非国民通信

ノーモア・コイズミ

そもそも国家検定自体が今一つ……

2015-08-30 11:05:23 | 社会

塾講師を国家検定に 信頼性向上狙い17年にも(朝日新聞)

 塾講師の検定を「国家検定」にする準備が進んでいる。指導力を保証して信頼性を高めたい塾業界と、サービス業の質を上げたい国の思惑が背景にある。2017年にも実現する見込みだが、受検はあくまで希望者のみ。どこまで普及するかは不透明だ。

(中略)

 塾検は、08年に業界独自の検定として始まった。1~3級に分かれ、最もやさしい3級の試験は、担当教科の公立高校入試水準の学力やマナーをみる筆記。1~2級は模擬授業を録画し、協会が選んだベテラン講師らが審査する。受検料は3級が6200円。DVDは模擬授業の解説としてつくられた。

(中略)

 一方、現行の塾検は、受検者数の低迷が課題。最多の2級でも昨年までの7年間で延べ924人、合格者708人にとどまっており、「国のお墨付きがあれば目標にする講師も増えるだろう」と協会は見込む。

 

 塾講師を国家検定に云々とのことで、報道によると「塾業界と~国の思惑が背景にある」そうですが、どこまで本当なのでしょうかね。国の思惑云々は分からないでもありませんけれど、本当に塾業界が望んだことなのかどうか疑問を感じないでもありません。塾業界ではなく現行の「塾検」を運営している団体の思惑の間違いではないかと思われます。この辺、マスコミには突っ込んで取材をして欲しいと感じるところです。

 実際のところ、国の思惑以前に塾業界側が始めた「塾検」が存在しているわけですが、しかるに受検者数の低迷が課題とも伝えられています。「最多の2級でも昨年までの7年間で延べ924人、合格者708人にとどまっており」とのことですから、実際の塾講師サイドからは全く必要とされていない代物と言っても過言ではないでしょう。これを国家認定化することで得をするのは、塾講師でも塾業界ですらない、塾検の運営側ぐらいではないかという気がしてきます。

 まぁ、日本の基礎教育を支える塾業界の質の向上は望ましいことです。公立の小中学校が勉強を教える場所としての機能を果たせているとは言いがたく、勉強は専ら塾で教わった人も多いことでしょう。卒業後とは裏腹に大学までは結構なエリートコースを歩んできた私ですが、塾に通い始めるまでは勉強嫌い、そんなに勉強が得意な子ですらありませんでした。塾がなければ私は大学で勉強したいとすら思わなかったかも知れません。

 しかし、国家検定にすることで塾講師の質は上がるのでしょうか。そもそも私が塾の社会的な必要性を強く感じる背景には、上述の通り学校教師がマトモに勉強を教えることができていないから、です。学校では勉強できない分を補うために塾が必要だと確信しているわけです。ところがろくに授業もできない学校教師もまた国家が公認する免許保有者だったりします。国に認められらた合格者かどうかは、今一つ当てになりません。

 

《213》 ニセ医師を防ぐためには(アピタル)

数年に1人程度のニセ医師を防ぐために、多くのコストをかけるのは得策ではありません。ニセ医師よりもたちの悪い、本物の医師免許証を持った医師はいくらでもいます。こちらのほうを先になんとかしたほうがいいと思います。

 

 日頃はインチキ医療に否定的でも、部外者からの医療批判にはムキになって怒り出す医療従事者は多いので私がとやかく言うと波風が立ちそうですが、まぁ実際のところ本物の医師免許証を持った人でも、酷いのは本当に酷いですよね。「ニセ医師よりもたちの悪い、本物」をなんとかする必要はあると思います。結局、医師免許でも教員免許でも、ダメな人が通過してしまうケースは防げていません。塾講師の検定に国家のお墨付きを与えたところで、塾講師の質を確保できるかは微妙なところでしょう。国家検定の信頼性向上も、少なくとも同時並行で進めていく必要がありそうです。

 

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結果が出れば話は違う

2015-08-26 23:25:04 | 社会

山本耕史 堀北にフラれ続けた6年明かす(デイリースポーツ)

 女優・堀北真希(26)と22日結婚した俳優の山本耕史(38)が24日、フジテレビ系「とくダネ!」の独占インタビューに応じ、初共演時から猛アタックを続けてきたが、6年間フラれ続けていたことを明かした。今年5月に舞台で共演し、毎日約40通の手紙を渡し続け、いきなり「結婚しましょう」とプロポーズしたことなど、結婚秘話を明かした。

(中略)

 12年には堀北がNHKの朝ドラ「梅ちゃん先生」に主演。山本が出演するNHK大河「平清盛」の撮影スタジオはちょうど隣で、毎日、衣装のまま堀北のスタジオに顔を出し、「もう来ないでいいですから」とまで言われたという。

 そして今年。5月上演の舞台「嵐が丘」で恋人役での共演が決定。フラれ続けた6年間を思い、「僕でいいんだろうか」と一瞬、思ったというが、そこはめげない山本。けいこの後半から毎日、40通近い手紙を書いて渡したという。堀北からの返事は、一通もなく、電話番号も教えてもらえなかった。

 迎えた千秋楽。「せめて俺のを教えさせてください」と再び自分の番号を教えると、その夜、やっとLINEで返事が来たという。

 その後、堀北が京都入りすることを聞き、新幹線での“待ち伏せ”を狙い、「勘で新幹線をとった。これで(堀北が)乗っていたら、奇跡というか、運命というか」。東京駅から乗ると、堀北は奇跡的にも品川駅から乗ってきた。山本は「思いのつまった」指輪を堀北に渡し、「交際じゃなくて、『結婚しましょう』と言いました」と、「交際」を飛び越え、いきなり求婚したことを告白。

 

 芸能人の結婚なんてどうでもいい話ですが、そこに至るまでの行為がストーカーじみていると話題を呼んでいるようです。まぁ5月上演の後半からという短期間で40通もの手紙を渡すなんてのは舞台人というのを差し置いてもエキセントリックですし、相手の乗る電車で待ち伏せして云々とまで来れば、事と次第によっては警察沙汰になっても不思議ではないでしょう。最終的には結果オーライなのかも知れませんが、そうならない未来もあったようには思います。

 

しつこいラブレター、41歳男をストーカー容疑で逮捕 「当然だ」「これで逮捕は早すぎる」(J-CAST)

 交際を求める手紙をしつこく手渡そうとしたとして、41歳の無職男が2012年11月24日、ストーカー規制法違反(つきまとい)で逮捕された。

(中略)

 毎日新聞電子版によると、千葉県市川市在住の男は12年10月中旬、自宅近くのコンビニを数回訪れて20代のアルバイト女性店員に「一緒に遊んでほしい」などと交際を求める手紙を2回手渡した。

 この後も店に出向いて再び手紙を渡そうとしたが、女性に受け取りを拒まれた。そこで新たに別の店員に2回、女性宛の手紙を託すなどしたため女性は市川署に相談。男はストーカー規正法違反で逮捕された。

 

 さて、アクセスランキングを見ていますと時に昔のニュースが上がってくることがありまして、たぶん上記引用した代物は冒頭の山本氏との絡みで話題になっているようです。山本氏が渡した手紙は40通、逮捕された41歳氏は僅か2通(5回)ですから、要するに熱意が足りなかったものと思われます。もっと頻繁に手紙を受け取らせ、電車にも乗り合わせようと尾行なり探偵なりしていれば、この男性がアルバイト女性と仲良くなる可能性も、もしかしたらあったのかも知れません。

 中にはストーカー被害の訴えがあったにもかかわらず警察の動きが鈍く取り返しのつかない事態に至ってしまうケースも多々ありますので、上記のような素早い対応ならぬ素早い逮捕に理解を示す人もいるでしょうか。まぁ、単に逮捕しやすい相手だっただけではないか、という気もしないでもありません。被疑者が社会的に立場の強い人であったり、警察を威嚇できるだけの暴力を備えた人であれば、もう少し警察の対応は慎重なものになったはずです。

 明確な拒否があったか云々というのが一つの基準らしいですけれど、冒頭の芸能人達の場合はどうでしょうね。地位を悪用したセクハラの類も少なくない業界のような気もしますが、果たして山本氏と堀北氏の力関係はどうだったのやら。ヨソの業界よりも恣意的に人が選ばれるであろう芸能界においては「断りにくい相手」というのは極めて多いのではないかと推測されます。結果オーライでも、最初の段階では本当に嫌だった、警察ではなく事務所に相談したけれども取り合ってもらえなかった等々、そういうことは普通にあるでしょう。

 最終的に打ち解けて結婚にまで至るとなれば、「最初は嫌だったこと」も美談になります。逮捕された41歳氏でも、逆転ホームランの可能性はあったのかも知れません。しかしゴールにたどり着けなければ、単なるストーカー行為で終わりです。まぁ、純愛もストーカーも紙一重です。容姿や収入云々以前に受け身じゃ絶対モテません。相手を傷つけるのを厭わず“攻撃”できるだけの積極性は必須です。男女ともに未婚率の上がる時代、子供ができたわけでもないのに結婚する人ともなれば、冒頭の山本さんくらいにしつこい人はそんなに珍しくないのかも、という気もしてきます。

 

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改革はいつだって的外れ

2015-08-23 11:10:02 | 雇用・経済

シャープの3200人削減は「的外れ」な再建策だ(東洋経済)

 経営再建中のシャープは8月21日、45~59歳の国内社員を対象に募集していた希望退職が3234人になったと発表した。対象者は9月30日付で退職する見通しだ。

(中略)

 もちろん、外注比率の違いなどによっても影響を受けるので、あくまでも概算になるが、じつは直近決算においてシャープの従業員1人当たりの売上高は、パナソニックやNECよりも1.5倍ほど多い。

(中略)

 1人当たりの平均年間給与は、比較した4社の中でシャープが最も低い額だし、売上高に占める人件費の割合で比較しても、パナソニックやNECを大幅に下回っている。少なくともシャープは飛び抜けて余剰人員を抱えている会社に見えない。シャープの経営不振の根本原因が過剰な人件費にあり、だから約13%もの人を何が何でも削減しなければならないという理屈には、やや無理があるのだ。

 

 他国はいざ知らず日本の場合「リストラは最初の手段」と言いますか、経営再建ともなると真っ先に削減対象にされるのが人件費なわけです。とにかく人員を減らす、給与をカットしていくことを投資家や評論家は当然視し、それを経営者も鵜呑みにしてきたものですけれど、しかるにこうした日本的経営の常識が導いた結果として日本経済の不振があるのではないでしょうか。とにかく人を減らす、労働への対価を切り詰めるといった日本的な改革の誤りを、権限を持った人々は自覚する必要があるように思います。

 アメリカでは差別的な理由での解雇には非常に厳しいと聞きますが、そうした制限のない日本では特定の年齢層を狙い撃ちにした退職の強要が普通に行われてもいます。著作権のように国際的な枠組み作りの上で統一されるべきと信じられているものもあれば、法人税率のように通貨統合まで果たした強固な連合の中ですら各国の自由に任されている代物もありますが、解雇規制や差別への向き合い方に関しては、果たしてどうなのでしょうね。日本では当たり前な年齢を理由にした差別の自由は守られるのやら。

 それはさておき、どうにも自分は「仕事ができるようになってくると評価が下がる」わけです。色々な職場を転々としてきましたが、それはどの会社でも変わりませんでした。なぜ仕事ができるようになってくると、周りからの評価が急速に悪化するのか――端的に言えば、他人の仕事の中身を理解できている人なんて滅多にいないから、なのかも知れません。仕事ができない内は、何事も四苦八苦して時間外にも必死で対応しなければならない、そうなると「頑張っているな」と評価される、しかし汗一つ書かず時間内に作業を終わらせてしまおうものなら、「あいつは真面目に働いていない、楽をしている」と思われるものなのでしょう。

 事件が発生してから、その犯人を検挙すれば大手柄です。しかし、事件の発生を未然に防いだ場合、それは事件を防いだ本人だけが知りうる功績です。他人から見れば、何もしていないのと同じです。会社の評価はそういうもの、小さなトラブルも大仰に騒ぎ立てて、問題の所在を周囲に知らしめてから解決すれば、それは活躍として認められます。一方、トラブルの芽を事前に摘み取ってしまえば、それは他人すなわち上司や同僚から見れば何もしていないのと同じことです。仕事ができるようになって問題発生を事前に抑止できるようになると、「ちゃんと仕事をしてる!?」と詰問される、どこの職場でも経験したことです。

 会社から必要とされる、あるいはリストラの標的とされる人の基準も、そういうものなのではないかと思います。会社が不要と判断した人々は実のところ着実に組織を支えてきた人々で、逆に会社が中核的人材と評価した人々は単に自分の働きぶりをアピールすることにばかり頑張っているだけの、むしろ存在自体が有害な人々だったりするのではないでしょうか。東芝の水増し会計だって、会社から疎まれる不良社員が起こしたことではなく、数多の従業員の中から選りすぐられた人々が犯した不正です。会社の評価の高低と組織への貢献度は必ずしも一致しません。不要な人員を整理したはずの会社が業績を悪化させていくのも、たぶんそうした理由によるものでしょう。シャープも人員削減で一時的に会計の数値を良く見せることはできるかも知れませんが、この先に展望があるとは思えませんね。

 

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終わらせるのは続けるよりも難しい

2015-08-19 23:34:59 | 文芸欄

 この頃は本を買っても置く場所がないと言いますか、本棚を買う金はあっても本棚を無理なく増設できる広い部屋を借りる金はないので電子書籍で買えるものは電子書籍の方を選んでいるわけです。まぁ時に不便を感じつつも徐々に電子書籍メインになりつつあったりします。とはいえ世間の電子書籍の伸びは必ずしも大きくない、というより書籍というビジネスモデル自体が黄信号なので電子書籍が今後どれだけ広まっていくかについては懐疑的なところもないでもありません。

 それはさておき、とりわけ場所を取るマンガ本を電子書籍販売サイトで漁っておりましたら、あるマンガの売り文句に「連載開始から十周年」などと書いてありまして、色々と感慨深いものを感じました。10年以上の長きにわたって連載を続けているマンガは珍しくありませんがしかし10年以上もの連載期間を最初から現在に至るまで追いかけ続けている読者は、果たしてどれだけいるのでしょうね。少年少女の頃はマンガ好きでも、学校と同じでマンガも「卒業」してしまう大人は少なくないはずです。10年も同じタイトルで連載を続けていれば、初期のファンなんて大半は失せてしまっているのではないかな、と。

 会社の寿命は30年、なんて俗説もあります。現実には3年と保たない会社もあれば30年など遙かに超えて長く存続している会社もあるだけに、実態に近い表現に改めれば「事業の寿命は30年」くらいでしょうか。トヨタだって創業当初から車を作っていたわけではありません。富士フイルムの現在の主力製品は写真用のフィルムではありません。そして富士フイルムのライバルであったコダックは破綻してしまいました。私が昔バイトしていた家電量販店(当時)は倒産しそうになりましたが、中国人観光客向けの土産物店に業態を変えて随分と盛り返していたりします。まぁ、会社に寿命があるとは限りませんが、事業には寿命がある、変えていかねば生き延びられないものなのかも知れません。

 ……で、マンガの場合はどうなのかな、と思ったわけです。ある古株マンガ家が、今時のマンガ家志望の若者はキャラの設定を考えるばかりでストーリーを作れない云々と嘆いていたのを聞いたことがあります。でもまぁ、今時の編集部の要求に応えるには、それで正しいのではないかという気がしますね。元からできあがったストーリーでマンガを書けば、連載できる期間もストーリーに左右されてしまうものです。しかし「人気がある間は連載を続ける」という編集方針に合わせるためには、変にストーリーを練るよりもキャラ設定だけで話を作った方がやりやすいでしょう。

 一方で、それ故に「無駄な引き延ばし」と感じる展開を見るのは人気漫画の常となっているわけです。緻密に校正されたストーリーに基づいて話が進んでいくよりも、「人気がある間は連載を続ける」ためにダラダラと無駄に話が引き延ばされていく、そんなパターンが普通になってしまっているよなぁ、と。引き延ばしを止めて本気で話を作っていけば、もっと面白いマンガができあがるのではないかと、そう惜しまれることもあったりします。しかし、それをやってしまえば遠からず話が完結してしまう、人気があるのに連載が終わるという、編集サイドからすれば許容できない未来が待っているのでしょう。マンガ家からしても下手に新作へ乗り出して失敗するよりは……みたいなところもありそうですが、マンガ家あるいは連載作品の寿命はどれほどのものなのやら。

 

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男も女も大した違いはない

2015-08-16 11:13:21 | 雇用・経済

「職場にイケメンが必要」と回答した女性会社員は83.7%(マイナビニュース)

ESSPRIDEはこのほど、「ビジネスにおけるイケメンの効果とは?」をテーマとした調査を実施し結果を発表した。調査は7月24日~29日、全国の20~49歳で勤務先に自慢のイケメンがいる女性会社員600名(各年代200名)を対象に、インターネットで行われた。

調査ではまず、どのような点が「イケメン」だと思うか尋ねたところ、「顔がかっこいい(79.8%)」がダントツの1位に。次いで「笑顔が素敵である(42.7%)」と続き、顔に関する項目に票が集まる結果となった。そのほか年代別で見ると、外見以外の要素として、20代は「仕事ができる」、30代は「清潔感がある」、40代は「礼儀正しい」男性も、それぞれイケメンの要素としていることがわかった。

 

 なにやら結構な話題を呼んだ記事のようですが、別に驚くようなものではないという気もしますね。どこかのテレビ番組の企画で、本物の大学生と正体を隠したモデルを混ぜて企業の人事担当者に模擬面接を受けさせてみたところ、「採用」に選ばれたのは軒並みモデルさんばかりだった、なんてこともありました。企業の人事権を握っているような人だって、実務能力なんかよりも容姿で人を選んでいる疑いは拭えません。人は見た目が9割だのメラビアンの法則だのは科学的には全く根拠のないことですが、日本の会社とはそういう類が本物として教え込まれている世界でもあります。ここでのアンケート対象者になった女性陣が「職場にイケメンが必要」と回答したのもまた、我が国の企業文化からすれば至って自然なことでしょう。

 

また、「てきぱきと仕事をこなすところ」(24歳)、「仕事の指示が的確で、ミスっても怒らずフォローしてくれる」(26歳)、「私が、期限が迫っている仕事が多くて大変だった時に、何も言わずに手伝ってくれた」(34歳)など、仕事ぶりにドキッとしたエピソードや、「挨拶をする際とても元気がよく笑顔でさわやか。どんな人に対しても分け隔てなく応ずる」(25歳)、「あまり会う機会がなく覚えてくれているはずないと思っていたら、休日に偶然会った時に素敵な笑顔で挨拶してくれた」(41歳)、「お手伝いをしたことに対してお礼をきちんと言ってくれる」(32歳)、「かっこいいのに気取らない。誰に対しても優しい」(32歳)と、人付き合いが上手なことなどが挙がった。

 

 なお「イケメン」だと思った瞬間についての回答の中には、上のようなものもありました。「どんな人に対しても分け隔てなく応ずる」とか「誰に対しても優しい」とか、そういう要素はいかがでしょうか。イギリスでは「性別が女性でありさえすれば」等しくレディーとして接するのが紳士だという話を聞いたことがあります。目の前の女性がレディーかどうかを忖度するような行為ほど非紳士的なものはありません。イケメンの条件も然り、ですね。まぁ、相手の容姿で態度を変えるのもまた「割れ鍋に綴じ蓋」と言うことで釣り合いは取れるのかも知れませんが。

 

続いて、会社にイケメンがいることで、社内にどのような影響があるか調べたところ、約半数が「仕事へのモチベーションが上がる(49.8%)」と回答した。次いで「社内のコミュニケーションが活発になる(21.2%)」と続き、イケメンは社内を活気づける存在となっていることがわかった。

 

 そしてイケメンがいるとモチベーションが上がるとの回答云々が伝えられています。「女性社員の」モチベーションが上がると言うことですかね。「女性社員の勤務態度が浮つく」とか「男性社員の嫉妬が生まれる」など対象を明確にしたものもある一方で、他の回答は「誰に」影響があるのか不明確なものばかりです。例えば上記図表の上から3つめ「他の社員も外見に気をつかうようになる」とは、果たして男性社員を指しているのか、女性社員を指しているのか、それとも両方なのか――

 以前に、女性が電車の中で化粧をする理由として「あなたがイケメンではないから」と書いたことがあります。目の前のあなたが女性にから見て「どうでもいい存在」だからこそ遠慮無く化粧を続けられるのであって、もしあなたがイケメンであったのなら、目の前の女性は多少なりとも居住まいを正すものだろう、と。職場にイケメンがいた方が、女性社員が外見に気を使うようになる、居住まいを正すこともあるのでしょう。それはたぶん、男性側にも悪いことではないはずです、きっと。

 「世界で通用する人材」云々と語られることも多いですが、逆に「日本で通用する人材」の方だって理解されるべきものと思います。世界で求められるものと、日本の会社が求めているものは異なりますから。日本の会社は職種を問わずコミュニケーション能力を求める、使うか使わないかを考慮せず英会話能力を求める、学んだ中身は問わずとも出身大学のネームバリューは求める等々、仕事で使う能力以外に問われるものは多い、日本で通用する人材になるのは、世界で通用する人材になるのに負けず劣らず大変です。そして日本で通用する人材になるためには、容姿を磨く努力もまた欠かせない、のかも知れません。

 

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今なお恨みの種は蒔かれている

2015-08-12 23:08:14 | 雇用・経済

中国人実習生が急減、日本の製造業や建築業で人材不足 破産に追い込まれる企業も(FOCUS-ASIA)

外国人技能実習制度で訪日し、日本に滞在する中国人実習生が2008年の15万1094人から14年には10万5382人と、約3分の2に急減したことが、法務省がこのほど発表した統計で分かった。劣悪な条件に加え、賃金水準が低いことなどが影響しているという。実習生が減ったことで人手不足になった日本企業が破産に追い込まれるケースも出てきた。日本新華僑報網の報道として、中国新聞網が3日伝えた。

報道によれば、長野県のあるプラスチック加工工場で働く中国人実習生は、6人が古い平屋に住み、月に残業を含め340時間も働いている。残業代は時給わずか550円で、長野県の最低賃金基準である時給728円よりはるかに安い。

こうした厳しい状況に耐えられなくなった中国人実習生が続々と日本を離れて帰国するなどし、特に日本の製造業、建築業、介護・看護の現場などで労働力不足が深刻になっている。地方都市では破産する企業も出てきているという。

 

 単純労働者としての外国人受け入れを求める財界筋の思惑の一方、中国からの実習生は大きく減少していることが伝えられています。中国側にも「親日派」がいて、同国人を日本に売り渡して私腹を肥やそうとする動きは続いているのでしょうけれど、その反面で日本の実態を知って敬遠する人も増えたのかも知れません。曲がりなりにも経済成長によって所得水準が向上してきた中国人にとって、上がり目の見えない日本の給与など今となってはそれほど魅力的に見えなくなっていることもあると思います。日本で強制労働に従事してくれる中国人が増えることは、もうないでしょう。

 なお「実習生が減ったことで人手不足になった日本企業が破産に追い込まれるケースも出てきた」とのこと。それはその通りなのですが、建前といえども「実習生(研修生)」なわけです。あくまで技能を教える、伝える、それを本国に持ち帰ってもらうのが制度の看板で、これを「安い労働力」としてカウントすることはあってはならない、あったとすればそれは「違法」と言えます。「外国人実習生が不足して人手不足に陥る」とは、実習生を(最低賃金以下の給与で)労働力として使役していることを意味するものです。労働に関する法律違反は取り締まられないのが日本社会の常ではありますけれど……

 

「日本の印象良かった」97%→来日後58%に激減 ベトナム人技能実習生調査 龍谷大(産経新聞)

 技能実習に来て日本の印象が悪化-。外国人技能実習制度に参加するベトナム人を対象にしたアンケートで、こんな結果が出た。劣悪な生活環境や低賃金労働などが背景とみられ、調査した龍谷大(本部・京都市)のベトナム人留学生、グエン・ヒュー・クィーさん(27)は「多くが日本に悪い印象を持ったまま帰国しており、両国関係に深刻な影響を与えている」と指摘している。

 アンケートは平成26年10~11月、ベトナム人実習生100人以上にメールなどで依頼し、38人から回答を得た。その結果、97%(37人)が来日前の日本の印象を「とても良かった」または「まあまあ良かった」と回答したが、来日後の印象では58%(22人)と、約40ポイント減少。来日前は一人も選ばなかった「印象はあまり良くない」は37%(14人)に上った。

 自由記述では「給料が安い」「単純作業ばかりで帰国後の就職に役立たない」など待遇や労働内容への意見のほか、「自由がない」「狭い部屋に大人数で住まわされる」といった生活環境の不満もあった。

 また、実習生の多くが「アンケートへの協力が受け入れ先に知られれば報復されかねない」と回答を断ってきたという。

 

 なお減少する中国からの実習生とは裏腹に、ベトナム出身者が急増しているのだそうです。26年末時点でベトナム人の実習生は約16万7千人とのこと、そのベトナム人を対象にしたアンケート結果が上記引用です。わざわざ来日する人の多くは日本に格段の好印象を抱いていたはずですが、帰国時点では「印象はあまり良くない」と回答する人が増えています。それ以前に「アンケートへの協力が受け入れ先に知られれば報復されかねない」と回答を断る人も多かったとか。これも将来の禍根に繋がる、数十年後には日本が謝罪なり賠償なりを求められる一因となることでしょう。

 日本の商社の中には中国でウナギの稚魚を取り尽くし、資源が枯渇すればまた新たな漁場を求めて別の国に目を向けるところもあります。技能実習生の扱いも、日本にとってはそういうものなのかも知れません。中国人が日本を敬遠するようになれば、また新たな「安価な労働力」を求めて他の国の人的資源を略奪しようとする、今はベトナムが新たな漁場になっているだけで、将来的には別のより貧しい国に目が向けられることもありそうです。しかしそれは、相手国に日本への恨み辛みを植え付けるだけのことでしかありません。最低賃金あるいはそれ以下の低賃金で人を酷使することでしか経営の成り立たない、そんな事業者を延命させてやることは日本側にとっても不幸なことでしかないのですが、まぁ大企業には批判的な風でも「弱い企業」には優しい人が多いですからねぇ……

 

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虚偽記載の許される領分

2015-08-09 11:26:43 | 雇用・経済

労働条件:トラック運転手、求人票と違い提訴(毎日新聞)

 運送会社「スワロートラック」(東京都江戸川区)の運転手、佐々木和義さん(43)=東京都あきる野市=が、ハローワークの求人票に記された労働条件と実際の労働条件が違ったとして、同社に不払いの残業代など205万円の支払いを求め東京地裁に提訴した。求人票の労働条件と実際の労働条件の違いについては、厚生労働省も対策に取り組んでいるが、提訴は珍しい。

 訴状などによると、佐々木さんは2014年10月、「基本給28万〜35万円、時間外労働月30時間」などと書かれた同社の求人票をハローワークで見て応募、採用された。

 だが実際の契約では、基本給は地域の最低賃金を基にし、残業代は定額支払いとされた。佐々木さんは「詳しい説明がないままサインした。求人票での契約が成立している」と主張。実際の残業は月30時間を超え、求人票の労働条件で残業代などを計算すると、これまで働いた8カ月間で200万円を超える不払いがあったとして請求した。スワロートラックは「訴状の内容を承知しておらず、コメントできない」と話している。【東海林智】

 

 親告罪とか非親告罪云々とは著作権法周りで語られることが多いですが、日本における最も典型的な親告罪は、労働をめぐる代物ではないかという気がしてなりません。労働基準法や労働契約法に違反しても、それで警察が動き出して加害者を逮捕したりするようなことはないわけです。雇用/労働関係の法律はあくまで親告罪、被害者の訴えがあって初めて違反が取り沙汰されるのが実情ではないでしょうか。虚偽の求人広告で応募者を騙しても、残業代の不払いを重ねても、正当な事由なく解雇しても、それは被害者が法廷に訴え出ない限りは雇用主の思うがまま、それが日本ですから。

 結局のところ日本では、個人的に戦うしか自分の身を守るしかありません。社外の労組に加入したり、裁判を起こしたり等々、とにかくまぁ第三者による取り締まりに一切の期待が持てない以上は、「戦うしかない」のです。報道によれば「厚生労働省も対策に取り組んでいる」とのことですけれど、どこまで本当でしょうか? 本気で取り組むのなら、せめて消費者を守るのと同程度には労働者を守ろうとする姿勢の一つも見せて欲しいと思います。

 「不当景品類及び不当表示防止法」は、それまでの法律で対応できなかった類を規制するために作られたそうです。法律では、実際よりも優良あるいは有利であると誤認させる広告は禁止されています。ただし求人広告は例外とする――というのが法律の運用なのかも知れません。実際よりも好待遇、高賃金であると誤認させる不当な広告はハローワークに行けば無尽蔵に見ることができますが、こうした不正の温床に措置命令などが出たことは、そして命令違反の事業者を罰したことはあるのでしょうか。

 過去には特定商取引法違反(不実の告知)罪で有罪判決の出た会社の求人をハローワークが出していたなんてこともありました。ハローワークの紹介で就職した人までも有罪判決を受けるに至ったわけですが(参考、ハローワークの利用は避けることを奨めたい)、不法行為の仲介役であり共犯や幇助の罪に問われるべきハローワーク側に何の処分も下されていないのは、これまた厚生労働省側の姿勢を端的に示していると言えます。罪状が「不実の告知」であるならば、まず真っ先に罪に問われるべきはハローワークで紹介された職場で働いていた人よりも、もっと別の人間では?

 なにはともあれ、慣例として求人広告には虚偽の記載が許され、それがハローワークという公的機関によっても認められているわけです。景品表示法が求人広告に適用されないのなら、何か別の新たな法律による規制が必要でしょう。景品表示法は単に消費者を守るだけではなく「公正な競争を確保する」という意図もあるようですが、そうした精神は求人広告に場合にも認められて然るべきです。虚偽の広告が許されれば当然ながら公正な競争は阻害されます。競争大好きな日本なのですから、人材獲得競争において不正な広告で他社よりも優位に立とうとする、そうした不正を排除する取り組みの一つも必要なと言えます。

 

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自衛隊にだけ許されること

2015-08-05 23:45:11 | 政治・国際

予備自衛官採用の企業優遇=防衛省発注工事で(時事通信)

 防衛省は、地方防衛局が発注する工事に関し、予備自衛官を雇用した建設会社を優遇する落札方式を導入した。自衛隊を退職した予備自衛官は、災害など緊急時に自衛隊の応援要員となるが、定員割れが問題となっている。自衛隊OBの再就職を後押しすることで予備自衛官の充足率を高める狙いがある。

 対象になるのは、駐屯地や演習場などの予定価格6億円未満の建設工事で、具体的には体育館や事務庁舎の整備が想定される。駐屯地などの事情に精通した予備自衛官を配置することで、工事の品質向上が図れる利点がある。 

 防衛省は当初、昨年9月にも新方式で発注する方針だった。しかし、財務省などから入札の公平性を確保するよう求められ、制度の基準に、企業の信頼性や社会性を新たに追加。工事現場に配置された予備自衛官が作業に直接従事することや、配置日数が30日以上などの条件を満たした応札企業には加点することにした。

 さらに、工事を実施する駐屯地の勤務経験者は2点、同じ都道府県で勤務経験があれば1点、隣接県なら0.5点と、配点にも差をつけた。こうした修正により、関係省庁の了承を取り付け、7月からの運用開始に至った。

 予備自衛官は、年間最大20日間の訓練を受ける義務がある。仕事と訓練の両立が難しいため、2014年度末時点で3万2396人と、定員4万7900人を大きく下回っている。(2015/08/01-16:23)

 

 官公庁OBの再就職先の企業や団体が公共事業を請け負っているケースは多々ありまして、その辺は癒着云々と批判されてきたわけです。多少の後ろめたさもあるのでしょうか、表向きは発注側も受注側も公明正大を装いOBの就職実績を考慮したなどとは決して口にされないものですけれど、自衛隊の場合は随分と堂々としていますね。公務員でありながら例外的に誹謗中傷の標的にされない自衛隊であるからこそ可能な決定なのかも知れません。

 まぁ、官公庁側にとってはともかく営利組織である民間企業にとって、コネは金を出す価値があります。社内ではろくに働かない人であろうとも、官公庁という優良顧客とのパイプ役になってくれるのであれば、それは新卒の社員なんかよりもずっと高い給料を出す価値があると判断されるのです。とかく給与を受け取る天下りOBの側ばかりが非難されるところですが、良くも悪くもそれは雇用側が「金を出す価値がある」と考えた結果であり、批判されるなら天下りを受け入れる側もまた、と思わないでもありませんね。

 ともあれ、自衛隊OBを受け入れることで「公式に」防衛省発注の事業を受注する上で有利になることが決まったわけです。どうせならヨソの省庁でも導入すれば、ある意味でフェアなのではないかと思ったりしますが――まぁ自衛隊だからこそ許されるものがあるのでしょう。同じ公務員でも政治家から公衆の面前で面罵されるのが当たり前の立場もあれば、逆に感謝されるのが当たり前の自衛隊、なんとも格差を感じる話です。

 そうは言っても、自衛隊好きの人々によって自衛隊の仕事は次々と増やされるであろうことが予測されるわけで、普通に生活のために働いている自衛隊員であれば「割に合わない」と感じる場面はこれから増えていくでしょうか。私が自衛隊員であったなら、あんまり仕事は増やして欲しくない、自衛隊の活動領域を増やして欲しくないと思うところです。どれほど世論が自衛隊に好意的であろうとも、受け取る給与は特別と言えるほどではありませんしね。

 なお予備自衛官は「仕事と訓練の両立が難しいため」との理由から定員割れであることが伝えられています。その解決策として、OBのいる会社に優先的に発注するという落札方式が導入されることになったようですが、どうしたものでしょう。この辺は日本的な労働環境、正規に就職したら会社のために何もかも拘束されるのが当たり前の雇用事情に踏み込んで欲しいところです。「仕事と○○の両立が難しいため」というのは、なにも予備自衛官に限ったことではありません。子育てでも何らかの夢を追う類でもそうですし、政治活動でも同様です。もうちょっと、正規に就職していても別の生き方ができる社会であって欲しいと思います。

 しかしまぁ、「自衛隊の応援要員」が定員割れとなれば、いざ人員が必要になったときにはどうするのでしょうか。自衛隊の活動範囲を広げれば、何かが起こったときに本職の自衛官は海外展開中で人手が足りない、という事態に陥る可能性は増えていくものと予測されます。新人研修として社員を自衛隊に体験入隊させる会社も多いですが、現役の自衛官、予備自衛官に続く「丙種」自衛官としての役割を期待される民間人が出てきても、それくらいは不思議ではありません。既に民間の船員を予備自衛官として徴用するなんてプランも防衛省にはあるようですし(参考、否定できる根拠はない)。

 

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一票の格差是正論議に見る格差への視点

2015-08-02 10:53:04 | 政治・国際

参院選改革「仲間が生き延びるようにした」自民・溝手氏(朝日新聞)

 自民党の溝手顕正参院議員会長は30日、二つの「合区」の導入などで定数を「10増10減」する参院選挙制度改革について、「自民党にとって、我々の仲間にとってどれだけ損をするんだろうか、得をするんだろうか。表に出して言うべき言葉ではないかもしれないが。私の頭に絶えずあったことは事実だ」と述べた。

 自民党岸田派の会合で語った。一票の格差の是正より、自民党議員の損得を考慮したと受け取れる発言だ。

 自民は当初、合区に慎重で、連立を組む公明党や民主党などが共同提出した「10合区」案を受け入れなかった。溝手氏は30日の会合で、今回の選挙制度改革について「できるだけ仲間が生き延びることができるようにするのも一つの責任だと思い、対処してきた」とも語った。

 

 民間企業では「出世する力」を持った人が高い地位を得るものですが、政治家の場合はどうでしょうか。現代の政治家の場合は「票を集める力」が何よりも大事なようですね。実務能力が低くとも昇進を重ねる人がいるのと同じで、政策立案能力や良識に欠けていても、当選する能力さえ高ければ議員としての立場は自ずから強くなっていくわけです。目の前の仕事を片付けるよりも上長にアピールする努力を欠かさなかった人が出世していくように、政策よりも議席を増やすことを考えている政治家の方が党の要職に近いのだと感じます。

 それはさておき、上記引用は当然ながら問題発言で、安倍内閣のガバナンスが問われるところでもあります。そうは言っても「一票の格差の是正より、自民党議員の損得を考慮」云々との朝日新聞の報道姿勢もどうしたものかと思わないでもありません。一票の格差が生まれる背景としては、有権者が減少を続けていく選挙区と、有権者が増加していく選挙区が挙げられます。要するに、人が減って過疎化が進む地域と、人口の流入が続く都市部があるわけですね。ここで議席数が据え置きのままだと、当然ながら一票の格差が拡大する、と。

 しかし人が減っていく弱い地域と、人が増えていく強い地域、両者の間で是正されるべき格差とは何なのでしょうか? とかく「一票の格差」ばかりが問題視されがちですけれど、それは私には票の重み「以外」の格差への鈍感さと感じられます。そして人口が減少していく弱い地域の議席数を減らす、地方の代弁者を国会に送り込む機会を減らしていくこと、逆に強い地域の議席を増やしていくことは、当然ながら票の重み「以外」の格差を広げようとするものです。「一票の格差」を是正せよと叫ぶ人々が呼びかけているのは、果たして一票の価値が重い地域の人々でしょうか、それとも一票の価値が軽い地域の人々でしょうか? それは弱い地域の人々でしょうか、あるいは強い地域の人々でしょうか?

 今回の10増10減は、自民党に不利と目されています。議席を減らされるのは自民党が強い選挙区で、逆に増やされるのは野党がそれなりに対抗できる選挙区である、と。しかしまぁ、議席が減らされる選挙区とは上述の通り、過疎化の進む弱い地域です。人口の減少が止まらない貧しい選挙区で支持を受ける政党と、人口が増えていく強い選挙区で浸透している政党、「弱者寄り」なのはどちらの党なのでしょう。議席を減らされるのは、有権者が減った選挙区、衰退している地域です。そうした地域で有権者の支持を集められないことに、自民党以外の野党支持層は内心でどう思っているのか、興味深いところです。まぁ、地方切り捨てで都市型政党を追求するというのなら筋は通ります。

 

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