ルーツな日記

ルーツっぽい音楽をルーズに語るブログ。
現在、 フジロック ブログ と化しています。

CHICAGO; Blues & Soul Showdown 予習その2

2010-01-23 11:54:01 | フェス、イベント
BYTHER SMITH / ALL NIGHT LONG

楽しみでしかたがない「CHICAGO; Blues & Soul Showdown」。私は24日に行ってきます! 個人的に一番楽しみなのはミッティー・コリア。そして次はシカゴ・ブルースのバイザー・スミスです。もちろんフラミンゴスもジョニー・ロウルズも楽しみですけどね。

で、このバイザー・スミス。楽しみだと言うわりに私はこの方のことを良く知りません…。CDも2枚しか持ってないですし。で、その内の1枚が写真のアルバムで、97年にデルマークからリリースされた「ALL NIGHT LONG」。こちらの解説によりますと、彼は1933年(当イベントのフライヤーでは32年)、ミシシッピ生まれ。ということはもう70歳代後半ですね~。そしてなんと、かのJ.B.ルノアと従兄弟の関係だとか。10代の頃はボクシングをやったりカントリーを演奏したりしていたそうですが、50年代半ばにシカゴへ移住。丁度シカゴ・ブルース華やかしき頃ですね。当初はベーシストだったようですが、60年代にギタリストへ転向。ロバート・ロックウッド・ジュニア、ルイス・マイヤーズ、ヒューバート・サムリン、フレディ・ロビンスンなどからギターの手ほどきを受けたそうです。

さらにオーティス・ラッシュやジュニア・ウェルズらのバックを務める一方で、自己名義のシングルの吹き込みなどもこなしていたそうですが、アルバム・デビューは案外遅く、テキサスのグリッツというレーベルから1st作「TELL ME HOW YOU LIKE IT」をリリースしたのが80年代の初頭だそうです。その後、英JSP、ラウンダーと渡り歩き、95年にデルマークと契約。そこでの2作目が本作「ALL NIGHT LONG」となる訳です。

全曲バイザー・スミスによるオリジナル曲。2曲目「I'm Your New Lover」の歌詞にボビー・ブランド、バディ・ガイ、BBキングの名が登場しますが、ギター・スタイルやホーン隊を含んだ王道ブルースな雰囲気にBBキングからの影響を強く感じますね。特に軽快な「Hey Mr. Dee Jay」や「Live On This Man's Name」での強いアタック感でグイグイと切れ込んでくるギターはもろBB印。しかもBBの名曲「Thrill Is Gone」へのリスペクトを感じさせる「Daddy's Gone」なんて曲もありますし。

とにかくギターのゴツゴツとした音色と、朴訥としたフレージングが良いですね。そして力強くエネルギッシュな歌声。ファンキーなギターの刻みとホーン・リフが押しまくるアーバンな「What Did I Do」は迫力満点。スロー・ブルース「Look Over Your Shoulder」や「Walked All Night Long」のブルーな味わいも格別。さらにカントリー/ケイジャンな「Mother You Say You Don't Like The Black Colors」や「Is He White Or Is He Black?」みたいな曲が入っているのも面白いです。

コンサートでもカントリーな曲を演ったりするんですかね? そしてジャケ写のこの顔! やっぱチョーキングはこういう顔でやってもらわないとね。楽しみです!



で、楽しみついでに今回はYouTubeで探した動画もいくつかご紹介。

まずは先日、当ブログでも紹介したミッティ・コリア。YouTubeでも動く姿はこれぐらいしか見つかりませんでした。60年代のテレビ番組「THE!!!! BEAT」から「I Had A Talk With My Man」。
http://www.youtube.com/watch?v=HPcKJSw92a0&feature=related


続いてトリを務めるであろう、ドゥー・ワップの神髄、ザ・フラミンゴス。おそらく現在のメンバーであろうと思われる映像で、季節外れですけど「The Christmas Song」。
http://www.youtube.com/watch?v=O4luutZEri0&feature=related

バイザー・スミスはやっぱりこの曲が好きなんですね~。「Thrill Is Gone」です。
http://www.youtube.com/watch?v=jL-kqrLuS5E

ジョニー・ロウルズ・ブルース&ソウル・レビューを率いて、ハウス・バンドも務めるというジョニー・ロウルズ。何かのフェスでの映像のようですが、あまりにも服がラフすぎますよね?リハかと思いました…。でも流石に良い声してますね~。

http://www.youtube.com/watch?v=guwyMimnSpo

フジロック早割

2010-01-22 21:01:54 | フジロック
フジロック公式サイトにて今年も「早割」の発売が発表になりました。いよいよフジロックの季節になってきました。いやまだ開催まで半年もありますけどね…。

詳しくはこちら↓

http://www.fujirockfestival.com/

3日通し券1枚39,800円が、32,800円になるんですからお得ですよね。7,000円引きですから! でも抽選による限定10,000枚ですけどね。

あわせて、「HEAL NIIGATA 第7弾 / 雪の苗場でWeSky a Go-Go!」の開催も発表になりました。これも恒例ですが、私はまだ参加したことがないんですよね~。フジロック好きとしては一度は参加したいと思うのですが、なかなかね~。

ま、何はともあれ、まずは早割を当てないと!


ソロモン・バーク!

2010-01-21 23:36:25 | ブルース
SOLOMON BURKE / THAT'S HEAVY BABY 1971-1973

ヤフーのニュースによりますと、今年のジャパン・ブルース&ソウル・カーニバルの開催が決定したようです。詳細をコピペすると以下の通り。

5月29日(土)開場17:00開演17:45
出演:ソロモン・バーク/バーナード・アリソン/他
5月30日(日)開場14:45開演15:30
出演:ソロモン・バーク/コーリー・ハリス/blues.the-butcher-590213/他
日比谷野外音楽堂 
料金:8,000(税込・全席指定)※雨天決行
主催:テレビ朝日/文化放送
問い合わせ:M&Iカンパニー 03-5453-8899


ソロモン・バーク!!!!!!

これ本当ですかね!? 初来日ですよ! これは見たい! しかも久し振りの2日開催ですね。海外組もバーナード・アリソンとコーリー・ハリスを加え3組と豪華。近年、微妙に縮小傾向を感じていただけにこれは嬉しいですね。ジャパン・ブルース&ソウル・カーニバルの名に恥じないブッキングですね。

繰り返しますけど、本当ですかね? ちなみにM&Iのサイトを見てもまだ何も公表されてないんですけど…。


それと別件ですが、3月に来日するギャラクティックのゲストに、リバース・ブラス・バンドのトロンボーン奏者、COREY HENR に続いて、なんとネヴィル兄弟の末弟、シリル・ネヴィルが決定したようです。こちらも凄い! ギャラクティックはニューオーリンズな新作を発表したばかりなので、これも楽しみですね! ちなみにこちらはスマッシュの公式サイトにて発表がありました。

既に始まっている「CHICAGO; Blues & Soul Showdown」もメチャクチャ楽しみですし、3月にはビルボードライヴでジェイムス・コットン、4月はブルーノートでロバート・クレイもあります。今年は年明け早々熱いですね!!




追記:

M&Iの公式サイトでもジャパン・ブルース&ソウル・カーニバルの情報が公開されましたね。しかも先行予約も始まっているようなので早速申し込んじゃいました。なんかもう今からワクワクしています!!


CHICAGO; Blues & Soul Showdown 予習その1

2010-01-21 13:49:38 | ソウル、ファンク
MITTY COLLIER / SHADES OF MITTY COLLIER THE CHESS SINGLES 1961-1968

いよいよ「CHICAGO; Blues & Soul Showdown」ですね。イベント自体、総合的にもの凄く楽しみですが、中でも期待しているのがミッティ・コリアです。60年代にシカゴのチェスで活躍し、太く低い声で包み込むように、そして荒々しく弾けるように唱うディープな歌唱が素晴らしい女性シンガーです。

1941年アラバマの生まれ。チェス入りしたのは1960年のようですね。19歳ですか? チェスといえばシカゴ・ブルースが有名で、なんとなく男臭いイメージがありますが、女性シンガーもちゃんと居たんです。映画「キャデラック・レコード」でフューチャーされたエタ・ジェイムスが有名ですね。そしてこのミッティ・コリアもそのエタと並びチェスを彩った女性ソウル・シンガーの代表格の一人なのです。チェスには15枚のシングルと1枚のアルバムをリリースしています。

写真のアルバムはそのチェスに残した15枚のシングルA面曲全てと、9曲のB面曲を加えた24曲入りのシングル・コンピレーション盤で、08年のリリース。残念ながら未発表の発掘音源こそ無いものの、多くの初CD化曲を含みディープ・ソウル・ファンを驚喜させた1枚です。ほぼ年代を逆行するような曲順で収録されています。1曲目と2曲目に収められた68年の最後のシングルは、南部はマスル・ショールズを詣でた作品。まず何はともあれ2曲目「Everybody Makes A Mistake Sometime」でしょう。フェイム録音となるこの曲は、アル・ベル、エディ・フロイド作の極上バラードです。じわ~っと染みてくるフェイムの南部サウンド。語りを挟んだ後、野太い声でグワ~っと歌い上げるミッティ・コリアー。堪らないです。もう1曲の「Gotta Get Away From It All」は61年のデビュー曲をセルフ・カヴァーしたもの。両者を聴き比べてみるのも面白いかも。

デビュー曲となった「Gotta Get Away From It All」と「I've Got Love」は後の歌唱に比べればまだ軽さが感じられる、って言うか「I've Got Love」にいたっては曲やアレンジ的な部分で可愛らしくもある。ちょうどこのアルバムのジャケ写のイメージを連想させます。ですがこの時まだ20歳ですからね。この若さでこのディープな歌いっぷりは尋常ではありません。

64年に名曲「Let Them Talk」を歌い、同年に代表曲となる「I Had A Talk With My Man」をリリースするにいたって、ディープなバラード・シンガーとしての才能を開花させます。「No Faith, No Love」、「Walk Away」、「Sharing You」、「Like Only Yesterday」、「That'll Be Good Enough For Me」など、ディープなスロー・ナンバーの素晴らしいこと!語りかけるようにしっとりと、そしてたっぷりと歌い上げる「I Had A Talk With My Man」は胸にじわりと染みてくる。一方「That'll Be Good Enough For Me」ではこみ上げてくる感情を押さえきれないがごとく、荒々しく吠えるように歌う、そのソウルは胸に突き刺さります。どちらも名唱。

ミッティー・コリアの魅力はもちろんバラードだけではありません。ノーザン・ダンサーな「Do It With Confidence」や「Help Me」あたりのアップ・ナンバーでも、重い歌声が妙に腰に響きますし、ファンキーな「Git Out」での歌唱はまるで重戦車のような迫力です。ブルース・ナンバー「I'm Your Part - Time Lover」も味わい深いですし、リスム&ブルースな「You're The Only One」の力強い歌声にも痺れます。また「(Lookin' Out The Window) Watching And Waiting」での大海原のような大きな歌唱も素晴らしい。

こういうのを聴かされるとやっぱり60年代って良い時代だったなと思わされますよね。今の若い女性シンガーでこんな風に歌う人って絶対居ないですもんね。この後ミッティー・コリアはPeachtreeというインディー・レーベルに数枚のシングルを残し、ゴスペルの世界へ入り、俗世界から離れ自身の教会で唱うようになります。

もちろん現在もゴスペルの世界で歌っているようです。なので今はパスター・ミッティ・コリアと呼ばれるそうです。聖職に就いている故に昔のようにR&Bを歌うことは出来ないそうですが、教会で歌い続ける人の本物のゴスペルを生で聴ける機会もそうは無いので、これは貴重な体験になりそうです。それに曲は違えどあのミッティー・コリアの伝説の歌声が聴ける訳ですからね!

09年ベスト・アルバム 第1位!!

2010-01-20 18:24:56 | 2009年総括
第1位 : LEVON HELM BAND / @MERLEFEST

このライヴ盤は最高です!! 08年4月26日のマールフェストでのレヴォン・ヘルム・バンドのステージを収録したもので、元々は FESTIVALINK NET というライヴ音源のダウンロードを中心に販売しているレーベルから出されたもののようですが、これがめでたく日本盤として09年に発売になりました。

96年に咽頭癌を発症し、それから数年は声の衰えが激しかったそうですが、07年の「DIRT FARMER」、そして09年の「ELECTRIC DIRT」という2枚のスタジオ作で、完全復帰と断言出来るような元気な歌声を披露してくれたレヴォン・ヘルム。ですが果たしてライヴではどうなのだろう?という心配もありました。で、このライヴ盤なのです! 元気でした!もちろん若い頃と比べれば衰えていますよ。もうすぐ70歳ですからね。しかも咽頭癌を乗り越えてということを考えれば、奇跡的とも言える程元気な歌声を聞かせてくれているのではないでしょうか? それに年齢を重ねた味わいと渋みもまた格別。その声はしゃがれているけどハリがあり、独特のファンキーさと土っぽさに溢れています。そして何より愛嬌がある。この声が好きというか、なんか愛おしいんです。最高です!

ただ残念なことに、レヴォンの喉や体力を慮ってのことかは分かりませんが、全曲をレヴォンが歌っている訳ではありません。数曲はバック・メンバー達が入れ替わり立ち代わりでリード・ヴォーカルを務めていきます。しかしこのヴォーカリスト達が個性派揃いで、まるで南部のソウル・レビューやカントリー・レビューのような雰囲気を感じさせてくれて格好良いんですよ! バック・メンバーは、エイミー・ヘルム、ラリー・キャンベル、テレサ・ウィリアムス、ブライアン・ミッチェルといった、お馴染みのメンバーを核に、スティーヴン・バーンスタインを中心にしたホーン・セクションが入るという、ほぼ「ELECTRIC DIRT」と同じようなメンバー。さらにゲストにサム・ブッシュとブルース・ホーンズビー。もちろんレヴォンはドラムも叩いているようです。結局、最新作「ELECTRIC DIRT」が持つ芳醇な躍動感は、日頃のライヴで培われたもの、そのものだったという訳ですね。なんか納得です。そして前後しますがこの「@MERLEFEST」が曲目こそ違えど、そのライヴ版と言っても良いのかもしれません。

レヴォン・ヘルムが歌うザ・バンド時代の名曲「Ophelia」と「Rag Mama Rag」。感無量です。特にリズムが良いですね~。堪らないものがあります。そしてホーン隊が素晴らしい!泣きたくなりますね。もちろんレヴォンの声も最高です。この曲にこの声あり!!って感じです。そして前作「DIRT FARMER」収録の「Got Me A Woman」や「Anna Lee」。さらにボブ・ディランの「It Takes A Lot To Laugh, It Takes A Train To Cry」やレイ・チャールズの「I Want To Know」、ブルース・スプリングスティーンの「Atlantic City」などのカヴァー。どれもこれも熟成されたバンドの演奏とレヴォンの歌心とが溶け合った、ライヴならではの躍動感に満ち溢れています。

06年にレヴォンのライヴ・セッションを収めた作品「MIDNIGHT RAMBLE MUSIC SESSIONS」でフューチャーされたデルタ・ブルースマン、リトル・サミー・デイヴスが歌う「Everything’s Gonna Be Alright」と「Baby Scratch My Back」。それぞれリトル・ウォルターとスリム・ハーポのカヴァー。この人ももう相当のお歳だと思うのですが元気ですね~。 さらに、おそらくラリー・キャンベルが歌っていると思われる「Deep Elem Blues」、誰だか分かりませんがもの凄いしゃがれ声で歌う「The Shape I’m In」。これ誰ですかね? ブライアン・ミッチェルかな~。もちろんレヴォンの愛娘エイミー・ヘルムとラリー・キャンベルの奥方テレサ・ウィリアムスも素晴らしい美声とハーモニーを聴かせてくれます。この二人がまたカントリーな良い声なんですよ。

で、そんなヴォーカル陣以上に素晴らしいのがバンドの演奏。フォーク、カントリー、ブルース、ゴスペル、ニューオーリンズと、ありとあらゆるルーツ系ミュージックをごった煮にしたような演奏はまさにザ・バンド直系といった感じ。やはりギターからマンドリン、フィドルまで弾きこなすラリー・キャンベルの存在は大きいですね。それとピアノやアコーディオンでガンボなノリを演出するブライアン・ミッチェル。さらにスティーヴン・バーンスタインが率いるホーン隊。格好良いです!

最後を締める大名曲「The Weight」。レヴォンの絞り上げるような歌声が妙に染みます。女性陣のコーラスがまた良いですね。それにしても名曲ですよね~、この曲は。終わった後も極上の余韻を残す。そしてその余韻に浸りながらしばらく鳴り止まない拍手と歓声がこの日のコンサートの素晴らしさを物語っていますね。

これはまさにルーツ・ミュージックの桃源郷。来日してくれないですかね~。このメンバーで! 無理でしょうね…。

09年ベスト・アルバム 第2位

2010-01-18 13:24:10 | 2009年総括
第2位 : WILLIE NELSON AND ASLEEP AT THE WHEEL / WILLIE AND THE WHEEL

「ルーツな日記」が趣味と気分で選んだ09年ベストアルバム30選の第2位! ウィリー・ネルソンとアスリープ・アット・ザ・ウィールとの共演盤です! これは最高です! 聴いててこんなにも心がウキウキと弾むアルバムはそうは有りません!!

ウィリー・ネルソンはご存知カントリー界の大御所。70代後半に差し掛かりながらも、高品質な作品をばんばんリリースしています。09年には2枚のアルバムをリリース。一つはアメリカン・スタンダードを歌ったその名も「AMERICAN CLASSIC」。そしてもう一つが、その一つ前の作品となる今作「WILLIE AND THE WHEEL」です。こちらは古き良きウエスタン・スウィングをトリビュートした作品。

ウエスタン・スウィングとは、カントリーにジャズのスウィング感を融合したもので、1930年代にテキサスで生まれたそうです。ボブ・ウィルズやミルトン・ブラウンなんかがそのパイオニアと言われます。この30年代はビッグ・バンドによるスウィング・ジャズが大流行していた頃なので、カントリー界でも先鋭的なミュージシャンがそれを取り入れようとしたのでしょうね。もしくは単純にカントリーで楽しく踊りたかっただけかもしれませんが。ま、何はともあれ思わずステップを踏みたくなる、そんな魅惑のカントリー・ミュージックな訳です。

そしてそんな愛すべきウエスタン・スウィングを現代に伝える最高峰のバンドがアスリープ・アット・ザ・ウィール。日本ではあまり馴染みが無いバンドかもしれませんが、グラミー賞のカントリー部門を何度も受賞している凄いバンドなのです。特にボブ・ウィルスをトリビュートした「RIDE WITH BOB」は名盤として知られています。で、そんなアスリープ・アット・ザ・ウィールをバックにウィリー・ネルソンがウエスタン・スウィングの名曲を歌う! こんなの悪いはずがありません!

もちろんこの両者は初顔合わせと言う訳ではありません。先の「RIDE WITH BOB」にもウィリーはゲストで参加していましたしね。なのでウィリー・ネルソンのウェスタン・スイング作品のバックをアスリープ・アット・ザ・ウィールが務めるというのは嬉しいサプライズであったと同時に、この組み合わせしかあり得ない当然の結果のようにも思えました。ですがこれの実現には、意外な人物が絡んでいたようです。

それはジェリー・ウェクスラー。アトランティックでアレサ・フランクリンをはじめ数々のソウル名盤を世に送り出した偉人にして、サザン・ソウルからスワンプ・ロックにいたる南部ミュージックの仕掛人でもあります。このジェリ・ウェクスラーが今作「WILLIE AND THE WHEEL」のエグゼクティブ・プロデューサーにクレジットされているのです。この辺りのお話は萩原健太さんのブログ「Kenta's Nothing But Pop!」に詳しいので、ちょっとかいつまませて頂きます。

70年代初頭、ウェクスラーはカントリー・ロック/スワンプ・ロックに興味を示し、ダグ・サーム獲得のためテキサスはオースティンに赴きます。そしてあるクラブでダグ・サームとその前に演奏していたウィリー・ネルソンを観て、即座に契約を結んだそうです。しかしウィリーはアトランティックを2枚のアルバムを残しただけで契約打ち切りとなります。実はこの時ウェクスラーは、ウィリーの3枚目のアルバムとして、アスリープ・アット・ザ・ウィールとの共演盤を計画していたそうなのです。ですがその計画も契約打ち切りにより儚く消えてしまった訳です。

しかしここで話は終わらない。それから30数年を経た07年、ジェリー・ウェクスラーはウィリー・ネルソンのコンサートを見に行き、そのときオープニング・アクトをつとめていたアスリープ・アット・ザ・ウィールを見てかつての計画を思い出したのです。そうして誕生したのがこの「WILLIE AND THE WHEEL」という訳です。ウェクスラーは残念ながらその翌08年に亡くなられてしまいました…。

この作品は言わば、ウェクスラーが最後に残してくれた置き土産のようなものなのです。萩原健太さんもアトランティック時代のウィリーが大好きだと書かれていますが、私も全く同感なのであります。そしてこの「WILLIE AND THE WHEEL」が、音楽的趣向は大分違うとは言え、あのアトランティック時代の続きという意味合いもあると思うと、さらなる愛着が沸いてくるんです。

曲目はボブ・ウィルスやミルトン・ブラウン、スペイド・クーリーなんかが歌った名曲の数々。「Corrine Corrina」や「I'm Sittin' On Top Of The World」なんていう超有名なトラッドも含まれています。とにかくアスリープ・アット・ザ・ウィールのスウィング感溢れる演奏が堪りません。何度聴いても心が弾みます。もうウキウキです! 弾むリズム隊と軽やかに絡むソリスト達の演奏の素晴らしいこと! 特にスティール・ギターやフィドルの音色が堪りませんね。そして随所でトラディショナルな息吹を吹き込むホーン隊。主役となるウィリーの歌声も暖かさの中に渋みと苦みがあって、彼独特の味わいを滲ませています。そしてその歌声に呼応するように入るコーラスがまた良いんですよね。アットホームな雰囲気の中にも、共演盤ならではのスリリングな呼吸が感じられます。最高です!

とにかくウエスタン・スィングに対する愛に溢れた作品。 テキサスって良いな~。

09年ベスト・アルバム 第3位

2010-01-16 17:37:24 | 2009年総括
第3位 CYRIL NEVILLE / BRAND NEW BLUES

我が年間ベストアルバムもいよいよ第3位。シリル・ネヴィルです。ご存知ネヴィル・ブラザーズの末弟です。やっぱり私はシリル・ネヴィルが大好きなのです。たとえフジロックを一人すっぽかしたとしても、私にとってシリル・ネヴィルは特別な人なのです。

これまでシリルはネヴィルズの中でも最もミクスチャーな感覚を前面に出してきた人で、ニューオーリンズ・ミュージックにアフリカ、レゲエ、ヒップホップなどを貪欲に取り入れてきました。そしてそれはネヴィルズ以上に自身のプロジェクトであるアップタウン・オールスターズやトライブ13などに顕著でした。そして今作はブルースです。シリル・ネヴィルによるブルース・アルバム。そう聞いただけで私は興味津々だったのであります。

とは言え新作がブルース作だと聞いた当初は、正直シリルがブルースを歌う?って想像出来ませんでしたし、案外消化不良的なアルバムになるのでは?なんて失礼な心配もしていたり…。ですがそこは流石シリル・ネヴィルでした! 別にシリルがブルースを歌う訳ではありません。いや歌うんですけど、歌う以前にこれはシリル流のミクスチャーな感覚での新しいブルース解釈なのです。シリル・ネヴィルここにあり!です。「BRAND NEW BLUES」というタイトルに偽り無しなのです!

プロデューサーは新進気鋭のラテン・ファンク・バンド、ピンプス・オブ・ジョイタイムの中心人物ブライアンJ。このバンドはニコデマスが主催するワンダーウィールからデビューしているバンドで、ワンダーウィールと言えば、アフロ、ラテン、中近東、ジプシーなどの民族要素をブレイクビーツ、ハウスなどと融合したミクスチャーな音楽をリリースしているレーベル。ブルース・アルバムを作るにあたってジョー・ヘンリー辺りではなく、こういう方面の新しい才能と組むところがシリルらしい。でもシリルとワンダーウィールの繋がりはよく分かりません…。ただ今作以前にもピンプス・オブ・ジョイタイムの07年のデビュー作「HIGH STEPPIN」にシリルが1曲ゲスト参加していたり、トライブ13の「THE HEALING DANCE」にはブライアンJがソングライターにクレジットされてたりしています。

ゲストには、兄アート・ネヴィル(organ)、甥のアイヴァン・ネヴィル(organ)とイアン・ネヴィル(g)、さらにタブ・ベノワ(g)、ジャンピン・ジョニー・サンソン(harp)、ウェイロン・ティボドー(washbord)といったニューオーリンズ/ルイジアナ勢も参加していますが、さほどニューオーリンズ臭は感じられません。ですが得体の知れないガンボなごった煮感と、ひりひりとしたストリート感があり、音の“ざらつき”と“ぎらつき”にはラテンの匂いがします。キーマンはやはりブライアンJ。この人、ギター、ベース、ドラムスといった核になる部分をほとんど一人でこなしているんです。ゴツゴツとした質感のギターはこの作品の印象を決定付けていますし、ファンク・バンドを率いるだけあって、跳ねるドラムにグルーヴするベースと、かなりのやり手です。

とは言え全体を支配するのはシリルのヴォーカル。独特の粘り気を持ち、エモーショナルを絞り出すように歌うあの歌唱です。特別ブルースを意識しているようには感じませんが、これまでに無い程に生々しい質感の歌声は、今まで以上にソウルフルですし、やはりブルージーなのかもしれません。その歌声からは内に秘めた魂のようなものがひしひしと感じられます。やはり熱い漢なのです。

1曲目、ジミー・リードの「I Found Joy」。ラテンとニューオーリンズが融合したようなアレンジで、人を食ったようなチープなリズムが堪らなく格好良い! ニューオーリンズなオルガンはアート・ネヴィル。続くタブ・ベノワとイアン・ネヴィルのギターにアイヴァン・ネヴィルのハモンドも入るタイトル曲「Brand New Blues」。ブルージーなイントロからネヴィルズ印のファンキーな展開になります。抑制を効かせながらも唸るような、吠えるようなシリルの歌が良いですね。そしてブライアンJのギターが格好良い「Shake Your Gumbo」と「Cheatin' And Lyin'」、さらにジョニー・サンソンのハープとウェイロン・ティボドーのウォッシュボードが小気味良く暴れる「Cream The Beans」、これらはシリルとブライアンJの共作曲ですが、たしかにブルースではあるのかもしれませんが、リズムにも響きにも妙にざわざわとしたアングラ感のようなものがあって惹かれます。

力強いワンコードからサビへと流れる一見マディ・ウォーターズ風な「Mean Boss Blues」。ですがドラムの跳ね方、アイヴァンのオルガン、サンソンのハープなどがグラグラと絡み合い、決してシカゴではないガンボなうねりを産み出しています。そして今作中で最もストレート・ブルースな「Blue Blue Water」。またしてもジミー・リードのカヴァーですが、あまりにもブルース的すぎて、反ってこのなかで異質に感じます。しかしストレートにブルースを歌うシリルもかなり良いです。ラストを締める「Slave Driver」もブルージーですが、オリジナルがボブ・マーレーであるところが凄い。まさにレゲエ・ブルース、シリルらしいアイデアですが、味わいはディープです。

ブルース。確かにブルースです。ですがそんじょそこらのブルースとは一味違うブラン・ニュー・ブルース。いやはや、シリル・ネヴィルの底力を感じさせられる傑作です。

09年ベスト・アルバム4位~5位

2010-01-15 15:32:31 | 2009年総括
4位

LEVON HELM / ELECTRIC DIRT
レヴォン・ヘルムの最新作。まるでザ・バンドのような1曲目「Tennessee Jed」からテンション上がりまくりです。前作「DIRT FARMER」も素晴らしかったですが、それから2年後という早いスタンスでまたも傑作を届けてくれました。咽頭癌を乗り越えてのこの充実振りは嬉しい限りですね。前作はアコースティックを基調としたトラディショナルな味わいが濃い作品でしたが、それに比べると今作はおよそ半数の曲でエレキギターが前面に出て、数曲ではブラス隊も入るなど、ブルース色やロック・テイストを増した華やかな仕上がりになっています。

何はともあれレヴォンの歌声が良いですね。しゃがれてはいますがハリがある。そして独特の躍動感に溢れてる。土っぽくて、ファンキーで、めちゃくちゃソウルフル! 何より人間味に溢れてる! こういう歌を歌える人ってなかなか居ませんよね。もちろんドラミングも最高! やっぱりザ・バンド独特の跳ねたリズムはレヴォンが産み出していたんだと再確認させられました。あとマンドリンも弾いてますよ~!

プロデューサーは前作から引き続いてラリー・キャンベル。バックにはキャンベルの奥方テレサ・ウィリアムスや、レヴォンの娘エイミー・ヘルム、そのエイミーのバンド仲間でもあるバイロン・アイザックス(b)、ピアノやオルガンからアコーディオンまで弾きこなすブライアン・ミッチェルなど、近年のレヴォン周辺でお馴染みといったメンバーが名を連ねています。まるで“レヴォンと愉快な仲間達”的な雰囲気ですが、それは音楽からも伝わってきます。

そして「Tennessee Jed」にいかにもザ・バンドなホーン・アレンジを施しているのはセックス・モブのスティーヴン・バーンスタイン。これなんて往年のアラン・トゥーサンを意識してるんだろうな~、なんて思っていると、7曲目「Kingfish」と11曲目「I Wish I Knew How It Would Feel To Be Free」ではそのアラン・トゥーサンがホーン・アレンジにクレジットされている!! 堪りませんね~

曲目はカヴァー中心ですが、グレイトフル・デッド、マディー・ウォーターズ、ランディ・ニューマン、ステイプル・シンガーズ、ハッピー・トラウム、ニーナ・シモンなど、ジャンル・レスでありながらレヴォン・ヘルムらしい選曲になっています。この選曲のセンスもさることながら、レヴォンの個性とバンドの一体感でカッチリと一つの作品に纏め上げられているところがまた素晴らしい!


5位

BUDDY & JULIE MILLER / WRITTEN IN CHALK
昨年のグラミー賞で主要3部門を総なめにしたロバート・プラント&アリソン・クラウス。その時のパフォーマンスで、その二人とT・ボーン・バーネットの陰に隠れてほとんど画面に映らないギタリストが居たのをご存知でしょうか? そのギタリストこそ今作の主役バディ・ミラーなのです。

バディ・ミラーはオルタナ・カントリー界の名ギタリストとして知られ、数あるサポートの中でも、エミルー・ハリスのバック・バンド“スパイボーイ”での活躍は有名で、その名演は彼女の98年のライヴ盤「SPYBOY」として残されています。近年ではソロモン・バークのカントリー作「NASHVILLE」(06年作)のプロデュースが印象深いですね。ソウルとカントリー、もしくは黒人と白人の垣根を取り払った素晴らしい作品でした。もちろんソロのシンガー・ソング・ライターとしても活躍し、素晴らしい作品を多数残しています。04年の「Universal United House of Prayer」は傑作でしたね。

そして今作のもう一人の主役がバディの奥方ジュリー・ミラー。彼女もシンガー・ソング・ライターとして90年代からソロ作を数作品残しているのですが、残念ながら私は聴いたことが無いんですよね~。すいません…。で、このご夫婦は、それぞれで活躍する一方、夫婦名義の作品も残しているわけです。今作はその3枚目になるのでしょうか?

ラリー・キャンベルのフィドルに導かれて始まる1曲目「Ellis County」。哀愁たっぷりの旋律が素晴らしいジュリー・ミラーの作品で、なんとアルバム全12曲中8曲がジュリーの作となる曲で締められています。ジュリーの作り出す素朴且つ切ないメロディーが今作の核になっている感じです。そしてそのメロディーと共に二人の個性的な歌声が聴けば聴く程染みてくる。アウトローな響きを持つバディの声と、儚さと刺とを併せ持つようなジュリーの歌声。そして両者のハーモニー、最高です。

今作中唯一の夫婦共作ナンバー「Gasoline And Matches」はガレージ風味のオルタナ・カントリー。ジュリーの静かな歌声が美しいスロー・ナンバー「Don't Say Goodbye」。ここでハーモニーを付けるのはパティ・グリフィン。ロバート・プラントとジェイ・ベルローズ(ds)が参加し、あの雰囲気を再現するかのような「What You Gonna Do Leroy」。スチュワート・ダンカンのフィドルとガーフ・モリックスのラップ・スティールが効いてますね~。そして元はおそらくリズム&ブルース系の曲と思われるカヴァー「One Part, Two Part」はスカッとしたカントリー・ロックに仕立て上げられている。しかしバックにはREGINA & ANN McCRARYという黒人姉妹がコーラスを付けるという憎い演出。その他、ジュリーの物憂い歌声に惹かれるジャジーな「Long Time」、バディの重くソリッドなギターが格好良いブルース・ロック「Memphis Jane」などなど。最後はエミルー・ハリスがコーラスを付けた「The Selfishness In Man」で雄大に終わる。名盤です!



それにしてもレヴォン・ヘルム(4位)とバディ&ジュリー・ミラー(5位)、どちらもラリー・キャンベルの活躍が光っていますね。で、レヴォンも、キャンベルも元を辿ればボブ・ディラン(6位)のバック・バンドの出。ちなみにバディ&ジュリーはレヴォンの前作「DIRT FARMER」でコーラスを付けている。さらにバディ・ミラーとジム・ローダーデイル(9位)は盟友のような仲で、近年も共演を重ねています。なんか私のベストアルバムはこの辺りの人脈総ざらいのようになっていますが、正直、この辺りを聴いていれば、「ルーツな日記」的に鉄板なのです!

09年ベスト・アルバム6位~10位

2010-01-13 23:47:52 | 2009年総括
6位

BOB DYLAN / TOGETHER THROUGH LIFE
やっぱりボブ・ディランでしょう。この声には抗いがたい説得力があります。前作「MODERN TIMES」の延長上にあるような作風ではありますが、ロス・ロボスのデヴィッド・ヒダルゴの参加によるラテン色に新たな妖気を感じますよね~。そしてアルバム全体がディランならではの緊張感で包まれていますね。ディランの声には前作同様に魔力的な強さを感じますが、それと同時に何処か儚げな響きも感じます。そしてバック・バンドの演奏は芳醇なルーツ・ミュージックを奏でながらも、退廃的に歪んでいる。このアルバムの持つ不思議な緊張感は、そんなアンバランス感が絶妙の均衡を保っているからなのかもしれませんね。「Beyond Here Lies Nothin'」や「If You Ever Go To Houston」のような異国情緒の深い曲が特に秀逸。「Life Is Hard」や「This Dream Of You」のようなセンチメンタルな曲も味わい深い。マディ・ウォーターズのあの曲を使った「My Wife's Home Town」も強烈。全体の色合いとしては“枯れ”ているかもしれませんが、でもその“枯れ”をも“凄”みに変えてしまう力をディランは持っている。やっぱりディランは魔王なのです! って6位じゃちょっと低過ぎるかな~。ちなみに前作「MODERN TIMES」は当ブログの06年ベストアルバム第1位でした。

7位

FUNKY METERS / LIVE IN JAPAN
ニューオリンズ・ファンクの雄、ファンキー・ミーターズによる09年の夏に行われた渋谷クワトロ公演の実況録音盤。2枚組で2時間越え。これは沼です。底なし沼です。肩までどっぷりな感じです。これぞバイユー・ファンクの真骨頂です。有名な曲や大好きな曲が次から次へと繰り出されるのも感無量ですが、それ以上にただただグルーヴに浸かり続ける快感! まるでアメーバのようにリズムを変化させていくバイユー・ジャム・セッション。堪りません。私はこの日のライヴは見逃しましたが、この2日後フジロックで観ました。私にとって今年のベスト・アクトでした。それにしてもバティステのドラムは凄いですね~。フジで観た時以上のパワフルさを感じます。そしてイアン・ネヴィル。彼もソロになると結構弾いていた印象がありますが、こんなにアグレッシヴだったかな~? で、全体的にエコーが深くかけられてる感じで、どこかサイケ・ファンク的な雰囲気すら感じさせる。緩さともっちゃり感を色濃く感じたフジとはちょっと違う印象ながら、そこがまた新鮮で格好良い! アート・ネヴィルのオルガンも良い音してますし、沼グルーヴを強烈にうねらせるジョージ・ポーター・ジュニアのベースも最高です。若きイアンのカッティングも中毒性があって良いですし、それらを後ろからガンガン攻め立てるようなバティステのセカンドライン・ビートも強烈! 4人それぞれの音が刺激し合いながら絡み付き、ドロドロと2時間強のファンク沼。あ~、また生で体験したい!!

8位

LITTLE JOE WASHINGTON / TEXAS FIRE LINE
ダイアルトーンが誇るテキサス・ブルースの怪人リトル・ジョー・ワシントン、4年振りの新作。のっけからJBの「I'll Go Crazy」をグシャグシャに歌い、掻きむしるようにギターを弾きまくる。これがブルースか?いやこれぞブルースでしょ! 洗練されて奇麗になりすぎたブルースばかりが幅を利かせる昨今ですが、ここではそんな洗練とはおよそかけ離れたプリミティヴな勢いに圧倒されます。正直、歌もギターも決して上手くはないですよ。ですが驚異的にエグイ。もうまるでエグ味の塊。そのエグ味でもってサム・クックの「You Send Me」やヘッドハンターズの「Chameleon」なんかをやってしまう破天荒さ。堪りませんね。しかも「You Send Me」はかなり良い!! このやさぐれた歌唱はこの人にしか出せない味わいですね。そしてギターも凄い。流石はテキサスな切れ込みを感じさせながら、感情先攻で弾けまくる。もういかがわしいフレーズの連発ですが、そこにリトル・ジョーならではの泥臭さが溢れています。そんなやりたい放題なリトル・ジョーに対してタイト且つふくよかなグルーヴを提供するバック・バンドがまた素晴らしい。ダイアルトーンの職人達ですね。自由奔放なリトル・ジョーをどっしりとしたの演奏でカチッとサポートしています。ホーン隊を含む極上なサウンドが何故かドロドロのリトル・ジョーとよく絡むんですよね。ギラギラとしたアール・キングの「Those Lonely Lonely Nights」は特に絶品です。



9位

JIM LAUDERDALE / COULD WE GET ANY CLOSER?
快調に新作をリリースし続けるジム・ローダーデイル。ドリーム・プレイヤーズを率いた前作「HONEY SONGS」も素晴らしい作品でしたが、今作はブルーグラス・アルバムです。カントリー・ロックなイメージのあるジム・ローダーデイルですが、実は過去に2度もグラミーのブルーグラス部門を受賞しているグラッサーなのです。で、今作も本年度のグラミー賞にノミネートされています。まず曲が良い!! 全曲ジムの作曲及び共作曲で締められています。各メンバーが鬼のようなテクニックで疾走する脅威のハイ・スピード・ナンバー「I Took A Liking To You」からスタートし、雄大な大地を思わせる、カントリーらしい開放感と哀愁をメロディーに乗せ、ロマンティックな土っぽさを持った歌と演奏が並びます。アコギ、マンドリン、バンジョー、フィドルの音色からブルーグラスの魅力がたっぷり味わえると同時に、ジムらしいロック・テイストも隠し味的に感じられます。そしてプロデューサーでもあり、ジムの過去作でも活躍していたRANDY KOHRS のリゾネーター・ギター。彼のスライドは今後も注目です!

10位

JOHN BOUTTE & PAUL SANCHEZ / STEW CALLED NEW ORLEANS
実は08年の作品のようなのですが、多分日本に入ってきたのは09年だろうと言うことで…。ジョン・ブッテとポール・サンチェスの共演盤です。現在のニューオーリンズ・シーンで注目を集めるシンガー・ソング・ライターの二人ですが、どちらもデビューは90年代という比較的若い世代。特にジョン・ブッテは近年驚異的に頭角を表してきてますね。1曲目「Stew Called New Orleans」からブッテの暖かみのあるハスキーな声はもうソウルフルを通り越して“崇高”と評したい響き。バックの演奏がシンプルなので余計にブッテの歌声がダイレクトに染みてきます。スロー・ナンバー「A Meaning Or A Message」なんか染みまくりです。一方のポール・サンチェスも、柔らかさと苦みを伴った素晴らしい声の持ち主で、二人のリード曲が交互に配され、その個性の対比と融合も面白い。サンチェスの弾くアコースティック・ギターも美しいですね。そしてもう一人のキーマンがトランペットのリロイ・ジョーンズ。彼のペットがトラディショナルな香りを吹き込みます。オリジナル中心の曲目も心地よいスウィング感を持った秀曲揃い。カヴァーではジェリー・ロール・モートンの「I Thought I Heard Buddy Bolden Say」やポール・サイモンの「American Tune」も取り上げています。「American Tune」でのブッテの歌唱も神がかってますね。

09年ベスト・アルバム11位~20位

2010-01-12 13:17:26 | 2009年総括
11位

ALLEN TOUSSAINT / THE BRIGHT MISSISSIPPI
ジョー・ヘンリーがプロデュースしたアラン・トゥーサンのニューオーリンズ・ジャズ作品。ニューオーリンズの息吹とアラン・トゥーサンの軽やかで円やかなタッチを存分に楽しめます。そしてジョー・ヘンリーらしい退廃的なムードが、古き良きニューオーリンズへの哀愁を際立たせています。聴けば聴く程味が出る傑作。

12位

RICKIE LEE JONES / BALM IN GILEAD
これは名盤ですね。前作も素晴らしかったですが、今作はもっと落ち着いた暖かい雰囲気。フォーク、カントリー、ソウル、ゴスペルなどがスピリチュアルに融合しています。彼女の歌声がまた素晴らしいですね。何処か頼りなげで儚い雰囲気なれど、何かある種の“境地”に達したような力強さがあります。ゲストにベン・ハーパー、アリソン・クラウス、ビル・フリゼール、などが参加。

13位

MORIARTY / GEE WHIZ BUT THIS IS A LONESOME TOWN
このアルバムはよく聴きました。フランスから登場の不思議バンド、モリアーティ。古き良きトラッドやブルースの世界を独特の視点で演劇的且つシュールに描きます。アコースティック主体の素朴なサウンドには確実にいにしえの魔力が染みています。ローズマリーの飾らないながらも不思議な魅力をもった歌声にも惹かれます。そしてライヴも最高なんです!


14位

NORAH JONES / THE FALL
1曲目のポップさには驚かされましたが、流石はノラ・ジョーンズ。でも正直、あまりポップな方向へは行って欲しくないなとも思っています。ただある意味、もう何をやるか分からない存在になりつつあるので、好きなように何所へでも飛んでいって欲しいとも思います。しっとりとしていながら、そんな大きな翼のようなものを感じさせる作品です。


15位

上原ひろみ / PLACE TO BE
ライヴ前とライヴ後で聴こえ方がガラッと変わったアルバム。もちろんライヴ後の方が色々聴こえてきました。これを聴くとやっぱりライヴでの興奮が甦ってきちゃうんですよね~。でもそういったプラスαは差し引いた順位のつもりです。ピアノ一つでの自由な表現力と同時に、リズム面での躍動感を味わって欲しい作品。


16位

ALICIA KEYS / THE ELEMENT OF FREEDOM
本当はこのアルバムを1位にする予定だったのに…。期待が大きすぎたかな?っていうか前作が素晴らしすぎた。今作には残念ながらアリシアらしいストリート感やブラック・ミュージックとしての“うねり”のようなものがほとんど感じられません。しっとりとはしているけどポップスに近い。なによりあまりにも80年代を意識したサウンドが好きになれません。でもアリシアの歌が沢山詰まった新作という価値だけでこれぐらいの順位にはなります。もちろんビヨンセとの共演曲をはじめ、グッとくる曲もありましたけどね…。それだけに残念です。


17位

BOBBY RUSH / BLIND SNAKE
ブルースとは匂いだ! 最近のブルースは匂わない…。でもボビー・ラッシュは匂います! いかがわしいファンク・ブルースの隙間からチトリン・サーキットで染み付いた臭気が滲み出てきます。脂の乗った歌声に乾いたハープの響きが堪りません。


18位

MARIA MULDUR & HER GARDEN OF JOY / MARIA MULDUR & HER GARDEN OF JOY
マリア・マルダーとその仲間達によるジャグ・バンド作。ジョン・セバスチャン、デヴィッド・グリスマン、タジ・マハール、ダン・ヒックスといった強烈なメンバーが参加。ジャグ・バンドならではのグルーヴ感がたっぷり楽しめます。そしてマリアの年期の入った歌声も最高です。


19位

BOB DYLAN / CHRISTMAS IN THE HEART
ディランのクリスマス。これは反則でしょう! 衝撃度で言えば09年のナンバー・ワン! でもその効力はクリスマス時期にしか発揮しなさそうなのでこの順位に落ち着かせました。この衝撃は、また今年のクリスマス時期までお預けです。


20位

ALEC OUNSWORTH / MO BEAUTY
クラップ・ユア・ハンズ・セイ・ヤーのヴォーカリスト、アレックのソロ作。なんとニューオーリンズ録音で、ジョージ・ポーター・ジュニアとスタントン・ムーアも参加している。といってもさほどニューオーリンズ色は感じられませんが、アレックのよたれ声がいい具合に絡み付く。個人的にクラップも大好きですが、こっちの方がさらに好みです。