読書な日々

読書をはじめとする日々の雑感

『エデン』

2010年11月12日 | 作家カ行
近藤史恵『エデン』(新潮社、2010年)



『サクリファイス』のツール・ド・フランス編という位置づけのようだが、あいも変わらず自己犠牲というのか、俺の仕事はアシストという頭に凝り固まったチカの仕事ぶりに、あの華のツールがなんだかみすぼらしいものにしか見えない、そんな小説だった。

私はこのチカという主人公に、2009年のツールにスキル・シマノのチームで出場した別府をだぶらせてしまった。もちろん別府という選手のことは私はあまり知らないのだが、なんだかもうひとつ自己主張をしない、おとなしい日本人という、ヨーロッパ人がもっている日本人のイメージを地で行くような感じの選手に見ている。あくまでもこれは私の勝手な想像なので、もちろん実際の別府選手は違うだろう。

でも今年のツールにもでた新城幸也なんかをイメージさせる主人公だったらもっとツールの雰囲気も違った風に読めただろうにと思う。私はこちらのほうには南国沖縄の出身ということもあるが、高卒から本格的にロードパイクをはじめて、数年でツールに参戦できるようになったというからすごい。フランス語もまったく喋れなかったが、いまではテレビのインタビューなどにも上手に対応している。なんせ今年はジロとツールと二つのグラン・ツールを完走したのだから、たいしたものだ。アシストだけではなく、逃げ切りで上位入賞も果たしている。

なんかこれも勝手なイメージなのだが、明るくて、すぐにみんなから仲良くしてもらえる、そういう感じをもっている。どうせなら新城をイメージした主人公にしていたら、明るい作品になっただろうに、なんだかな。

主題も例によって仲間の信頼に応えるのか、裏切って自分のツーリストとしての立場を来年度につなげていけるような成績を上げるのかの葛藤というやつで、他にないのかなと思う。

どうでもいいことだが、今年はせっかく録画できる準備をしていたのに、J-Sportsで全部放送したのは3週間のうちのたった一日だけであとはダイジェストだったのは残念だ。まぁ録画しても5時間6時間の長丁場、見なかったかもしれないけどね。

『サクリファイス』も面白かった。

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