ダムの訪問記

全国のダムと溜池の訪問記です。
主としてダムや溜池の由来や建設の経緯、目的について記述しています。

池原ダム

2023-05-15 18:02:46 | 奈良県
2023年4月22日 池原ダム 

池原ダムは左岸が奈良県吉野郡下北山下池原、右岸が同村上池原の一級河川新宮川水系北山川にある電源開発(株)が管理する発電目的のアーチ式コンクリートダムです。
戦後の電力不足の中、日本有数の多雨地帯を水源とし包蔵電力豊富な新宮川水系では半官半民の電源開発(株)が発電事業を担うことになります。
北山川流域では1962年(昭和37年)に発電放流水を流域変更して太平洋に放流する尾鷲分水の取水ダムとして坂本ダムが完成、次いで1964年(昭和39年)に竣工したのが池原ダムおよび池原発電所です。
翌年には17キロ下流に七色ダムが完成し、池原ダムを上部調整池、七色ダムを下部調整池とする最大出力35万キロワットの混合揚水式発電が稼働しました。
池原ダムは湛水面積および総貯水容量はアーチダム最大を誇るほか、堤頂長は同第2位、堤体積は同5位と我が国のアーチダム屈指のスケールを誇っています。
また堤体には放流設備はなく、非越流型堤体の約600メートル南側にローラーゲート4門を備えた洪水吐が設置される非常に珍しい構造となっています。

アーチ堤体と洪水吐の位置関係
オレンジがアーチ堤体、赤が洪水吐


アーチ堤体直下には下北山スポーツ公園があり、各種スポーツ施設やキャンプ場、ロッジなどが整備され人気のアウトドアスポットになっているほか、池原貯水池は関西屈指のバス釣りスポットとして知られており、ダムは日本100ダムに、貯水池はダム湖百選に選ばれています。

右岸池原ダム展望台より
アーチダムとしては日本屈指のスケールを誇りますが、非越流式堤体のため放流設備が一切ないのっぺらぼう。
ある意味異形のダムと言えます。
写真左奥に洪水吐と取水設備が垣間見えます。


堤体直上に繋留設備があります。


毎度おなじみ、ダム名の付いたバス停
こちらはコミュニティバス。


堤体には『池原ダム  電源開発株式会社』の文字。


右岸から
このアングルからアーチダムを超広角で撮影するとデフォルメによりどこのダムもみな同じような絵になるのですが。
池原は放流設備のない非越流式堤体ですので天端もスッキリ。
一目で池原とわかります。


ダム下の下北山スポーツ公園と併設キャンプ場
昭和40年代、この運動施設で鍛えた下北山中学男子サッカー部および女子バレー部は、全校生徒100名前後にも関わらず、長く奈良県中学大会の頂点を極め全国大会でも活躍しました。

天端中央のダム湖百選のプレート。
池原貯水池は湛水面積843ヘクタール、総貯水容量3億3837万3000立米とアーチダム中最大規模を誇ります。


洪水吐と取水設備
天端から正面に洪水吐ゲートと正対できるダムは池原くらいでしょう。
取水設備は右から1号~4号まで並びます。
右手の1号2号取水口は建設当初からの中層取水口
左の3号4号は1991年(平成3年)に竣工した表面取水設備。
洪水時の貯水池濁水が問題化する中、北山川下流の環境改善のため濁水発生時に表層の清水取水を行うために設置されました。


左岸から。


天端は国道425号線が通ります。


取水設備越しにアーチ堤体を遠望。


洪水吐のピア
洪水吐の上も国道425号が通り、支流の東ノ川に沿って15キロ進むと坂本ダムに着きます。


洪水吐越しの北山川、複雑に蛇行しています。
発電施設は写真やや右手、導流部の先に垣間見えます。


水利使用標識
最大出力35万キロワットを誇るため、認可取水量も毎秒342立米と桁違いの数値。

国道169号線沿いには北から大迫ダム、池原ダム、七色ダムと3基のアーチダム(七色は重力式アーチ)が続きます。
さらに国道425号を使って坂本ダムに寄り道すれば、一度に4基のアーチダムを楽しめるアーチ密集地帯。
バラエティに富んだ4つのアーチをはしごすればアクセスの悪さなど吹っ飛ぶこと請け合い。

(追記)
池原ダムはは洪水調節容量を持たない利水ダムですが、治水協定により台風等の襲来に備え事前放流を行う予備放流容量が配分されました。
 
1565 池原ダム(1977) 
左岸 奈良県吉野郡下北山村下池原 
右岸         同村上池原 
新宮川水系北山川 
 
 
111メートル 
460メートル 
338373千㎥/220083千㎥ 
電源開発(株) 
1964年 
◎治水協定が締結されたダム 


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