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非国民通信

ノーモア・コイズミ

ブーメラン

2019-08-25 22:19:26 | 政治・国際

アップル、中国製有機EL採用か スマホ用、韓国リスク回避と報道(共同通信)

 【北京共同】米アップルが、主力製品のスマートフォン「iPhone(アイフォーン)」の画面に中国製の有機ELパネルを採用することを検討していることが分かった。調達先を韓国以外にも広げるという。中国メディアが21日までに報じた。日本による対韓輸出規制強化の影響で、サムスン電子からのパネル供給が滞るリスクを減らすためとしている。

 日本が韓国に対して打ち出した措置が世界のサプライチェーン(部品の調達・供給網)に影響を及ぼした形だ。

 中国勢が販路を拡大すれば、アップル向けの有機ELパネル量産化に生き残りをかけるジャパンディスプレイにも痛手となる可能性がある。

 

 さて巷を賑わす対韓輸出規制強化の問題ですが、支持者の間でも理解は2通りあるように見えますね。一つは、日本からの材料調達が困難になると想定したもので、これで韓国企業に打撃を与えられると期待している人々がいるわけです。そして上記報道は、こうした人々の世界観に沿ったものと言えるでしょうか。日本からの規制により、韓国企業からの供給にリスクが見込まれているようです。

 一方、今回の規制は「優遇措置の対象から外しただけ」であり、優遇対象「ではない」国と同等の手続きを踏めば引き続き日本からの輸入は可能である、単に韓国側が過剰反応しているだけなのだと、そう説く人々もいます。果たして実態に近いのはどちらなのか、韓国を悪玉視する人々の間でも、見解は分かれているように見えるところです。

 優遇措置からの除外、という意味では、ロシアからウクライナへの天然ガス供給などが思い浮かびます。これもウクライナ政府のロシアに対する姿勢で変わったりするものですが、基本的にはロシア側の非として西側諸国から糾弾されてきました。アメリカとの関係が善悪を決めているからなのか、それとも優遇措置を外すことが国際的には非常識と見なされるのか、いずれが正しいのか興味深くもあります。

 ともあれ、この日本側の報復措置に対するカウンターとして、韓国は日韓秘密軍事情報保護協定を「更新しない」ことを告げてきたわけです。これを日本では「GSOMIA破棄」と訳して大いに盛り上がっているところですが、その先はどうなるのでしょう。とかく日本の政治家は利益を度外視して理想を追うもの、国益を損ねようとも強硬な姿勢を続けそうな気がします。

 ただ更新されないことになった軍事協定も、結局は優遇措置と同様のものです。協定を結んだ「ホワイト国」であるからこそ情報を共有する、そういう協定ですから。そして優遇措置が消えても、協定が結ばれる2011年よりも前のやり方に戻るだけであり、宗主国たるアメリカを通して正規に情報を収集すれば良い――そう考えれば、日本側が過剰反応して騒いでいるだけだと言うこともできます。対韓輸出規制にちなむ日本のロジックを使えば、ですね。

 日本は韓国への優遇措置を外し、普通の国と同様の手続きを踏むよう通知しました。そして韓国もまた優遇措置を外し、普通の国と同様の手続きを経て軍事情報を入手するよう、伝えてきたわけです。この件で韓国側が過剰反応しているとみなすのならば、日本もまた同様である、とは言えるでしょう。まぁ、日本にとっては経済よりも軍事の方がずっと優先度は高い、経済がどうなろうと意に介さないが、軍事に関わることならば大騒ぎ、そんな人も多い気はします。

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新卒一括採用「しない」会社は星の数ほどありますが

2019-08-18 22:22:45 | 雇用・経済

(経済気象台)辞退率提供サービスに思う(朝日新聞)

 学生の内定辞退の可能性を数値化して企業に提供していたサービスが問題となっている。詳細は不明だが、学生による企業ページの閲覧履歴などをもとにAI(人工知能)を使って推測していたようだ。38社がこのサービスを購入していたという。個人情報保護の観点で大きな問題だが、そこから推測される現在の採用活動にも課題は多い。

(中略)

 来年度からは、企業による採用活動の自由度が増すことになる。「今さら感」はあるが、企業もそろそろ目を覚まし、新卒一括採用の呪縛から解き放たれる時期が来ているのではないだろうか? いち早くそこに気づき、新しい取り組みを始めたものにこそ、大きなメリットがもたらされるはずである。

 

 さてリクナビが学生に隠して販売していた内定辞退率の予測データですが、トヨタやホンダ、りそなホールディングスなど少なからぬ企業へ販売されていたことが伝えられています。トヨタなどは過去に地名総鑑も購入していたと聞きますけれど、意外にこういうことでは、ブランドイメージに傷は付かないものなのかも知れませんね。

 さて、朝日新聞曰く第一線(どこの?)で活躍している経済人、学者ら社外筆者が執筆しているという触れ込みの作文コーナーで、問題の辞退率データを枕にアレコレと語られているわけです。結論としては新卒一括採用批判に落ち着くのですが、この新卒一括採用批判も随分と歴史が長いですよね。新卒一括採用はダメだと、そういう社会的合意が掲載されてから長い年月が経ちましたが、その結果はいかがなものでしょう。

 ちなみに私の勤める会社では、一括採用以前に新卒者自体、採用していません。採用は通年、中途だけです。ただし親会社は逆で、新卒一括採用が原則となり、基本的に中途では入社できません。読者の皆様がお勤めの会社の採用事情はいかがでしょうか。ヨソでも、似たようなところは多いのではないかと思います。

 新卒一括採用が成り立つには、条件があります。一つには、従業員を「0から」教育できる環境が整っていることです。当たり前ですが新卒者は右も左も分からない赤ん坊のようなものですから、それを辛抱強く育てる環境がなければ、新卒を採用しても腐らせてしまいます。本当に0から社員を教育できる企業だけが新卒を活かせるわけです。

 そしてもう一つは、離職率が低いことです。離職率が低いからこそ、入社時期が年に一度でも業務が回るもので、逆に離職率が高い企業の場合は当然、年間通して人員補充の必要性に迫られます。定期的な人員補充が必要な会社は、好むと好まざると通年採用せざるを得ません。しかし人が辞めないならば、人員配置は計画通り、補充は4月の一斉入社だけでもなんとかなるのです。

 新卒一括採用は、それ自体が何かを産むものではありません。しかし、一つの目安にはなります。新卒者を0から育てる環境があり、4月の一斉入社以外に人員補充の必要に迫られていない会社かどうか、それを判別する尺度になるわけです。好待遇の親会社は新卒一括採用で、待遇面で大幅に劣る子会社は通年中途採用だったり、そんなケースもありますけれど、まぁ察してください。

 楽な道があると、楽な道しか進めない事業者も生き延びることができます。反対に険しい道ばかりなら、険しい道を突破できる強い事業者を選別することができる、と言えます。例えば規制緩和によって人件費削減が容易になると、売り上げを伸ばせなくても人件費を削ることで、企業の延命が可能になるわけです。経済発展に貢献できようはずもない不採算企業でも、人を安く長く働かせることで、存続が可能になるのですね。

 逆に規制が厳しくなれば、その中でも利益を上げられる、イノベーションを起こせる企業しか生き残ることはできません。人件費が高くなれば機械化・自動化を成し遂げる企業だけが存続できますが、人件費が下がれば従業員を酷使することで誰でも生き延びることができてしまう等々。日本が選んだ道は後者と言えますが、さて世界経済における日本の立ち位置はどうなったでしょう?

 「新卒一括採用」とは、大企業の「自主規制」なのかも知れません。上述の通り、新卒一括採用を維持するためには、0から教育できる体制と、離職率の低さが前提条件となります。この条件を満たせない中小・零細・ブラック企業は、昔から通年・中途採用を続けてきたわけです。そして世の識者が訳知り顔で語るように新卒一括採用が悪しきものであるのならば、大企業と中小企業の力関係は逆転していそうなものですが……

 社員を0から教育できないので中途採用、離職率が高く絶えず人員補充の必要に迫られているので通年採用、そんな中小以下の会社は、実のところ多数派でもあります。しかし、否定されているはずの新卒一括採用からは無縁の中小以下の企業が日本経済の牽引役になっているかと言えば、全くそんなことはないわけです。

 むしろ今なお強いのは、新卒一括採用を維持できている会社の方ですよね。新卒一括採用の条件たる教育体制と離職率の低さを維持している会社が、結局は成長しているのです。したり顔で新卒一括採用にダメ出しすれば、ちょっと「分かっている」風に見えるかも知れません。しかし新卒一括採用「できない」会社こそが、本当のところはダメな会社なのです。

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賃金の高い自治体は発展し、その逆は衰退した

2019-08-11 22:27:33 | 雇用・経済

最低賃金の格差、18年度から1円縮小 改善16年ぶり(朝日新聞)

 2019年度の最低賃金(時給)の改定額が9日、全都道府県で出そろった。最高は東京の1013円で、神奈川とともに初めて1千円を超え、最低額は790円で15県が並ぶ。東京と最低県の地域間の格差は223円で、18年度の224円から1円縮小する。金額差の改善は16年ぶり。

 厚生労働省の審議会は7月下旬、都道府県をA~Dのランクに分け、28~26円の引き上げ目安額を示し、これをもとに各地の審議会が改定額を議論してきた。

 引き上げ目安を上回る改定額を出したのは19県。700~800円台の地域が目立ち、東京との金額差をわずかに縮めることになった。厚労省は「最低賃金が高い都市部への人口流出を懸念した地方の実情が表れた」としている。18年度、最も低い鹿児島(761円)は目安の26円を3円上回る29円の引き上げで単独の最下位を脱出する。29円の引き上げ額は28円上げた東京などを超えて全国で最も高い。

 

 

 さて「日本最低」だった鹿児島を筆頭に奇妙な横並び意識が現れたのか、2019年度の最低賃金を790円とする県が続出したようです。この結果、地域による最低賃金の差は16年ぶりに縮小されたとのこと。今から16年前と言いますと第一次小泉内閣の時代ですね。この歴代最悪の総理大臣の時代から日本は意図的な格差拡大へと舵を切ったわけですが、ようやく僅かに踏みとどまったところでしょうか。

 しかし、横並びチキンレース各県の最低賃金が790円、一方の東京は1013円です。まだまだ格差は大きく、地方在住者にとっての最高の努力は「上京する」に尽きる状況と言わざるを得ません。結局のところ最低賃金は、まさしく最低賃金で働く人だけに関わる話ではなく、「最低ではない賃金」を決める際の基準でもあります。最低賃金の低い地域は、その平均賃金もまた低いですから。

 同系列の店舗でバイトするにしても、都内の店舗と地方の店舗では、時給が全く違うのが当たり前です。正社員として働くにしても、勤務地により地域加算手当や、それに準じるもので結構な差がある会社も多いことでしょう。仕事は同じでも、住むところによって給与は大きく異なります。そしてこの格差は――働く人、本人の努力の埒外で生まれるのです。

 家賃は、確かに東京近郊と地方では差があります。一方で、公共交通機関が整い気候も安定した首都圏と、自動車が必須で自然災害に振り回されがちな地方とでは、当然ながら後者の方が生活コストは高く付きます。ましてや安売り店が激しい競争を繰り広げる首都圏と、そうでない地域とでは、いざ節約しようとしたときに有利なのがどちらであるか、比べるまでもないでしょう。

 賃金が上がると雇用が失われると、そう強弁して憚らない人もいます。一方で、東京の高い人件費を嫌って雇用が流出したという事例は、この格差が広がり続けた16年間の間で一度たりともないわけです。逆に地方の安い賃金を目当てに事業者の進出があったかと言えば、挙げられるのは苦し紛れの例外や失敗例ばかりでしょう。どれほど東京の人件費が他県以上に上がっても、雇用は東京に集中したのです。

 製造業は、概ねどこでも成り立ちます。だから自治体が莫大な補助金を献上して工場を誘致しても、吸われるだけ吸われて早期に撤退される事例が後を絶ちません。ただ、そうであるからこそ30年ばかり昔の、夢物語ではなく事実として製造業が強かった時代の日本は、東京以外の繁栄が成り立ったとも言えます。製造業は都会であることを必要としないからこそ、地方への展開があり得た、と。

 一方で、より遅く生まれた産業――典型的にはIT産業などは、製造業とは違って地域に縛られる存在です。IT化は地域要因を解消するかと問えば、結果は真逆なのです。IT化が進めば世界とは言わないまでも、日本中どこでも同じように仕事ができるようになるのだと、そうした思いつきを語る人は少なくありません。ところが奇妙なことに、IT系の産業ほど東京に集中しているのが実態ではないでしょうか。

 この理由はともかくとして、新しい産業ほど首都圏に固まっているわけです。地方経済が衰退し、日本全体の人口が減少に向かう中で、東京だけが発展を続けてきたのは、地域に縛られる=地方には移転できない産業の勃興に依るところも大きいと言えます。そこで行政が「日本全国」のためにできることは、果たして何があるのでしょう。東京ばかりが栄えても、日本全国でマイナスなら意味はありませんので。

 昔ながらの「都会に縛られない=移転可能な」産業である製造業へのノスタルジーを持ち続ける人もいますが、それは新興国との「下向きの」競争への道であり、90年代以降の日本が失敗してきた道でもあります。しかしIT産業が特定地域に集中する傾向は、必ずしも日本に限ったことではないようで、これが衰退する地域経済の起爆剤になる可能性は考えにくいところです。そして緩和策としては税金による分配ですが、これに背を向けたがるのが格差拡大を続けた16年でもあったと言えます。まぁ、そうそう都合の良い特効薬などありはしないでしょうけれど、16年前から良い方向に向かっていないのは確かです。

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日韓に見る過去との連続性

2019-08-04 22:09:19 | 政治・国際

 さて韓国との関係が悪化するばかりで、レイシストは自慰の手が休まらないといった状態でしょうか。もっとも日本による「ホワイト国」からの除外は少しばかり意外でもありました。日本の外交政策とは即ち「アメリカ第一主義」の一言に尽きます。アメリカがA国を敵視すれば日本もそれに倣い、アメリカがB国を友好国と見なせば日本もそれに従う、それこそ戦後日本の不変の外交方針であったはずです。ところが今回は、アメリカが危険視したわけでもない国を相手にこの措置ですから、異例の対応とは言えるでしょう。

 建前はさておき実態としては従軍慰安婦問題を巡る報復と見る他ありませんが、この軋轢が拡がる理由としては、昨年にも書いたところです(参考、理解できるところもある)。日本人があまり近現代史を知らないという問題も大きいですが、もう一つ付け加えるなら、日本と韓国の現政権が、過去との連続性をどう考えているか、という要素も大きいのかも知れません。

 即ち日本政府が、大日本帝国との連続性を強く感じている(ゆえに、日帝への批判を自身への非難と受け止めがち)一方で、韓国政府は軍政時代――つまり日韓請求権協定が結ばれた当時の政体と現体制を、必ずしも連続したものとは見なしていないように思われます。軍政を否定して民主化を成し遂げた後の政権としては、軍事独裁政権が国民を無視して決めたことなど、そうそう遵守する気にはなれないのでしょう。

 日本政府にとって旧日本軍への責任追及は、しばしば日本そのものへの攻撃であると見なされます。現代の日本国は自国の軍事政権を倒して成り立ったものではありませんから、それは仕方ないのかも知れません。しかるに韓国は、自国の軍事政権を退場させて民主化を果たした国です。そうなると、過去の軍事政権下の取り決めに、何処まで縛られるべきかという感覚は必然的に出てくるのではと思われます。

 現代において、国際社会における善悪はアメリカが決定します。アメリカの同盟国であれば軍事独裁政権でも侵略国家でも、自由と民主主義の同志であり、国際社会における「ホワイト国」になるわけです。ただし、ホワイト国扱いはアメリカとの関係次第です。例えばイランに侵攻していた当時のフセイン政権はアメリカの支援を受ける側でしたが、状況を勘違いしてクウェートへの侵攻を始めるやいなや、国際社会の敵として扱われるようになった等々。

 韓国もまた、日韓請求権協定が結ばれた当時を含め、結構な最近まで軍事政権による支配が続いていました。民主化を求める人々は過酷な弾圧を受けていたことが今では広く知られています。にも関わらず反共の前線基地としてアメリカの重要なパートナーであったことから、当然ながら西側諸国にとって「ホワイトな」国として扱われ、国際社会の非難を浴びることは少なかったわけです。

 かくして「ホワイトな」軍事政権を相手に日本政府は請求権協定を結びました。その後の履行において韓国軍=政府は必ずしも誠実ではありませんでした。これが現代に至る問題の原因の一つとなっているところもあるはずです。軍政を退けて民主化を果たした人々からすれば、軍部の結んだ協定に縛られる意識は、決して強いものではないでしょう。一方で軍が牛耳る時代との連続性を強く感じている日本政府からすれば、その感情は理解しがたいものに映ると言えます。

 いずれにせよ、アメリカの世界戦略を担う一翼としての立場は日本も韓国も同じですから、その中で日本が独自に韓国への報復措置に走ったことは全くの想定外であったろうと考えられます。アメリカの機嫌さえ損ねなければ、民主化を求める人々を弾圧しても許されてきた、そんな実績もあるわけです。私自身、「日本独自の」判断は予想しませんでした。しかし日本独自の判断ができるのであれば、1965年を振り返って(アメリカの同盟国であろうとも)非民主的な軍事政権との協定が適切だったのかどうかも、考えてみるべきなのかも知れません。

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