非国民通信

ノーモア・コイズミ

まぁ需要はあるのでしょう

2018-08-27 00:02:24 | 社会

「粉末の水素水」発売 食べ物などに混ぜて利用(岐阜新聞)

 ミネラルウオーター製造販売の奥長良川名水(岐阜県関市)は21日、水素水を粉末にした新商品「ハイドロエッグ水素パウダー」の販売を始めた。水素が持続的に発生し、無味無臭であるのが特徴。味に影響を及ぼさないため、飲み物のほか、食べ物などに混ぜて利用できる。年間1万箱の売り上げを目指す。

 新商品は岐阜大、東京工科大との共同研究により開発した。同社が2010年から販売している清涼飲料水「逃げない水素水36」を凍結乾燥して粉末化したもの。一般的な水素水は開封後に水素が抜けてしまうが、逃げない水素水は独自の製造技術で水素を内から発生させ続ける。粉末化してもその機能を保持しており、水に溶かすと48時間以上水素が発生するという。

 この日、東京都内で会見した中村隆春社長は「日本で唯一の商品として、世界に愛される商品にしていきたい」とアピールした。

 1箱30包入り(1包3グラム)で、価格は8400円(税別)。同社オンラインショップなどで購入できる。

 

 「粉末の水素水」というインパクトのあるフレーズで局所的に話題になっているのが冒頭に引用した記事と商品なのですが、まぁ本当に水素を粉末化することができれば水素の燃料化における画期的なブレイクスルーです。それこそ世界の燃料事情が一変しますよね。事実なら時代を揺るがす世紀の大発見となりますけれど――8400円(税別)とのことですので、なんだか庶民的です。

 なお岐阜新聞も伝える同社オンラインショップを見ると"HYDRO EGG SUISO powder"などと銘打たれておりまして、水なのだか卵なのだか、果ては謎の新物質SUISOなのだか粉末なのだか、色々と盛りだくさんです。そして原材料名を見ると「ブドウ糖」「マルトース」と書かれています。とりあえず、飲んでも身体に害はなさそうな材料ですね。

 しかし、岐阜新聞の伝えるところでは「無味無臭であるのが特徴」なのだそうです。普通のブドウ糖やマルトース(麦芽糖)であれば甘い味がするものですけれど、何か秘密の製法でもあるのでしょうか。糖類の中でも色々と人工的に加工すれば甘くないものも作れるらしいですが、ますます以て謎は深まるばかりです。

 その他の原材料としては「二酸化ケイ素」「水酸化カリウム」と続いています。まぁ、よほど極端な摂取をしなければ害はないと思われる範疇ですけれど、水素水の類を好む人から見た食品添加物って、どうなんでしょうね。わざわざ水素水を購入するような人が、「二酸化ケイ素」「水酸化カリウム」をどう考えているかは興味深いところです。

 さて人手不足(本当か?)が声高に叫ばれる一方で「(お前らは)AIに仕事を奪われるぞ」などと語る予言者も喧しい昨今です。AIが本当に仕事を奪うなら、人手は余るばかりで不足などは起きなくなりそうなものですけれど、しかるに現実世界はいかがなものでしょう。とりあえずこの岐阜新聞報道などを見ていますと、そうそうAIは人間に及ぶまいな、と感じました。

 中学生程度の理科の知識があれば、ブドウ糖と食品添加物を混ぜて「粉末の水素水」なんてインチキだとすぐに分かってしまうわけです。しかしインチキなら需要がないかと言えば話は完全に別で、不合理で非生産的な代物にも社会的な需要がある、だからこそ結構な大手企業もエセ科学に基づいた健康グッズの類いを大々的に販売してきたと言えます。

 そうでなくとも、忖度やゴマすり、社内政治や諸々の不正行為、パワハラやセクハラに、誇大広告やデマの類いも、それを求める人がいる、需要があるからこそ存続していることは認められなければならないでしょう。合理的な選択はできなくとも、あるいは科学的に真っ当な商品を開発できなくとも、それはビジネスとしての成否に必ずしも直結するものではない、と思うのですね。

 東京都の教育委員会によると、AIに仕事を奪われないためには、中学校の卒業時に少なくとも教科書を読めるようにすることがこれからの公教育の最重要課題なのだそうです。しかるに中学校の教科書レベルの知識でインチキと分かるようなグッズも普通に売れている、商売できているわけです。そしてこういう類ほど生命力が強いと言いますか、いかにAIが発展しようとゴキブリのように生き延びる、と私は予言しておきます。

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誰にでもできること

2018-08-19 21:36:39 | 社会

 さて日本では入れ墨と言いますと、古来では刑罰として掘られるものが多かったり、現代でも反社会的勢力に好まれていたりで、ファッションとして徐々に拡大しつつも良いイメージは少ないものです。一方で海外では格段にカジュアルな扱いで、サッカー選手の中には次々と入れ墨を増やしていく人も多い、中には耳なし芳一みたいになっている人もいるくらいだったりします。

 そんな中、入れ墨には全く興味を示していないのがポルトガル代表のクリスティアーノ・ロナウドでして、曰く「献血に行けなくなるから」とのこと。入れ墨には感染症のリスクがあり、入浴は許容されても献血の方はお断りになってしまうのですね。だから「献血するため」にタトゥーは入れないのだそうです。

 なんでも「誰にでもできることこそ率先してやらないといけない」というのがクリスティアーノ・ロナウドの主張らしく、その年収は時に270億にも達したと報じられる身でありながら、年に2回は献血に行くと伝えられています。そしてこの「誰にでもできること」への向き合い方で、人間の器が分かるような気がしないでもありません。

 とりわけ「日本の職場」などは、「誰にでもできること」の扱いが悪いのではないか、と思うわけです。「誰でもできるわけではない」絵空事を誰彼構わず要求するばかりで、その意識が高ければ高いほど「誰にでもできること」軽視しがちではないでしょうか。しかも軽視であればまだマシな方、「誰にでもできること」をやっている人に対する蔑視すらもあるような気がします。

 保育士の人手不足が叫ばれ、その原因として賃金水準の低さが指摘されることもあったわけですが、「(保育士は)誰にでもできる仕事だから」賃金が低いのは仕方がないのだと語る人もいました。保育士が本当に誰にでも務まるかは疑問ですけれど、実のところ有資格者は別に不足していなかったりします。

 保育士の有資格者は十分にいることを鑑みれば、特別な能力の持ち主でなくとも取得できる資格、とまでは言えるのかも知れません。しかし「特別な能力の持ち主でなくとも取得できる資格」があれば可能な職業であったとしても、現実問題として保育士不足は解消の見込みは立っていないわけです。

 そもそも冒頭で事例に上げた献血にしてから、不足があるのです。結局のところ「誰にでもできること」が十分な供給を約束してくれることはない、と言えます。「誰にでもできる」としても「誰もがやってくれる」とは限らないのですね。それどころか「誰にでもできる」けれど「誰もやろうとしない」ことになる場合すらある、こうなると社会に歪みが生まれることになります。

 普通の会社勤めにしても然り、全く日の当たらない地味な仕事、創造性など微塵もない仕事、退屈なルーティンワーク、難しくはないが手間ばかりかかる仕事――そういうものはたくさんありますが、これを担う社員の扱いはどうでしょう? 誰にできる仕事ではあるのかも知れません、しかし、それをやる人がいなくなったら会社はどうなりますか?

 往々にして「誰にでもできること」は、その社会・組織にとって必須のことだったりします。社長と株主だけで機能する会社などあり得ないように、どこでも「誰にでもできること」が適切に行われて初めて、基盤が成り立つわけです。しかるに「誰にでもできること」の担い手を正当に評価しない社会・組織は、必然的に自らの土台を崩すことになってしまうと言えます。

 「誰にでもできること」が「誰もやらなくて済むこと」であるなら、「誰にでもできること」に従事する人を切り捨ててしまっても問題ないのかも知れません。しかし、現実はどうでしょう? 「誰にでもできること」が「誰もやろうとしないこと」になったなら、たちどころに破綻するであろう類いはいくらでも思い浮かぶところです。

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ついに出た理想型

2018-08-12 22:42:28 | 編集雑記・小ネタ

 私の職場のPC端末に搭載のRAMは3GBです。ちなみにHDD容量は80GBですので、業務上で必要なデータの保管にも色々と工夫が必要になったりしますが、皆様の職場ではいかがでしょうか? まぁ、どこの会社でも業務に使用する端末の性能は意図的に劣悪なものが用意されている印象がありますね。日本人のPC利用率が低く、スマホ利用率が目立って高いのは、職場で粗悪なPCに触れているから相対的にスマートフォンが高性能に見える、というところもあると思います。

 ……で、端末に付いているキーボードがこれまた腱鞘炎製造器みたいな代物で、こういうのが基準になってしまうとスマホの入力環境も快適きわまりないものに見えるのでしょう。某山岡さんよろしく、「かわいそうに、本当に良いキーボードを触ったことがないんだな。明日、もう一度来て下さい、本当のキーボードを使わせてあげますよ」とでも言いたくなったりします。

 そんなことより、この製品を見てください、いかがでしょうか。

ikbc L-87

 リンク先は中国ikbc社のサイトですが、「輸入利器」とありますので、ヨソの海外メーカーが製造しているのかも知れません。ともあれ特筆すべきは、通常は当たり前のように右側に配置されるカーソルキー等々が左側に配置されている点です。これは珍しいレイアウトですが――その実は最も合理的な配置であろうと私が考えてきたものでもあります。

参考1、キーボードの理想的な配列を考える

参考2、左手も使えれば便利になる

 細かいことは上記リンク先で既に書きましたが、何故か現行のキーボードは「右へ右へ」と拡張されていったため、マウスも含めた操作全般において右手ばかりを大きく振り回すことになってしまうわけです。その点、このikbc L87であれば左右の配置のバランスが取れており、両手を余さず使うことで効率的な入力が可能になります。

 もちろん「自分は右利きなので左手ではキーボードが打てない」という人であれば、上記キーボードは使いにくい代物になることでしょう。しかし、不運にして障害を抱えているなどの事情などがあるならさておき、だいたいの人は利き手など気にせず両手でキーボードを打っているはずです。そもそもスマートフォンだって左手一本で操作している人が多いですけれど、別に「左利きだから」ではないですよね?

 世の中、右利きの人向けにばかりデザインされているという声もあります。ではパソコンのキーボードってどうなんでしょうね? 左利きの人はキーボードの右半分が、右利きの人はキーボードの左半分が、それぞれ打ちにくかったりするのでしょうか? とりあえず私は右利きですが、キーボードの左側のキーが押しにくいと感じたことはないです。

 他にもファミコンなどゲーム機のパッドはいかがでしょう。左側に上下左右のキーと右側に各種のボタンが古典的なレイアウトですが、あれも右利きあるいは左利きによって使い勝手が違う、というものでもないと思います。しかるにパソコンのキーボードよろしく右手で操作する部分だけサイズが大きくなっていったなら、使い勝手は悪くなりますよね? 大事なのはバランスです。

 そんなわけで、上記のikbc L-87は、レイアウトとしては待ち望んでいた理想型だったりしますが、他社から同様のキーボードが出てくる気配は今のところなさそうです。左右両手で文字を打ち、右手でカーソルキーや各種機能キー、右手でテンキー、右手でマウスという右手偏重の一般的なレイアウトは、右利きの人にとっても左利きの人にとっても等しく使いづらいと思うのですけれど。

・・・・・

 ついでに言いますと、「大きいキーボード」というのもあっていいと思っています。世の中標準サイズよりもコンパクトなキーボードは山のようにありますが、キーピッチの大きいキーボードはエルゴノミクス云々の変速配列を別とすれば見たことがありません。ゲーム用のパッドなら、割とサイズに幅がありますし、トラックボールなら小さいものから大きいものまでバラエティがあります。ならばキーボードだって大きなものがあっても良さそうなもの、手が大きい人はもとより、不器用だったり障害や加齢のために手先の細かな動きが困難な人、そういう人のためにも「大きい」キーボードが選択肢として存在しても良いはずです。

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新聞って凄い、と思いました。

2018-08-05 21:51:39 | 社会

 極めつきは、多くの私立医大では、男女枠がある。~(中略)~どうしても、女子は卒後、外科系に進みにくい。~(中略)~だから、医学生が女子ばかりになると、その大学の中で、外科系にいく人間が少なくなり、バランスがとれなくなる。~(中略)~最悪の場合、外科教室の維持ができなくなると危惧されることもある。そうした事情から、私が知っているある私立医大は、男女で別々に定員を決めているそうだ。(『医者とはどういう職業か』里見清一、幻冬舎新書)

 

 上の引用は2016年に出版された本からですが、そういうこともあるようです。入試においては必ずしも男女平等ではなく、男性受験者が優遇されていることもあるのだとか。背景には男女の進路指向の違いがあって、外科を成り立たせるためには医学部志望の男性受験者を、たとえ女性受験者よりも試験の点数が低くても、一定数は合格させる必要があるらしい、と。

 まぁ医療現場はワークライフバランスを取るのが他の職場に比べて格段に難しいわけです。商品を欲しがるだけの客相手なら、待たせておいても大した問題にはならないかも知れません。しかし患者と医者の関係はそう簡単にはいきません。早急な措置が求められる患者の生命と、医者の勤務時間の適正化、両立のために必要なものは一般の職場とは比べものにならないのでしょう。

 外科医の労務環境を女性が働きやすいものに変えることは当然ながら求められますが、一方で上記『医者とはどういう職業か』によると、地方医大には「どう考えても医師に向いてない女子学生が集まる」ケースが見られるそうです。その理由は、ほぼ例外なく医学部は偏差値が高いこと、かつ地方では医学部以外に偏差値の高い大学がないことで、ここに「娘は親元に置いておきたい(都会で一人暮らしさせたくない)」という親の思惑が加わると、地方の成績優秀な男子学生は全国から受験先を選ぶのに対し、地方の成績優秀な女子は挙って地元の医学部を受験することになってしまうのだとか。その結果として、医者に向いているかどうかという要素は完全に蚊帳の外、と著者は推測していました。

 

外科では女性医師敬遠がち「女3人で男1人分」(読売新聞)

 東京医科大(東京)医学部医学科の一般入試で、同大が女子受験者の得点を一律に減点し、合格者数を抑えていたことが明らかになった。同大出身の女性医師が結婚や出産で離職すれば、系列病院の医師が不足する恐れがあることが背景にあったとされる。水面下で女子だけが不利に扱われていたことに対し、女性医師や女子受験生からは「時代遅れだ」との声が上がる。

 「いわば必要悪。暗黙の了解だった」。同大関係者は、女子の合格者数を意図的に減らしていたことについてそう語る。

 この関係者によると、同大による女子合格者の抑制は2011年頃に始まった。10年の医学科の一般入試で女子の合格者数が69人と全体(181人)の38%に達したためだ。医師の国家試験に合格した同大出身者の大半は、系列の病院で働くことになる。緊急の手術が多く勤務体系が不規則な外科では、女性医師は敬遠されがちで、「女3人で男1人分」との言葉もささやかれているという。

 

 さて東京医科大の一般入試で、女子受験者の得点を一律に減点し、合格者数を抑えていたことが報道され、結構な話題になっています(ついでに浪人生も冷遇されていたとか)。当然と言うべきか批判的な反応が圧倒的ではありますけれど、皆様どう思われますでしょうか? 私は――やっぱり新聞って凄いな、と思いました。

 世の中、「知っている人は知っているけれど、世間的には気にされていない大問題」は少なくありません。一部の関係者の間だけで懸念されつつも、世間一般では存在すら知られていない、そういうものが盛りだくさんです。しかしローカルな問題、ニッチな問題も全国紙で取り上げられるや、途端に全国区の問題として人々に意識されるようになるわけです。新聞凄い。

 例えば小田原市役所では生活保護担当の職員が、生活保護受給者を罵倒、侮蔑する文言の入ったグッズを制作、頒布していたりしたわけです。およそ10年にわたって。これは人倫にもとる言語道断な蛮行ですが、私がこれを知ったのは新聞報道のあった2017年であり、世間で問題視されたのも同時期でした。公然と行われていた代物であり全く隠されていなかったにも関わらず、新聞報道があって初めて、問題と見なされるようになったわけです。新聞凄い。

 東京医大による女子合格者の抑制は2011年頃に始まったそうですが、余所の大学でも行われていた、恐らくはもっと昔から行われていたのではないかと推測されます。冒頭に引用した『医者とはどういう職業か』によれば「学生の男女比と、その経年変化を調べればすぐ分かるじゃないか」だそうです。たぶん、関係者にとっては今更騒がれるような問題ではないのでしょう。しかし広く世間に問題視されるようになったのは、それが新聞報道されたからです。新聞凄い。

 したり顔で、新聞など不要なのだと高説をたれる人も昨今は多いです。ところが、そういう人の語ることも元を辿っていけば新聞報道が始原だったりするのが大半です(まぁ、純然たる妄想から始まっているケースも少なくなりませんが)。今回の件で批判的なコメントを熱心にネットへ書き込んでいる人も酷暑の中わざわざ抗議に出向いている人も、内99.9%は新聞報道後に初めてこの問題を認識したことでしょう。そして新聞ではなくネットの書き込みを見て問題を知った人も、その書き込みは新聞報道を見て反応した人から始まっているのです。

 新聞の社説や論説には疑いようもないゴミが多いですけれど、それを差し引いても「関係者しか知らないこと」を取材し、それを広く世間に広める新聞の役割は全く失われていない気がしますね。この医学部の男女差別も、恐らく関係者には知られていたことであり、普通に書店で売られている本にも書かれていたことですが――新聞報道があってようやく事態は動いたのですから。

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