非国民通信

ノーモア・コイズミ

NATOの東方拡大に反対します

2022-02-27 21:21:25 | 政治・国際

安保理がロシア非難決議を否決(共同通信)

 【ニューヨーク共同】国連安全保障理事会(15カ国)は25日、ロシアのウクライナ侵攻を非難する米国などが提出した決議案を採決し、ロシアが常任理事国の持つ拒否権を行使、否決した。11カ国が賛成、常任理事国の中国に加えインド、アラブ首長国連邦(UAE)の計3カ国が棄権した。

 ロシアの拒否権行使は当然視されていたが、米国などは多くの賛成票を得ることで国際社会でのロシアの孤立を印象付けたい考えだった。ロシアの友好国・中国が反対ではなく棄権にとどまったことを評価する見方がある一方、理事国間の温度差もにじむ結果となった。

 

 先週はついにロシア軍がウクライナへの侵攻を開始しました。まぁアメリカやイスラエルが軍事侵攻を始めたとき以上の感想を私は持ちませんが、特定の陣営に属している人にとっては全く別の話のようです。「(アメリカの承諾のない)力による現状変更は認められない」と日本政府もメッセージを発信していますけれど、日本がどの陣営に属しているか旗色を明らかにする以上の意味は有さないでしょう。

 当然ながらロシアはNATO陣営と決定的に対立することになった次第ですが、そのマイナスを差し引いてもなおウクライナのNATO加盟を許すよりは得策と判断したものと思われます。アメリカがキューバへのミサイル基地建設を断固として認めなかったように、他国の政治判断とは言え許容できないものは当然ながらロシアにもあるわけです。

 今起こってしまったことから我々が学ぶべきは、軍事侵攻に至るまでの外交上の失敗にあると言えます。ロシア側の要求は日本ですらも歪曲なく伝えられている通り、NATOの不拡大でした。NATOという軍事同盟の東方進出に歯止めをかけることさえ出来れば、戦争を回避できたことは明白です。ではなぜ外交上の解決が選ばれなかったのか、未来に向けて問われるべきものがあります。

 NATOの拡張を諦めることは、客観的には至って平和的な解決策です。ただNATO陣営から見れば、それはロシアの要求を受け入れることであり、外交上の敗北でしかなかったのでしょう。ロシアの要求に「屈する」ぐらいならばウクライナが戦場になることも辞さない、そこでロシアを悪者に出来れば外交上はNATOの勝利と言えますし、交戦していない以上は軍事的な敗北でもない、NATOは何も傷つかないわけです。

 60年前にはソ連がキューバからミサイル基地を撤去することで、決定的な衝突へと発展する前に外交的な解決が図られました。これと同じことが、現代において不可能であったはずはありません。外交的解決は可能でしたが──それが選ばれなかった結果として今に至ります。キューバ危機においてボールを持っていたのはソ連でした。ではNATO拡大において決定権を持っていたのは誰だったのでしょうかね。

 

トランプ氏、プーチン氏を「天才」 ウクライナ東部の独立承認めぐり(朝日新聞)

 「天才だ」「抜け目のない男だ」。ロシアのプーチン大統領がウクライナ東部地域の「独立」を承認したことについて、トランプ前米大統領が22日に出演した保守系のラジオ番組で、こんな発言を連発した。

 トランプ氏は「私はテレビで見て、『天才だ』と言ったんだ」と発言。さらに「プーチンはウクライナの広い地域を『独立した』と言っている。私は『なんて賢いんだ』と言ったんだ。彼は(軍を送って)地域の平和を維持すると言っている。最強の平和維持軍だ。我々もメキシコ国境で同じことをできる」と話した。

 

 さてトランプ大統領時代には国際的な軍事衝突が少なかったと賞賛する人もいるわけですが、いかがなものでしょう。トランプがロシアに好意的であったのは明らかで、ロシアによるサイバー攻撃が疑われていたときもトランプは「中国の仕業ではないか」と根拠なく主張していました。至って個人的な「好き嫌い」こそトランプ外交の根幹でしたが、それが衝突回避に影響していたのでしょうか?

 もしアメリカが日本や韓国に米軍基地を次々と新設し、極東方面を攻略できるような体制を構築するようなことがあれば、当然ながらロシア(ついでに中国)の強い反発を買うことになります。しかるにトランプが行ったのは真逆に近く、米軍基地の受け入れ国に対して負担増を求めるものでした。これが平和的な意図であったかはさておき、結果的にロシアや中国から見れば自国への脅威を増すものではないと見なされていたと言えます。

 一方でバイデンは伝統的なアメリカ外交を継承し、トランプ時代に道化となりつつあったアメリカを再び偉大な国へとばかりに、アメリカの同盟国や衛星国を巻き込んで中国やロシアとの対決姿勢を深めています。自らの嫌う国を罵るばかりであったトランプと違い、バイデンの外交姿勢はより実効性の強い覇権主義と理解されるものですが、それを可能にしてきた国政政治におけるアメリカの絶対的な優越が揺らいでいるのが現代ではないでしょうか。

 国際的な対立をアメリカの望む形で解決する、その過程では軍事力の行使も辞さない、パクス・アメリカーナはソ連崩壊から四半世紀余り続いてきました。しかし時代は移り変わるものです。アメリカの意のままにならない国も力を付けてきました。NATO側も今後は外交的な譲渡を選択肢として持つ必要がある、それが出来なければロシアと同じような判断を下す国が続いても驚くには値しません。

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ウクライナのNATO加盟を認める代わりにキューバへのミサイル基地建設を認める、というのはどうだろう

2022-02-20 23:52:46 | 政治・国際

米大統領「プーチン氏がウクライナ侵攻決定」、数日中にも開始か(ロイター)

 [モスクワ/キエフ/ドネツク/ワシントン 18日 ロイター] - バイデン米大統領は18日、ロシアのプーチン大統領がウクライナ侵攻を決断したと言明した。米情報機関の情報に言及し、「われわれには確信する十分な根拠がある」と述べた。

 外交の余地はなお残されているものの、ロシアが「数日中にも」侵攻に踏み切るという認識を示した。さらに、ロシアがウクライナの首都キエフを攻撃の標的にするとも確信していると述べた。

 

 上記のようなアメリカ側の見解が示されているわけですが、どうしたものでしょうか。結局のところイラクの大量破壊のように、事実関係よりもアメリカの意向が優先されるのは当時から変わっていないわけです。アメリカが「ロシアが侵攻する」と決めたのなら、実際にロシアがウクライナに侵攻するものとして国際社会は応じていくものと予想されます。

 かつてキューバで軍事独裁政権が打倒され、新政権はソ連に接近、ミサイル基地の建設まで進んだことがありました。自国の喉元に刃を突きつけられることになったアメリカ側は当然ながら強硬に反発、米ソの緊張関係が急速に高まっていったわけです。結局はソ連側が折れる形で終わったのですが、若者であった当時のバイデンはどう感じていたのでしょうか。

 結局のところはソ連を退けたのですから、傍目にはアメリカの外交上の勝利にも見えます。しかし国際社会における覇者として君臨してきたアメリカからすれば、このように脅かされることすらあってはならないと、そう感じた人も多かったことでしょう。「脅かされた」という事態への復讐をいつか果たそうと、バイデンが思い続けていたとしても驚きはしません。

 元来ウクライナは親ロシア派と反ロシア派の拮抗する地域でした。2014年に選挙によらない政権奪取により反ロシア派が実効支配することとなりアメリカ陣営の承認を得て今に至りますが、ウクライナはアメリカにとってのキューバと同じ位置に存在しているわけで、まさしくキューバ危機の東西逆転バージョンが現在であると言えます。

 アメリカがキューバのミサイル基地を容認できなかったように、ロシアもまたウクライナがNATOの前線基地となることは断じて受け入れられないでしょう。ウクライナをNATOに加盟させないことを求めるロシア側の要求は当然です。ただアメリカとロシア、国際的に認められる権限は大いに異なります。アメリカには許される要求も、ロシアに許されるとは限らないわけです。

 バイデン大統領はブッシュ43代大統領によく似ています。ブッシュも一時は支持率が低迷し先行きが危ぶまれたものですが、同時多発テロが起こりアフガニスタンへの侵攻へと突き進む中で支持率は90%を超えるに至りました。バイデンもまた、低迷する支持率を巻き返すチャンスを今に見出しているのではないでしょうか。憎しみこそ、国内結束の原動力ですから。

参考、民主党政権とは何だったのか

 ただブッシュとバイデン、政治姿勢は似ていても所属する政党が違います。日本の民主党政権も「右」に喜ばれるはずの政策が少なからずあり、安倍晋三すらも認めるところではあるのですが、それで「右」の有権者が民主党を支持したかと言えば全く影響はなく、相変わらず毛嫌いされたままだったわけです。アメリカの民主党も同じようなもので、共和党が他国と争えば超党派の支持を得られる一方、民主党が外交関係を悪化させても「右」からは毛嫌いされたままで変わらない、そんな未来も待っている気がします。

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復古

2022-02-13 22:37:10 | 雇用・経済

テレワークしている人の割合 “宣言”解除後 最低に 民間調査(NHK)

新型コロナ対策としてテレワークの積極的な活用が求められる中、テレワークをしている人の割合が、緊急事態宣言の解除のあと低下し、感染拡大以来、最も低くなったとする民間の調査結果がまとまりました。

日本生産性本部は、企業や団体に勤める人たちのコロナ禍での働き方をほぼ3か月ごとにアンケート形式で調べていて、今回の調査は、20歳以上の1100人を対象に先月中旬、インターネットで行いました。

それによりますと、週に1日以上、自宅などでテレワークをしている人の割合は18.5%で、前回・去年10月の調査から4.2ポイント低下し、おととし5月の調査開始以来、最も低くなりました。

 

 調査対象期間が明示されていませんし調査対象範囲も十分であるか微妙ですが、ともあれ新型コロナウィルスの感染者数が随所で過去最多を更新してきた中で、テレワークをしている人の割合が調査開始以来、最も低くなったことが伝えられています。感染症予防など気にしない人の方が、徐々に盛り返していった結果と言えるでしょうか。

 今の時代に鉄砲が得意でも役に立ちませんし、戦国時代に英会話が得意でも役には立ちません。時代や状況が変われば、必要とされる能力もまた変わるものです。テレワークという劇的な働き方の変化においても然りで、従来型の出社を前提として就労環境とテレワークとでは、求められるものが変わってくるのは必然と言えます。

 今まさに起こっているのは、従来型の働き方において主流派であった人々と、テレワーク導入によって立場が上向いてきた人々との間のせめぎ合いなのではないでしょうか。そして出社型勤務で幅を利かせていたけれどもテレワークでは成果の出せない人の反攻が実った結果として、ここに引用したような数値に繋がっているように思います。

 何度か書いてきたことですが、私の勤務先ではコロナ前からテレワークの制度がありました。ただそれは障害などの理由で通勤が出来ない「ワケあり」の人だけが利用するものであり、「普通の」人はもれなく出社して業務を行っていました。これが政府の緊急事態宣言を受けて、障害の有無にかかわらず全社員がテレワークを行うようになったのです。

 それまでは一部「ワケありの」人以外は全員が出社していましたので、当然ながら業務も出社を前提にして組み立てられており、出社できない人は至って限定的な範囲の業務にしか従事できていませんでした。これが一変したのは緊急事態宣言が出てからで、業務はリモートを前提に運用されるようになり、出社する人もそうでない人も等しく業務に関わるようになりました。

 働き方が大きく変わる中、事実上の障害者枠でしかなかった在宅勤務者が「普通の」社員と同じ仕事をするようになり、それまで目立たなかった人が頭角を現したりもする一方、逆に存在感を失っていく人もいたわけです。かつては社内で部下を怒鳴り散らしては権勢をほしいままにしていた人が途端にいるのかいないのか分からない人になったり等々、舞台が変われば出番も変わるのがよく分かります。

 テレワークで働きやすくなった、業務の効率が上がった人もいれば、反対に従来通りの出社を前提とした働き方に依存する形で地位を築いてきた人の中には環境の変化に適応できない人も多いのではないでしょうか。声の大きさで周りを押さえつけてきた人、飲み会に皆勤して偉い人から気に入られてきた人、そうした人にとってテレワークは脅威でしかありません。

 戦争に負けてGHQに占領されて、日本は民主化しました。そして新型コロナウィルスの感染が拡大して政府が緊急事態宣言を出すに至り、全国各地でテレワークが始まりました。GHQが去っても民主体制から軍国主義に戻ることはありませんでしたが、コロナの場合はどうでしょうか? コロナを契機に社会が前進できるのか、それとも旧体制に回帰するのか、どうにも優勢なのは後者のようです。

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鐘を鳴らせ

2022-02-07 00:04:32 | 政治・国際

 鐘を鳴らせ!悪い魔女は死んだ──これは映画『オズの魔法使い』の挿入歌だそうですが、サッチャー元イギリス首相の死後、当地の音楽チャートの第一位に浮上したことでも知られています。日本では肯定的に語られることが専らのサッチャーですけれど、イギリスではそこまで広範に支持されていたわけではなかったようです。

 小泉純一郎など、さしずめサッチャーの後継者に当たるのかなと思わないでもありませんが、この日本経済に数限りない地雷を埋め込んだ政治家が死んだとき、我々の社会は彼を正当に評価することができるでしょうか。残念ながら悪い政治家が死んだところで、その爪痕が消えることはないですので、結局は後の祭りですけれど。

 去る2月1日、元・東京都知事でもある石原慎太郎が死にました。彼の場合は誰かの後継者と言うよりむしろ先駆者であった、差別発言によってこそ支持を得るところなどはトランプ元アメリカ大統領に先立つ新しい政治家であったと評価することが出来ます。おかげで都民の暮らし向きが良くなったかは別問題ですが、人気があったのは確かでしょうね。

 石原慎太郎の旺盛な差別意識が向けられた側の国では客観的な事実が淡々と報じられている一方、「敵の敵」であった台湾などでは「わが国の重要な友人」などと情のこもったメッセージが伝えられている模様です。まぁ中国との対立がなければ石原慎太郎が台湾に好意的になることはなかったと思いますが、敵意を共にしてこそ結束が深まるのはよくあることです。

 

「伝票を『中国産』に」 アサリ仕入れ先から…熊本県内卸業者 小売店の注文もぱたり(熊本日日新聞)

 輸入アサリの産地偽装疑惑を受け、40年近く「熊本県産」アサリを販売してきたという熊本県内の水産卸売業者が3日、熊本日日新聞の取材に応じ「(疑惑が浮上後)問屋から伝票を『熊本県産』から『中国産』に変えるように連絡が来た」と明かした。スーパーや小売店が売り場からアサリを撤去する動きも相次ぎ、業者への注文はぱたりと止まった。「中国産には注文が来なくなるのではないか」と不安を口にした。

(中略)

 業者は「中国産だからといって味や品質は変わらない。このまま注文が来なければ死活問題だ」と話した。

 

 「熊本県産」として市場に流通していたアサリの大半が産地偽装によるものだとして、結構な混乱が広がっています。何でも2022年の熊本県のアサリの漁獲量が21トンであるのに対し、販売された量は推計2485トンだとか。その後、販売者からは「中国産だからといって味や品質は変わらない」にもかかわらず注文が途絶えたと悲鳴が聞こえています。

 まぁ私の会社でも、中国の会社が作って日本の会社が箱に詰めただけの「日本製」のパソコンを全社員に貸与していますし、中国の会社が製造する「アメリカ製」のスマホを推奨端末として指定しています。世の中、そういうものなのでしょう。味や品質なんかよりも、ラベルの方が重要です。ヤツらは情報を食ってるんだ!ってとこですね。

 いずれにせよ、日本が信頼したがる国もあれば、信頼したがらない国もあるわけです。信頼しない理由をあれこれと語る人もいますが、それが事実なのかどうか、レイシズムから発した創作や願望ではないのか、見極める意識は必要だと思います。そうではないと、石原慎太郎の後継者が次々と生まれてしまいますから。

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