至で、そうなると私も危機感を抱かざるを得ません。

 感染症対策で人の動きが減ったらインドではヒマラヤ山脈が空に浮かぶようになり、ヴェネツィアでは運河の水が透明になったそうです。ただ世の中の勢力図を塗り替えるほどの死者が出ているわけでもありません。2016年のアメリカ大統領選でトランプ氏は45.93%の得票を得ました(ヒラリー・クリントン候補は48.02%)。そして2020年の大統領選でトランプ候補は46.86%の得票を得ました(バイデン次期大統領は51.31%)。

 2016年は得票率で負けても勝者総取りの選挙制度の恩恵を受けて大統領に就任したトランプ氏ですが、2020年でも概ね同じような得票率を記録したことが分かります。自身に止まらず取り巻きも次から次へと新型コロナウィルスに感染するなど、トランプの賛同者は軒並み公衆衛生のガイドラインを守らないことでも知られるところです。ただ、その結果としてトランプ支持層がコロナでバタバタと死んでいったかと言えば、得票率に反映されるほどの規模には至っていません。

 日本でも然り、必要もないのに会社に出たがる人、夜の街に繰り出すことを好む人々、不必要に感染拡大のリスクを冒す人は絶えないですけれど、そうした人々がコロナで次々と淘汰されて世の中が変わっていくかと言えば、そこまでの状況にはないわけです。ウィルスとの戦いは当初予想されていたよりも長くなりそうですが、いずれは終わりを迎えることでしょう。そうなった時に「コロナ前」の因習がどれだけ復活してしまうのか、世の中が前に進むかどうかの分かれ道になると思います。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

差別と報道

2020-12-20 21:46:57 | 社会

DHCサイト、会長名で差別的文章 SNSで批判相次ぐ(朝日新聞)

 化粧品大手ディーエイチシー(DHC、東京)の公式オンラインショップのサイトに、同社の吉田嘉明会長名で在日韓国・朝鮮人に対する差別的な内容を含む文章が掲載されている。同社は掲載の意図を問う取材に「回答することは特にございません」としている。

 文章では、DHCのサプリメントが他社製品より優れていると主張する中でライバル企業のサントリーの名を挙げ、「商品の見栄をよくするために有名なタレントを多用して、多額のお金を使っている会社より良心的だと思いませんか」と訴え、在日韓国・朝鮮人への差別的な言葉を使った。CMのタレント起用についてもサントリーを引き合いに、「DHCは起用タレントをはじめ、すべてが純粋な日本企業です」と記載した。文章は画像形式でアップされている。

 文章は「2020年11月」の日付だったが、16日になってツイッターで取り上げられ批判が拡散した。

 

 さて11月に掲載された代物が今になって注目を浴びたことが伝えられています。引用元ではこの先に典型的な悪しき両論併記が続くわけですが、報道としてはどうしたものでしょうか。しばしば問題発言や暴言、パワハラとして報道されつつも、その最も悪質な部分は記事に載らない事があります。内容が酷ければ酷いほど新聞には「載せられない」言葉が入っていることが多く、結果として新聞に「載せられる」マイルドな部分だけが報道される、報道で紹介された限りでは大した問題ではないように見えることもあるはずです。

 先日は埼玉県警で監察役の警視が部下に「バカ」と暴言を吐いたとするニュースがありました。その言葉を見る限り、人間として問題はあるとしても全国紙に載るようなレベルではなさそうに見えてしまいます。本当は新聞に載せられるのが「バカ」ぐらいしかなかっただけで、もっと「新聞に載せられないような言葉」で部下を執拗に罵っていたであろうことは想像に難くありません。しかし「新聞に載せられる言葉」だけで報道するとなると、それほど騒ぐようなものではなく見えてしまうわけです。

ヤケクソくじについて(DHC公式オンラインショップ) - アーカイブ

 これを報じている朝日新聞もサイトでは「(DHC会長名で)掲載された文章の一部」を載せているのですけれど、ものの見事に差別発言に当たる部分はカットされていたりします。実際にDHCが掲載した怪文書は議論の余地のない差別発言であるにも関わらず、報道では差別発言を隠している、記事を読む限りでは核心が隠されている印象を受けます。新聞紙面に差別用語を載せたくはなかったのかも知れませんが、そこを隠すことで結果としてDHCの罪を軽いものにしてしまっているとも言えます。

 もう一つ注目したいのは、問題の怪文書が概ね一ヶ月前に公表されていたことです。世間の注目を浴びることなく過ごしていた期間も、それなりにあったことが分かります。情報の伝播は、情報化社会が進んでも必ずしも早まるものではないのでしょう。2017年には神奈川県小田原市で、市役所職員が職場ぐるみで生活保護受給者を誹謗するグッズを製作・頒布していたことが報道され短い間ですが話題になりました。しかしこのヘイト行為が始まったのは、ちょうど10年前の2007年からとのことです。

 2007年から10年間、小田原市の職員は生活保護受給者を誹謗する文面の入ったジャケットで生活保護受給者宅を訪問する他、役所内では有償での販売も行われているなど、全く隠そうとしていなかったなかったことが分かります。そして10年間のヘイト活動の継続の末、2017年にそれが報道されたことで初めて世間の批判を(そして少なからぬ共感も)集めるようになりました。一見すると明らかな差別やヘイト行為もまた、世間に広く知られるまでは結構な時間を要していたわけです。

 極めつきは、多くの私立医大では、男女枠がある。~(中略)~どうしても、女子は卒後、外科系に進みにくい。~(中略)~だから、医学生が女子ばかりになると、その大学の中で、外科系にいく人間が少なくなり、バランスがとれなくなる。~(中略)~最悪の場合、外科教室の維持ができなくなると危惧されることもある。そうした事情から、私が知っているある私立医大は、男女で別々に定員を決めているそうだ。(『医者とはどういう職業か』里見清一、幻冬舎新書)

 ……と、私は2016年に出版された本で読んだことがあります。そして2018年、東京医科大の入試で女子受験者の得点を一律に減点し、合格者数を抑えていたことが問題視されるに至りました。ここから世間も大きく動き出したのですが――決して初めて明るみに出たことではなく、書店で普通に売られている本にも書かれていることだったりします。ただ関係者の間では知られている話でも、それが世の中に出ていくまでは時間がかかる、何か問題となる行為があってもそれが知られるようになるかは別の話なのでしょう。

 どんなに情報化社会が進んでも、情報の広まりは必ずしも早くはならない、どれほど悪質であろうとも世間に知られることなく当たり前のように存在しているものもまた少なからずあるように思います。一般人の何気ない行動が一夜にして炎上することもあれば、大企業や役所が公然と差別発言・行為を繰り返しているにも関わらず野放しになっていることもあるわけです。情報技術の発展に伴い世界中の何処でも同じように仕事が出来るようになったかと言えばむしろ東京一極集中が進む等々、世の中は広くなっているのか狭くなっているのか分かりませんね。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

良くなったことも

2020-12-13 23:34:59 | 社会

 さて新型コロナウィルスの感染拡大について政府は「勝負の三週間」などと称していたわけですが、今に至るも随所で過去最高の感染者数を記録するなど、どうにも有効な対策を打ててはいないようです。まぁ通勤時の乗客数も減っている様子は微塵もありませんし、会社近辺の人通りも普段通り、地元の駅前はむしろ人が増えているぐらいの印象ですから、大半の人は何もしていないのだと思います。

 しかしながら、インフルエンザの発生状況を見ると前年比で劇的に減少していることが分かります。前年比で数千分の一にまで落ち込んでいる項目も少なくなく、インフルエンザに関しては完封に近い状況となっているわけです。コロナウィルスもインフルエンザも感染予防のための基本行動は同じですから、日本で行われているレベルの対策でもインフルエンザ程度の感染力であれば十分に有効なのでしょう。

 時には年間の死亡者数が3000人を上回ることもあるインフルエンザですが、とりあえず感染力は新型コロナウィルスに比べて格段に弱いことが分かります。コロナに対しては不十分な感染予防策でもインフルエンザ相手ならば万全に近く、今年の冬は総合的に見て健康リスクの低いシーズンになるのかも知れません。新型コロナの感染拡大は食い止められていないながら、公衆衛生は改善されているような気がします。

 例年であれば各部各担当で毎日のように開催される会社の忘年会に悩まされる時期でもありますが、皆様の職場ではいかがでしょうか。弊社でも悪あがきしている人はおりまして油断は出来ませんけれど、概ね自粛の方向で進んでいます。かつては連日連夜の出張で、給料よりも毎月の航空券・新幹線代とホテル代の方が上回る人も部署によっては珍しくありませんでしたが、その辺も正常化しているなど良い方向に転んでいることも結構あります。

 私の勤務先では昨年以前から在宅勤務の制度は存在していましたけれど、利用されないことが大前提でした。障害などで通勤困難な人が例外的に利用するものであって、実際には誰も在宅勤務などしない、あくまで「先進的な取り組み」として対外的なアピールのためだけに存在する制度に過ぎなかったわけです。それがコロナで一転、「普通の人」でも緊急事態宣言後は利用可能となったのですから驚きです。経緯には釈然としないところがないでもないのですが、間違いなく進歩であるとは感じています。

 一方では先日取り上げた伊藤忠商事の社長のように「テレワークをするための体制や機器が整っているからといって、自分たちだけ在宅勤務をしていいのだろうか」みたいなことを宣う人もいます。テレワーク可能なのに「しない」人がいるおかげで通勤電車はいつも満員ですし、オフィス街は人で溢れてしまうわけで、こういう人は日本社会の公衆衛生に対する脅威として糾弾されるべきと言えますが、どうしたものでしょうか。

 特定の業界が大きく割を食っている現状は問題として残るのですが、コロナの「おかげで」世の中が良くなったことも少なくありません。コロナがなければ在宅勤務が利用可能になることはなかった、マスクも付けずにゲヘゲヘやっている人とも机を並べていなければならなかった、アホみたいに忘年会や出張に駆り出されて自分の時間なんて睡眠時間を削る以外に確保できなかった――それを鑑みれば率直に「良かった」と思います。

 忘年会シーズンが書き入れ時の飲食店の経営者から見れば、今は比喩的な意味でも冬の時代です。とは言え、超長時間労働の常態化が顕著な業界でもありました。過労死ラインで働かされていた飲食店の従業員が、昨今の営業時間短縮をどう感じているかは興味深くもあります。小売店の24時間営業や年中無休の営業を批判してきた人もいますが、年末年始の営業短縮が別の動機で求められている現状をどう見ているのか、その辺は語られにくいことなのでしょうか。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

日本から学んだもの

2020-12-06 22:42:46 | 社会

ベトナム、約3か月ぶりに市中感染を確認 新型コロナ(AFPBB News)

 ベトナム最大の都市ホーチミン(Ho Chi Minh)で11月30日、同国で約3か月ぶりとなる新型コロナウイルスの市中感染が確認された。当局者らは感染拡大を食い止めるのに必死だ。

 厳しい移動制限、広範な隔離措置、そして感染経路の追跡を徹底的に行ったとして、ベトナムの新型コロナウイルス対策は称賛されていた。

(中略)

 人口約9600万人のベトナムだが感染者は1347人、死者は35人に抑えられている。

 

 新型コロナウィルス感染に関して日本では連日のように最多数が更新されている昨今ですが、一方のベトナムでは「約3か月ぶりに市中感染を確認」がニュースになっています。危機を感じる水準の違いが浮き彫りになる一幕と言えますね。先月は麻生副総理が性懲りもなく新型コロナウイルス対応に関して「(日本は)民度が高い」云々と述べていましたけれど、ベトナムは日本よりずっと上のようです。

 一方で、先日は北関東エリアを中心にベトナム人による農産物・畜産物の窃盗と違法な販売が話題にもなりました。コロナに打ち勝つ「民度」とは何だったのでしょうか。異邦の地でもたくましく生きる精神と行動力は大したものですが、天下の副総理の言うように感染症の拡大抑制と「民度」に関係があるのなら、その尺度を考え直す必要があると思えてきます。

 それはさておき、ベトナム出身の窃盗犯は何処でその手口を学んだのでしょうか。農産物の収穫や畜産物の解体など、ある意味では日本での「実習」が役に立っているのかも知れません。そして「違法性」もまた日本での実習で身につけたのではないでしょうか。技能実習と称して法律の定める最低を大きく下回る賃金で人を働かせたり、パスポートを取り上げて人を拘束したり等々、こうした現場で「違法な稼ぎ方」をベトナム人は学んでいったのかも知れません。

 子供を虐待する親は、自身も虐待されて育った人が多いと言われます。まぁ、子供を虐待する方法を一から自分で編み出した人は少ないでしょう。自分の親から「子供を虐待する方法」を学んだからこそ、親として虐待する技能を身につけているわけです。体育会系のコミュニティにおける「シゴキ」も同様、一からシゴキの方法を考え出したのではなく、先輩からシゴキの技術を学んで、それを後輩に受け継いでいる人も多いはずです。

 日本による植民地支配から解放された韓国や台湾では、軍隊が支配する政権が築かれました。大日本帝国の統治と真逆になるようなことは決してなく、むしろ日本支配下と同じ軍による統治が続いたと言えます。たぶん、軍によって支配された経験から、軍によって国を統治する技能を学んだ人がいたのでしょう。人に殴られることで、人を殴る方法を知るわけです。

 

相次ぐベトナム人犯罪のなぜ? 「ひとり月500円」「性接待も日常的」……実習生送り出し機関の“悪質な手口”(文春オンライン)

「ベトナムには300~400の送り出し機関があると言われますが、そのうち半数くらいは悪質なブローカーが関与しているように思います」(Tさん)

 こうした厳しい搾取を乗り越えて、借金を返済し、3年間の技能実習を無事に終えて帰国する優秀なベトナム人もいる。日本語や日本で学んだ技術を活かしてステップアップしていくケースもあるのだが、

「目立つのは送り出し機関に就職するパターンです」(Tさん)

 今度は自分が流暢な日本語で、日本の中小企業の人事担当者を出迎える立場になるのだ。借金を背負わされた側が、借金を背負わせる側へと回る。そんな負のスパイラルがある。

 

 技能実習という奴隷貿易にも等しい搾取のメカニズムは、「技能」ではなく「搾取の方法」を学ばせるものになっていると言えます。真面目に働いても報われないことを技能実習は教え、他人を騙して財を成す手口を目の当たりにさせる――それが技能実習の実態です。そもそも経済発展で周辺国に大きく遅れを取る日本で世界に秀でるものがあるとすれば、労働者の賃金を抑制する方法論ぐらいですから……

 同国人をヨソに売り飛ばして私腹を肥やす人は、歴史を紐解けば何処にでもいます。奴隷という「商品」を売って利益を得ていた事例は日本にもありますが、ベトナムの場合は現在進行形であると言えるでしょうか。韓国では同朋を欺いて日本へ売り渡し富を築いた人は「親日派」と呼ばれて糾弾されるようになりましたけれど、ベトナムはまだその領域には到達していないようです。

 もっとも民主化した後の韓国がそうであるように、時代が進んで「買い手」である日本を非難するようになるのは必然でもあります。将来的にはベトナムでも、こうした「親日派」のブローカーが糾弾されるようになることでしょう。その時は日本とベトナムの関係が、日韓のそれと似たようなものになると思われますが――日本側に後ろ暗いことがないとは言えませんよね?

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする