ルーツな日記

ルーツっぽい音楽をルーズに語るブログ。
現在、 フジロック ブログ と化しています。

リアノン・ギデンズ@ブルーノート東京

2016-03-15 23:19:54 | カントリー
ブルーノート東京にてリアノン・ギデンズ。素晴らしかったです!古き時代とモダンな解釈が交差し、カントリー、フォーク、ブルース、ゴスペル、スタンダード、ミュージカルまでもが魔術的に調和した音世界。そして、土臭さに黒さが宿るリアノンのフォーキーな歌声。ソロ作以上にシンガーとしてのリアノンの魅力に打ちのめされました!

終演後にサインを頂きました!

@ブルーノート東京

2016-03-15 20:48:59 | カントリー
リアノン・ギデンスの開演待ち。前から2列目ど真ん中に着席。ソロ作では歌に専念している印象でしたが、ライブでは色々楽器も弾いてくれるみたい。って言うか、ほぼキャロライナ・チョコレート・ドロップスな感じになるのか?どちらにしろ楽しみ!

グラミー賞 ノミネート『BEST BLUEGRASS ALBUM』

2016-02-12 19:26:09 | カントリー
The Steeldrivers / The Muscle Shoals Recordings

グラミー賞ノミネート特集、第5回はブルーグラス。という訳で『BEST BLUEGRASS ALBUM』部門のノミネートは以下の5作品。

Dale Ann Bradley / Pocket Full Of Keys
Rob Ickes & Trey Hensley / Before The Sun Goes Down
Doyle Lawson & Quicksilver / In Session
Ralph Stanley & Friends / Man Of Constant Sorrow
The Steeldrivers / The Muscle Shoals Recordings


こちらも気になる作品が並んでいますが、中でも一押しはザ・スティールドライヴァーズ。ここ数年話題のブルーグラス・バンドですが、そもそもその界隈の第一線で活躍していたような人達が集まって結成されたようなバンドらしく、その演奏力は折り紙付き。実は前回紹介したクリス・ステイプルトンもザ・スティールドライヴァーズの元メンバーだったんです。しかもデビュー時よりクリスの強力なヴォーカルが注目されてたんですよね。ですが彼の脱退後もこうした力作を届けてくれている訳ですから頼もしい限りです。

さて、今作でまず目を惹かれるのが「The Muscle Shoals Recordings」というタイトル。サザン・ソウルの聖地マッスル・ショールズですよ! え?ブルーグラスがマッスル・ショールズ?と思われるかもしれませんが、このバンド、あのクリス・ステイプルトンが在籍していたぐらいですから、ブルーグラスとは言え、ソウルやブルースも視野に入れたアーシーなサウンドが持ち味でして、まさにマッスル・ショールズはもってこいな訳です。私なんかスティールドライヴァーズのマッスル・ショールズ録音と聞いて、これは聴かねば!と飛びついてしまいました。そしてさらにもう一つ理由があるんです。クリス・ステイプルトンの後任として加入したゲイリー・ニコルスはマッスル・ショールズ出身なんです。ゲイリーが参加して2作目となる今作で、彼の故郷の地が冠された訳です。

かのFAMEスタジオで腕を鳴らしていたJIMMY NUTTが録音とミックスでクレジットされていることから、おそらく彼のNuttHouse Recording Studioで録音されたと思われる今作。ギター、ベース、バンジョー、フィドル、マンドリンという、まさしくブルーグラスな弦の重なりに纏わり付くような南部フィーリング。ゲイリー・ニコルスによる、クリス・ステイプルトンとはまた違うしゃがれた声が、土の香りと共にソウルフルに響きます。また、男臭いサウンドのなか、紅一点タミー・ロジャースの枯れを伴うフィドルの音色と麗しいハーモニーも良いアクセントに。素人の耳には明確に捉えることは出来ないものの、ここにもきっとマッスル・ショールズの魔力が染み込んでいることでしょう。

プロデュースはスティールドライヴァーズ自身と、2曲で元ドライヴ・バイ・トラッカーズのジェイソン・イズベルも名を連ね、彼はスライド・ギターも弾いています。このザ・スティールドライヴァーズとジェイソン・イズベル、そしてクリス・ステイプルトンという現代の南部コネクション、なんか気になります。



対抗は、ブルーグラス界の伝説ラルフ・スタンレーの最新作「Man Of Constant Sorrow」。バディ・ミラー&ジム・ローダーデイルをプロデューサーに、ロバート・プラント、エルビス・コステロ、ギリアン・ウェルチ、オールド・クロウ・メディスン・ショー、デル・マッコウリー、リッキー・スキャッグス達をゲストに招いた話題作です。また国際ブルーグラス音楽協会(IBMA)アワードで5度の『Female Vocalist of the Year』に輝く女性シンガー、デイル・アン・ブラッドレイによる7枚目のソロ作「Pocket Full Of Keys」、現行シーンを代表するドブロの名手ロブ・アイクスとギターの達人トレイ・ヘンスリーの強力デュオ作「Before The Sun Goes Down」、さらに大ベテラン、ドイルローソン&クィックシルバーの最新作「In Session」と、流石の充実振りですね~。

グラミー賞 ノミネート『BEST COUNTRY ALBUM』

2016-02-11 10:23:40 | カントリー
Chris Stapleton / Traveller

グラミー賞ノミネート特集、第4回はカントリー。という訳で『BEST COUNTRY ALBUM』のノミネート作は以下の5作品。


Sam Hunt / Montevallo
Little Big Town / Pain Killer
Ashley Monroe / The Blade
Kacey Musgraves / Pageant Material
Chris Stapleton / Traveller


何と言っても注目は、今年のグラミー賞において台風の目となるか?という注目が集まるクリス・ステイプルトン。何せこの初ソロ作「Traveller」は主要部門の『ALBUM OF THE YEAR』にノミネートされていますからね!さらにこの『BEST COUNTRY ALBUM』も含め計4部門にノミネートされている訳ですから、注目されない訳がありません。おそらくアメリカでのブレイク振りというのは凄まじいものがあるのでしょうが、悲しいかな、ここ日本にはそれがなかなか伝わってきません。案外、『ALBUM OF THE YEAR』のノミネートを受けて初めてクリス・ステイプルトンの歌を聴いたという人も多いのではないでしょうか?かくいう私もその一人だったり。

で、このクリス・ステイプルトン、良いんですよ!!髭にカウボーイハットは伊達じゃない!昨今のポップ・カントリーとは一線を画す、骨太な南部フィーリングにやられます。1978年、米ケンタッキー州の生まれ。父親は炭鉱夫という、なんかそれだけで音楽に対する実直さが伝わってきそうですよね。ナッシュヴィルに出ていくつかのバンドで活躍し、昨年の2015年に初のソロアルバム「Traveller」を発売。同年のカントリーミュージック協会賞 (CMA Awards)で『ALBUM OF THE YEAR』を含む3部門を受賞という、この年の最多受賞を成し遂げ、授賞式でジャスティン・ティンバーレイクと共演パフォーマンスをしたことで人気に拍車がかかったそう。またこれまでに数々のカントリー・シンガーに楽曲を提供するなど、ソングライターとしても名高く、かのアデルも彼の曲を歌っているとか。まさに時の人です。

1曲目タイトル曲「Traveller」から朴訥としたカントリー・フィーリングが気持ち良い!ダミ声混じりの泥臭い歌声が広大な米南部へとトリップさせてくれます。サザン・ロックな「Nobody To Blame」、郷愁を誘うスロー「Whiskey And You」、雄大な情景を感じさせる「When The Stars Come Out」、スワンプ・テイスト香る「Might As Well Get Stoned」、漢らしさに溢れる「Outlaw State Of Mind」、アメリカン・ロックに突き抜ける「Parachute」、そして絶品のサザン・ソウル・バラード「Tennessee Whiskey」などなど。激しくも味わい深いクリス・ステイプルトンの歌声に聴き惚れてしまいます。また彼の野太い声に寄り添うようにハーモニーを付ける奥方モーガン・ステイプルトンの存在も大きい。さらにロビー・ターナーのペダル・スティールやミッキー・ラファエルのハーモニカも良い味出しています。特に「Daddy Doesn't Pray Anymore」での鄙びたハーモニカは滲みますね~。プロデュースを務めたデイヴ・コブは、今回のグラーミーで『PRODUCER OF THE YEAR』にノミネートされています。

ちなみに奥方のモーガン・ステイプルトンという名前、どこかで聞いたことあるな、と思いましたら、ガイ・クラークの「MY FAVORITE PICTURE OF YOU」でも美しいハーモニーを聴かせてくれている人で、その奇麗な声に私も気になっていたんですけど、その時は大した情報を得られなかったんです。まさかクリス・ステイプルトンの奥様とは。これは嬉しい発見でした。



対抗は、カントリーミュージック協会賞でクリス・ステイプルトンと最多受賞を分け合ったリトル・ビッグ・タウンでしょうか?個人的には麗しの美声の持ち主、ケイシー・マスグレイヴスやアシュリー・モンローを応援したいところ。それにしても、クリス・ステイプルトンに比べるとやはりポップですよね。サム・ハントは、モダンすぎて私の耳にはカントリーには聞こえないんですけど…。






よろしければ、こちらもどうぞ!!

グラミー賞 ノミネート『BEST FOLK ALBUM』
グラミー賞 ノミネート『BEST AMERICANA ALBUM』
グラミー賞 ノミネート『BEST BLUES ALBUM』

グラミー賞 ノミネート『BEST FOLK ALBUM』

2016-02-09 23:13:25 | カントリー
Rhiannon Giddens / Tomorrow Is My Turn

グラミー賞ノミネート特集、第3回は、『BEST FOLK ALBUM』部門です。ノミネートは以下の5作品。

Norman Blake / Wood, Wire & Words
Béla Fleck & Abigail Washburn / Béla Fleck And Abigail Washburn
Rhiannon Giddens / Tomorrow Is My Turn
Patty Griffin / Servant Of Love
Glen Hansard / Didn't He Ramble

最注目は、現代に蘇るオールドタイムな黒人ストリングス・バンド、キャロライナ・チョコレート・ドロップスの紅一点リアノン・ギデンスです!! ここ1~2年の間に、ジョニー・キャッスのトリビュート作「Look Again To The Wind: Johnny Cash's Bitter Tears Revisited」、ボブ・ディラン「地下室」の新発見「The New Basement Tapes, Lost On The River」という2枚の話題作に参加し、USインディー・フォークの旗手アイアン&ワインとディランのカヴァー「Forever Young」をリリースしたり、映画「Inside Llewyn Davis」を記念したコンサート「 Another Day, Another Time」に出演したりと、にわかに一人の女性シンガー、リアノン・ギデンスとしての存在感を発揮しつつある彼女。しかも上記に挙げたプロジェクトの全てがT・ボーン・バーネットもしくはジョー・ヘンリー絡みという、巨匠からの愛され方もその才能の豊かさを物語っていますよね。

そんな彼女のソロ作としては初のフルアルバムとなる「Tomorrow Is My Turn」。こちらもT・ボーン・バーネットのプロデュース。ジェイ・ベルローズ&デニス・クロウチをリズム隊に配した彼のプロダクションは流石に見事。特にリズムをシェイクさせるジャック・アシュフォードのタンバリンが良いですね。ニーナ・シモンでも知られるトラディショナル「Black Is The Color」でのヒップホップとニューオーリンズを混ぜたような解釈も面白い。とは言えここでの主役はもちろんリアノン・ギデンスなのです。彼女のシンガーとしての魅力にフォーカスした作品といっても過言ではない、それ程に彼女の歌声が瑞々しく響きます。ドリー・パートン「Don't Let It Trouble Your Mind」、オデッタ「Waterboy」、シスター・ロゼッタ・サープ「Up Above My Head」、パッツィ・クライン「She's Got You」、エリザベス・コットン「Shake Sugaree」などなど、とにかく彼女の凛とした歌声に惹かれます。

さて、キャロライナ・チョコレート・ドロップスとしては、既に2010年にグラミーを受賞している彼女ですが、果たしてソロでの受賞なるか? そして3月には来日も決まっているのでそちらも楽しみです!





対抗として挙げたいのはパティ・グリフィン。近年はロバート・プラントのバンド・オブ・ジョイへの参加でも知られる彼女。そのプラントもゲスト参加した前作「American Kid」は多少ロック寄りでしたが、今作はフォーキーです。いや、フォーキーと言うより、これはアメリカーナですよね。寂寞とした悠久のアメリカーナ。素晴らしいの一言!

個人的にこの部門は両女性シンガーの一騎打ちの様相なのですが、冷静に考えれば、受賞に最も近いのはベラ・フレック&アビゲイル・ウォッシュバーンかもしれません。何せ過去にいくつものグラミーを受賞しているベラ・フレックですからね~。そして70歳代後半になるギターの名手ノーマン・ブレイクがオリジナル曲で構成した新作「Wood, Wire & Words」、さらに映画『once ダブリンの街角で』主演で知られるグレン・ハンサードのソロ作「Didn't He Ramble」と、興味深い作品が並んでいます。

I'M WITH HER @ブルーノート東京

2015-10-29 23:19:58 | カントリー


10月28日、ブルーノート東京にてI'M WITH HERを観てまいりました!!私が観たのはこの日の2ndショー。

サラ・ジャローズ(SARAH JAROSZ)- 1991年テキサスはオースティンの生まれ、09年の1st作「SONG UP IN HER HEAD」から「Mansinneedof」がグラミー賞『Best Country Instrumental Performance』部門にノミネートされるなど、デビュー時からその才能を際立たせ、現在まで3枚のアルバムを発表。最新作「BUILD ME UP FROM BONES」からもタイトル曲がグラミー賞『BEST AMERICAN ROOTS SONG』部門にノミネート。若くして新世代のブルーグラスを代表する才女。

サラ・ワトキンス(SARA WATKINS)- 1981年カリフォルニア生まれ。89年、兄のショーン・ワトキンスと、後の天才マンドリン奏者クリス・シーリと共にニッケル・クリークを結成。新感覚と巧みなテクニックは「プログレッシヴ・ブルーグラス」等と評され、ブルーグラスの新しい扉を開けました。ちなみにサラ・ワトキンスとクリス・シーリは同い年で、ニッケル・クリーク結成当時は8歳ぐらいですか?まったくもって恐ろしい子供達です。02年の4作目「THIS SIDE」がグラミー賞『Best Contemporary Folk Album』部門を受賞。現在はメンバーそれぞれ自由な活動に邁進し、サラ・ワトキンスも2枚のソロ作を発表しています。

イーファ・オードノヴァン(AOIFE O'DONOVAN)- 1982年、マサチューセッツ州ニュートンの生まれ。Sometymes Why、Crooked Stillなどのグループで活躍し、2013年にはソロとして1stフルアルバムとなる「FOSSILS」を発表。2012年度のグラミー賞『Best Folk Album』部門を受賞したクリス・シーリ、ヨー・ヨー・マを中心としたブルーグラス・プロジェクト「The Goat Rodeo Sessions」にシンガーとしてフィーチャーされていたのも印象的でした。


そんな、まさに現行ブルーグラスを代表する女子3人が集まったスーパー・トリオ、アイム・ウィズ・ハー。私はミーハー魂を炸裂させて最前列ド真ん中で堪能させて頂きました。開演前、ステージには既にマンドリンやギター、ウクレレなどがセットされていましたが、そこにバンジョーが見当たらない…。このトリオではサラ・ジャローズはバンジョーを弾かないのかな?と少々がっかりしていたのですが、開演時刻、場内が暗転し、いよいよ3人娘が登場。なんと、サラ・ワトキンスはフィドルを、イーファ・オードノヴァンはギターを、そしてサラ・ジャローズはバンジョーを持ってステージに現れました。なんかその雰囲気だけで既に夢心地。

そして1曲目「Shadows Blues」。バンジョーとフィドルの音色に導かれ、イーファが歌う。私が3人の目の前に座っていたからかもしれませんが、ストリングスも歌声もほとんど素のような音で響いてくる。その飾り気のない音色はとても暖かく、土っぽい。そして歌、ストリングス、ハーモニー、それぞれの絡み合いは、古き良きブルーグラスの香り濃厚ながらも、新世代らしい瑞々しさに溢れている。一見トラディショナルなブルーグラスのように聴こえるこの曲も、実はコロラド出身のシンガー・ソング・ライター、ローラ・ヴェイアズによるほぼ同時代の曲だったりするんです。こういうカヴァーから始まる辺り、このトリオのモダンさを物語ってますよね。

このステージが今回の来日公演のファイナルになるというワトキンスの言葉に拍手が沸き、彼女が歌う「Today Is a Bright New Day」。サビにおける3人のハーモニーが麗しく愛らしい。こちらは、ノースダコタ出身の現行シンガー・ソング・ライター、トム・ブロッソーのカヴァー。

続いて「Wakin' Back To Georgia」。ジム・クローチの名曲をジャローズが歌う。カントリー・フィーリングに溢れた太く凛とした歌声にうっとり。ちなみにこのタイトルは今回の公演にちなんだブルーノート・オリジナル・カクテルの名前にもなっていました。ま、私はお酒がダメなので飲めませんでしたけど…。

それにしてもステージ上での3人の親密さは見ていてとても気持ち良かったです。コーラスを付ける時はそれぞれが顔を見合わせながら楽し気にハモってましたし、ワトキンスがフィドル・ソロをとる時はグッとジャローズに身を寄せ、音の対話を楽しんでるかのようだったり、ステージ上はこの3人ならではの空気感で満たされていました。なんて言いますか、女子3人ならではの雰囲気ってありますよね?

そして待ってましたのインスト「Squirrel Hunters」。ジョン・ハートフォードでも知られるアパラチア系の曲ですが、ワトキンスのフィドルもさることながら、ジャローズのマンドリンのキレに思わず体が揺れましたね。そして力強い歌声が印象的だったイーファのオリジナル曲「Captain's Clock」。3人の優し気なハーモニーに癒されたユタ・フィリップス のカヴァー「I Think Of You」。素朴な味わいのフィドルが秀逸だったワトキンス作のインスト「The Accord」。来年リリース予定のイーファの新作に収録予定の「Hornets」などなど。

なかでも特に印象的だったのは、アップテンポなブルーグラス・ゴスペル「Lord, Lead Me On」。ドラムレスのたった3人でリズミカルなノリを演出するのはブルーグラスならでは。ジャローズを中心にスピード感と昂揚感たっぷりなコーラスが堪らない。2コーラス終わった後、曲が一瞬終わったような感じになり、観客から拍手が沸き上がるや否や、いたずらっぽい笑みを浮かべたワトキンスがフィドルで割って入り3コーラス目に突入。盛り上がる観客達。この辺の手綱の取り具合も流石でしたね!

そしてもう1曲。個人的にこの日のハイライトだった「Run Away」。ほぼジャローズの弾き語りで披露されたこの曲での彼女の魔力めいた歌声は、カントリーの深みと言うより、堪らなくブルージーでした。それまで良い意味で牧歌的だった雰囲気にあの存在感は光ってました。またジャローズのリード曲ではセット終盤に披露されたボブ・ディランのカヴァー「Ring Them Bells」も良い味わいでした。それにしても、3人のなかでは10歳程年下のジャローズが声質的には最も肝が座った声をしているというのも面白い。一方のイーファはもう少しアメリカーナ寄りと言うか、多彩な表情を持っていて、先の「Lord, Lead Me On」では張り上げるような声でグイグイと勢いを付けていましたし、この「Run Away」でも、彼女が囁くようにハーモニーを付けるだけでフワッと情緒が広がる。そして一番の年上、サラ・ワトキンスが実はもっとも女の子らしい声の持ち主だったり。

そんなワトキンスのキュートな歌声を存分に味わえたのが「You And Me」。こちらは彼女のソロ作にバンド・アレンジによる録音が収録されているオリジナル曲ですが、ステージではウクレレの弾き語りで歌われる。これも凄く良かった! 正直、CD収録ヴァージョンより断然良かったですね。ワトキンスと言えば、ジョン・ハートフォードよろしくフィドル弾き語りで歌った「Long Hot Summer Days」も良かったですね~。観客達も加わったコーラスも秀逸でした。

そしてステージも終盤。3人が歌い継いだギリアン・ウェルチのカヴァー「100 Miles」、もっかのところアイム・ウィズ・ハーとしては唯一のシングル・リリース曲 、ジョン・ハイアットのカヴァー「Crossing Muddy Waters」、さらにはスウェーデンのトラッドグループ、ヴェーセンの「Hassa A's」と高速ブルーグラスの定番「Fire On The Mountain」をスリリングに駆け抜ける荒技でプログレッシヴ・ブルーグラスの片鱗を見せつけつつ、最後は3人が足踏みと手拍子をしながらアカペラ・コーラスで歌う「Be My Husband」。なんとニーナ・シモンのカヴァーですよ! こういう曲を最後に持ってくるセンスは素晴らしいですね。3人の技ありのコーラスが良い雰囲気出してました。

一口にブルーグラスと言っても楽曲はヴァラエティに富み、リード・シンガー3人の持ち味も充分に発揮され、楽器の持ち替えや、コーラスのニュアンス、曲のアレンジなどで様々な冒険を試み、聴く者の耳をまったく飽きさせない。ですが最も心に残ったのは、その素朴な歌心だったり。古きを訪ね、現代の空気をたっぷり吸いつつ、未来を見据える才女達に惜しみない拍手と歓声が送られる。

アンコールはスタンレー・ブラザーズの「Darkest Hour Is Just Before Dawn」。いや~、ブルーグラスって良いですね。およそ1時間15分程だったでしょうか、極上の夜でした。




サラ・ジャローズの楽器。左がバンジョー、右がフラット・マンドリン。そして真ん中にあるのはオクターブ・マンドリンでしょうか? 当初はアコースティック・ギターに見えたのですが、良く見たら8弦で2本ペアの4コースなんです。これらを曲によって持ち替えてました。




こちらはブルーノート・オリジナル・カクテル「Wakin' Back to Georgia」




この日のセットリスト↓

01. Shadows Blues
02. Today Is a Bright New Day
03. Wakin' Back To Georgia
04. Squirrel Hunters
05. Captain's Clock
06. I Think Of You
07. Lord, Lead Me On
08. The Accord
09. Run Away
10. You And Me
11. Hornets
12. Ring Them Bells
13. Long Hot Summer Days
14. 100 Miles
15. Crossing Muddy Waters
16. Hassa A's/Fire On The Mountain
17. Be My Husband
-------------------------------
18. Darkest Hour Is Just Before Dawn




そして終演後にはお楽しみのサイン会。フライヤーとそれぞれのソロ作にサインを頂きました。とても緊張しましたが、写真も撮ってもらったり、和気あいあいな雰囲気でした。


SARAH JAROSZ / BUILD ME UP FROM BONES
2013年発表。タイトル曲がグラミー賞『BEST AMERICAN ROOTS SONG』部門にノミネートされたサラ・ジャローズの3枚目。実はそのタイトル曲「Build Me Up From Bones」にはイーファ・オードノヴァンもハーモニーで参加したりしている。他にゲストにジェリー・ダグラス、クリス・シーリ、ダレル・スコットなども参加。



SARA WATKINS / SUN MIDNIGHT SUN
ブレイク・ミルズがプロデュースしたサラ・ワトキンスのソロとしては2作目にして最新作。2012年の作品。ほぼワトキンスとブレイク・ミルズの2人で製作された作品なれど、フィオナ・アップルをフィーチャーした曲があったり、多少オルタナ寄りの印象。「You And Me」、「The Accord」収録。



AOIFE O'DNOVAN / FOSSILS
イーファ・オードノヴァン、2013年のソロ作。プロデュースはタッカー・マーティン。全曲イーファのオリジナル曲で締められた好作品。ちなみにタッカー・マーティンはローラ・ヴェイアズの諸昨品を手掛けたり、パンチ・ブラザーズの最新作にも関わっている。この辺の人脈も面白い。

@ブルーノート東京

2015-10-28 20:35:45 | カントリー
今日はこれから、ブルーノート東京にてI'm With Herです。サラ・ワトキンス、サラ・ジャローズ、イーファン・オードノヴァンという、ブルーグラス新世代を代表するガールズ3人が集ったスーパートリオです。個人的な最注目は、デビュー時からの大ファン、サラ・ジャローズです!まさか生でサラ・ジャローズを観れる日が来るとは!もちろん、もう1人のサラと、イーファンも楽しみですよ。何てったってサラ・ワトキンスはかのニッケル・クリークですからね!そしてこの3人が揃うとどんなミラクルが起こるのか?楽しみでなりません!

LIVE MAGIC! 予習:ジェリー・ダグラス

2014-10-23 23:56:03 | カントリー
いよいよ目前に迫ってきた『Peter Barakan's LIVE MAGIC!』。前回取りあげたジョン・クリアリーに続いての予習企画第2弾は、もちろんジェリー・ダグラスです!!

まずは新作2枚と2年前のソロ作のご紹介から。


THE EARLES OF LEICESTER / THE EARLES OF LEICESTER
先日リリースされたばかりのこのアルバムは、ブルーグラス界の伝説フラット&スクラッグスをトリビュートしたジェリー・ダグラスによる新プロジェクト。これは最高ですね!こういうブルーグラスが聴きたかった! まさにそんなアルバム。メンバーは以下の6人。

Jerry Douglas(Dobro, vocals)
Shawn Camp(lead vocals, guitar)
Johnny Warren(fiddle, bass vocal)
Charlie Cushman(banjo, guitar)
Barry Bales(bass, vocals)
Tim O’Brien(mandolin, vocals)

それぞれがカントリー/ブルーグラス界で活躍する達人達。ティム・オブライエンはブルーグラス界が誇るシンガー・ソング・ライター(ケルティック・ミュージックにも造詣が深い)として日本でもお馴染みでしょう。ジョニー・ウォレンはフラット&スクラッグスでフィドルを弾いていたポール・ ウォレンの息子さん。そのジョニー・ウォレンと共にポール・ ウォレンのトリビュート作も作っているチャーリー・クッシュマンは、次世代のアール・スクラッグスと呼べそうなバンジョー弾き。バリー・ベイルズはジェリー・ダグラスと共にアリソン・クラウス &ユニオン・ステーションで活躍するベーシスト。そしてリード・ヴォーカルを務めるショーン・キャンプは、元々オズボーン・ブラザーズやアラン・ジャクソンなどのバックを務めてきたマルチ・プレイヤーで、現在は数々のアーティストから愛されるソング・ライターとしても名高い。これらつわもの達が1曲目「Big Black Train」から広大なブルーグラスの桃源郷へと旅立たせてくれます。このストリングスの豊穣とした絡み合いに、しばし時の経つのを忘れてしまいそう。もちろんジェリー・ダグラスのドブロも最高です!これぞブルーグラス!!

http://www.youtube.com/watch?v=yURi-svV7es
The Earls of Leicester - Big Black Train & Black Eyed Suzy



MIKE AULDRIDGE, JERRY DOUGLAS, ROB IKES / THREE BELLS
もう一つ、ジェリー・ダグラス関連の新作を。こちらは3人のドブロ弾きによる競演「THREE BELLS」。ちなみにドブロとは、リゾネーター・ギター(ギターのボディに共鳴板が張られていて、通常、ボディを寝かしてスライド・バーで弾く)のブランド名なんですけど、あまりにも有名なため、リゾネーター・ギターの総称のようにつかわれてしまうケースも多いようですね。もちろん、この3人は正真正銘のドブロ弾き。

マイク・オウルドリッジ(1938年生まれ)
ジェリー・ダグラス(1956年生まれ)
ロブ・イックス(1967年生まれ)

我らがジェリー・ダグラスこそブルーグラス界、いやそんなジャンルに捕われない、敢えて言うなら“ドブロ界”を代表する革命的プレイヤーですが、セルダムシーンでの活躍でも知られるマイク・オウルドリッジは、革新的なドブロ・プレイヤーとしてもジェリー・ダグラスの先輩格。そしてロブ・イックスはさらにドブロの可能性を広げた若き天才(と言ってももう40代後半ですけどね)。そんなドブロ界の頂点ともいえる3人が繰り広げるセッションの数々。ドブロならではの響きが紡ぐアメリカーナ。それはまるで広大な大陸を駆け巡るようでもあり、静かに語りかけてくるようでもある。彼らの妙技と、その美しくも深淵な音色に、じっくりと耳を傾けたいです。

このアルバムは2012年の5月、9月に録音されたようですが、マイク・オウルドリッジはその年の12月に亡くなられたそうです。こんな素晴らしいアルバムを録音して間もなく…。信じられません…。享年73歳。R.I.P.

http://www.youtube.com/watch?v=K3sLiZBMRcc
Jerry Douglas & Rob Ickes - Silver Threads
Jerry and Rob perform a beautiful duet at the Mike Auldridge tribute show at the Birchmere 2-12-13



JERRY DOUGLAS / TRAVELER
そしてこちらはジェリー・ダグラスのソロ名義としては現在のところ最新作となる2012年作「TRAVELER」。ジェリー・ダグラスと言いますと、あまりにも多くのアーティストの作品に参加しているため、セッション・プレイヤーとしての知名度が高いかと思いますが、実はソロ作もこれで13枚目となるそうです。ドブロだけではなくラップ・スティールなども弾き、リード・ヴォーカルも披露しているこの作品、タイトル通り、ニューオーリンズ~ナッシュビル~ニューヨーク~ロンドンを旅して完成されたアルバムとのことですが、やはり注目はニューオーリンズ録音でしょう。ジョン・クリアリー、デヴィッド・トーカノウスキー、シャノン・パウエルの他、マット・ペロン、ウォッシュボード・チャズというティン・メンのメンバーが参加しているところが個人的にツボ。1曲目「On A Monday」での彼らによるニューオーリンズ・グルーヴ、そしてそれをリードするかのようなジェリー・ダグラスのスライド・ギターがまた粋なんですよ!! ドクター・ジョン、ケブ・モが参加した「High Blood Pressure」も良いですし、エリック・クラプトンが歌う「Something You Got」もなかなか。またロンドンで録音されたマムフォード&サンズとの「The Boxer」も印象的。ですが、やはりサム・ブッシュのマンドリンとジェリーのドブロという強力デュオによる「Duke And Cookie」とか、高速ブルーグラス「King Silkie」あたりに一番興奮させられたり。

http://www.youtube.com/watch?v=2Y5Id7PbUnI
Jerry Douglas - Traveler


以上、極最近のジェリー・ダグラス重要作3枚をご紹介しましたが、一応、数あるジェリーのセッション参加アルバムから、私のお気に入り作品もいくつか選んでみました。以下、どうぞ!


JERRY DOUGLAS & FRIENDS / BEST ROUNDERS
ジェリー・ダグラスの初期ソロ作他、彼が参加したJD・クロウ&ニューサウス、ブーンクリーク、さらにデヴィッド・グリスマンやトニー・ライス、トッド・フィリップスへの客演など、70年代を中心に80年代の前半まで、若きジェリーの活動の、ほんの一端ではありますが、溌剌とした活躍ぶりが覗けるコンピ盤。
http://www.youtube.com/watch?v=TYxfVVoBLP4
Boone Creek 'Dixieland'



EMMYLOU HARRIS / LIVE IN 1978
昨年発掘リリースされた、エミルー・ハリスの78年のライヴ音源。リッキー・スキャッグス(guitar, fiddle)、ジョン・ウェア(ds)、エモリー・ゴーディ・ジュニア(b)、バック・ホワイト(mandolin)達と共にジェリー・ダグラス(dobro)もバンド・メンバーとして大活躍しています。ラジオ音源なので音はそれなりですが、エミルーの歌も、バンドのノリも、ホント最高です!!



BELA FLECK / THE BLUEGRASS SESSIONS: TALES FROM THE ACOUSTIC PLANET, VOL. 2
ベラ・フレックによる99年のブルーグラス・セッション。メンバーはベラ・フレック(banjo)、トニー・ライス(guitar)、サム・ブッシュ(mandolin)、マーク・シャッツ(bass fiddle)、スチュアート・ダンカン(fiddle)、そしてジェリー・ダグラス(dobro)。さらにゲストしてアール・スクラッグスやヴァッサー・クレメンツ、ジョン・ハートフォードなども加わるんですから、その凄さ、想像出来ますよね。
http://www.youtube.com/watch?v=b1YNG4n24IE
Bluegrass Sessions - Strawberry Music Festival 1999 Blue Mountain Hop



ALISON KRAUSS & UNION STATION / LONELY RUNS BOTH WAYS
やはりジェリー・ダグラスと言えばアリソン・クラウス &ユニオン・ステーションですよね。こちらは04年の作品「Lonely Runs Both Ways」。アリソンによる妖精のような透明ヴォイスとジェリーのドブロが相性抜群な麗しのポップ・ブルーグラス。グラミー賞で『Best Country Album』部門を受賞した傑作ですが、ジェリー・ダグラス作曲による「Unionhouse Branch」も『Best Country Instrumental Performance』部門を受賞しました。
http://www.youtube.com/watch?v=aeLeacn6QoI
ALISON KRAUSS & UNION STATION - Unionhouse Branch



JOHN OATES / MISSISSIPPI MILE
近年、ソロ・シンガーとしてルーツ指向な作品をリリースしているジョン・オーツ。こちらはナッシュビルで録音された2011年リリース作。ジェリー・ダグラスは中心メンバーとしてドブロ及びラップ・スティールで貢献。スライドの音色がいい具合にアルバムを彩っています。ライナーノーツの中のジョン・オーツの言葉に曰く「ジェリーがアルバムを聴いて、スライドがありすぎて、めまいがすると言ってたよ(笑)」とのこと。サム・ブッシュ、デニス・クロウチ、ベッカ・ブラムレットなども参加。



SARAH JAROSZ / FOLLOW ME DOWN
最後は私の大好きなサラ・ジャロス。彼女こそ現代ブルーグラスの新たなプリンセス。デビュー作から昨年の最新作まで3枚全てにジェリー・ダグラスがゲスト参加しています。写真は2nd作「FOLLOW ME DOWN」。今作では13曲中6曲で、ドブロの他、ラップ・スティールやワイゼンボーンを弾いています。
http://www.youtube.com/watch?v=byAjS8RCx5s
Sarah Jarosz with Jerry Douglas - Run Away



さて、すでに日本に到着したという情報もある、ジェリー・ダグラス。上記に紹介した最新のプロジェクトとはまた違う、ジェリー・ダグラス・バンドでの来日公演。どんなステージなるのか?どんなプレイを聴かせてくれるのか?そして「TRAVELER」に参加しているジョン・クリアリーとの夢のセッションは??楽しみですね!





~関連過去ブログ~

 14.10.21 LIVE MAGIC! 予習:ジョン・クリアリー
 14.10.19 Peter Barakan's LIVE MAGIC! 予習