読書な日々

読書をはじめとする日々の雑感

人生の突き詰め方

2010年01月12日 | 日々の雑感
人生の突き詰め方

昨年の秋から、息子の就活の関係で日経新聞を購読しているのだが、意外と面白い。とくに私が好きなのは一番後ろの文化面で、「私の履歴書」というコーナー。今は元首相の細川護熙が子どもの頃からやっと議員として政界に打って出るところまで進んでいるが、その前の津本陽なんかも、一度も読んだことのない作家だが、面白かった。

一つの作品を書くために、歴史小説だと住んでいる世界が違うわけだから、その世界が自然とにじみ出るようになるまで資料調べが必要になり、そのためにたった数行書くにも何冊もの本を読まなければならないというような、話は一行が書けないで、いつの間にか夜が白々と明けてしまうというような話など、興味が尽きない。

それにしてもこういうエッセーを読むと、だれしも一家をなすような人というのは、ひとつのことを突き詰め、専門家ではないにしても、それに近いところまでの専門知識を持つようになり、それが新しい世界を作り出すことになるというのが、どうも定石のように見えてくる。そしてそういう視点であれこれ読んでいると、以外にも日経新聞のあちこちにそういう人たちがたくさん登場してくるから面白い。

たとえば今日の文化蘭には、今は現存しない昭和のチャンバラ映画のポスターを、当時のフイルムを参考にしながら、かつて映画館の看板絵描きをやっていた経験を活かして描き続けている人のエッセーが載っている。広告業で生計をたてつつ趣味として、子どものときに魅せられたチャンバラ映画、鞍馬天狗を演じた嵐寛や板妻や長谷川一夫などを描いて、それが1600枚にもなるらしい。それがなんの役に立つのなんて思う人は、文化というものがこうしたお金にならない創造活動の裾野の上に成り立っているということが分からない人なのだろう。

同じく今日の日経新聞にはフランスの技術者が円周率の計算を筑波大のスーパーコンピュータで出していた世界記録を1230億桁多い2兆7千億桁まで出した、しかも通常のコンピュータによって、という記事が出ている。これもエンジニアとしての仕事をしながら、趣味で、パソコンに外付けのハードディスクを付け足して、あとはオリジナルな創意によって達成したのだろうが、これもギネスブックに載ったりするのだろうが、べつにお金になるわけではないだろう。

人生ひとつのことを突き詰めることで、人類の文化の発展に寄与する。もちろん本人はそういう大層な気持ちでやっているわけではなくて、たんに趣味として自分のやりたいことをやっているというだけのことだろうけど、それが文化発展のためになるのだと思う。そういうことができる時代になってきたのだということだろう。
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