読書な日々

読書をはじめとする日々の雑感

「天使に見捨てられた夜」

2007年03月19日 | 作家カ行
桐野夏生『天使に見捨てられた夜』(講談社、1994年)

女の探偵、村野ミロを主人公とした一連の作品の一つらしいが、まぁあまりぱっとしない作品ではある。やはり「OUT」とかを読んだ後では、この人も10年以上も前はこんな程度だったんだねと思ってしまうような作品だ。

「OUT」のような社会性もなければ、登場人物にぎらぎらした魅力もない。まぁ主人公というものはたいてい狂言回し的な存在でもあるので、黒子的につねに舞台に登場しているとしてもそれほどの存在感がなくても仕方がないけど、その他の登場人物も同じように存在感がないのでは、作品世界に魅力が感じられない。

アダルトビデオの内容がどうみても女性の合意ではなくレイプに近いかたちになっているということから、女性の人権を守る立場からの出版をしている「道草舎」の渡辺から、この女性、一色リナの捜索を依頼される。レイプは親告罪で、被害者が自分で告訴しなければ事件にならないからだ。

捜索の過程で、このビデオの制作会社や共演男優たちとの連絡が取れるようになった頃に、一色リサが自分の体を切り刻んで血まみれになっているビデオの存在がわかり、また彼女の部屋にあった奇妙なビンが、同じ頃に亡くなったトニーこと富永洋平ももっていたことが分かる。また八田牧子という強力な後援者も渡辺につく。

一色リナから渡辺に会いたいという連絡が入るが、彼女は何者かに突き落とされたかして死んでしまう。そして一色リナの出身地や中学まで生活していたところがわかり、一気に話は終盤にたどり着き、結局、じつは今は上流階級の嫁となっている八田牧子が富永洋平とのあいだにつくった子どもである一色リナがアダルトビデオにでていることに驚き、彼女を抹殺しようと渡辺を介してリナの捜索を依頼していた、そして邪魔者である渡辺をも殺害したということが分かる。

桐野夏生の名前だけで読みとうしたようなもので、退屈な小説だったと言っていい。どんな作家だって100%当たりということはないえないということだろう。そう考えると、出す小説出す小説が傑作といわれる夏目漱石なんかは、やっぱすごかったんだなと、いまさらながらに思う。

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