詩人PIKKIのひとこと日記&詩

すっかりブログを放任中だった。
詩と辛らつ日記を・・

年末年始の老人ホームでのバイトで作った詩

2009年01月05日 | 日記
この国は
どんなものでもそろっている
とても豊かで立派な国なのだという
でもいちばん大事なものが
欠けている気がしてならない

それはたぶん
ほんのささやかな勇気と思いやり

腰痛をおしての
年末年始だけの老人ホームでのバイトだった
そこのテレビの前に
日がな一日じっと座りこんでいたのは
盲目や 歩けなかったり
寝たきりや 認知症の
傷だらけになりながら
それでも懸命に生きる老人たち
ぼくがたったひとつ心がけたのは
その話に耳を傾けることだけ

「もうこれ以上生きててもしょうがない」という人が
盲目や歩けない人に多かった
「ここでも虐めや虐待があるのよ」と
ひそひそ声で囁いていた人

話しかけると
断っても断ってもエプロンのポケットに
飴をごっそりと入れてくれて
「ありがとう、ほんとにありがとう」と
何べん何べんもお辞儀してくれた人
「外へ出たら怒られた」という人
「ほとんど一日テレビでは飽きる」という人

忙しい仕事の合間に
半日振りに話しかけにいくと
「どうしたのかと思ってたよ、淋しかったよ」と涙ぐんでた
大昔の文学少女で盲目で車椅子の○子さん

『老人は新しい場所に移されるたびに、10パーセントの能力を失っていくことが調査で明らかにされている。生活能力だけではなく、生きがいも失われていく』
という言葉が身に沁みた
年末年始だけの1週間の老人ホームでのバイト

身体の痛みは
薬で治したりして
なんとか誤魔化すことができるけど
こころの痛みや
社会で生きてきた時の痛みや
社会から隔離されてしまった哀しみは
忘れた頃にやってきて
こころの奥底に落葉のように
降り積もってゆくばかり

それが
ぼくらの誰もに訪れる人生の秋だということを
ぼくらの誰もが想像しなければならない
暖かく見守ってやらなければならないし
暖かい言葉をかけてやらなければならない
その運命こそが
ぼくらを待っている未来だし
この冷酷無比なこの国での
ぼくらの未来は
ずっとずっと過酷なはずなんだから

昨日の痛みがあって
今日の覚醒があるんだ
今日の痛みがあってこそ
明日もまた
歩きだそうという意志が
ふつふつと湧いてくるんだから・・

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