『甘噛み^^ 天才バカ板!』 byミッドナイト・蘭

ジュリアナから墓場まで・・・。森羅万象を語るブログです。
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[映画『受験のシンデレラ』を観た(製作者トークライブ付き)]

2010-05-23 23:59:45 | 物語の感想
☆原作・監督の和田秀樹氏が、フジサンケイグループの「正論大賞・新風賞」を受賞したということもあってか、雑誌『正論』主催で、この作品の上映会が行われるということで、都内に出向く。

 主演が寺島咲なので、気にはなっていたが、機会がなくて観に行けてなかった2008年の作品。

 会場の九段会館の大ホールは満員だった。

   ◇

 いや、これ、激オモです^^

 私の大好きな「熱血」物である。

 何と言いましょうか、映画を作るのが念願だった和田秀樹氏が、その想いを観念的な方面に流されてしまうようなことなく、幾つもの深刻なテーマを内包しつつも、エンターテイメントとして突っ走った、なかなかの傑作だった。

 どのように面白かったかと言うと、

 話はコテコテで、「受験の神様」として人気・実力を誇っていた予備校の教師イガラシが癌を発病・・・、そして、自分の人生を省みたとき、今や、商業主義に堕してしまった自分の、受験指導者としての初心を思い出す。

 そんな折、遊びに夢中で夫に去られた母親との二人の暮らしを守るため、高校を中退し働いていたマキは、不遇の中でも希望としていた男にこっぴどく振られ、生きる希望をなくしていた。

 イガラシは、ひょんなことから、そんなマキと知り合い、マキの中に可能性を見出し、「人生は変えられるんだ!」と、ともに東大合格を目指すことになるのだ。

 一つ間違えれば、時代錯誤な話になったかも知れない。

 しかし、主演の二人、寺島咲と豊原功補の演技が見事なので、リアルなのである。

 寺島咲は、『櫻の園(2008)』の演技で、ナカデミー最優秀助演女優賞もとっており、その演技の自然なうまさはわかっているつもりだが、泣かされた^^;

 正直、私の好みではないのである。

 しかし、『櫻の園』と言い、『魍魎の匣』と言い、私の郷愁を誘う何かを、この子は持っている。

 豊原功補もうまい。

 私は一昨々年に、父親を癌で亡くしているので、その末期、緩和ケアにおける「だるさ」を見ているので、その点での演技も見事だと思ったが、前半の、経済的に大成し、やや傲慢になってしまった男としての所作もうまいと思った。

 何よりも、最初の空撮から、作り手の、映像の撮り方もうまかった。

 全編を通し、テレビドラマ的なちゃちさはなく、映画として良かった。

 また、「何で、ここで、この役者の表情をちゃんと捉えるのだろう、うまい!」と、思わせられる箇所が多々あった。

 話は、受験版『ロッキー』であり『あしたのジョー』、最近では『4分間のピアニスト』、ちょい『プライド』みたいな話なのだが、エンターテイメントをエンターテイメントとして成立させるためには、高度な「段階の積み重ね」が必要である。

 和田監督は、それをきっちりと行なっている。

 武田樹里さんの脚本は、散文にならざるを得ない物語を、最近では珍しい黒澤脚本的な散文として「段階の積み重ね」を行い、ちょいと洒落た言い方をさせて貰えば、バッハの対位法的な計算通りの盛り上げをしてくれている。

 で、その中にも、五十嵐のチョコボール嗜好や、マキが教えて貰う場としての喫茶店のマスターの愛想、マキが渡す次の講義のための精一杯の500円玉、五十嵐が毎度マキに渡す「受験の心得(これが、『あしたのジョー』の丹下段平の「明日のためにその1」みたいなんだ^^)」を体のひょんなトコから取り出す面白さ、五十嵐の元同級生の主治医との友情など、作品の独自性としての「こだわり」をさりげなく織り交ぜる。

 ・・・結末はもう分かっている。

 勝利(合格)である。

 マキは、イガラシを失ったショックを乗り越え、イガラシとともに勝ち取った「桜の枝(未来)」を見つめるのだった。

   ◇

 トークライブでは、『正論』の編集長・上島嘉郎氏の司会で、監督の和田秀樹氏と、脚本の武田樹里さんの話をたっぷりと聞けた。

 話を一つづつだけ書く(覚え書き)。

 武田 『・・・以前、「ナンバー1より、オンリー1」と言う歌詞の歌が流行りましたが、頑張りもしないで「自分はオンリー1」と最初から決めてしまうのは違う・・・」

 上島 『・・・私にも、マキにとってのイガラシ先生みたいな存在があった。人には、かけがいのない出会いが誰にでもある・・・』

 和田 『この物語は根性・努力の物語でもあるけど、更に、その根性・努力を活かすテクニックの重要性についても語っています。どうか、受験に限らず、努力してもうまく行かない人は、自分のやり方がおかしいのかも知れないので、自分の方法の再点検を考えてみて下さい・・・』

 ・・・映画が面白かったので、こうして語られる話にも説得力があった^^

                                       (2010/05/23)

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