日本の小中学校教員11時間勤務 フィンランドの倍近く(共同通信)
小中学校教員の1日の平均勤務時間(休憩を除く)は11時間6分で、国際学力調査で高い学力を示すフィンランドの6時間16分より5時間近く長いことが22日、国民教育文化総合研究所の調査で分かった。研究所は「フィンランドは学習指導が主だが、日本は文書整理や部活、学校行事の準備に追われている」とみている。調査は昨年1-5月に実施、両国の計約1100人の教員が回答した。
ボリス・アクーニンことChkhartishivili氏が、当時私の在籍していた大学に講義に来たことがありました。当初は1限から5限まで(8:50~17:50)の予定だったのですが、「ロシア人はそんなに働きません!」というChkhartishivili先生の一声で前後1コマがカットされ、急遽10:30~16:10に授業時間が変更されたのをよく憶えています。それはちょっと極端かもしれませんが、やっぱり日本人は働き過ぎですね、小中学校の教員を見ても、日本はフィンランドより5時間も勤務時間が長いそうです。
まぁ、フィンランドのカリキュラムは幾らか特殊なので比較しづらいところもあるのですが、フィンランドは「学習指導が主」であるのに対し、日本の教員は「部活、学校行事の準備に追われている」ために、勤務時間が圧倒的に長くなっているようです。この辺は、学校のカリキュラムにも現れていますね。日本の学校では勉強は決してメインではありませんから。とりわけ算数とか国語とか理科に社会とか、学力テストの対象になるような科目のために割かれる時間が圧倒的に短いわけです(しかも、頻繁に潰されますよね? 学校行事の準備や担任教師の気まぐれで)。じゃぁ、日本の学校では机に向かって勉強しない代りに何をしているのかというと、運動会に向けた整列とマスゲームの練習や諸々の学校行事の準備に追われているのです。何のための学校なのでしょうね?
参考、必要とされていないから
学力低下だの何だのと世間は喧しいわけですが、そもそも学力テストの対象になる強化に力が注がれているとは言い難い中で、点数だけは何としても維持しろ、上昇させろと迫られても無理な話です。学校の先生は部活動や行事の準備に追われて授業の準備は出来ず(仕方がないから、学校の成績よりも大事なことがある、と道徳論に逃げるしかない)、生徒が身を入れて勉強に取り組めるような環境も出来ていない、学校の代りに塾でちゃんと勉強した子供が平均点を引き上げても、塾に行けない子供にまともな学習機会はありません。そりゃ、テストの対象になる「学力」が下がったって当たり前の話でしょう。
「学校は勉強をするところ」という基本に立ち返って、学校というものをもっとシンプルにする必要があると思います。富国強兵、殖産興業に役立つ産業兵卒を育てようと、強制された集団行動を通じて組織の論理を体に叩き込む、それがいかに無意味なものであっても、ルールであるというだけで従わねばならないものだと教え込む、こういう「人間教育」の役割から学校を解放する必要があります。確かに、今の企業社会が欲しているのは学校でよく勉強した子ではなく、適度に見栄えのする学校歴を持ちつつ、それでいて体育会系に染まった学生だったりするわけで、その点では今の公教育は社会のニーズに応えようとしていると見えないこともありません(自民党や小泉、麻生、橋下を支持する、そんな若者を育てるという点でも輝かしい実績を上げていますし)。学力テストで高得点をマークして欲しい、というもう一つの矛盾したニーズには応えようがないわけですが!
現実問題として、小中学校は半分「託児所」みたいな性格もありますから、「子供を預かる時間」を減らすことには弊害もあるかも知れません。ただ、今の日本の学校教育にはあまりにも「余計な」ものが多いようにも思います。大人が教える必要があるもの=学力テストの対象になるような教科に的を絞り、教えなくとも勝手に育つであろう分野に関しては、その負担から教員と生徒を解放した方がよいでしょう。徳育だの食育だの、余計なモノを付け加えて、より「勉強するところ」から「人間形成の場」へと学校を傾斜させようとする、そうした動きへのカウンターアクションとしても、ですね。
追加、
こんな記事も見つけました。やっぱり、学校で勉強する意識は低いようです。内閣府はあれこれ言っていますが、少なくとも日本国内で「社会人」になるなら、「勉強の出来る子」よりも(あくまで学校歴は必要ですが)、「友達の多い子」の方が評価されているような気がしますけど。企業だってバカの一つ覚えみたいに「コミュニケーション能力」を要求するではないですか。よほど特殊な専門職でもなければ、学校で得られる知識など二の次でしょう。
日本は「友情」、欧米は「知識」=学校の意義で若者調査-内閣府(時事通信)
内閣府は27日、若者の意識を国際比較した「世界青年意識調査」の結果を公表した。学校に通う意義について、欧米では「知識を身に付ける」という回答が多かったのに対し、日本は「友情をはぐくむ」が最も多かった。内閣府は「知識を身に付ける意義を低く見ると、社会に出た時に現実とのギャップを感じることにつながるのではないか」としている。