長谷川豊氏が差別発言 元フジTVアナ、維新は処分検討(朝日新聞)
今夏の参院選(比例区)に日本維新の会公認で立候補予定の元フジテレビアナウンサー長谷川豊氏(43)が、講演会で被差別をめぐって差別発言をしたとして、解放同盟中央本部は21日、維新に抗議文を提出した。長谷川氏は朝日新聞の取材に「差別的な内容で誤り。発言を撤回したい」と述べ、謝罪した。
発言があったのは、今年2月に東京都内であった政治やメディアをテーマにした講演会。長谷川氏は近世で被差別階層とされた人たちに触れた話のなかで、「士農工商の下に、人間以下の存在がいる」などの言葉を使った上で、「当然、乱暴なども働く」「プロなんだから、犯罪の」と述べた。
これを受けて、中央本部の組坂繁之・中央執行委員長が維新の馬場伸幸幹事長に面会。「思い込みや偏見にもとづいて誤った差別意識を拡散したのであればその責任は重大」「発言は『は怖い』『犯罪集団』などの差別意識を助長する行為」と抗議する文書を手渡した。
さて長谷川豊氏といえば「自業自得の人工透析患者なんて、全員実費負担にさせよ!無理だと泣くならそのまま殺せ!」と主張して有名になった人ですが、再び脚光を浴びているようです。当時の透析患者を巡る発言には批判も多く、当時出演していたテレビ番組から降板することにもなった一方、匿名の賛同者も多かったと記憶しています。今回はどうなのでしょう。
今年の3月には東京の公立福生病院で、透析治療を中止して患者を相次いで死亡させていたことが発覚するなんてこともありました。これまた批判もあれば擁護の声も多く、長谷川豊氏も言い方一つで運命は変わった、同じことを主張するにしても立ち回り一つで幅広い支持を集めることができたのではないかと、そんな気がします。
では今回の被差別を巡る発言はどうでしょうか。大筋では、透析患者を巡る発言の時に近いように思われます。表に出てくる声は批判が強いものの、陰で支持する人も一定数、存在している印象です。アメリカ大統領選では表向きは支持しない風を装いつつトランプに票を入れる人が多かったわけですが、長谷川豊氏への批判と支持も似たところはあるのではないか、と。
だから長谷川豊氏もトランプと同じくらい、蓋を開けてみたら意外な票数を獲得するのではないかと私は予測しています。つい先日、維新を除名された丸山穂高氏なんかも似たようなもの、党は飛び火を恐れてトカゲのしっぽ切りに走りましたが、公然と賛意を示す人はいなくても匿名の投票なら、良くも悪くもイイ線を行ってしまうのではないでしょうかね。
それはさておき私が注目したのは今回の問題発言が「今年2月」の話だと言うことです。3ヶ月経過してようやく、広く周知されることとなったわけですが、この空白の3ヶ月をどう見るべきでしょう。昨年は東京医科大を皮切りに医学部入試における男女差別が話題になりました。しかしこれは、関係者の間では昔から知られた話であり、決して昨年になって初めて判明したものではないようです。
さらに一昨年には、小田原市役所の生活保護担当の職員が、生活保護受給者を罵倒、侮蔑する文言の入ったグッズを制作、頒布していたことが報道され話題になりました。しかしこのヘイト行為、実は10年来の伝統があるらしく、生活保護受給者宅を訪問する際には「保護なめんな」と書かれたジャンパーを着用するなど、広く市民の目に触れる形で公然と行われてきたことだったのです。
しかし小田原市の問題が報道され世間の批判を集めるようになったのは、ヘイト行為の開始から10年を経てのことでした。それを思えば長谷川豊氏の差別発言が世に出るまでにかかった3ヶ月という期間は短いのかも知れませんが――ことによると、もっと長く眠っていたかも知れない、例えば選挙が終わるまで広く知られることはなかったかも知れない、そうも思われます。
いかに通信技術が発達しモバイル端末が普及しSNSが幅を利かせるようになっても、情報の伝播速度には限りがある、ということが分かります。既存メディアへの批判は高まるばかりであろうとも、マスコミが報じて初めて世間に広まることは、まだまだ多そうです。いずれにせよ政治家になろうとする人ともなれば、その考えは取り繕われるよりも知られることが望ましいですから、まぁ今の時点で判明して良かったと考えるべきでしょうか。