ダムの訪問記

全国のダムと溜池の訪問記です。
主としてダムや溜池の由来や建設の経緯、目的について記述しています。

清願寺ダム

2023-02-01 17:50:06 | 熊本県
2022年11月22日 清願寺ダム
 
清願寺ダムは熊本県球磨郡あさぎり町の一級河川球磨川水系免田川にある農地防災・灌漑目的のアースフィルダムです。
あさぎり町の球磨川南岸一帯は広大な平地が広がり、球磨川を水源として古くから開拓が進められてきました。
しかし暴れ川である支流の免田川流域では洪水被害が多発する一方、山沿いの農地は水利に乏しく干ばつ被害が絶えませんでした。
そこで熊本県は1970年(昭和45年)に農林省(現農水省)の補助を受けた県営防災ダム事業およびかんがい排水事業免田川地区に着手、その中核施設として1979年(昭和54年)に竣工したのが清願寺ダムです。
清願寺ダムは免田川流域水田約500ヘクタールの農地防災および約300ヘクタールの水田・畑地への灌漑用水の供給を目的としており、当初は上村が、その後の町村合併により現在はあさぎり町が管理を受託しています。
清願寺ダムの堤高60.5メートルは日本のアースフィルダム最高となっており、日本ダム協会により日本100ダムに選ばれています。

先ずはダム下へと向かいます。
奥に堤体と洪水吐斜水路が見えます。
向って左(右岸)には放流管(常用洪水吐)吐口と利水放流設備があります。


右手トンネルが常用洪水吐からの放流口で、普段はEL266メートルを超える流入量はそのままここで放流されます。
一方左手は灌漑用放流設備で灌漑用水がここから用水路へと送られます。

堤体直下まで接近できないため、堤高60.5メートルの高さは実感できません。


さらにダム下へと向かいますが、フェンスがあり立ち入りはここまで。
見えるのは堤頂長199メートルの半分ほど。


左岸ダムサイトに上がります。
きれいに草が刈られた下流面は犬走を挟んで3段構成。
堤体保護のためでしょう、下流面の勾配は1:1.23と一般的なフィルダムよりも緩やかになっています。


天端は2車線幅の車道。


取水設備と常用洪水吐
取水設備は複式斜樋で取水口は水中にあります。
上部のゲートは予備ゲート。
右手の四角いゲージが常用洪水吐で、平時は常時満水位EL266メートルを超える流入量がここから放流されます。


右岸上流から
一見水位は低いですがこれで常時満水位。
総貯水容量330万2000立米のうち灌漑容量103万立米と堆砂容量34万4000立米分が貯留されています。
農地防災容量は有効貯水容量の7割近くを占め、容量だけ見れば防災メインのダムと言えます。


天端から洪水吐斜水路と減勢工を見下ろします。


非常用となる横越流式洪水吐。
この越流部が洪水時最高水位EL280.4メートルになります。


天端から見下ろすと堤高60.5メートルの高さを実感できます。
洪水吐を跨ぐ鉄管は灌漑用で、左手は調圧水槽。
ダム下の放流設備とは別系統で、ダムからは2系統で用水補給されるようです。


右岸から
上流面はコンクリートで護岸。


アースフィルダム堤高日本一もさることながら、それ以上に独特な取水設備や常用洪水吐、2系統の灌漑用放流設備など構造面での見どころも多いダムです。

(追記)
清願寺ダムには農地防災容量が配分されていますが、治水協定により台風等の襲来に備え事前放流を行うための予備放流容量が配分されました。

2674 清願寺ダム(1958)
熊本県球磨郡あさぎり町皆越
球磨川水系免田川
FA
60.5メートル
199メートル
3302千㎥/2958千㎥
あさぎり町
1978年
◎治水協定が締結されたダム


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