非国民通信

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デマに媚びるな

2010-05-11 22:53:37 | ニュース

枝野刷新相「対応間違った」 在日外国人への子ども手当(朝日新聞)

 枝野幸男・行政刷新相は9日、さいたま市で講演し、海外に子どもがいる在日外国人が、子ども手当の支給対象となることについて「率直に言って対応を間違った。国民に不信を招く結果になったことを謙虚に反省すべきだと思う」と語り、制度設計に問題があったとの認識を示した。

 子ども手当をめぐっては、兵庫県尼崎市に住む韓国人男性が、海外にいる554人と養子縁組しているとして、総額約8600万円の手当を申請した例があり、国会でも制度の問題点が取り上げられていた。枝野氏は講演後、記者団に「日本とかかわりなく外国に住んでいる方、日本国籍がなく外国に住んでいる方が支給対象になるのは、国民感情として理解が得られない。批判を受けない制度に変えたい」と述べた。

 外国人への支給については、厚生労働省が来年度以降、支給要件を見直す方向で作業を進めている。

枝野氏「母国の子は支給対象外」(産経新聞)

 枝野氏は「日本と直接かかわりなく日本国籍でもなく外国に住んでいる方が支給の対象になるのは国民感情として理解が得られない」と指摘。「従来の児童手当のシステムをそのまま借りた中で、国民に不信を招いた結果になったことは謙虚に反省していくべきだ」と述べた。

 話題になった新制度の陰で、ひっそりと姿を消してゆく制度もあります。新制度が大きな注目を集める一方で、旧制度の方はロクに意識されたこともない地味な代物だったりもしますよね。たとえば消費税の前には「物品税」というものがありました。こちらは品目に応じて課せられる間接税でして、贅沢品には高率の課税で生活必需品には0か低率の課税がなされる、まぁ現在のヨーロッパにおける消費税の小規模バージョンみたいなものだったわけです。消費税に固執している人、とりわけ軽減税率を設けない一律の消費税増税に固執している人が幅を利かせる昨今ですが、物品税のことは完全に忘れられています。

 そこで今回の子ども手当ですが、これに先だって「児童手当」というものがあったわけです。子ども手当は抜群の認知度を誇り全国的な論議の的ともなっていますけれど、では「児童手当」の方はどうなのでしょうか。自分自身は元より友人や親類にも児童手当受給対象者がいなかったせいか、私もあまり意識することのなかった「児童手当」ですが、皆様はいかがでしょう?

 枝野氏が語るように、子ども手当は「従来の児童手当のシステムをそのまま借りた」ものでもあります。ならば公約は「児童手当の支給額を大幅に引き上げます、支給要件から所得制限を外します」みたいなものでも実質は変わらなかったはずですが、そこに「子ども手当」という新名称を持ってきたのは、選挙を前に「新しさ」をアピールする必要性もあったからでしょうか。おかげで今まで注目を浴びることの少なかった児童手当が、子ども手当となることで飛躍的に脚光を浴びることになりました。しかるに注目度が高まったが故に批判や不信を招いてもいるわけで、その辺への回答が引用した枝野発言になるようです。

 児童手当もまた、日本国籍を保有していなくとも受給できるようになっていました。つまり、子ども手当を巡って起こりうることは、児童手当でも当然ながら起こりうるものであり、逆に児童手当の運用を続けてきた中で発生しなかった問題は、子ども手当に関しても発生しないであろうと考るべきでしょう。海外にいる数百名の養子分の児童手当を支給するなどということはなかった、ならば今後も同様です。現に子ども手当を海外にいる数百名の養子分の子ども手当もまた支給はされていないのですから。

 ところが、「従来の児童手当のシステムをそのまま借りた」ものであるにもかかわらず、子ども手当が新設されれば「海外で数百名と養子縁組した外国人が子ども手当を受給する」と言い出す人が現れるようになりました。だったら児童手当の段階で同様のことを言い出しても良さそうなものですが、たぶん児童手当のことなど知らない人たちだったのでしょう。要は児童手当を知らないけれど、「子ども手当」の噂を聞いて妄想をたくましくした人が出てきたのですね。

 で、その手の人々はついに幻覚を見ます。ある日、部屋の中で妄想に耽っている最中、「アジア人が590人分の子ども手当を申請する」姿が頭に浮かびました。そんな妄想がネットの書き込みを通じて世に広まり、「海外で数百名と養子縁組した外国人が子ども手当を受給する」ことが可能であるという誤ったイメージが流布されたわけです。たぶん、兵庫県尼崎市に住む韓国人男性氏は、そうしたデマに騙されたのでしょう。間抜けな話です(そもそもこのデマが広まらなければ、本気でこんな申請を思いつく外国人などいなかったでしょう。だいたい日本人だって同様の申請は可能なのですが、それは問題視しないのでしょうか? ネット世論も枝野もその辺を無視しているようですが)。

 もちろん、子ども手当の申請は却下されました。何の問題もありません。そもそもこのような問題が起こりうるなら、すでに児童手当で発生していなければおかしいですよね。しかし、今になって問題視し始める人もいるわけです。そうした声に応えて厚労省は支給要件を見直す方向で作業を進め、枝野は「率直に言って対応を間違った。国民に不信を招く結果になった」と語っています。しかし、事実ではなく妄想に基づく問題視に応えて制度を変えようというのはどうなのでしょう? それもまた民意には違いありませんが、単に国民の「好き嫌い」に合わせて右往左往しているだけとも言えます。「そんな与太につきあう暇はない」と一蹴するのもまた筋の通し方ではないでしょうか。ちょっと盛り上がったからと言ってネット上のデマやコピペに迎合して政策を違えるようでは良識が疑われるところです。厚労省の変更方針を決めた責任者(長妻?)、そして枝野には田中康夫や川田龍平(両者ともネット世論に阿る形で国籍法改正に反対を表明)と同じ匂いを感じますね。

 

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6 コメント

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Unknown (マニ)
2010-05-12 11:02:26
実際に支給拒否されたのでデマと言えばデマなんでしょうが、その拒否に法的根拠はないわけで。こういう法律の恣意的な運用を許してはいかんと思うのです。

児童手当の時からあった問題とは言え、そして恐らく民主憎し、外国人憎しの発想からクローズアップされた問題とは言え、穴を指摘されながら修正しなかったのですから、今からでも修正するのは良いことだと思います。
ただ、見直しの方向は気になるところです。「民意」によって変な方向に見直されて欲しくはないんですが。
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Unknown (非国民通信管理人)
2010-05-12 12:50:43
>マニさん

 法的根拠のない拒否だったのですか? 生活保護の水際作戦のように、法律知識のある人間が同行すれば受理されるようなものならともかく、問題の申請の拒否が違法であるとして裁判に訴えたところで、受付されるかすら危ういものに見えるのですが。
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Unknown (Bill McCreary)
2010-05-12 20:15:49
>だいたい日本人だって同様の申請は可能なのですが、それは問題視しないのでしょうか? 

ほんとそうなんですよね。別に日本人だって同じなんですから。そういうのを「外国人」と強調する日本て、なにをいまさらながら呆れた差別大国です。

>問題の申請の拒否が違法であるとして裁判に訴えたところで、受付されるかすら危ういものに見えるのですが。

こんなことを行政訴訟にしたところで、代理人になる弁護士すら見つけにくいでしょうね。
返信する
Unknown (非国民通信管理人)
2010-05-12 23:07:21
>Bill McCrearyさん

 日本人だって養子を採ってくることは可能なのに、「外国人」の場合だけが問題視される辺り、根底にレイシズムがあることは見え見えですよね。そうしたレイシズムに基づく非難や不振は毅然として撥ね付けてほしいところですが、レイシズムに合わせて制度をいじると約束してしまう、これではレイシズムを容認しているのと同じことだと思うのですが、何とも困ったものです。
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Unknown (BR-S)
2010-05-13 10:28:50
私も、本当の所は順序が逆で、ネットのデマ(「高津市役所」とか)を真に受けた結果なんじゃなかろうか、と思っていたんですよ
当の韓国人は「おかしいなぁ、なんで申請が通らないのかなぁ」と言ってたそうですから…
たまたま、配偶者がタイ人だったからという偶然の産物以上の域を出るものでもなさそうです

結局、今回はレイシストの戦術的勝利?に終わったようです
自分で罠をばら撒いておいて、たまたまその罠にお好みの獲物がかかったからといってそれみたことか、大騒ぎするのは本当にみっともない事です
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Unknown (非国民通信管理人)
2010-05-13 10:43:01
>BR-Sさん

 児童手当の時代と制度は基本的に変わっていないにもかかわらず今になって「養子○○人」みたいな申請が出てきたのは、そういうことが可能であるというデマが流布したからだと思うんですよね。こうしたデマがまことしやかに語られるようになったからこそ、「そういうことができるんだ」と勘違いした人が出てくるようになったのが実態ではないかと私も思うわけです。これもある種のマッチポンプで、政府与党までそのサイクルに乗ってしまったようです……
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